IS/Drinker   作:rainバレルーk

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サクサク進んで、独自展開を次回に挟もうかなー・・・なんて思っちゃたり。



第212話

 

 

 

「ろ、ロストッ・・・!?

デルタ1、白式・・・・・織斑 一夏くんの反応がロスト!

生体確認できませんッ!!」

「ッ・・・!!」

 

山田 真耶の悲痛な絶叫が作戦本部となっている部屋へ響き渡り、指揮官の織斑 千冬の歯軋りがギリリッと木魂する。

 

英国政府の要請により、実力行使型軍事衛星エクスカリバーの暴走を止める為、陽動と撃破を兼任する部隊として宇宙空間へ送り出された()()のIS学園専用機体所有者達。

そんな部隊の中核メンバーたる織斑 一夏が、攻撃目標を確認した途端に本部からの指示を仰ぐことなく、独断専行で突撃を敢行したのである。

 

其の結果は散々たるものであった。

不用意に接近した為、迎撃ミサイルの弾幕に囲まれてしまい、どういう訳かは()()なのだが、彼を援護した筈の同部隊隊員の篠ノ之 箒へ攻撃を加えてミサイルの()としている。

此れが功を奏したのか。迎撃ミサイルの難を逃れた一夏は自らのIS専用機である白式の単一能力、零落白夜を発動し、エクスカリバーへ斬り掛かった。

しかし、エクスカリバーの機体表面は装甲内部への貫徹を妨ぐ爆発反応装甲で覆われており、致命的なダメージを与えるには至らなかったのだ。

自身が放った会心の一撃が、相手の()()()()()()()()だった事に動揺したのか。其れとも()()()()()()のかは解らないが、急いで戦線離脱を開始。

だが前述の通り、斬撃が届く程に余りにも接近し過ぎていた為、エクスカリバーの最大にして最強兵装たる超大型荷電粒子砲を一夏は至近距離で浴びてしまうのであった。

 

「あ~あッ・・・いっくんってば、なーんで突撃しちゃったんだろーねぇ?」

 

耳が痛くなる程、シ―――――ンッとした静寂の中に発せられた場違いにも程があるあっけらかんとした声色。

勿論、此の声を発した人物へ皆の視線が注がれる。

すると其処には、自称大天()科学者を名乗る篠ノ之 束が、行事ごとに飽きた幼子の様に足をブラブラさせているではないか。

 

「束ッ、貴様・・・!!」

 

厳粛な雰囲気を乱す束に対し、千冬は彼女の胸倉を掴んで持ち挙げる。

千冬は士気を下げぬ為に平静を装ってはいるが、其の内心は喜怒哀楽の『怒』と『哀』に支配されていた。

 

其れも其の筈。

身勝手な独断専行とは言え、()()()()()を敵の攻撃によって()()()()()()()()()()()のだから。

そんなやり場のないクソデカ感情の八つ当たり先が空気を読まない世紀の発明者へ向かったのだ。

 

「ぐッ、ぐぇ―――ッ!?

ちょ・・・ちょと、ちょっとちょっと、ちーちゃん・・・?!

ホントに・・・マジでッ、首が・・・・・首が、しまっちゃってるんだけどォ・・・!!?」

「ッ・・・チィッ!」

 

千冬が舌打ちと共に床へ叩き付ければ、「ゲェッバ!!?」と首の骨を折られたガチョウの如き断末魔を束は上げるのだが、次の瞬間にはケロッとした表情で掴まれていた自分の襟を直している。

・・・・・其の時だった。

 

「も~~~、()()()()()()()()()()()()のにぃ」

 

「・・・・・・・・何だとッ?」

 

束が発した何気ない一言。

其の傍から聞けば気にも留める事もない言葉が、立ち去ろうとする千冬の琴線に触れたのである。

 

「束・・・「こんなつもりじゃなかった」とは、どういう意味だ?」

 

刹那の四白眼の後、振り向くと共にまるで刀の様に鋭い視線を不思議の国のアリスのコスプレをしているとしか言い様のないマッドサイエンティストへ向けた。

此の疑惑の目に対し、ウサ耳カチューシャを着けた束は「あッ・・・!」とアメリカンコメディ風に口を抑えたではないか。

其の反応に千冬は全てを察した・・・()()()()()()()

