IS/Drinker   作:rainバレルーk

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長かった聖剣編ももう残す所あと少しの予定・・・
今回はご都合主義とヘイトが高めとなっており、独自設定が盛り込まれておりますが、悪しからず・・・
それではよろしくお願いいたします。



第213話

 

 

 

―――――暴走状態となった実力行使型軍事衛星エクスカリバーは、極東より馳せ参じた()()()()()()()()()()と称えられるIS使い達によって()()を抉られた事で其の活動を遂に停止した。

・・・しかし―――――

 

≪ピン・ポン・パン・ポーン♪

ここで束さんから()()()()()()()()の連絡をしちゃいまーす☆≫

「・・・え?」

 

―――戦場となった宇宙から地球へ帰還せんとする彼等を呼び止めたのは、通信チャンネルから聞こえて来た緊張感の欠片もない弾んだ女の声色。

其の声を発する人物の正体をIS使い達は知っていた。

 

「た・・・束さん?」

 

篠ノ之 束。

言わずと知れた世紀の大発明インフィニット・ストラトス、ISの開発者だ。

そんな彼女はエクスカリバーを再起不能にする聖剣奪壊作戦にIS学園勢の宿敵とも云える国際的過激派テロ組織ファントム・タスクを伴って参加した()()()()人物で、過去に彼等を苦しめたであろう数々の事件をけし掛けた()()の嫌疑がかけられている。

だが、今回は共に同じ()()に立ち向かう()()だ。

手こずって来た敵が味方になると云うのは、とても心強く頼りがいがあるものであろう。

・・・・・ただし、彼女の様な人物を味方と信用するのは少々()()であった。

 

「ボーナスステージ・・・?」

「ね、姉さん?

これは一体・・・?!」

 

≪やぁやぁッ、いっくんに箒ちゃん・・・それに道端の石っころの如き有象無象ちゃん達☆

見事、目的のラスボスを倒したみんなに大天()の束さんからのサプラーイズ!!

みんなには、これからボーナスステージに挑んでもらうよ☆≫

 

投げ掛けられた箒の当然の疑問符に束は答える事無く、相変わらずのマイペースさで淡々と言葉を連ねた後、世界一癪に障る声色で≪それでは・・・ポチッとな☆☆☆≫とスイッチを押す。

さすればボグォオッ―――オオン!!と、沈黙していたエクスカリバーの()()()()()()

そして、ゆっくり其の巨体を青々と光る地球へ向けて進行を開始したのだ。

 

≪い・・・ちか・・・一夏、皆、聞こえるか!!?≫

「ッ、千冬姉!?」

 

突如として目の前で巻き起こった状況に思考が停まっていた一夏を我に返らせたのは、ノイズ混じりで通信チャンネルから聞こえて来た姉、千冬の声だった。

 

「千冬姉、どうなってんだよ?

束さんが言っていたボーナスステージっては一体なんなんだよッ?」

≪詳しく話している時間はない!

お前達は今すぐに其処から避難しろ!!≫

 

一夏の疑問符に対して千冬は答える処か、叱り付ける様に叫ぶ。

そんな彼女に代わり、再び通信チャンネルから束の声が聞こえて来る。

 

≪ンッん~~♪

いっくんの当然の質問にちーちゃんよりもこの束さんが説明してあげるんだぜぇい☆≫

 

「束さん!」

 

≪ボーナスステージ・・・それは地球に目掛けて()()()()()超でっかい()()()()をどうやって()()()()かっていう難易度が超々ハイレベルなステージなのさ☆≫

 

彼女から語られた説明とも言えない説明に一夏達は首を傾げたが、唯一人、簪だけは両眼を四白眼にひん剥いて「なんてことをッ!!」と身体を震わせて怒鳴り上げた。

 

