ちょっと遅いですが、謹賀新年!
機動戦士ぽんぽこ:水星のたぬき1クール最終話のフレッシュトマト展開と大雪に戸惑っている今日此の頃ですが、本年もよろしくお願いいたします。
―――――「・・・まだか?」
ある一室にて、作業服姿の男が腕組みした状態で指をトントンと苛立った様子でウロウロウロウロと口をへの字に曲げて愚痴っている。
「あなた・・・心配なのはわかるわ。
でも、もうちょっと落ち着いたら?」
そんな焦燥感を漂わせる男に対し、同じく作業服の女性が注意を促すのだが、そう言う彼女自身もソワソワと随分落ち着かない状態だ。
此れには、二人の周囲に居る護衛として此処まで来ていたドイツ軍所属IS部隊シュバルツ・ハーゼの面々も苦笑い。
実は・・・此の作業服の男女一組は、IS学園専用機所有者達の整備員として紛れ込んで英国へ入国したシャルロット・デュノアの両親であるアルベール・デュノアとロゼンダ夫妻であった。
「しかし、そうは言ってもだな・・・ッ」
「・・・”アル”、こっちに来て」
壁にぶつかって方向転換を繰り返すダンゴムシの様に部屋をうろつくアルベールを自分の隣に座らせたロゼンダは彼の手をギュッと両手で包み込む。
「・・・・・あの子なら大丈夫よ。
アル、あなたに似て逆境に強い子だから」
「あぁ、わかっているとも。
けれど・・・あぁ!
やはりッ、行かせるべきじゃなかった!」
アルベールは今になって愛娘の英国上陸を許可した事を後悔し、ギリリ奥歯を噛み締める。
だが、覆水盆に返らずと云う言葉がある様にもう後戻りはできない。
愛娘が心配で自慢の髭を剃ってまで整備員を偽りついて来たが、やはり心配で心配でしょうがない。胃がキリキリと痛んで溜まらない。
そんなストレス性胃痛に悩まされる彼の顎へ自らの手をやって擦りながらロゼンダは微笑みかけた。
「フフッ・・・思い出すわ。
私達が初めて出会った時もそんなしわを眉間に寄せていたわね?
もちろん、今の様にあんな立派な御髭は生えてもなかったわ」
「うッ・・・苦い過去を思い出せないでおくれよ。
それに・・・・・”ロジー”、皆が見ているのだが?」
「いいじゃないの。
御髭のないあなたの顎を触るのは久しぶりなのよ?」
・・・流石は愛の国のフランス人か。
こんな状況下でもイチャイチャできるのは巡り巡って感服に値すると周囲に居た黒兎部隊の面々は感心を示す。
ところがどっこい。此のほのぼのとした状況を打ち破る野暮天な者が扉をバンッと開け放って現れた。
―――――「どうもどうも皆さん御揃いで!」
『『『!!?』』』
快活な声色と共に入室して来たのは白衣を纏ったスーツ姿の女。其の後ろからはゾロゾロと研究員姿の集団が後に続く。
無論、突如として現れた此の人物に対し、デュノア夫妻と黒兎部隊の面々の視線が其方へと向かう。
「ッ、貴様何者だ?!」
「おっとっと!
ちょいとお待ちになってくださいな、シュバルツ・ハーゼの皆様方よ!
別に私達は怪しいものじゃぁございません!」
侍が腰に差した刀の柄を握る様な臨戦態勢をとる黒兎部隊へ白衣の女は、此方に敵意がない事を証明するかの様に両掌を見せると張り付けた笑顔を繕った。
其の繕った表情にアルベールは見覚えがあったのか。訝し気に片眉を引き攣らせる。
「私達はあなた方と同じく今作戦に参加する事を要請された者でございます。
倉持技研・・・と言えば、覚えがありましょうか?」
「ッ、倉持技研・・・!
ならば、君は・・・篝火 ヒカルノ所長か?」
「おぉー!