今までの全てが、此の目の前にいる気の違えたウサギによって()()()()()のだと勘付いてしまったのだ。

 

「・・・・・あっちゃー・・・バレちまったぜぇい☆」

「ッ、()()ァア!!」

 

()()()()()()と激昂と共に再び掴み掛ろうと手を伸ばす千冬だったが、束はヒラリ舞って後方へと回避運動を行い、くるくるとまるで体操選手の様な軽い身のこなしであっと言う間に距離をとってしまう。

 

()()()()、もっとこう・・・アクション映画みたいに劇的な展開を思い浮かべてたんだけど・・・・・いっくんが余計な()()()()なんかしちゃったから、もう束さんの()()()()はどうなるかわかんなくなっちゃった♪」

 

「ふざけるな束!

貴様は・・・貴様は人の命を何だと思ってッ!!」

 

「んンー?

()()()ぃ??

アッハ☆

ちーちゃんてば()()()()事言うね♪

君達、()()()―――――」

 

何かを言いかけた束だったが、傍から見れば瞬間移動とも見て取れる見事な縮地走法で一気に距離を詰めた千冬の正拳突きが顔面へ炸裂する。

・・・だが。

 

―――「おっとっと・・・ギリギリセーフ☆」

「な・・・ッ!?」

 

当たればノックアウト必死な千冬の容赦ない打撃を束は平然と片手で受け止めて歯を見せたのだ。

 

「あー・・・ちーちゃん、ごめんごめん。

そういえば、これは()()だったねー♪

でぇもォ、束さんに構ってる場合なのか・・・なぁ??」

「何を言って・・・?」

 

―――――「織斑先生!!」

 

ニタニタ笑う束に疑問符を浮かべる千冬へ山田教諭の声がかかる。

声がする方へ目をやれば、相変わらずオドオドしっぱなしの山田教諭が息を切らして立っていた。

 

「お・・・おお、織斑先生!

エクス、エクスカリバーがッ・・・エクスカリバーが、荷電粒子砲のエネルギー蓄積を開始しました!!」

「ッ、何だと!?

束、貴様ァあ!!」

 

「わぁー、待って待って!

()()は束さんじゃないよー!

でもでもでも・・・ヤバいねぇ?

どうするのぉ?」

 

煽る笑顔へ千冬は二発目の鉄拳を今度こそ喰らわさんと拳を振り切るが、其の前に束は再び後方へ跳ね飛んで窓辺へ足をかける。

 

「ちーちゃん・・・今の世界に満足してる?

束さんはね・・・不満なんだ。

だから・・・世界を変えるには()()が必要なのサ☆」

 

「何を言って・・・ッ」

 

「ちーちゃん!

今度会う時は、『()()』を纏ってて欲しいな・・・()()()みたいに!!」

「ッ、やめろ!!」

 

千冬の制止もやむなく束は窓辺から飛び出してしまい、其のまま姿を眩ませてしまうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「そんなッ、一夏さんが・・・!!?」

 

織斑 一夏の生体反応が消失した事は、すぐさま作戦参加者全員に伝わった。

まさか、長距離精密射撃でエクスカリバーを無力化する前に突撃を敢行するとは思わなかったセシリアは驚嘆と共に悲嘆にくれる。

・・・・・けれども。

 

「ふ、ふふ・・・クククッ・・・・・!」

 

「ま、マドカさん・・・?」

 

「クフフ・・・クハハハハハッ!!」

 

悲嘆で落ち込むセシリアを余所に一夏の消失を喜ぶ者が一人。

其れは彼に対して余りにも歪んだ憎しみを抱いている()()()()を引く()()、織斑 マドカだ。

彼女は突如として知らされた()()に唇を三日月に歪めて腹を抱える。

 

「そうッ・・・そうか!

あの()()()()()め、ようやく死んだか!

それも独断専行で不用意に近づき過ぎたせいで、熱線に晒されて姿形もなくなっただと?

こいつは素敵だッ、最高傑作だなこれは!!」

 

セシリアは再び驚いた。

元とは言え、冷血なテロリストで不愛想だと思っていた少女が、此処まで感情を露わにして笑い声を上げるとは思わなかったからだ。

 

「アーハハハハハッ・・・!

あーッ・・・あー!