・・・話は変わるが、インターネット上において一時期話題となった噂の()()がある。

『神の杖』と呼ばれる其れは、アメリカ空軍が開発中と噂されている人工衛星型宇宙兵器で、核兵器に代わる戦略兵器として運動エネルギー爆撃または運動軌道攻撃によって軌道上から不活性な運動弾で惑星表面を攻撃すると云うものだ。

・・・・・早い話が、『機動戦士ガンダム』の劇中においてジオン公国が地球連邦に対して行った『コロニー落とし』である。

コロニー落としの詳細は省くが、其の被害は落下地点の()()であるオーストラリアのシドニーをコロニー落下後にシドニー湾と呼ばれる最大直径五百kmの巨大なクレーターとして穿ち、オーストラリア大陸の表面積を一割以上消滅させたと言う。

 

「あんなッ・・・あんな大きさのものが落ちたら、ロンドンどころか・・・イングランド自体が()()・・・ううん、()()しちゃうよ・・・!!」

 

「ッ、そんな・・・!!?」

「ちょっと、冗談でしょ!!」

 

普段は感情を余り表へ出さない簪の鬼気迫る態度に先程までチンプンカンプンで首を傾げていた皆の顔が一瞬にして青くなった。

 

・・・因みに。

恐竜絶滅の大きな要因の()()と言われている隕石落下の衝撃が引き金となって当時生存していた七割以上の種族が”絶滅”に追いやられたとの事だ。

 

「どうしてッ・・・どうしてだよ、束さん!?」

 

≪んー?≫

 

「なんで・・・なんで、こんな事するんだよ!?

大勢の人の命が一瞬で無くなっちまうんだぞッ!!」

 

一夏は真っ赤な顔で音割れする程、通信チャンネルの先に居るであろう束へ訴えかける。

彼としては、自分が幼い頃から親交がある篠ノ之家の人間が・・・ファースト幼馴染である箒の姉である束が、こんな残虐非道の大量虐殺を行おうとしている事が信じられなかった。

篠ノ之 束という人物は、変な人だが根っこは善良だと思っていた・・・()()()()()()のだろう。

・・・されど―――――

 

≪だって・・・()()()()()んだもん≫

「・・・・・は?」

 

あっけらかんと紡がれた束の言葉に一夏はポカーンとマヌケな表情を晒す。

在り来たりな展開に飽き厭きした幼児の様な発言に皆は言葉を失った。

 

≪もっとさぁー・・・こう、なんというかさぁー・・・・・束さんとしては、劇的な展開を期待してたんだよねー。

なのにさぁー・・・なんか、()()()()って感じで残念なんだよねぇ。

()()()()も結局、出て来なかったしぃ≫

 

「な、何を言っているんだ・・・姉さんッ?

一歩間違えば、一夏は・・・一夏は死んでしまっていたのかもしれないんだぞ!!」

 

≪そうなんだよねぇー、束さんにもあのいっくんの行動は予想外だったぜぇい。

でも、いいじゃん。

危うく死にかけちゃったけど・・・おかげで白式が第三形態移行できたんだし、()()()()の結果オーライじゃん。

って言うかぁ・・・全部、束さんのおかげじゃーん☆

感謝して欲しいくらいだぜぇい☆≫

 

「こ、この女・・・!」

 

「ぶいぶいッ☆」と、上機嫌に我が手柄の如く得意げに我が物顔で声を弾ませる束へふざけるなァア!!と一喝の言葉が轟き響く。

其の声は、憤怒の形相で叫び喚き散らかす一夏だった。

 

「見損なったぜ、束さん・・・いや、()()() ()()!!

あんたが、そんな身勝手な人間だったなんて―――――

≪あー・・・ちょいちょい待ってよ、いっくんさんよぉ?

