IS/Drinker   作:rainバレルーk

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※一万字超。
聖剣編は次回で最後・・・なると予定。
ではよろしくお願いいたします。



第214話

 

 

 

「セシリア・オルコット卿・・・そこにいる匹夫は、チェルシー・ブランケットの()()を実行した男だ」

「・・・・・・・・・・・・・・・は?」

 

円卓の貴族達が発した言葉に対し、セシリアはそんな間の抜けた様な上擦った声で答えた。

視線を横に移すとまるで死刑執行前の囚人の様な風貌に身をやつした爬虫類顔の()()()()()が、自分の目下で随分と()()の悪い顔をしている。

もし、後ろ手に手錠で繋がれていなければ後頭部を掻いていた事だろう。

 

「う、そ・・・ですわよね?

み、みなさんで・・・みなさんで、私をからかって・・・・・ッ!

―――――・・・ッ、()()さん!!?」

 

くわっと四白眼に見開いた青い瞳を向けながら自分でも驚く程の震える声を発すセシリア。

そんな彼女に対して蟒蛇顔の男・・・二人目の男性IS適正者たる清瀬 春樹は、口をへの字に曲げた。

まるで「どう説明したもんじゃろうかのぉ?」と、説明に戸惑っている様に。

しかし―――――

 

「・・・・・本当は、どっかで気付いとったんじゃねぇか?

狙撃手ってのは()が良い・・・特に君はそうなんじゃね?」

 

「ッ・・・は、るきさん・・・・・!!」

 

疑問符を疑問符で返した春樹にセシリアは息を呑んだ。

 

ロンドン郊外において、ブルー・ティアーズの姉妹機である『ダイヴ・トゥ・ブルー』を纏うチェルシー・ブランケットに襲撃を受けたセシリア。

其の際、彼女は国家反逆罪を認めたチェルシーに精神的ショックを受けてしまった為、自分の実力を発揮する事が出来ず窮地に陥れられてしまった。

だが、突如として漆黒を纏った()()()が現れ、其の()でチェルシーを突き刺したのである。

 

血を吐き漏らし、どんどん生気を失っていくチェルシー。

そんな彼女の頸動脈を黒騎士はトドメとばかり()で斬り裂くと共にステルス迷彩で跡形もなく一緒に掻き消えてしまったのだ。

 

其の時、セシリアは聞いていたのである。

竜を思わせる黒い黒い漆黒の鎧甲冑に身を包んだ一体の騎士から聞こえて来た()()()()()()を。

其の時、セシリアは見ていたのである。

薔薇の様に真っ赤な一つ目を輝かせる異形の黒竜が放った()()()()を。

 

―――――「そんな筈ない」

・・・と、何故か心内へ浮かび上がった()()にセシリアは蓋をする。

だって其れは()()()()()事だったからだ。何故なら其れは()()()()()()()()()事だったからだ。

 

「どうしてッ・・・・・どうして・・・どうして、どうしてどうしてッ!?

一体どうしてですの!!?」

 

変人奇人ではあるものの信用信頼に足る人物からの()()()にセシリアは悲痛な叫びを上げながら其の碧眼を潤ませつつ春樹の胸倉を掴んで持ち挙げたではないか。

けれども、日頃より理性的な彼女からは想像だに出来ぬ其の行いに春樹はギョッとしつつも口を開いた。

溜息を吐く様に。

 

「・・・君じゃあ無理じゃったからよ」

 

「ッ、む・・・無理?

無理とは一体・・・!」

 

「チェルシー・ブランケットは開発途中だったダイヴ・トゥ・ブルーを強奪し、あろう事か暴走状態となったエクスカリバーを制圧しようとしていた君達を襲撃した。

随分な実力じゃ。

さて・・・そんな専用機を纏う実力者を()()()()人間が、此の国に居ったけなぁ?