お、おぉ・・・これが、これが『笑い過ぎて腹が痛い』と言う訳かッ?

あー、腹が痛い!!」

 

・・・しかし、此れは酷すぎやしないかとセシリアは不愉快さを表情に出す。

 

「マドカさん・・・一夏さんは仮にも貴女の兄弟だったのではないのですか?

その一夏さんが・・・!」

 

「ん?

あぁ、確かに・・・確かに残念だな。

私も悔しいよ」

 

「ッ、だったら―――――」

()()()で、やつを()()()()()()のは酷く()()だ!」

 

彼女の発言に「あぁ・・・そう言う()()ですか」とセシリアは呆れた様に溜息を漏らしていると、今までゲラゲラ笑っていたマドカは急に表情を強張らせて思い立った様に立ち上がったではないか。

 

「・・・・・マズいな」

 

「ま、マズいって・・・何がですか?」

 

「セシリア、お前の狙撃でエクスカリバーを機能停止に追い込んだ後、再起動する前に内部に突入してコアを無力化するのが今作戦目的だ」

 

「え、えぇ・・・そうですが・・・・・それが?」

 

「狙撃が成功したとして・・・宇宙に上がった部隊の中で、あの愚鈍の代わりに誰が短時間でコアを無力化するんだ?」

 

「・・・・・・・・あ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「・・・ん・・・・・んぁ・・・?」

 

熱圏に浮遊する気象衛星に足が引っ掛かけながらも意識を取り戻した篠ノ之 箒は、未だボーッとした気分とハイライトを失った虚ろな目で辺りを見渡す。

宇宙ゴミと共に漂っていた彼女が最初に見たもの・・・其れは真っ黒な下地に置かれた宝石の様な煌めく星々達。

そして―――――

 

「きれい・・・ッ」

 

網膜に映り込んだのは、清々しいまでの蒼さを持った惑星・・・地球。

其の冴え渡る美しさに箒は思わず、うっとりと目を細める。

・・・しかし。

 

「・・・・・・・・あれ?」

 

箒の脳裏に当然の疑問符が浮かんだ。

どうして自分が宇宙空間に漂いながら御()()見と洒落込んでいるのか、と。

 

「そうだ・・・・・私は、()()はイギリスに来ていて・・・それで、暴走した衛星を討伐する為に宇宙へ・・・・・それで・・・・・・・・それで?」

 

彼女はボーッと考え込む。

フワフワと初めて経験する無重力の中、途切れた記憶を紡ぐ時間は永遠にも感じただろう。

だが、()()にも箒は思い出す。

 

「・・・・・いち、か・・・?

・・・ッ、一夏!!?」

 

浮かび上がった断片的な記憶を頼りに彼女は自分の想い人の姿を探し、其の名前を呼ぶ。

けれども呼びかけに応える声もなければ、姿形を確認する事も出来ない。

 

―――――「ッ、箒!!」

「え・・・?」

 

ゆっくりと箒の心はとても大きいスライムの様な粘り気のある不安で蝕まれていった調度そんな時、自分の名を呼ぶ声が聞こえた。

其の焦燥感がありあり含まれる声色に耳を傾ければ、凄まじい速度と共にツインテールと水色髪の二人の少女達が此方に向かって飛んで来るではないか。

 

「箒!

よか、よかった!

あんた無事だったのね!!」

 

「あんな爆発をしてたから、もうだめかと・・・!」

 

箒の無事を確認するや否や、凰 鈴音は彼女に抱擁し、更識 簪は胸を撫で下ろす。

ところが、安堵を吐く二人を余所に箒はキョトンとした表情で周囲を見渡した後、口を開いた。

 

「鈴、一夏・・・一夏はどこだ?」

 

「ッ・・・ほ、箒・・・!」

「篠ノ之さん・・・!」

 

彼女の疑問符に鈴は下唇を噛む。

血が滲む程に噛み締めるが、彼女に事情を説明しない訳にもいかない。

戸惑いながらも、強張りながらも、歯軋りをしながらも鈴は言葉を連ねる。

 

「い・・・一夏・・・一夏は・・・・・()()()()()わ・・・ッ」

 

「な・・・なんだそれは?

わからない?

わからないとはどういう事だ?