束さんとしては、いっくんからの呼び捨てに思わずドキってしちゃって満更でもない感じなんだけどさぁー・・・・・そんな事やってる場合なのかなぁー?≫

―――・・・は?」

 

≪ほらほら、あれだよアレ。

ほっといていいのかなぁ?≫

 

喉奥で罵詈雑言を用意していた一夏の勢いを挫くかの様に束は彼の意識を逸らせる。

すると彼等の視線の先には、現在進行形で地球に向かって其の腐敗ガスで腹部がパンパンに膨れ上がった鯨の骸の様な巨体を音速などとうに超える速度で落下中のエクスカリバーが確認できた。

 

≪落下地点には、ちーちゃんと愉快な有象無象の仲間達。

ちーちゃんはともかくとして、このままだとみんな影も形もなくなっちゃうよね☆≫

「―――――ッ、篠ノ之 束ェエエ!!

 

激昂する一夏を余所に束は「それじゃあまたね、バイビー☆」と一方的に通信を切り上げる。

御蔭で行き場のない怒りに一夏は砕ける程の力でギリリ奥歯を噛み締めるが、すぐさま彼はキッと墜ち征くエクスカリバーへ三角眼を向けて最大速力をブースターに込めた。

 

「ッ、ちょっとどうすんのよ一夏!?」

 

「落とさせるもんか!

俺がエクスカリバーを()()()()()()()!!」

 

「そんな無茶な・・・!!」と、簪はギョッと顔を引き攣らせる。

地球へ落下する巨大物体を無力化する作品は多々ある。其れこそ今の状況は、機動戦士ガンダムの劇場作品として評価も高い『逆襲のシャア』で登場する『アクシズ落とし』に近い。

しかし、逆シャアの劇中と現状で大きく違う点が確実に一つあった。

 

アクシズ落としが発生した際、其の現場には―――――

 

「ふざけるな!

たかが石ころ一つ、ガンダムで押し出してやる!!」

 

―――と、アクシズを押し戻そうとした()()()()()()()()()が登場した()()()()が居た。

其の上、命令が出た訳でもないにも関わらず、周辺空域を警戒していた味方陣営のみならず敵陣営までもが落下するアクシズへと集結して漸く最後は超常的な力でアクシズの軌道を地球から離す事に成功したのだ。

・・・だが、此処にガンダムは居なければ、大勢の仲間達も居ない。

其れ処か―――――

 

「ダメッ、()()()()()()・・・!!」

 

そもそもの話なのだが、落下するエクスカリバーの先端に一夏はどうやっても()()()()()()

其れは単純に彼が纏う白式の速度よりも大気圏突入間近のエクスカリバーの方が速い為である。

束の煽りに気をとられていた為なのか、其れとも三次移行を遂げたとしても機体速度が其れ程上昇しなかったのかどうかは不明だが、ともかくとして一夏はエクスカリバーに追い付く事が出来なかった。

 

「い、いやだ・・・いやだッ・・・・・いやだァアア―――――ッ!!」

 

一夏の脳裏に最悪の状況がよぎる。

此の聖剣奪壊作戦は極秘中の極秘であり、認知しているのは一部の英国政府関係者・・・IS学園専用機所有者達を招いた”円卓の貴族達”のみ。

なので、英国軍が動いたとしても精々が迎撃ミサイルの発射ぐらいだろう。

けれどもエクスカリバーには強固な装甲が施されている為、急遽発射された迎撃ミサイルでは完全破壊は不可能だ。

よって、ロンドンには大爆発を引き起こす巨大な鉄の塊が落下する事は免れない。

 

待てぇええ―――――ッ!!

 

しかし・・・まさか、仲間と思っていた人物に()()から()()()()()()()事をあの貴族達は()()していなかったのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪―――――・・・五月蠅ぇ、糞喧しい()()()

狙いがブレるじゃろうがな、此の()()()()が≫

「・・・・・え?」

ザッビャァアアアアアアアアアアアアアアアア!!

