実写版ゴールデンカムイ・・・まさかとは思っていましたが、面白かった!!
あと、今回一万字を大きく超えています。
インフィニット・ストラトスの纏い手達が集結したU-18大会『ヴァルキリー・アプレンティス』。
其の開催国であるオーストラリア現地時刻午後三時未明において、大会史上最大の下剋上が巻き起こった。
大会優勝最有力候補と評されていたスペイン代表候補生のセリーヌ・アルバ・デ・エスコバルがDブロック第三試合において敗退を喫したのだ。
そんな連覇を狙っていた前大会チャンピオンであるエースパイロット級の腕を持つ彼女を屠ったのは、これまた今大会大注目株の一人にして大会出場者で
・・・しかし、いくら注目されているとは言っても日本政府からの公式情報ではISに関わって一年も経過していない素人。
其の為、現地へ赴いていた多くの観客達や
しかも試合は
掌返しを決め込んだ各国の記者達は、どうにかして勝利者のコメントを貰わんと春樹が居る控室前へ一目散でワラワラと詰めかけた。
此の状況に対し、試合終わりで呑気に寛いでいた春樹を含めたIS統合対策部サイドには寝耳に水の出来事であったのだが、暴徒の様に騒ぐ記者達を鎮める為、緊急で勝利者会見を開く事となってしまう。
「おい、まだかよ?」
「もうすぐだとさ」
ガヤガヤと急遽設けられたパイプ席はあっという間に満席となり、記者達はカメラやボイスレコーダーを構えて今か今かと主役の登場を待った。
・・・すると奥から不機嫌に奥歯を鳴らしつつ噂の注目選手が現れる。
遂に姿を現した春樹の姿に集まった記者達やテレビクルー達は目を見張った。
何故なら自分達の前へ現れ出でた彼は、あの周囲を威圧するかの様な
此の白髪金眼四ツ目で着物袴姿の春樹の登場により、其の場の空気は唾を飲む音が聞こえるほどの静寂に包まれた。
其処で漸く彼等は直感したのだ。目の前の人物が、自分達が思っている以上にとんでもない
「―――――さて・・・こうして集まった皆さんには申し訳ありませんが、元々
・・・ですが、
御足労頂きありがとうございます」
けれども、そんな只ならぬ雰囲気を放つ人物の口から語られたのは、随分と皮肉のこもった嫌味ったらしい口上。
春樹が一筋縄ではいかぬ人物である事をまざまざと現す言葉の節々に苛立ちがある事を隠す気配もない横柄な態度に対して眉をひそめる者も居たが、元はと言えば彼の予定を鑑みずに砂糖に群がる蟻んこの様に詰めかけたメディア連中に非がある。
しかも時間の関係で質問できる回数は少ない。もし此処で要らぬ事や態度をとれば、春樹がへそを曲げてさっさと立ち去ってしまうだろうと
「そ・・・それでは清瀬選手に質問です!
一回戦を終えた今の率直な感想を教えてください!」
日和見を決めた記者達は、彼の癪に障らぬ程度の当たり障りのない質問を投げかける。
すると此れが功を奏したのか、春樹は淡々と答えていった。
「まぁ・・・ひとえに云ってしまえば、今はホッとしています。
此方としては、まさか初戦からラスボスクラスと相対する等とは思ってもみなかったので。
本当に・・・
しかし、其のせいで貴方方の仕事に多少なりとも
淡々と述べた春樹の文言に記者達は「は、はは・・・ッ」と苦笑いを浮かべ、近くで彼の応対を見ていたIS統合部の技術者達は「おいおい、大丈夫かよ!?」と気が気ではない様子だ。
「―――・・・「運が良かった」?
っは・・・心にもねぇ事言いやがって。
・・・唯一人、芹沢だけはシタリ顔で此の様子を見ていたが。
「清瀬選手、やはり目標は大会優勝でしょうか?」
「まぁ、目標は高ければ高い程に良いでしょう。
ですが、今大会は今大会は世界中の猛者が集っていますので・・・一筋縄ではいかないでしょうねぇ?」
「清瀬選手!