私の事を知って頂けているとは光栄の極みですな。
髭がないと随分と若々しい印象に見受けられますよ、デュノア社社長アルベール・デュノア社長?
そちらに居られるのは、社長夫人のロゼンダ・デュノア夫人とお見受けします」
「!」
下手とは言え変装しているにも関わらず正体を見破られた事にアルベールは一瞬だけクワッと目を見開く。そして、どうやら自分達の手の内が相手の知る所によると察する事が出来た。
「世界に名だたるデュノア社が我々と共に今作戦に参加して下さるとは百人・・・いや、千人力にも等しい。
どうぞ我々、倉持技研と共に作戦成功に勤めましょう!」
「・・・あぁ、よろしく頼むよ」
白衣の女、もとい篝火はそう言って少々怪訝さを思わせるアルベールへ握手の為の手を差し伸べるのであった。
◆◆◆
「・・・・・ねぇ、一夏?
あんたは変だと思わない訳?」
英国上陸早々にとんでもない事実が明らかになった衝撃的なブリーフィングの後、多くの整備作業員がいる機体整備室から織斑 一夏を連れ出した凰 鈴音はそう疑問符を投げ掛けた。
「変?
人の事を連れ出しておいて変って何がだよ?」
「ッ、何がって・・・さっきのブリーフィングがよ!
いくら緊急事態だって言ってもなんで私達が
昂った感情に眉間へ深いシワが一気に寄る鈴。
其の拳はワナワナと固く握られ震えており、怒りの感情が彼女の内に秘められている事は明らかである。
しかし、鈴の怒りは傍からでも理解する事が出来た。
何故なら『聖剣奪壊』ソードブレイカー等と仰々しい銘が打たれた今作戦を共にする相手が、此れ迄幾度となくIS学園や専用機所有者達を襲撃し、剰え仲間の一人を一時的とはいえ瀕死危篤状態へ追いやった国際的過激派テロ組織であるファントム・タスクであったからだ。
「どうしてよッ?
なんで千冬さんは、あんなヤツらと一緒になって戦えって云えるのよ?!」
「・・・鈴、
「ッ!?
そ、そんな事って・・・!?
ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!
あんたマジで言ってんのッ?
あいつ等は私達を何度も襲って来た連中なのよ!
それにッ・・・あいつらのせいで春樹は!!」
「ッ・・・・・なんで・・・なんで、そこであいつの名前が出て来るんだよ?」
二人のまさかの返答に両眼はカッと四白眼になってしまう鈴に対し、春樹の名が出た事に一夏の表情が目に見えて不機嫌に曇る。
「はァッ?
なんでって・・・・・春樹はファントム・タスクの連中に殺されかけたのよ!
それなのに!!」
「・・・だから、なんだってんだよ」
一夏は冷淡な声色と共に鈴の手を振り払うと忌々しそうに奥歯を鳴らした後、機嫌良さそうに鼻を鳴らす。
「あいつがファントム・タスクのせいで死にかけたかどうかなんて知ったこっちゃねぇよ。
いや・・・今回は、あいつが居ない御蔭で作戦がスムーズに上手くいくかもな。
そう言う意味でならファントム・タスクの連中に礼の一つでも言ってもいいんじゃないか?」
「ッ、一夏・・・あんた!!」
僻んだ言の葉を吐く一夏の胸元を掴み取った鈴は衝動的に自らの手を振り上げた。
張り手、所謂ビンタを行う構えである。
・・・けれども、彼女の掌が一夏の頬を捉える事はない。
―――「待ちなさい、凰 鈴音」
「ッ・・・あんた!?」
鞭の如く振り上げた鈴の手を取ったのは、目を細めた表情すらも美しい一人の女性。
今回の一件に一夏を
「鈴・・・あなたの悪い癖よ。
自分の思う様にならない時に相手へ暴力を行使する事はね」
「気安く私の名前を呼ぶんじゃないわよ・・・!
あんたのせいで!!」
「あらあら、随分と嫌われちゃったわね。
まぁ、いいわ。
それより一夏?