 

通信チャンネルから()()()()()日本語が紡がれた後、青い蒼い地球へ墜ち征くエクスカリバーの鼻っ柱を()()()()()()のは、ポインセチアよりも真っ赤な色をした退()()()()

 

「うッ、うわぁあああああ!!?」

 

巨体へ激突した真紅の熱線の衝撃波により、タンポポの綿毛の様に吹っ飛ぶ一夏などを尻目に熱線は落下運動を行うエクスカリバーの動きを止めるばかりか押し出し、そして、其の表面を()()()()()

 

「な・・・なんだッ・・・・・なんなんだ、アレは・・・・・?!」

「・・・・・きれい・・・ッ」

 

自分達が手を焼き手をこまねき、何とかどうしてやっとこさ再起不能に()()出来なかった敵が、目の前で()()()()程の灼熱の炎に包まれてドロドロと()()()()様子に箒と鈴はふよふよじたばたと宙を舞う一夏を助けるのも忘れて只々呆然と眺めるばかり。

 

「『ヒーローは遅れてやって来る』っていうけど・・・・・もうッ・・・!

遅いにも程があるよ・・・!!」

 

唯一人、瞬時に状況を()()した簪だけは、目を潤ませて安堵のため息を漏らすのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

冬の英国ロンドン市を突如として襲った実力行使型軍事衛星エクスカリバーの暴走は、IS学園から派遣された数々の難事件を解決して来た()()部隊により、其の心臓部()()()()()()()()事によって機能停止したのだが、部隊の後方支援を行っていた指揮傘下の一人、篠ノ之 束の暴挙的反逆行為によってエクスカリバーの()()()()()()が行われてしまう。

しかし、此の危機的状況において大西洋公海上から発射された()()()()()()により、落下運動を行っていたエクスカリバーは大部分は()()

他残骸は大気圏突入によって燃え尽きた事が地上班によって確認される。

こうして英国政府が超厳重に秘匿していた聖剣奪壊作戦は、誰一人欠ける事無く遂行されたのだった。

・・・・・だが、何事も()()()と言うモノは面倒なもので―――

 

―――――パァンッ!

「・・・へ・・・・・?」

 

渇いた音と共に自分の顔が横に傾いた事へ一夏は唖然と疑問符を浮かべた。

左頬に色付いた季節外れの()()がジンジンと痛みを帯びて熱い。

 

「・・・・・自分が何をしたか、わかっているのか?」

 

呆然と叩かれた頬を抑える弟へ冷ややかな視線を送っているのは、地上で作戦指揮を行っていた姉たる千冬であった。

けれども何故に彼女は命からがら危険な任務地であった宇宙から帰還した最愛の弟へ手を上げたのだろうか?

 

「ち、千冬さん!

私は大丈夫ですので!!」

 

今にも()()()を繰り出しそうな千冬へすがり付く様に手をやるのは、作戦中に援護したにも関わらず一夏に足蹴にを喰らい、エクスカリバーの迎撃ミサイルの囮にされた箒である。

其の彼女と同じ様に鈴も一夏を庇う発言を紡ぐ。

 

「一夏がポカをやったのは確かにそうですけど・・・あの時の一夏はちょっと正気じゃなかったんです!

でも、一夏のおかげで作戦が成功したんです!

ここは大目に―――――

「黙ってろ、鈴」

―――ひゃいッ!」

 

只ならぬ圧力で想い人を擁護する鈴を黙らせた千冬は、再び一夏へ先程の質問を並べ立てた。「自分が何をやったのか、わかっているのか?」と。

 

「・・・あぁ、わかってるよ。

箒には悪かったと思ってる」

 

「一夏・・・!」

 

「でも・・・でも、あの時は()()()()()()()()んだよ!

俺もどうかしてて、それで―――――」

 

パァンッ!と、ぐちゃぐちゃ言い訳を並べようとした一夏の右頬へ二発目の平手が炸裂する。

利き手ではないと言っても其の威力は先程よりも強烈で、彼の身体は浮いて尻餅をついてしまった。

 

「しょうがない・・・?