どうして今大会に出場しようと思ったのでしょうか?」
「IS委員会より招待状が届いたからです。
其れに・・・そろそろ自分の実力が何処まで此の世界で通用するか興味があったので」
更に次々と投げられる記者達からの質問に飄々淡々と答える春樹だったのだが、どうも言葉尻を濁す様な受け答えが見受けられる。
そんな彼の刺激のない毒にも薬にもならぬ応対に痺れを切らしたのか、ある一人の記者が立ち上がった。
「清瀬選手にお聞きします。
先のエスコバル選手との試合・・・あなたは
「・・・・・・・・阿?」
其の問い掛けに対し、今まで飄々としていた春樹の声色に若干だが変化が見られた。
此の彼の反応に記者は心の中でほくそ笑めば、会場へ静かなれども確かな動揺がザワザワ奔る走る。
確かにISを纏ってはいても男女が相対して公式の場で模擬戦闘を行い、其れでいて男の方が勝者になった事は世界的に見ても衝撃的な事実であった。
此の以下の事を
「いくらISによる試合だったとしても相手は、エスコバル選手は
にも拘らず、あなたは彼女の頭へ躊躇なくカタナを振り下ろすどころか、更に追撃まで行った!
これは
それに・・・なんですか、その仮面は?
ここはお遊戯会の一幕ではないのです!
今すぐにそんな
記者は春樹を糾弾するかの様に言葉尻を強くした疑問符を叩き付けるが如く投げ付けた。
けれども此の質問は他の記者達もしたかった問いかけであった為、日和見を決めた記者達には口惜しい事であったろう。
・・・だが、此の質問が春樹の
すると―――――
「・・・・・申し訳ない。
貴女からの質問を出来るだけ正確に答えたいので、質問を質問で返す無礼を許して下さい。
さっきの質問ですが、其れは彼女・・・セリーナ・アルバ・デ・エスコバル選手が、
「は・・・ッ!?」
春樹は少し首を傾げた後、そう不思議そうに疑問符を投げ返す。
其のまさかの質問返しに会場は騒然とし、彼に不躾な問いかけを投げ掛けた記者はクワッと目を丸くした。
「ッ、な・・・何を言って・・・!?
エスコバル選手に対して、あまりにも失礼ではないですか!
彼女は前大会チャンピオンなのですよ!!」
「えぇ、そうです。
将来の国家代表間違いなしと言われる程の実力を有したエースパイロットですよね。
・・・でも、おかしくないですか?」
「なにがですか!?」
「いえ・・・そんな実力のあるエースパイロット相手にISを触って一年も経ってない様な
春樹の発言に対し、更にザワザワと会場へ動揺が走る。
しかし、彼の放った言葉はもっともではなかろうか。
春樹の言う通り、
「で・・・ですがッ・・・ですが、エスコバル選手は女性なのですよ!」
「其れって関係ありますかね?
そりゃあどっちも生身で棍棒持って殴り合うんだったら多少なりとも男女の力の差は出るでしょうね。
ですが、試合では私と彼女は互いにISを纏っていた。
力の差は少なくとも五分五分で、更に言えばあの重火器による超火力集中型一斉攻撃が出来る腕を持ったパイロットは中々いない。
間違いなく、セリーナ・アルバ・デ・エスコバルと云う人は超一流の
そんな猛者相手からの攻撃に私は全力で応えただけです。
にも拘わらず・・・・・どうしてそんな彼女が
「失礼なのはどちらか?」・・・と、再び問い掛けた春樹の疑問符と共に会場中の怪訝な視線が一斉に記者へ注がれる。
そんな周囲からの目を向けられた為に記者は小刻みに震えながら自分の席に座ろうと・・・したのだが―――
「ちょっと待って下さい。
「・・・もう一つ?」
「云ったじゃないですか。
「何ですか、其の仮面は?」ってね?