一夏・・・一夏は、エクスカリバーに向かって飛び出して・・・・・って、あれ?」

 

箒が憶えているのは、勇猛果敢にエクスカリバーへ斬り掛かるも迎撃ミサイルの脅威に晒された一夏を助けた時だ。

其れ以降の事は―――――

 

「わ、私・・・私は敵の攻撃から一夏を助けて・・・それで・・・・・それで・・・!!」

 

彼女の脳は()()していた。

助けた筈の人間に侮蔑の言葉を吐かれると共に蹴り飛ばされた事を。

されど問題は其の後だ。

 

「・・・・・織斑くんは、不用意にエクスカリバー近づき過ぎて・・・それで・・・ッ」

「え?」

 

「ッ、簪やめ―――――」

「エクスカリバーからのビーム砲撃で・・・!」

 

簪の発した言葉に箒は凍り付く。

思考がショートし、目を此れでもかと見開いた彼女はワナワナ震える両手で簪の胸倉を掴んだ。

 

「簪、貴様・・・冗談でも言っていい事と悪い事が!!」

 

「・・・・・本当だよ。

あんな近くから撃たれたら・・・いくらISに絶対防御があるっていっても―――――」

「う、うそッ・・・うそだ・・・・・うそをつくな貴様ァア―――!!」

 

思わず振り抜いた拳が真っ直ぐ前へと向かって行くが、簪は自分に向かって迫り来る其の右ストレートを反射的に払い除け、バチーッン!とカウンター()()()を振るったではないか。

此れには二人の遣り取りを見ていた鈴も目を見開いた。

 

「ッ・・・な、なにをする!?」

 

「今は仲間内で小競り合いでも、彼の()()を悼んでる場合じゃない!

今は、あの()()()()をどうにかする事が先決なの!!」

 

中々に辛辣な事を言う簪だが、彼女の云っている事は尤もである。

気象衛星の蔭に隠れた彼女達の目と鼻の先に鎮座するエクスカリバーは未だ健在であり、尚且つ攻撃目標をロンドン全域に定めたままなのだから。

そんな尤もな言葉を並べる簪に合わせるかの様に通信チャンネルから声が聞こえて来た。

 

≪こちら、スカル2!

デルタ部隊、応答せよ!!≫

 

「スカル2・・・?

ッ、千冬さんの()()()()からよ!」

 

此れまた中々に酷い事を言う鈴はさて置き、地上でエクスカリバーの狙撃を行う部隊に所属するマドカからの通信に宇宙部隊の面々は目を白黒させつつも此れに応答する。

 

≪あの()()・・・もといデルタ1が撃墜されたのは、こちらでも確認した。

まったく、余計な事をしてくれたものだ!

貴様らは一体何をやっている!!≫

 

「き、貴様!!」

「篠ノ之さん、シッ!

コホンッ・・・・・面目次第もない。

彼の暴走を止められなかったのは、私達の責任」

 

≪ッチ・・・まぁいい、責任の所在は今は置いておく。

それよりもだ。

貴様らの中で、エクスカリバーが再起動するまでの短時間の合間にISコアを再起不能に出来るやつはいるか?!≫

 

「え?

・・・・・・・・あッ・・・!?」

 

「しまった!!」と、此の時になって漸く簪は気付いてしまった。

そう。此の政権奪取作戦は白式の単一能力、零落白夜()()()の作戦内容なのである。

白式以外でエクスカリバー内部にあろうISコアの無力化を行おうとしても時間がかかってしまうのだ。

到底、再起動前に短時間で再起不能にさせる事は不可能である。

 

「高い火力で、一気に短時間で決着をつけられる攻撃方法を持つ機体って・・・ッ?」

「そんなのって・・・!」

 

簪と鈴の二人が一夏の白式以外で思い浮かべたのは、二人目の男性IS適正者たる清瀬 春樹のIS専用機『琥珀』の単一能力『晴天極夜』であった。

しかし、此処に春樹は居ない。

英国へ上陸した途端にIPAビールを飲みに行く言ったとふざけた理由で雲隠れしてしまったからだ。

 

「なんでッ・・・なんでこんな時に限って・・・!!」

「どうすんのよ、一体?!」

「いや、別に再起動した後でもISコアを無力化すればいいのではないか?」

 

≪愚物が。

エクスカリバーは再起動した途端、目標への攻撃に移行する・・・出力が十分でなくともな。

まぁ、別に・・・私は英国ロンドンが火の海になっても構わんがな!≫

 

≪構いますわ!!