篠ノ之博士が呼んでいるわよ」
「わかったよ、サラ。
また後でな」
「えぇ、またあとで」
「ま、待ちなさいよ一夏!
まだ話は―――――
「あなたは私とお話ししましょう?」
―――――ぐぇッ!?」
引き留めようとする鈴にサラは問答無用のチョークスリーパーをかけ、一夏にウィンクで合図を送れば、彼はウットリする様な笑顔を浮かべて歩み出すのであった。
◆
一方其の頃・・・
「ねぇーねぇー、ねぇーってばー!」
専用機所有者達のISが並んだ機体整備室では、紫色の長い髪を揺らしてまるで幼子の様にハツラツとした声を弾ませるウサ耳カチューシャをセットした不思議のアリスの様な装いの人物が居た。
其の人物とは此の空間に整然と並べられたIS達の生みの親たる大天才科学者、篠ノ之 束である。
けれども此の束なる人物は親しい人間以外の者を認識しないと云う難儀な性格をしており、滅多に
しかし、彼女が慕う様に声を掛けるのは実妹である箒でもなければ、親友の千冬でもない。
「ねぇーッ、ちょっとー!
この大天災の束さんが声を掛けてるんだけどー?
ちょっと、”せっちゃん”てばさぁー!」
「せっちゃん」と呼ばれた人物はワナワナと身体を震わせ、ギリリと奥歯を噛み締めた後で盛大に「・・・ッはぁ・・・!」と大きな溜息を吐きつつ視線を手元のタブレットから束へ忌々しそうに向けた。
「・・・・・あら、誰かと思えば篠ノ之博士ではございません事?
キーキーキーキーとどこからか野生動物が入って来たかと思いましたわ」
「え!?
どこに動物がいるの?」
「あなたの事ですわ!!」と張り付けた笑顔の心内で叫ぶのは、今回色々と酷い心労を抱える事となってしまったセシリア・オルコット其の人。
彼女は何故か束に懐かれてしまい、先程から付きまとわれていた。
其の鬱陶しさから脱する為に助けを求めようにも束に対処できそうな千冬は英国政府関係者や倉持技研関係者と話し合いをしており、箒は我関せずと自らの愛機と向き合っている。
するとシャルロットや楯無・簪姉妹はどうなのかと言えば・・・・・
「どうだいシャルロット?
問題はなさそうかい?」
「うんッ。
大丈夫だよ、お父さん!」
今作戦に参加するシャルロットのIS機体が他の専用機所有者達よりも未だ旧世代である事を危惧したアルベールは、秘密裏に持って来たデュノア社独自開発の新型機体フォーマットを行っており―――――
「ねぇ、今までの事は水に流して一緒に頑張りましょう?
呉越同舟というんじゃない」
「馬鹿な事、言わないで・・・ッ!
誰が・・・お前たちの事なんて!!」
「まぁまぁ、落ち着いて簪ちゃん。
・・・私だってムカついているんだから」
楯無に至っては、敵意剥き出しの簪と共にファントム・タスクを牽制している。
後に残るは元ファントム・タスクのマドカぐらいだが、此れは論外。彼女も箒と同じ様に愛機と向き合っていた。
正しく四面楚歌、取り付く島もないとは此の事。
・・・
「・・・・・うさぎは本来あまり鳴かない動物なのですがね」
「うさぎ?
せっちゃんはさっきから何を言っているのかなー?
せっちゃんって意外と変な人だね!」
「あなただけには言われたくありませんわ!!」・・・と、セシリアは叫びたかったが、グッと此れを呑み込む。
セシリアとて過去に篠ノ之 束へ尊敬の念を抱いていた信奉者かぶれであったが、今まで起こった襲撃事件に彼女が関わっていた真実を知ってしまい其の熱も冷めた。
御蔭で今は敵と云うよりも関わり合いたくない酷く至極面倒臭い人物としての認識である。
「あの・・・篠ノ之博士?
私のような者に構わずともよろしいので、ご自分の仕事をなさっても大丈夫ですのよ?」
「大丈夫大丈夫!