良い機会なので、私が仮面を被っている理由を話したいと思います」
春樹は指でコツコツと金眼四ツ目の面貌の頬分を弾けば、胸に手を当ててゆっくり一呼吸した。
「・・・此の異形の仮面は、自分自身と私の家族を
「自分と家族を・・・守る?」
「はい。
えーと・・・皆様は御存知ですかね?
我が日本が世界に誇るトップ・オブ・トップエースパイロットにして世界最強の二つ名ブリュンヒルデの名を有する織斑 千冬選手が、モンドグロッソ連覇を
またしても会場はザワザワッと騒然となる。
最強のISパイロットの呼び声高い織斑 千冬が連覇確実と評されたモンドグロッソ決勝戦おいて、彼女が急遽辞退した事は誰しもが知る程に有名な事件だ。
けれども何故に千冬は決勝戦開始間近で辞退したのか?
理由を明かすならば、当時、彼女の弟たる一夏が何者かによって誘拐された為である。
今でこそ世界初の男性IS適正者として名を馳せて居る織斑 一夏であるが、其れ以前は世界最強のIS使いブリュンヒルデのイケメン弟としてメディアへの露出があった。
ブリュンヒルデの身内である事と顔が割れていた為に一夏は謎の勢力に攫われてしまい、そんな彼を救う為に千冬はモンドグロッソ連覇を逃してしまった。
・・・さて此の一件、一体誰に
「私にIS適正があった途端、政府のお偉いさんは私をIS学園へ半ば強制的に入学させました。
其の際、私は心無い言葉やいらぬ誹りを受けました。
私の素顔が出回っていない時点でですよ?
此れで私の顔が割れようものなら、芋づる式に私の家族が槍玉に上げられる。
・・・・・させるものか・・・ッ!」
『『『―――――ッ!!?』』』
ガンッと春樹がテーブルを叩いた瞬間、会場へビリリッと電流が奔ったかの如き衝撃が記者達やカメラマン達の身体を駆巡った。
只ならぬオーラ・・・”覇気”とも云えるが現場を支配し、皆の目は彼へ釘付けとなる。
「自分の退屈を潰す為だけに
其れを証拠に表では、神聖なISを汚す悪魔として私を非難している。己の退屈な人生の憂さ晴らしの為にね。
・・・其れ故に私は仮面を被り、顔を隠している。
ですので、不誠実と糾弾されても外す訳にはいかないのです。
解っていただけましたかね?」
春樹の放った覇気に半ば飲まれた状態で問い掛けられた疑問符に対し、記者は「は・・・はい」と返事をした後にダラリ操り糸を切られた傀儡人形の様に着席した。
「さてと・・・まだ聞く事は?」
今度は扉でもノックする様にテーブルを叩いた春樹。
だが、記者達は少々青ざめた表情で「いえ・・・もう結構です」と首を横に振るのだった。
―――◆◆◆―――
「―――なーして試合よりも記者会見で、こねーに疲れにゃあならんのじゃ・・・!」
記者会見終了後に招かれた夕食会で、春樹は一気に赤ワインを飲み干すと共に
すると空になったグラスへ血の様に赤いワインが注がれる。
そんな本日
彼こそIS関連製品で世界シェア第三位を誇る大企業デュノア社の社長たるアルベール・デュノア其の人だ。
普段ならば厳格な雰囲気を纏っている人物なのだが、どうも様子が違う。
其の表情はまるで
「まぁそうボヤくんじゃない。
折角の勝利の美酒が不味くなってしまうぞ、春樹
「そねーな事を言うてもよぉ・・・!」
「まぁまぁ、飲みなさい飲みなさい!