居たかぁ、貴族様達よぉ~?」

 

春樹の疑問符に円卓の貴族達は答える事はなかったが、其の代わりにセシリアが疑問符を彼へ投げ掛ける。一体どうして春樹がチェルシーの殺害に加担したのかと云う当然の疑問符を。

 

「あー・・・セシリアさんよ、君は変じゃと思わんかった訳?」

 

「な・・・何がですの?」

 

「英国招待組に専用機を()()()()()人間がいる事にじゃよ」

 

春樹の言う専用機()所持の人間とは、今の今までセシリア達と行動を共にしていた彼女と同じ英国代表候補生であるサラ・ウェルキンの事であった。

そう言われてみれば、サラは専用機を持っていないにも関わらず専用機所有者達と同じ立場に居り、今になって思えばまるで自分達を()()していた様に思えた。

 

「どうもあの女、此処に居る貴族様達の()()()だったらしくて、ちぃとばっかし()()()()したら正直に事情を教えてくれてな。

そんでもって、ウェルキン先輩を通して貴族様達に話を持ち掛けたと云う訳」

 

「話を・・・もちかけた?」

 

「セシリア・オルコット達の代わりに・・・あんた方にとって()()()なやつを()()してやろうってね。

勿論、幾らか()は付けて貰うがな」

 

其処まで言った春樹の頬がバチィーン!と横へ振り抜かれた後、其のまま彼は床へと叩き付けられた。

 

「私・・・私はッ・・・あなたを・・・・・あなたを信じていましたの・・・!

それなのに・・・・・それなのに・・・ッ!!」

 

自らの得物を展開したセシリアは床へ叩き付けた春樹に其の銃口を差し向ける。

ポロポロと美しい其の青い瞳から涙を流して。

 

「おいおいおいおいおい・・・泣きたいのはこっちの方じゃでよ!

たったの百万ポンド()()()で、快くてオメェらの不都合を取り除いてやったのに・・・こりゃあ一体どういう了見じゃ!!

あーぁ、糞垂れめ!!

テメェら英国人はやっぱり二枚舌やろうじゃ!!

祝い酒に薬なんぞ混ぜよってからに!!」

 

一方で下手人の春樹は被害者は自分だと言わんばかりに喚き散らす。

其の余りにも情けない姿に対し、今までこんな男を信じていたのかと悔しさの余り「ッ、この・・・!!」とセシリアは引き金へ指をかけた。

 

「おいおいおい待てよ、セシリア・オルコット!

俺は仮にも世界で三人といない男のIS使いじゃで?

其れを自分勝手に殺めてしまおうなんぞ・・・許される訳なかろうて!!」

 

「そ、それは・・・!」

 

得意げに「阿破破ノ破!」とあの奇天烈な笑い声を上げる春樹は、「解ったら・・・さっさと金を出せ!!」と業突張り発言をのたまわる。

しかし―――――

 

「―――・・・構わん。

オルコット卿、さっさとその匹夫を亡き者にしろ」

 

「破ッ破ッ破ッ破ッ破ッ・・・・・は?」

「え・・・!?」

 

円卓の貴族達の思わぬ発言に春樹から血の気が引き、セシリアは再び呆気にとられた表情を晒した。

 

「な・・・な、何を言よーるんなん?

英国貴族冗句は、庶民の俺にゃあさっぱりなんじゃが?

其れに俺を殺せば、日本政府が黙っちゃ―――――」

 

「ジョーク?

聞く所によれば、清瀬 春樹。

貴様は、表向きはテロ事件に巻き込まれて意識不明の状態で日本に居る事になっているのだろう?」

「なら、ここ英国であなたの殺害に至っても誰も文句は言えないのですよ。

おわかり?」

 

貴族達の言い分は尤もだった。

表向き春樹は日本の病院で治療中。

しかも彼自身、ISによる不法入国を行っている為、もし春樹の身に何かがあっても日本政府が口出しなぞ出来る筈がないのだ。

 

「大丈夫、確かに君は貴重な男性IS適正者。

その遺体は我が英国の栄光の為の礎となるのだからな。

光栄に思うと良い」

 

「ま・・・待ってくれ!