束さんはとっても優秀だから準備はもう万端なのだぜぃ!」
「ッ、な・・・なら、箒さんのもとへ行ったらどうですの?
あまりお会いになれない姉妹同士なのですから!
箒さんだって久々にご自分のお姉様とお話がしたい筈ですわ!!」
叫ぶ様に周囲に聞こえる声で束へ言い放つセシリア。
其の言葉に「セシリアッ、貴様!!」と口をへの字に曲げた憎み口が聞こえた様な気がした。
・・・ところが。
「えー、でもー、箒ちゃんってば思春期みたいだしー。
束さんが、あんまりかまちょしてもダメかなーって思ったりするんだよね☆
そ・れ・に!
束さん、今はせっちゃんとお話がしたいんですのよ☆」
鈍感なのかワザとなのかは知らないが、セシリアのやんわりとした「邪魔だ、失せろ」の言葉も物ともせず、束はにんまり笑顔で彼女へと迫る。
IS学園入学当初なら世界的科学者から関心を持ってもらえる事を喜んだろうが、今は嫌な予感しかしなかった。
「・・・私と一体何の話をしようと云うのですの?」
「ムフフん♪
そうだねー・・・恋バナとかー?」
「は?
こ、恋バナですの?」
「うん!
実は束さん、気になる男の子がいるのだ!」
束の発した「気になる男の子」と聞いて、セシリアはピクリと眉をひそめる。
と云うのも、彼女が話題に上げた人物は十中八九、此の場に居ない”蟒蛇”の事であろうからだ。
「・・・・・私は何も知らないですわ」
「何がー?
束さんは、気になる男の子って言っただけなのになー?」
「私は本当に何も知りません!
春樹さんは私に・・・私達に何も言わず姿を消したんですのよ!」
目を三角にキッと吊り上げて束に食って掛かるセシリア。
そんな彼女に対し、束は「・・・ふーん」と興味がない様な素振りで身体を仰け反った後、「なーんだ、つまんないのー」と呆れた様に溜息を吐く。
「まぁ、いいや。
ホントにはーくんの事知らないみたいだしぃ。
ガッカリだぜぃ」
「・・・篠ノ之博士、一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「んー?」
「今回の一件・・・いえ、
ゴクリ固唾を飲んで問い掛けたセシリアの疑問符に対し、束はキョトンと
―――「束さん?」
束が返答をする前に聞こえて来た声へ視線を移せば、其処には随分とやつれた表情の美男子が一人。
「おー!
待ってたよ、いっくん!
気分が悪そうな顔してるけど、相変わらずイケメンだぜい☆」
「俺は・・・大丈夫ですよ、束さん。
それで、俺に用ってのは?」
「そうそう。
用ってのはねー・・・いっくんって超ちょうがんばってるから、骨休みにイギリス観光でも行って来たらどうかなーって。
もちろん、ガイドはこのせっちゃんがやってくれるよ!」
「「は!!?」」
突拍子もない束の提案に当たり前の様に自分が組み込まれている事に吃驚して声を上げるセシリア。
しかし、仰天の声は
「ちょっと待て姉さん!
どうしてセシリアが一夏と一緒に観光などせねばならんのだ?!」
驚きの声を上げたもう一人は、束の胸元をグッと引き寄せてヒステリックな声色を響かせる箒であった。
「えー・・・だって、ここはイギリスなんだよ?
せっちゃんの故郷じゃん、ホームじゃん。
だから、いっくんの観光案内にはせっちゃんがベストなんだぜぃ!」
「そうじゃない!
私が言いたいのは、こんな忙しい時に何を悠長なことを言っていると言っているんだ!!
それに・・・観光なら私も一緒に―――――」
「だーめ!
箒ちゃんは紅椿を宇宙用にセッティングしないといけないんだからね?」
「そんな!?