ワハハハハハッ!!」
クダを巻きつつも飲酒を勧められた春樹は再び一気にグラスを呷って中身を空にする。
まるで水でも飲むかの様にグビグビ、ガブガブとワインを飲む彼にアルベールは「惚れ惚れとするいい飲みっぷりだ!」と拍手をする。
・・・どうもアルベール自身もかなり酔っているのか、顔が赤い。
「ちょっと
春樹に飲ませ過ぎなんじゃないかなッ?」
「そうよ、
まだメインがこれからなのよ?」
そんな酒飲みな男共へ諫言を述べるのは、エプロンに身を包んだ美少女と美女のコンビ。
彼女等こそ、デュノア夫人ことロゼンダ・デュノアとアルベールの実子たるシャルロット・デュノアである。
「あの・・・やっぱり俺もなんか手伝いますわ!」
「いいのいいの。
勇者は明日の為に休息をとるべきよ」
「そうだよ、春樹!
君は今日とっても頑張ったんだからね。
遠慮しないでよ」
立ち上がった春樹を座らせたシャルロットは「これでもおつまみにしててよ」と彼にチーズを渡してキッチンへ戻った。
―――ここは大会会場の目と鼻の先にある超高級ホテル。
其の中でもキッチンが備え付けられているコンドミニアムタイプの一室へ宿泊しているデュノア一家の夕食会に招待された春樹は、一家から熱烈な歓迎のハグを受けた後、彼がフランス本国から態々取り寄せたヴィンテージワインを酌み交わす。
どうやら春樹を夕食に招待するにあたり、家長たるアルベールは大企業の社長でありながら余程の緊張をしていたらしく、緊張緩和の為の飲酒で既に出来上がっていた。
「ぅうッ・・・くふぅ~・・・!」
「社長・・・飲み過ぎですわぁ」
更に其処へ加えて大酒飲みのステータスに拍車のかかった春樹と同じペースで呑んだ為、デザートを出てくる前に目をぐるぐる回してソファへ沈んでしまう。
「悪いわね、春樹さん。
私たちから招待したっていうのに・・・まったくこの人ったら!」
「阿破破ッ。
別に構やぁしませんぜ、夫人?
其れに・・・随分といい顔で眠っていますしね」
大柄なアルベールをひょいと軽々ソファからベッドルームへ移動させた春樹はカラカラ笑って謙遜の言葉を並べた後、「其れでは俺ぁこれで」と自陣営に帰ろうとしたのだが―――――
「―――まぁ待ちなさい、春樹くん。
実は、あの人があなたの為に本国から取り寄せたコニャックがあるのだけど・・・どうかしら?」
ごクッ・・・と、生唾を飲む音がロゼンダには聞こえた。
しかし、春樹はぶんぶん頭を振って欲望を理性で押さえつける。
「い、いえ・・・すっかりご馳走にもなりましたし、社長が・・・アルベールさんが酔いつぶれてしまいましたし・・・ねぇ?」
彼は頬と鼻っ柱が薄紅色に色付いた血色のいい赤ら顔を横に振った。
一家の主人が酔い潰れてしまったのだから御役御免で自陣営への帰還に考えが寄っていた。
しかし―――
「(マグナムボトルの赤白ロゼを七本ずつも開けておいて、まだ自制できる余力があるなんて・・・流石ね。
でも・・・・・)ベルクルーのウイスキーもあるわよ?」
「頂きます!」
フランスのブランデー銘醸造地であるコニャック地方で製造されたと云うフレンチ・ウィスキーの名が出た途端、春樹は目の色が変えると共に思わず口端を吊り上げた。
これにはロゼンダも思わずニッコリ。心の内で「しめた!」とガッツポーズ。
彼が酒の中でもウィスキーが一番の大好物だという事を聞いていた為、予め用意したのである。
「だけど・・・ただで呑ませてあげるつもりはないわよ?
私は可愛い酔っ払いさんの傍にいてあげないといけないから・・・そうね、洗い物でも―――――」
「やらせていただきます!!」
食い気味に声を張った春樹は、足早に洗い物が集められているであろうシンクへと急いだ。
あまりの変わり身の早さに唖然としつつ溜息を吐きながらロゼンダは静かに義娘へエールを送る。
「頑張るのよッ、シャルロット!」
―――◆―――
「―――・・・のーばしたゆびをー♪
かーすめるほどぉにー♪
つかみたーい、うちゅうのはてまでもぉー♪」
「・・・ねぇ、春樹?