どうにかなりませんの?!!≫

 

現場はヒステリックな声と共にパニック状態へと陥った。

 

状況は最悪である。

事件を後ろで糸を引いていた黒幕が味方だと思っていた束で、呆気なく相手の正体を看破したものの逃亡を許してしまい、エクスカリバーを再起不能にする要は無謀な抜刀突撃で()()

最後の頼みは、何処で()()()()()()()()のやら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

其の()()は、あまりにも・・・あんまりにも()()()()

別段、白いと言っても辺り一面が新雪に覆われている訳でもなければ、靄や霧が漂っている訳でもない。

 

塩の様な。

白米の様な。

綿雲の様な。

牛乳の様な。

豆腐の様な。

砂糖の様な。

絹糸の様な。

マシマロの様な。

はんぺんの様な。

生クリームの様な。

淀みも濁りも穢れも染み一つもない真っ新な”白”が上下左右の周囲を()()()()()()()

 

「お・・・おれ・・・オレは・・・・・俺、俺は・・・ッ・・・・・オレおれ俺おれオレおれオレおれ俺おれオレおれオレおれ俺おれオレおれオレおれ俺おれオレおれオレおれ俺おれオレおれオレおれ俺おれオレおれオレおれ俺おれオレおれ・・・・・俺は・・・・・!」

 

さて・・・そんな二百種類もある白を全部詰め込んだかの様な空間の中央であり、端っこでもあり、隅っこでもあり、天井でもあり、底板でもある位置にうずくまっている人影が一つ。

浮かんでも居たし、沈んでも居たし、這いつくばっても居た。

そして、ぶつブツぶつブツぶつブツと何かを呟いては俯いている。

こんな白々しい場所で、酷く鬱屈した空気が”()”から放たれていた。

 

―――――〈目覚めて〉

 

そんな状況下の中で聞こえて来たのは、軽やかな少女の声。

彼女は頭を抱える()()に語り掛ける。

・・・・・ところが―――――

 

「・・・・・・・・いやだ」

〈!?〉

 

彼は少女に拒絶の言葉を突き付けた。

まさか、少年からそんな事を言われるとは思わなかった声の主は、今度は実体となって蹲る彼の目の前へ佇み現れる。

現れた美しい白を身に纏った天使と見紛う程の少女は、気を取り直して再び少年へ語り掛けた。

 

〈・・・目覚めて〉

「・・・・・いやだ・・・!」

 

其れでも少年は拒絶を吐露する。

其れでも少女は語り掛ける。

 

〈目覚めて〉

〈目覚めて〉

〈目覚めて〉

〈目覚めて〉

〈目覚めて〉

〈目覚めて〉

〈目覚めて〉

〈目覚めて〉

〈目覚めて〉

 

何度も何度も何度も何度も何度もしつこい位に語り掛ける少女。

其の機械的な呼びかけに対して少年は―――――

 

―――――「いやだッ・・・!!」

 

益々依怙地になって顔を上げようとしない。

此の少年のいじけた態度に対し、少女は一旦フリーズして最的確な()()()を思考した後、少女は彼に()()()()を見せる事にした。

 

≪ど、どうすれば・・・どうすればいいの!?≫

≪わたし・・・私のせいで・・・・・!!≫

≪だれか、誰か・・・・・誰か助けて下さいまし!!

 

「・・・ッ・・・!」

 

轟き響く乙女達の悲痛な叫びを耳にし、ピクッと少年の身体が僅かばかり震えた事を少女は見逃さない。

 

〈目覚めて。

彼女達を救えるのは、あなただけなの。

だから、お願い・・・!〉

 

少女は祈る様に少年へ声を掛ける。

さすれば、今まで沈黙か拒絶を続けていた少年は俯いたままではあるものの、ゆっくりと其の身体を起こす。

やっと重い腰を上げた事に少女は安心するのだが・・・どうも様子がおかしい。

 

・・・せ・・・・・こせ・・・ぜんぶ・・・・・ッ!

〈・・・・・え?〉

 

少女が少年の異変に気付くも時既に遅し。

彼は少女の喉元へ両の手を伸ばし、萬力の如き握撃を放ったではないか。

 

ッくァ”・・・あグッ・・・・・!!?