ちょっとした唯の冗談じゃ!

百万ポンドなんて欲張り過ぎた!

一万・・・千ポンドで良いよ!

いや、タダでいい!!

じゃから・・・じゃから命ばかりは!!」

 

「無駄な命乞いは結構。

多くを知り過ぎた者がどうなるか・・・さぁ、オルコット卿・・・存分に家族の仇を討ちなさい」

 

冷淡な貴族達からの言葉に更にみるみる顔が青くなる春樹は、今度はセシリアの方へ目を向ける。

 

「せ、セシリアさん!

俺が悪かった・・・悪かったでよ!!

金に目が眩んだからとはいえ―――――」

「黙りなさい・・・!」

 

命乞いも虚しくセシリアは春樹の頭へ銃口を突き付けた。

奥歯をギリリ、鼻息フゥーフゥー荒々しく、涙を目一杯溜めた蒼い瞳を差し向けると共に。

 

「あなたの・・・あなたのせいで、チェルシーは・・・・・チェルシーは!!」

「ひッ、ひぃいい―――――!!?」

 

そして、ゆっくりと指をかけたトリガーを―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――チョイと待て!

待って幸せ、待たずは不幸!!

命知らずは尚惨めってなッ!!」

『『『!!?』』』

 

銃火器の仕掛けが動く直前、部屋に居た全員の鼓膜をつんざく程の大声が響き渡る。

無論、叫びの発生源は先程まで涙を流して命乞いをしていた縮み上がって腰を抜かしていたあの春樹であった。

 

「セシリアさん、撃つ相手を間違えてるでよ」

「え・・・?」

 

先程とは打って変わり、いつもの調子で口端を吊り上げた春樹は意気揚々と円卓の貴族達へ語り掛ける。

 

「貴族の皆様ヨ。

此の憐れな田舎モンの今わの際の質問に答えちゃもらえんか?」

 

「フン・・・いいだろう。

覚悟を決めた男の問いかけだ、答えてやろう。

何かな?」

 

「なーに簡単な事じゃ!

・・・セシリアさんの親父さん達を()()()時もこういう風にやったんか?」

 

コテンと首を傾げた春樹の両眼からは、金の焔が漏れ出ていた。

此の時、円卓の貴族達は不思議な感覚に陥った。

情けない不様な姿を惜しげもなく晒していた此れから頭をブチ抜かれる跪いた男にゾッと背筋が凍ったのだ。

 

「は・・・春樹さん・・・あなた、何を言って・・・!?」

 

「其のまんまの意味じゃで、セシリアさん。

此の椅子に座って踏ん反り返ってる連中が、君の家族の本当の仇じゃ。

そうじゃろう?

なぁ、おい?」

 

今すぐにでも自分へ訪れる『死』の存在に対して、気でも触れたのかとセシリアは眉をひそめる。

しかし、彼女は知っている。

目の前に此の男が獰猛な()()の様な表情をしている時、其れは相手を喰らう()()だと云う事を。

 

「ッ、気でも触れたか!?」

 

「破ッ破ッ破!

解ってないねぇ、()()俺に正気を求めるんか?

生憎と俺ぁ正気よ、お貴族様!」

 

カラカラと毒蛇の様に笑う男に貴族達は訝し気な表情をするが、そんな彼等彼女等を余所に春樹はツラツラと言葉を連ねた。

 

「セシリアさんの御両親は、将来のセシリアさんの力とする為にブランケット姉妹を引き取った。

其ん時、チェルシーさんの妹で当時重度の心臓病を患っとったエクシアさんへISコアを用いた生体融合措置を施したんじゃ」

 

「将来の私の為?

どうして・・・父や母がそんな事を?」

 

「そんなん親父さん達が、此処に居る円卓の貴族達の組織に所属しとったからじゃよ」

 

「え・・・!?」

 

次々と明かされる衝撃の事実にセシリアの呆然顔が、余すところなく大盤振る舞いで晒される。

彼の話によれば、オルコット家の家督はセシリアの母君であり、父君はうだつの上がらない婿殿だったのだが、其れは表向きで本当のセシリアの父君は英国王室に仕えるやり手のエージェントだったと云う。

 

「じゃけど、エクシアさんの為のISコアを入手する際、セシリアの親父さんは余計な事に気付いてしもうた」

 

「余計な事?