その歌って?」
シンクの中に溜まった洗い物を丁寧にスポンジで洗う春樹と水で泡を流した皿を拭き取るシャルロット。
傍から見れば、共に後片付けに従事する仲の良いカップルに見えない事もない。
「『涙目爆発音』っての。
マクロスδの歌よ」
「ふーん・・・初めて聞いた。
春樹ってば、洗い物の時に歌とか口ずさむんだね」
「俺って意外と歌う方でよ。
マクロスシリーズは特にかも」
「マクロスね・・・あれもマクロス?
りゅうせいにまたがっーて♪
あなたにきゅうこうかぁー♪」
「『星間飛行』な。
マクロスフロンティアの歌じゃ。
そういやぁ前にやったカラオケで歌よーたな」
「そうだよ。
ラウラと一緒に『トライアングラー』ってのも歌ったよ」
「あぁあぁ、思い出した思い出した。
美声じゃった美声じゃった。
・・・俺的にゃあ、シャルロットには『恋愛サーキュレーション』を歌ってもらいたかったけどね」
そうこうしている内に洗い物が終わると春樹は
・・・舌なめずりをしながら。
「・・・・・え?」
「「え?」じゃねーよ。
いや、あるんじゃろ?
ベルクルーのウィスキーにコニャックが。
夫人・・・ロゼンダさんがある云よーたで?
頂戴よ」
「・・・ボトルごと?」
「はぁ・・・?
うん、そうじゃけど?」
春樹は自陣営・・・自室に帰ってロゼンダから勧められた酒を一人で飲むつもりだったのか、それとも貰った酒をIS統合部の同僚仲間達と飲むつもりだったのかは定かではない。
だが、今ここで中身の詰まった二つの酒瓶を渡してしまえば、彼はすぐさまここから立ち去ってしまうだろう。
・・・させてなるものか!
「えーと・・・春樹?
ここで飲んでいかない?」
「・・・なして?」
「な・・・なんでってッ。
それは、その・・・・・そ、そう!
ここにはおつまみだってあるし!
わざわざ部屋まで帰って飲まなくてもいいでしょ?」
「いんや俺は別に・・・つまみがのーても呑めるし。
あと俺、塩舐めながら酒呑める人間じゃし」
「し、塩って・・・で、でもでも!
ボク、お酒にはお酒に合うおつまみがあった方がいいと思うんだ!
ここにはチーズだってあるし、デザートでまだ出してなかったショコラだって!!」
何とか春樹を引き留めようと早口になるシャルロット。
この彼女の説得に普段の彼ならば「何かあるのでは?」と察するに至ったのだろうが、この男は酒が絡むとIQが著しく乱高下するのだ。
そして、今回は―――――
「・・・其れもそうじゃな。
美味い酒は、美味い肴と一緒に呑んだ方が美味いもんな!」
シャルロットの文言に
これに「しめた!」と心内でニヤリほくそ笑んだシャルロットは、彼の気が変わらぬ内に春樹をソファへ座らせると甲斐甲斐しくせっせとグラスとおつまみの用意をする。
「さぁッ、どうぞ飲んで飲んで!」
ウィスキーグラスへ並々と表面張力が出来る程に注がれた歳月を感じさせる深い黄金色の液体。
本当ならウィスキーと云うものはグラスの半分が
「おッ、嬉しいねぇ!
命一杯ついでくれちゃって!!」
けれど、この
それどころか大喜びで手を叩けば、表面張力がぷっくり張ったグラスへ
「ング、んぐッ・・・カッ破ァ~~~!!」
「ど、どう?」
「アルコール特有のツンって尖った感じがない。
フルーティーで爽やかな甘みが後味に残って、花を束ねたブーケみたいな良い匂いが鼻を抜けて気持ちがええ!