しょうがなかった、だと?」

 

「ち・・・千冬姉?」

 

「お前は・・・お前はしょうがなかったからで、仲間の命を無下にしたのか!?」

 

一夏へ鋭い視線と怒気を向けた千冬は拳を握った後、大きな大きな大きな溜息を吐いて彼から顔を逸らした。

 

「一夏・・・私は、お前を少々()()()()過ぎたと思う。

自分のやった事も理解できないとは・・・・・恥を知れ!!」

「ッ、な・・・なんだよッ・・・・・なんだよ、ソレ!!」

 

「「一夏!?」」

 

千冬の言葉がカチンと癪に障った一夏はすくっと立ち上がって身を乗り出す。

滅多に千冬へ刃向かわない一夏の其の似つかわしくない態度に箒と鈴は表情を強張らせた。

 

「そんな事言うなら・・・今回の一件は、束さん・・・・・いや、()()()が裏で糸引いてたんだろ?!

一番近くで()()()を見張ってた千冬姉は一体何やってたんだよ!!?」

 

「―――ッ、それは・・・!」

 

「今までの事も全部・・・全部、あの女のせいなんだろ!?

それなのに・・・それなのに今まで千冬姉は何やってたんだよ!!?」

 

感情に身を任せて捲し立てる()()()()()一夏に千冬は眉をひそめると共に目を細める。

 

「事件のたびに俺達を危険な場所にばっか送って、自分は後ろで踏ん反り返りやがって・・・!!

あれか?

実は、千冬姉もあの女と本当は()()なんじゃねぇのか?!!」

 

「ッ・・・一夏!」

 

昂った一夏の心無い言葉にクワッと目を剝いた千冬だったが、バキッ!と彼の頬を殴ったのは別の人物だった。

 

「一夏ッ・・・あんた、いい加減にしなさいよ!!」

「り・・・鈴・・・!?」

 

真横から一夏の頬へ鉄拳を放ったのは、拳をワナワナと震わせている鈴だった。

いつもなら部分展開で彼を殴っている所だが、今回は白魚の様な細い指を固めた拳で殴っている為にジンジンと手が痛い。

 

「千冬さんが・・・千冬さんが、どんな思いで戦場に送ってるか、あんたわかってるの?!

それに・・・箒の事も考えてあげなさいよ!」

「ッ・・・!」

 

ハッと一夏は目を四白眼にすると口を抑えて箒の方を見た。

遂に決定的な誰にでも解る咎人となった姉を持つ妹の悔しそうで申し訳なさそうな暗い表情を見た。

 

「わ・・・悪い、箒」

 

「悪い?

あんた、それだけなの?

自分勝手に蹴飛ばして、囮にして、あまつさえ逆ギレして・・・いい加減にしてよ!!」

 

鈴の怒号が一夏の鼓膜をつんざく。

 

・・・大体の話、指揮系統からの命令を受ける事もなく、感情のままに敵へ突撃し、あまつさえ自分を援護してくれた味方を囮にしたのである。普通ならば軍法会議モノだ。

だが、幸いにも一夏は軍属でもない特殊ながらも()()()()

なれば此処は、世界的にも有名なブリュンヒルデたる千冬からの厳重注意だけで一時此の場を丸め込もうとしていた。

けれども―――――

 

「―――――・・・ッ、うるさい!!」

「な・・・!?」

 

結果として任務を()()へと導いた自負のある一夏は、自分が皆から()()()()()()()()事に()()()()()()()()

 

「俺はッ・・・俺はみんなを()()()()()()んだぜ?

もういいじゃんか!

作戦も成功したんだし、もうこんなこt―――――」

もういい!!