それは一体・・・?」

 

「円卓の貴族達・・・彼等の正体にじゃ。

そうじゃよねぇ、円卓の御貴族様達?

いんや・・・ファントム・タスクは()()()()()()()の皆々様よ?!」

 

後ろ手に手錠をかけられながらも探偵作品の登場人物の様に見得を切った春樹だったのだが、名指しされた方はと云うと―――――

 

「―――フン・・・何を言うかと思えば、でたらめな事を・・・ッ!」

「最後の最後にいう事が、なんとも気の振れた戯言だ。

そう言う事は証拠を出してから言うのだな!!」

「何をやっているオルコット卿。

よもや、その匹夫の世迷言を信じる訳ではあるまいな?」

 

「春樹さん・・・!」

 

勿論、円卓の貴族達は春樹の話を狂人の戯言と否定し、セシリアに彼の処刑を再度求めた。

一方のセシリアも半信半疑と云った様相で、訝し気に春樹を見る。

だが、此れも蟒蛇の()()()であった。

 

「証拠を出せ・・・ねぇ?

ええよ、出してやろうじゃねぇか。

()()()()()ってヤツをよ」

 

「ッ、なんだと?」

 

「おい、一体いつまで見物しとるつもりじゃッ?

手前の()()が寒そうに身体を震わせとるんじゃ。

()()()()()()の一つでもかけてやんな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――・・・申し訳ありません。

あなたのあまりのギャップに呆気にとられてしまいまして」

「・・・・・え・・・?」

『『『なッ・・・!!?』』』

 

()()()()()()()声と共に自分の両肩へかけられた()()()()()()にセシリアはハッと四白眼で振り向く。

すると其処には―――――

 

「御嬢様・・・ご機嫌麗しゅう」

「ッ、チェ・・・チェルシー!!?」

 

ステルス迷彩を脱ぎ去って現れたのは、あの日あの場所あの時に春樹によって惨殺された筈のチェルシー・ブランケット其の人が居たのだ。

 

「チェルシーッ・・・チェルシー!

チェルシー・ブランケット!!

私のチェルシーッ!!」

 

今の今まで次々と巻き起こる想定外ばかりだったが、此の想定外はセシリアにとっては嬉しいサプライズ。

人目もはばからず彼女はチェルシーを勢い良く抱き締めた。

 

「わ、私はッ・・・私は、あなたが本当に殺されてしまったと思って!!」

 

「申し訳ございません。

ご心配をおかけしました、セシリア御嬢様。

チェルシー・ブランケット、ただいま帰参致しました」

 

主従の感動的な再会に「良かったのぉ~」と春樹は何度も何度も感慨深そうに頷いているが、気が気でない人物達が此処に居る。

 

「―――――ッ、これは一体どういう事!!?」

「チェルシー・ブランケットは、貴様の手によって亡き者になった筈!!」

「清瀬 春樹ィイッ、貴様ァアア―――――!!?」

 

目の前の不都合な事実に憤りの叫びを上げる円卓の貴族達。

春樹はそんな彼等彼女等に対し、眉を上げながら口端を耳まで裂ける程に吊り上げた。

 

「ジョセフ・ジョースターならこう言うたじゃろうな・・・「またまたやらせていただきましたァ―――ん!」ってな!!