 

まさか首を絞められるなどとは露にも思ってもみなかった少女は、身を捩って此の窮地か脱しようとするが、少年が其れを許す事はない。

 

・・・せッ・・・こせ・・・・・よこせ・・・ッ!

 

少年は真っ黒な()の如き光を失った眼で少女を見据えた後、酷く生々しい音と共に掴んだ肉骨を()()()()

そして―――――

 

よこせ・・・寄越せッ・・・・・ぜんぶ、全部寄越せよぉ・・・!!

 

糸の切れた傀儡の様にぐったりと力を無くした少女へ己が歯を()()()()()

まるでスペインの画家フランシスコ・デ・ゴヤが晩年に描いたとされる絵画、『我が子を食らうサトゥルヌス』の様に其の肉を()()()()のであった。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

バッビャァア―――――ンッ!!

『『『え・・・!!?』』』

 

パニックが蔓延する現場へ突如として放たれた閃光に皆は身構える。

此の最悪に最厄が重なる状況下において其の反応は当然と云えば当然であった。

一体次はどんな()が、()()が襲い掛かって来るのだろうかと戦々恐々で表情を強張らせてしまう。

―――――ところが!

 

「ッ、あ・・・あれは!

あ”・・・あ”ぁ・・・!!」

 

第四世代のハイパーセンサーで瞬く閃光に中央へ佇む機体を確認した箒は思わず涙を零す。

そして、其の瞬きが収まるにつれて()は現れた。

 

「皆ッ、大丈夫か!!」

 

出撃前に機体へ搭載された特殊パッケージO.V.E.R.S.のである特徴的な意匠と白い大型エネルギー・ウィングを備える()()・・・”第三形態移行”した白式を纏う織斑 一夏が満を持して見参したのである。

 

「い、一夏!!」

「一夏ぁあッ!!」

 

「おわッ!!?」

 

エクスカリバーから放たれた熱線によって()()したかに思われた一夏の生還復活に箒と鈴は瞬時加速で彼へと飛び付き、其れを一夏は驚きつつも抱き留めた。

 

「一夏ッ、一夏!

私は・・・私がお前が、し・・・死んでしまったのかと・・・!!」

「し、心配・・・心配させてんじゃないわよ!

生きてるんなら、とっとと顔見せなさいよ!!」

 

感情を露わにして泣きつく箒と鈴に対して「わ、悪ぃ・・・!」と戸惑いながらも一夏は二人の肩を抱く。

此の目の前で起こった感動的な場面に簪は―――――

 

「・・・お涙頂戴は後にしてくれない?

それよりも今は、目の前の事に集中してよ・・・!」

「ッ、ちょっと簪!」

 

冷ややかな感想を述べる彼女に鈴はギョッと表情をしかめるが、エクスカリバーが荷電粒子砲の第二射準備をしているのだから、急かすのは当然だ。

・・・と云うか、そもそも一夏が独断専行でエクスカリバーに突貫してしまって予定が大幅狂ってしまったという事を―――――

 

「あぁ、そうだな!

さっさとアイツを倒して皆で帰ろうぜ!!」

 

「ッ、この・・・!

まぁ、今はそれどころじゃないし・・・セシリアさんッ、と言う訳らしいから、貴女のタイミングで撃ち抜いて!」

≪わ、わかりましたわ!!≫

 

あっけらかんと答える一夏に苛立ちを募らせながら簪は地上に待機するセシリアへ指示を飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッチ・・・死にぞこないめ!

大人しく蒸発してればよいものを!」

 

「またそんな事を言って・・・・・まったく」

 

一夏の復活を聞いてマドカは大きく忌々しそうに舌打ちを響かせる。

そんな彼女にセシリアは呆れた様に目を流して絶対対空砲『アフタヌーン・ブルー』のスコープを覗いた。

 

「すぅ―――・・・ふぅ―――――ッ・・・!」

 

大きく深呼吸する事で息と気持ちを気持ちを整えるセシリア。

地上から射撃目標のいる熱圏への超長距離で、しかも相手の弱点を撃ち抜く超精密狙撃を行わなければならない。

更に言えば、機会はたったの一発だ。

外せば、ロンドンが火の海の後に焼野原である。

 

「(大丈夫・・・大丈夫、大丈夫・・・大丈夫ですわ!