そんな事は姉さんが勝手にやればいいだろう!」
「一体何を騒いでいる?!」
「千冬さん!!」
騒ぐ箒を一喝するのは用事を済ませて帰って来た千冬だった。
勿論、突拍子もない束の提案に納得いかない箒は彼女に抗議したのであるが―――――
「はぁッ・・・まぁ、いいだろう。
息抜きには調度いいんじゃないか?」
「ち、千冬さん!?
あなたまで何を悠長なことを言っているのですか?!
こんな緊急時に観光などと!!
それなら私も二人に同行して!」
「ダメだ。
お前は紅椿の調整をしないといけないだろう」
「しかしですね!」
「くどい!
文句があるならこっちに来い!!」
千冬の不条理で理不尽な物言いと共に連行されて行ってしまう箒。
そんな妹に束は「さらばじゃ!」と敬礼を送った。
「さて・・・という訳で―――――」
「いや、さてじゃありませんわ。
私はそんな事しませんわよ」
勿論、蚊帳の外で勝手にガイド役を任された事に納得がいっていないセシリアは「NO」と拒否を表明する。
「私とて暇じゃありませんの。
それに・・・箒さんの言う通り、そんな悠長な事言っている場合ではないでしょう。
ねぇ、一夏さん?」
「え・・・いや、俺はどっちでもいいけど」
「えー、なんでせっちゃんはそんなこと言うのー?
お疲れのいっくんを労ってあげようとは思わないわけぇ?」
「・・・・・ある人の言葉を借りるならこうですわ。
知ったこっちゃあありませんわ」
頑なに面倒臭そうにやりたくないと断るセシリアに「ぶー!ぶー!!」と愚図る束だったが、彼女がある事をセシリアへ耳打ちした途端―――――
「ッ・・・!?」
「むふふ♪
どうだい、せっちゃん?」
「・・・・・わかりましたわ。
一夏さん、どこか行ってみたい場所はありませんか?」
―――あら不思議。
拒否から一転して観光ガイドを了承し、一夏へ張り付けた笑顔を向けたではないか。
此れには、どっちつかずだった一夏も「あ、あぁ」と戸惑ってしまう。
「よっし!
話は丸く収まったし・・・さっそく行って来て!
ISの事はこの大天災の束に任せ―――――」
「ほらッ、行きますわよ」
「えッ、お・・・おう」
束の言葉を最後まで聞かずセシリアは足早に其の場を退出し、そんな彼女の後ろを一夏は戸惑いつつ追い掛けるのであった。
◆
―――「・・・どうしたんだよ、一体?」
政府が管轄する施設から一転、一体何処から手配したのか解らない真っ黒なハイヤーに乗ったセシリアと一夏。
けれども、いくら鈍感で度重なる精神的ダメージを負った一夏でも流石に此の異様な展開に気が付いたのか、訝し気な表情をした。
「・・・別に。
少し気分転換をするのもいいかなと思っただけですわ」
「・・・本当か?
束さんに何か言われてたじゃんか。
何を言われたんだよ?」
「どうしたんですの、一夏さん?
いつもなら「そうか」の一言で終わるじゃありませんか。
別に何でもありませんわ。
「楽しんで来て」と云われただけです。
・・・なにを楽しめとは知りませんがね」
「セシリア・・・・・なに怒ってんだよ?」
「怒る?
別に怒ってなんていませんわ。
ただ・・・ただ少し不愉快なだけです」
「不愉快って・・・・・やっぱ怒ってんじゃん」
「ッ、ですから怒ってなんて・・・!
ハァッ・・・もういいですわ」
ムスッとした表情で腕と脚を組むセシリア。
いつもとは全然違う彼女の珍しい態度に居心地の悪い一夏は何とか状況を打開しようと話題を振る。
「あー・・・えと、何か腹減ったなぁ。
セシリア、何か美味いもの知らないか?」
「美味しいものですか?
あら、一夏さん?
ここをどこだと思ってらっしゃるのですか?