破ッ破―――ッ!!」

 

貴族達の苦虫を嚙み潰した様な形相に春樹は御満悦で、あの奇妙な笑い声を上げると共にブチリッと後ろ手の手錠を自力で()()()()()()拍手をかます。

 

「さて、感動的再会なシーンもそこそこに本題に戻ろう。

セシリアの父君はISコアを裏ルートで手に入れた際、円卓の貴族達が座る席が亡霊に乗っ取られていた事を偶然にも知ってしまった。

そうじゃな、ブランケット嬢?」

 

「はい、そうです。

一体いつの頃からかは不明ですが、円卓の貴族の席はファントム・タスクの巣窟となっていたのです。

旦那様は心を痛めておりました。

そして、危惧しておりました。

いつか亡霊たちの魔の手が敬愛する陛下たちへ及ぶのを」

 

「じゃけど誰かれ構わず話してしまえば、多くの人間に危険が及ぶ。

じゃけん、此れを知っていた少数の人間。

セシリアさんの父君と母君・・・そしてブランケット嬢、君だ」

 

「そんな・・・!

どうして私には教えてくれなかったんですの?!」

 

「いや、教えんじゃろう。

可愛い愛娘を危険な目に遭わせたくない親心ってな」

 

「はい。

旦那様と奥様は、御嬢様を大変愛しておりました。

だから自分達に危険が迫った際、私にセシリア御嬢様を託したのです」

 

チェルシーによれば二年前、円卓の貴族達の素性を調査していたオルコット夫妻は、身の危険を感じ、セシリアを守る為に彼女との距離を決めた。

そして、其の移動中を事故に見せかけて―――――

 

「・・・貴族達は、旦那様と奥様が亡くなった事への混乱に乗じてエクシアを隠し、その時から私は御嬢様を守りながらエクシアの行方を探していました。

ですが、漸く私はエクシアの行方を掴む事になったのです!」

 

「じゃけれども貴族達も其れに気付いた。

昔、葬った筈の()が生き残ったんじゃけん気が気ではなかったろう。

そんでもって、貴族達はブランケット嬢を罠に填めて、ISを奪った国家反逆者に仕立て上げた」

 

「そこまでだ・・・!!」

 

推理を意気揚々と述べる探偵役の春樹とチェルシーに待ったをかけた円卓の貴族達。

彼等がパチンッと指を鳴らせば、部屋の出入り口からゾロゾロと武装した()()()()が雪崩れ込んで来た。

そして、ザッと一連して所持していた銃火器の銃口を彼等へ差し向けて来たではないか。

 

「ッ、な・・・なにをして!?」

 

「・・・ブランケット嬢が生きとった事が、よっぽど想定外じゃったんじゃな。

「こんな時の為に~」って感じで、漸っと本性を見せやがったな!

まぁ・・・俺の()()()()()()()にしては、ちと後手後手じゃねぇか?」

 

「え・・・ッ!?」

 

今やファントム・タスクの天敵と成り果てた春樹が、今回の聖剣奪壊作戦に関わると云う事を円卓の貴族達は危険視し、其の為に()()()()()()()()()()()だが、協力を打診して来た篠ノ之 束へ彼の排除を依頼したのである。

・・・まさか、其の依頼先が今回の一件の黒幕だったとは、円卓の貴族達も露も知らぬ事であったが。

 

「黙れ・・・!

あの気の振れた女にしても貴様にしても・・・散々っぱら我々の邪魔をしおってからに!!」

「しかも今になって、あの愚かなオルコット家の()()()が出しゃばって!

もう最早オルコット家に利用価値はないのです!!」

 

ふざけないで下さいまし!!

 

忌々しそうに小言を並べ立てる貴族達へ憤る叫びの声が轟く。

見れば、其処には奥歯をギリギリ噛み締め、三角した碧眼を()()に向けるセシリア・オルコットが自らの得物を構えているではないか。

 

「父は・・・父は決して愚かでもなければ、家名の恥でもありません!

今になって・・・今になって納得出来ました。

母が・・・お母様が、お父様をあんなにもお慕いしていたのかが!

お父様はッ・・・あなた達の様な愚劣にして下劣な賊と闘った忠臣でしたのよ!!」

 

「・・・それで?