私なら・・・・・私ならできます・・・!)」

 

彼女は何度も何度も心の中で自分に言い聞かせる。

しかし、集中している時に限って余計な雑念と緊張が手を震わせた。

 

「(・・・碇 シンジさんもこんな気持ちだったのでしょうか?)」

 

或る日、セシリアは()()()に勧めでワルキューレ部隊の面々と共に一緒に見た映画を思い出す。

其れがキッカケか、彼女は連想によって再び()()()()から勧められた漫画を思い出してしまう。

とても花も恥じらう十代の麗しい英国淑女が、普通ならば読む筈もない明治日本を舞台にした冒険歴史狩猟文化漫画。

其の作中において、「冬眠中の熊も魘される悪夢の熊撃ち」と評される()()()マタギの師匠、二瓶 鉄造が放った名言―――

 

―――――「一発で決めねば殺される。

―――――一発だから腹が据わるのだ」

 

「・・・・・ふふッ」

 

セシリアは思わず笑みを溢した。

とてもガラではない淑女とは思えぬ思考が自分でも不思議で可笑しかったのだろう。

其れでリラックスしたのか。彼女は口端を吊り上げて引き金を絞った。

 

「ぼっ・・・・・コホンッ・・・バーン!」

 

 

 

 

 

 

バボ―――ンッ!!

 

青い地球の地表から放たれた桃色の閃光はエクスカリバーを撃ち抜くや否や、其の巨体から動力を一時的にシュゥウッ・・・と消失させた。

・・・今が其の時である。

 

「今だッ、皆行くぜ!

遅れんなよ!!」

 

一夏の号令と共に陽動部隊から殲滅部隊へとクラスチェンジした宇宙部隊は、再起動の準備をしているエクスカリバーへ突撃を敢行。

メンテナンスの為に機体内部へ続いているであろう扉を破壊し、ISコアが鎮座するシステム中央へブースターを噴かす。

 

「ッ、あれって・・・!」

 

「えッ、簪?」

 

そして、目的のISコアがあるであろうシステム中央部へ到着した一行だったが、何かを発見した簪は部隊から一時的に離れると大小様々な配線が通る通路へと身を寄せた。

 

「やっぱり・・・!

鈴さんッ、貴女の酸素ボンベの予備を渡してくれない?」

「ちょっとどうしたのよ・・・・・って、()()()()って!?」

 

通路に倒れていたのは、最低限の生命装置が僅かばかりに稼働しているISを纏った二人の人間。

鈴は其の二人に覚えがあった。

一人は、IS学園にスパイとして潜り込んでいたファントム・タスクの戦闘員、ダリル・ケイシーことレイン・ミューゼル。

そして、もう一人は、其のレインに誑し込まれて学園はおろか祖国まで()()()()ギリシャ代表候補生、フォルテ・サファイアだったのだ。

 

「どうして、ここにこの人達が・・・?」

 

「・・・もしかしたら、()()()()だったのかも」

 

「え?」と疑問符を浮かべる鈴を横に簪はISへ予備の酸素ボンベを投入すると其のまま二人を担ぎ上げた。

 

「おいッ、更識!

何処に行くつもりだ?!」

 

「私、このまま離脱する。

残弾もないし、このままにしとけない」

 

「・・・わかった。

その二人、頼んだぜ!」

 

どういう訳か機体内部に居た意識を失った二人を抱え込んだ簪は足早に外へと駆けて行く。

そんな彼女の背を見送った一夏達は、任務遂行の為にISコアが鎮座する支柱へと目を向ける。

 

「・・・まるで竹取物語に出て来る竹みてたいだな」

 

「言い得て妙だと思うぞ。

話によると生体融合型のISだという事だ」

 

「随分と物騒なかぐや姫ね・・・まぁ、いいわ。

それじゃあちゃっちゃとやっちゃいましょ!」

 

「そうだな!」と一夏は愛刀である雪片弐型を抜刀・・・するのではなく、開いては閉じる右掌を固く握った。

すると白式の機体表面から溢れた光の粒子が拳へ纏われる。

 

「ッ、一夏・・・お前、それは!?」

 

「あぁッ、俺の・・・・・俺の新しい()、『夕凪燈夜』だ!