 

駄々をこねだした幼子を叱り付ける気苦労の多い親御の様な一喝が千冬の口から放たれた後、彼女はグッ―――――と自身の眉間に皺を寄せて額に固く握った拳をあてる。

憤った声色と奥歯が砕ける程に歯嚙みしていそうな千冬の表情を見て、彼女の前に居た者達は()()()

今にも暴れ出しそうな怪力無双の不機嫌極まりない()()を目の前にした面持ちである。

そんな状況の中、「・・・おい」と沈んだ千冬の声が呟かれた。

其の怒りがアリアリと含まれた呟きに応えたのは、彼女等を警護していた兵士達。

彼等は、まるで()()に呼びつけられた近衛兵の様に参上すると千冬の意図を酌み取るかの如く一夏の両脇を抱えたではないか。

 

「なっ、なにすんだよ!?

ッ、千冬姉!!」

 

「一夏・・・日本へ帰国する準備が整うまでの間、お前は反省していろ。

連れて行け!」

 

千冬の声に兵士達は暴れる一夏を()()()()へと連行する。

此れに勿論異を唱えるは、箒と鈴の御二方。「やりすぎです!」だの「放してあげて下さい!!」だのとピーチクパーチク抗議を唱えるのだが、其れ等を「黙れ・・・!」と、いつもの()で抑え付けてしまう。

 

「・・・・・・・・なに、この茶番?」

 

終始、此の状況を見ていた簪はウンザリした表情で人差し指の爪でも弄りながら後方支援組の到着を今か今かと待機しているのであった。

 

「・・・・・漫画の一つでも持って来ればよかったなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

はてさて・・・ゴダごだの事後状況確認(デブリーフィング)が行われている中、今回の聖剣奪壊作戦において重要な働きを担ったであろう一人の優秀な()()()がコツコツ踵を鳴らしていた。

向かう先は、()()()を此の国へ招いたであろう()()()()が座す”円卓の間”だ。

 

「―――――・・・よく来てくれた、オルコット嬢。

いや・・・()()()()()()と呼ぶべきかな?

今回の一件、実に大義であった!」

 

円卓中央で立ち止まって敬礼を示したセシリア・オルコットへ”円卓の貴族”の一人が労いの言葉を掛ける。

此の言葉にセシリアは「・・・恐縮です」と張り付けた笑顔を浮かべた。

 

「貴女の・・・いえ、あなた達のおかげで英国は史上稀にみる危機から脱する事ができました」

「この一件を世論が知る事はないでしょうが、”陛下”のお耳に入る事にはなるでしょう」

 

「・・・ありがとうございます」

 

粛々と述べられる貴族達の言葉に対してセシリアは丁寧に受け応えるが、彼女の心中は虚ろに見舞われていた。

最初は作戦成功の安堵感に浸っていたのだが、徐々に時間が経つにつれて自分が今回の一件で何を()()()のかが否が応でも脳裏をよぎったのである。

 

チェルシー・ブランケット。

セシリアが幼き頃より、オルコット家に仕えていた彼女専属メイドであり、そんなチェルシーをセシリアは頼りにし、血の繋がりもない主従関係ではあるものの彼女を姉と慕っていた。家族だと()()()()()

・・・しかし、そう思っていたのはセシリアだけだったのだろうか?

 

―――「・・・家族ではありませんよ」

 

家族だと思っていた、姉と慕っていたチェルシーの晴天の霹靂と云わんばかりの突然の()()()

英国政府が保有していたISを強奪し、二人目の男性IS適正者の暗殺未遂事件に関係し、主人たる自分にまで刃を向けたのである。

 

けれども・・・家門を裏切り、国家へ反逆した大罪人であろうとセシリアはチェルシーを怨む事が出来なかった。出来る訳がなかった。

幼き頃より自分に仕え、彼女の両親が()()()()()によって他界してしまった際でも悲しみに暮れるセシリアの側を離れる事をしなかった忠臣とも云える存在だったからだ。

・・・だが、チェルシーへ事情を聞く事は()()()()()()

 

「―――・・・失礼ですが、お願いがあります」

 

「ん?