世界一まずい料理で何年も覇者になっている国ですわよ?」
「うッ・・・!?」
どうやら地雷を踏んでしまったようだ。
何時かの日にイギリス料理を貶された事に対するブラックジョークなのか、セシリアは鼻で笑う。
普通ならヤバいと感じた話題に対して此れ以上立ち入らないのだが、流石は世界初の男性IS適正者。
逆に話題を拡げる事にした。
「べ、別にそんな事ないだろ?
サンドイッチとか・・・ほら、色々あるじゃんか!」
「サンドイッチ・・・
えぇ、確かに我がイングランド貴族のサンドイッチ伯爵が発明したと言われる料理ですわね」
「そ、そうだろ!
ほらッ、イギリスにだって美味い物が―――――
「他には?」
―――――ッへ?」
「他にはと聞いていますの。
我が英国にはサンドイッチの他に美味しい料理は何かありませんの?」
「え・・・えと・・・・・そッ、そう!
フィッシュアンドチップスとか!」
「・・・他には?」
「ほ、他!?
他って・・・他、ほかには・・・その・・・えーと・・・?」
「・・・ハァッ・・・浅はかな事。
程度の底が知れますわね。
一夏さん、あなたには
「す、すまん」
「まったく・・・
・・・・・
「ッ・・・あ!」とセシリアは思わず口元を手で隠す。
色々と不満を溜め込んでいた為に不機嫌で心根を歪ませていたとは言え、此れは此の一言は余計だったと瞬時に彼女は理解した為だ。
だが、最早既に時遅し。
「・・・・・悪かったな。
アイツみたいに物知りじゃなくて。
どうせ俺はモノを知らない人間だよ!」
目に見えて一夏の表情は一気に曇り、口をへの字に曲げてどう見ても不機嫌なものとなってしまう。
「べ・・・別にそこまでの事は言ってはいませんわ!
誤解です!」
「誤解?
何が誤解だよ。
セシリア、お前だってここに居るのが俺じゃなくてアイツだった方が良かったんだろ?
どいつもこいつも清瀬、きよせ、キヨセ・・・・・
何でッ・・・何でみんな、あんな自分勝手で思いやりもヘッタくれもないやつを慕うんだよ・・・!!」
「いい加減にしてくださいまし!」
奥歯を鳴らして卑屈な面持ちで春樹への恨み節をのたまう一夏に対し、セシリアはカッと声を張り上げた。
「ウジウジと・・・面倒臭いったらありゃしない!
春樹さんですかッ、あなたは?!!」
「ッ、め・・・面倒臭いって!?
それにッ・・・ふ、ふざけるな!!
俺がアイツと一緒?!
冗談じゃねぇよ!!」
「いいえッ、
春樹さんも一夏さんに対してグチグチグチグチと言っている事がありましたから。
ある意味、
「違う・・・違うッ!
俺はッ・・・俺はあんなやつとは―――――」
一夏にとってセシリアの発言は最上級の侮蔑侮辱だった為、元来の短気を持ち合わせている一夏は昂った感情に身を任せて彼女の胸倉へと両手を伸ばし―――――
「―――ッ!?
ドライバー、停めなさい!!」
「ッ、ぐふぇ!!?」
セシリアの一声で急ブレーキがかかった為、慣性の法則によって逆に彼女は一夏の胸へと飛び込んだ。
飛び込んだと言っても、最早其れはタックルに近しい。
「一夏さん、ごめんあそばせ!」
「おッ、おい・・・せ、セシリア・・・!!」
そんなクリティカルヒットタックルを決めたセシリアは鳩尾を抑え込んで悶え込む一夏へ陳謝して車外へ駆け出すや否や、凄まじい勢いと共に人波をかき分けて行くのであった。
「やはり・・・・・やっぱり、来ていましたわね!
今度こそ事情を説明してもらいますわよ―――――
―――『チェルシー』!」
・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆
機動戦士ぽんぽこ:水星のたぬき1クール最終話のフレッシュトマト展開と大雪に戸惑っている今日此の頃です。
極東は田舎生まれの蟒蛇くんの進化ルート
-
ジークフリート
-
ファフニール
-
俵 藤太