一体どうしようと云う訳だ?」

「予想外な事はあったが、ISを纏う小娘をいなせる程の策は弄している。

それにここに居る者達の多くが、剥離剤を有しているのだ。

あとは聡明なオルコット卿だ、理解できるな?」

 

兵士達が装備していたのは、ISを装着解除させる事が可能な剥離剤と呼ばれる兵器であった。

此の状況にセシリアは「くッ・・・!!」と苦虫を嚙み潰した様な表情を晒し、悔し涙を滲ませる・・・・・のだが。

 

「・・・破ァ~あッ」

 

どういう訳か、凶器を突き付けられる筈の春樹はあくびをする。まるで眠気眼の猫の様に大きな大きな大あくび。

無論、そんな緊張感のない彼の様子は、シリアス全開の現場にはあまりにも似つかわしくなかった。

 

「・・・・・清瀬さま」

 

「阿?

あぁ、すんません。

ちぃとばっかし・・・()()が来たもんで」

 

「飽き・・・って!?

春樹さん!!」

 

「ふははははは!

こいつは傑作だ!!」

「自分達の命が風前の灯火だと言うのに・・・なんと緊張感のない!!」

 

春樹の態度に円卓の貴族達は侮蔑の笑みを浮かべ、セシリアは呆れた様にムッと顔をしかめる。

しかし、唯一人、チェルシーだけはゴクリと大きな生唾を呑み込んだ。

 

「・・・なぁ、オメェさんらは何を()()()しとん?

もう此処ァ、俺が()()しとるんじゃけど?」

 

「はぁ?

何を言っているのだ、この匹夫は?」

「もういい。

さっさと撃ち殺せ!!」

 

円卓の貴族達の号令によって、兵士達は自分達の持った銃火器の引き金を絞った。

―――――・・・号令をかけた筈の仕える主人達に向かって。

 

バァッン!

「ッ、ギャぁあ”!!?

 

『『『ッ!!?』』』

 

脚に鉛玉を喰らった円卓の貴族の一人が、突然襲って来たあまりの激痛で椅子から転げ落ちる。

まさかの状況に其の場に居た全員がギョッと表情を強張らせ、()()だと思っていた、()だと思っていた兵士の顔を全員が其の時()()()注視した。

 

「・・・・・あー・・・」

 

するとどうだろう。

得物を持った屈強そうな全て兵士が全員共に無表情で、虚ろな目と共に涎を垂らす者までおり、其の表情は()()している事に()()()()()()()かの様ではないか。

 

「―――――・・・『鏡花水月』って知っとる?」

 

衝撃が疾走する中、静寂に包まれた現場へ木魂したのは春樹の疑問符。

其の?マークに釣られ、其の場に居た全員が彼の方へ視線を移した。

 

「四字熟語で、儚い幻って事を表すらしいんじゃけどさぁ・・・俺的には、『藍染 惣右介』の斬魄刀なんじゃよねぇん」

 

「な・・・何を言って、いるんだ?」

 

「阿ッ、やっぱし英国貴族様にゃあ『BLEACH』ネタは解らんか。

いやなぁ・・・オメェさんらに命を狙われて死にかけた時にさ、ちょっと実行犯のIS能力を()()()()機会があってな。

其れを応用した感じ・・・って、言やぁええかな?」

 

「ぶんどる・・・?

応用・・・?

何を言って・・・そもそも貴様は今、ISを―――――」

「おぉッ、ちょい待ちちょい待ち!」

 

動揺する貴族を抑え込んで、春樹は一つ咳払いをする。

そして、「()()を言う機会があったんじゃなぁ」と少し照れ臭そうな表情の後、キメ顔をした。

 

「一体いつから────・・・ISを遣っていないと()()していた?」

 

「え!?」

「なん・・・だと・・・・・ッ!!?」

 

そんな驚愕の顔をアリアリと晒す皆に満足したのか、春樹はうんうんと口の両端を吊り上がらせたまま何度も頷く。

 

「ッ、ば・・・馬鹿な!?