何かね?」

 

そんな()()()()チェルシーが()()()にしているであろう()()()()をセシリアは彼女の代わりに()()()()()()と心に決めていた。

其の人物とは―――――

 

「エクスカリバーへ乗っていた・・・・・いえ、()()されていた『エクシア・カリバーン』を私めオルコット家で引き取りたいのですが・・・構いませんでしょうか?」

 

譜代忠臣が取り戻そうとしたもう身寄りのない()()()()()()()()を彼女の代わりに育てる事が、今までのチェルシーからの恩に報いる事が出来るとセシリアは考えていた。

・・・・・しかし、彼女の願いに円卓の貴族達は顔をしかめる。

 

「・・・・・オルコット卿、何故に貴君は自身の家名を汚した使用人の()()を引き取ろうと願うか?」

「もっと他に願うものはないのですか?

情に絆されただけなのでは?」

 

「・・・絆されてはいけませんでしょうか?」

 

「何だと?」

 

「皆様が大罪人と言うチェルシー・ブランケットは、エクシア・カリバーンを取り戻そうとしておりました。

確かに彼女のやった事は許されざる行為です。

ですが、私は彼女の・・・チェルシーが残した想いを継ぎたいのです」

 

「どうか・・・どうか、どうぞよろしくお願いいたします」とセシリアは深々と頭を下げる。

けれども、彼女の此の願いに対して貴族達が首を縦に振る事は決してない。

 

「・・・それは呑めない要求だ」

「エクスカリバーの暴走には、エクシア・カリバーンの意識が関わっている可能性がある」

「彼女もまたチェルシー・ブランケットと同じ国家反逆者なのかもしれないのですよ」

 

「ッ、そんな!?」

 

説き伏せる様に言葉を並べ立てる貴族達だが、本心はエクシアを()()()()()()()のだ。

世界でも珍しい・・・いや、世界唯一確認できている生体融合型ISを纏う()()なのだから当然と言えば当然だ。

 

「その代わりと云ってはなんだが・・・君にある機会を与えてあげようと思っている」

 

「代わり・・・?

それは一体・・・?」

 

一人の貴族が行った指パッチンを合図に暗闇の中から二人組の兵士が、頭へ黒袋を被らされた人間を連行して来たではないか。

あまりに突然な此の状況にセシリアは目をパチクリさせるが、そんな事など御構い無しに兵士達は連行して来た人物を彼女の前へ跪かせると其の頭部を覆っていた黒袋を乱雑に引き剥がした。

 

「ッ、そ・・・そんな・・・!!?」

 

黒袋を被らされていた人物の正体に彼女は表情を強張らせた。

何故ならば、其の人物とはセシリアの良く知る()だったからだ。

新雪の様な白髪に金色の瞳と鳶色の瞳のオッドアイを持った爬虫類顔の()()()―――――

 

「―――――・・・よぉ、セシリアさん。

今回は、よく頑張ったらしいね」

 

「春樹さん・・・!!?」

 

まるで死刑執行前の罪人の様な風貌に身を包んでいたのは、なんと二人目の男性IS適正者たる清瀬 春樹だったのである。

今まで何処へともなく姿を現さなかった男が何故にこんな所で後ろ手に縛られているのか、セシリアは理解不能で唖然としてしまう。

・・・だが、更に彼女を混乱の坩堝に陥れる言葉が円卓の貴族達から紡がれた。

 

「セシリア・オルコット卿・・・そこにいる()()は、チェルシー・ブランケットの()()を実行した男だ」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・は?」

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆

遂に姿を現した飲んだくれの蟒蛇男。
でも、どうしてか危機的状況に陥っていて一体どういうことなの!?

次回!
『たぬきから上前』!!
デュエル・スタンバイ!!!

極東は田舎生まれの蟒蛇くんの進化ルート

  • ジークフリート
  • ファフニール
  • 俵 藤太
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