これで一気に片を付けてやる!!」

 

「い・・・一夏・・・・・?」

 

新しい力を嬉々とした表情で紹介する一夏だったが、傍で見ていた鈴は何処か彼から酷い()()()を感じ取る。

しかし、今はそんな事を言っている場合ではない。

 

「これで・・・・・終わりだぁあッ!!」

バキィイ―――ッ!

 

拳を振るうと共にガラスを割れるかの様な音が響き渡れば、支柱に詰まっていた光が一気に放出。そして、ザバァンッ!!と中を満たしていたであろう液体が飛び出して来たではないか。

予想外の出来事に戸惑う一夏達だったが、中に残った()()に気付いた鈴はポタポタと未だ液が滴る支柱の中を除いた。

すると―――

 

「鈴、中になんか―――

「ッ、一夏、見ちゃダメ!!」

―――――あっだ!!?」

 

「あッ・・・ごめん」

 

中を覗こうとした一夏に思わずグーパンをかましてしまう鈴。

しかし、此れには理由がある。

 

「すぅ・・・すぅ・・・」

 

支柱の中には、生体維持装置であろう機械を装着した年端もいかぬあられもない姿の少女が崩れ落ちていたのだから。

 

「この子が・・・セシリアが言ってたチェルシーって人の妹?」

 

「これが生体融合型ISの正体か・・・!

素人目にも解るほどの非人道だな!!」

 

「とりあえず・・・何か、この子を運ぶものを探すわよ!

このまま宇宙空間に出す訳にはいかないでしょ!

あと、一夏はちょっとばかり目を塞いどきなさい!!

絶対に見ちゃダメよ、わかった?!!」

 

「わ、わかってるよ!」

 

破損した支柱からチェルシー・ブランケットが実妹だと言っていたエクシアなる少女を救出すると付近に設置されていた予備の生体ポッドへ彼女を詰め込んだ。

そして、「こんな薄気味悪い所、さっさと出るわよ」とポッドを担ぎ込んだ鈴の一声と共に出口へと急ぐ。

 

「あ、来た・・・・・って、なにそれ?」

 

「・・・・・説明は地球に帰ってからでもいい?」

 

疑問を疑問で返されながらも「うん」と頷いた簪は、「早く帰ろう」と地球へ帰還するルートに進路を合わせる。

 

「・・・ん?

何を見ているんだ、一夏?」

 

「いや・・・やっと終わったたんだと思ってよ」

 

一夏は心臓部をを失ったエクスカリバーを感慨深そうに眺めた。

 

「・・・・・一夏?」

 

「ん?」

 

「お前が本当に無事でよかった。

私はお前が・・・お前が死んでしまったのかと・・・!」

 

「箒・・・ッ」

 

潤んだ瞳で自分を見る箒に一夏は息を呑む。

まるで邪魔だと相手を蹴飛ばした事など幻だった事の様に。

 

「一夏、私は・・・・・私はお前の事が―――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪ピン・ポン・パン・ポーン♪

ここで束さんから()()()()()()()()の連絡をしちゃいまーす☆≫

 

『一難去ってまた一難』と云う言葉を提言するかの様に黒幕たる()()ウサギが、更なる()()を通告するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆















―――「Es ist stabil bei 200 % Energiespeicherung」
「Ich sehe nichts Falsches an dem Instrument.
Startbereit!」

「よぉし、良く狙えよ!
()()()()()()()しかねんだからなぁ!!」
「プレッシャーかけないでもらえますかねッ?」

()()()()()()()()()をキッチリ履修したんだ。
君ならば出来るさ!」
「今になってアレですけど、履修する()()間違えてませんかねぇ??
()()()()()()()の方が良かったんじゃ?!!」

「つべこべ言わずに集中しろ!!
一ミリの()()で、良くて一キロ、下手すりゃ数十キロだ!!
外したら・・・わかってんだろな!?」

()()()()なしてプレッシャーをかけるか!!?
畜生めッ、緊張して来やがった!!」

「大丈夫だ、お前になら出来る!
無事に成功したら何か美味い物でも作ってやるぞ!」

「よっしゃァア!
なにがなんでもやってやらぁあ!!」

極東は田舎生まれの蟒蛇くんの進化ルート

  • ジークフリート
  • ファフニール
  • 俵 藤太
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