貴様のISは、酒で貴様が眠っている間に・・・!!」

 

「あぁ、あぁ・・・其の時点で能力を使ってんのよ。

其れを証拠に・・・ホレ!」

 

未だ目の前の状況が信じられない貴族に向かって、春樹は自分の左手薬指を見せる。

さすれば其処には大粒の()()が嵌められた指輪・・・彼の専用機たる待機状態のISが輝いていた。

 

「『ワールドパージ』・・・此の能力は対象者を外界と遮断し、精神に影響を与えるもんじゃ。

本来は、仮想空間では相手の精神に直接干渉する事が普通なんじゃが・・・俺は此れを現実世界に特化させた。

速い話が、()()特化よ!

つまりは・・・・・」

 

春樹が手を掲げれば、ジャキッと兵士達は銃口を円卓の貴族達へ突き付ける。

形勢逆転・・・いや、最初から此の場は彼の掌の上であったのだ。

 

「さて・・・さて、さてさてさてさて?」

「は、春樹さん・・・?」

 

すっかり最初とは状況が変わってしまった状況に対し、春樹は未だ理解が追い付いていなさそうなセシリアの肩を叩くとニッコリ()()の様な笑みを浮かべて問いかけた。

「どうする?」・・・と。

 

「ど・・・どう、するとは?」

 

「んもうぉ、惚けちゃってぇ・・・・・やれッ」

 

合図と共にバァッン!と響いた銃声。

そして―――――

 

「―――ぎぃいい!!?

 

逃亡を謀ろうとした一人の円卓の貴族メンバーの絶叫が部屋中に響き渡る。

此れによって益々増々貴族達の顔は青褪めてしまい、顔面蒼白の例題とも云える状態となった。

 

「・・・・・M()r().清瀬 春樹、君の要望を受け入れよう。

百万・・・いや、二百万ポンドでどうだ?」

 

自分達が窮地に立たされた事を漸く理解したのか。春樹の提示した金額よりも倍の報酬を貴族達は持ち掛ける。

だが、彼等彼女等の本性を知ってしまった此の男がそう易々と首を縦に振るだろうか?

 

「おい・・・・・おいおい・・・おいおいおいおいおい!

人ってのは、こんなにも綺麗に掌返しするもんかね?

ツーかよぉ・・・俺よりも交渉する相手がいるんじゃねぇの?

なぁ、セシリアさんよ?」

 

「・・・・・」

 

春樹はセシリアの脇腹を肘でつっつくが、彼女は拳を固く握ったまま俯いて無言を貫く。

 

「お、オルコット卿!

私は君の御父上や御母上の暗殺には関わってはいない!!」

「ッ、何を言うか!

今になって自分だけ助かろう等とは!!」

「黙れ!!」

 

円卓の貴族達は彼女がだんまりなのを良い事に自分だけは助かろうと言い訳を並べ立て始めた。

やれ「オルコット夫妻の暗殺には関わっていない!」だの。

やれ「我々が居なくなれば、英国は崩壊する!」だの。

やれ「私には、家族がいる!」だの。

・・・と、どうにかしてセシリアからの恩情を預かろうと必死になり、今までしがみ付いていた椅子から転がり落ちて彼女へすがる様に駆け寄ろうとした。

 

「さがれ、()()ども!!」

『『『!?』』』

 

けれども、すかさずセシリアの前へ割り込んだチェルシーが迫り来る彼等彼女等を一喝し、主人に近付かせまいと刃を向ける。

それでも貴族達は叫んだ。

「助けてくれ!」と。

「命ばかりは!!」と。

「何でもするから助けてくれ!!」と、跪いて懇願した。

 

「・・・・・醜いですわね」

 

部屋に入った当初、貴族達は椅子の上で踏ん反り返っていた。

ところが、今では自分に掌を組んで祈る様に命乞いをしている。

セシリアは心底悔やむが如く下唇を噛み締めた。

こんな人間の為に自分は命を張っていたのかと。

こんな人間達が自分の愛する家族を奪ったのかと。

噛み締めた下唇からは血が滲む。

 

「―――――・・・あぁ、此れが人間じゃ

 

そんな憤る貴族令嬢の両肩を背後から掴んだのは、此の場を支配する人の形をした()()だった。

 

『結果には原因があり、行いには報いがある』

もっと直接的な事を言えば・・・・・『復讐するは、()にあり』じゃな

 

怪物は、金色の焔が燃える()()()()を彼女へ向けながら優しく語り掛ける。

すると先程まで震えていたセシリアの身体は治まり、呼吸は正常に戻り、固く握られていた拳が緩んだ。

 

「・・・・・・・・春樹さん」

 

「ん?

どした?」

 

「私の・・・・・私からのお願いがあります」

 

「・・・・・()()()()かもしれんで?」

 

「かまいません。

それでも・・・よろしいでしょうか?」

 

「・・・ええよ。

俺ぁ何をすりゃあええ?」

 

セシリアは全てではないが、少しながらも()()()()()

自分を背後から包む様に佇む男が、どれ程迄に優しく()()()()のかを。

熱血にして冷血にして冷酷にして残虐非道にして慈悲深い残酷な人間なのかを少しばかり知っている。

 

其れ故に彼女は、此の男に頼んだ。

自分には()()()()からだ。

 

「彼らを・・・・・彼らに・・・()()()()()事を()()させてください・・・!!」

「阿破破ノ破ッ・・・承知致したでよ、我が()()!」

 

奇妙で奇天烈な笑い声を上げた後、春樹はゆっくりとチェルシーの前へ割り込むと円卓の貴族達へ語り掛けた。

 

「オルコット卿は、憤っておられる。

しかしながら彼女は慈悲深く、お優しい御方・・・故に命だけは御救い下さるとの決定じゃ」

 

「ッ、そんな!?

御嬢様!!」

 

春樹の文言にチェルシーは不満の短い言葉を述べるが、『『『おおッ!!』』』と円卓の貴族達は助かった助かったと喜びの声を上げ、セシリアへ感謝の言葉を放つ者も居る。

・・・・・だが―――――

 

「・・・何か勘違いしていないか、外道共?

オルコット卿は、命()()は助けてやると言うたんじゃ」

 

円卓の貴族達は春樹の言っている事が理解できず、頭へ疑問符を浮かべるばかり。

此れに彼は大きな大きな溜息を漏らすとニッカリ口端を大きく吊り上げた。

 

「命()()は助けてやる。

つまりは・・・其れ以外は()()()()()()云う事じゃ」

『『『!!?』』』

 

其処で漸く貴族達は気付くに至る。

自分達は最初から()()()()為に集められたのだと。

 

「うッ・・・うわぁあああああ!!?」

 

恐怖の余り一人の貴族が逃げた。

ところが彼の動きはすぐに止められた。

銃弾によって?

いやいや、違う。

 

ズブシュッ!

はびゅッ!?」

 

『『『ひッ・・・!?』』』

 

春樹から伸ばされた蛸の様な()()が其の頭部を貫き、中身・・・つまりは脳に()()が張り付く。

すると脳に侵入を許した貴族の表情は、催眠状態の兵士達と同じ様に無表情なものと変わり果てた。

 

身体が恐怖で凍り付いた事であろう。

其れはきっと自分の身に此れから起こるであろう()()行為に涙を流し、鼻水を垂らし、涎を溢れさせ、失禁した。

 

「・・・我が名は、清瀬 春樹

我が()()、セシリア・オルコットの両親の無念と魂の安らぎの為に。

誠に勝手ながら仇を果たさせてもらう

 

―――――・・・彼等彼女等の()()が此れから始まる。

 

『『『ぎぃァあ”あ”あ”あ”あ”ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ”ああああああああああああああああああああああああ”あ”あ”あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ”あ”ああああああああああああああああああああああああああああああああああ”あ”あ”ああああああ―――――ッ!!』』』

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆

…ワンサマー氏と和解すべきだと思う人ー?

  • はーい!!(^^)/
  • えー!?(・_・;)
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