美ン味いなぁ!!」
猛暑日の喉がカラッカラに乾いた時に飲む冷えた麦茶でも飲むかの様な情緒もへったくれもない飲み方でウィスキーを呑んだ春樹は、柔らかな余韻を楽しみつつシャルロットが用意したショコラを口の中へ放り込んだ。
「ッ、破破破!
うーん、チョコレートがひどく美味ぇや!
塩を舐めながら呑むんとは訳が違うわ!」
上機嫌であの奇天烈な笑い声を響かせる春樹。
そんな彼の様子にシャルロットは「・・・よかった」と柔らかな表情を浮かべた。
「・・・・・ありがとうな、シャルロット」
「え・・・?」
「今夜の晩飯・・・夕食会に呼んでくれてよ。
今日は、思った以上に疲弊してしもうた。
肉体的ってよりも精神的にな。
じゃけども、阿ぁッ・・・ちぃとばっかしじゃけど楽になったわ。
ありがとう、助かったでよ」
感謝の言葉を述べた後、再び春樹はフレンチ・ウィスキーに舌鼓を打つ。
一方で、突然の
・・・しかし、彼女の
「・・・・・春樹」
「あん?」
気を取り直したシャルロットは昂った感情を抑えつつ、ゆっくりと彼の頬へ自分の手を添えた。
酒で火照っているのか。頬のじわりとした温もりが掌へ伝わる。
「傷・・・残らなかったんだね。
よかった」
英国での一件、『エクスカリバー事件』の前に発生した『清瀬 春樹暗殺未遂事件』において、春樹は頬をビーム射撃によって焼き抉られると云う深手を負ってしまった。
だが、今の彼の頬には抉り傷はない。
「あぁ、あれな。
酷ぇ傷跡になるかもしれんかったが・・・ええように治療してくれたけぇ、綺麗さっぱりよ。
ついでに身体の方の傷跡も綺麗さっぱり
「・・・ふーん・・・・・実家、ね・・・?」
春樹の何気なく発した一言に対し、シャルロットの表情・・・正確に言えば、瞳からハイライトが消える。
彼のこの軽率な発言が癪に障ったのか。シャルロットは張り付けた笑顔のまま
「・・・そう言えば春樹。
君、ラウラにプロポーズしたんだよね?」
「阿ッ・・・!」と、春樹はこの瞬間になって漸く自分が選択を
思えば、このシャルロット・デュノアと云う美少女は狡猾と云うか、
しかも彼女だけでなく、デュノア家一家揃って清瀬 春樹と云う男に
いつかの日にアルベールが彼へ婿入りを打診する程に。
「(なんか、ぼっこう俺に酒を勧めて来た思うたけど・・・・・
歯をカチカチ鳴らしつつ、冷静に状況を整理した春樹は動揺を悟られない様に息を整えながらグラスの中身を空にする。
「応、プロポーズしたでよ」
いけしゃあしゃあと春樹は
「・・・驚かないんだね?
ボクが知ってたこと」
「別に。
シャルロット、お前がラウラちゃんと連絡を取り合ってても不思議じゃねぇからな。
想定内でよ」
「うん。
ラウラってば
イギリスでの一件が終わったあの後・・・二人して春樹の家、故郷に行ったんだよね?」
「応。
事前連絡もなしにラウラちゃんを連れて帰ったけん、母ちゃん父ちゃんにやーやこやーやこ言われたわ」
「へぇー、そうなんだ。
そう言えば、春樹の故郷って年越しに蕎麦と焼いたイワシを食べるんだって教えてもらったよ」
「じゃーじゃー。
ラウラちゃんってば、初めての焼鰯に苦戦しとったわ。
正月の餅も恐る恐る食べよーる所なんか・・・可愛かったわぁ」
「それに・・・ラウラといっぱいエッチしたんだよね?
ハイライトなしのニッコリ笑顔でとんでもない事を口にしたシャルロットに対し、春樹は思わず吹き出しそうになったが、グッと堪えてグラスを傾ける。
・・・けれども、ラウラとの所謂そう云うセンシティブな事までシャルロットが知っていると云う事は―――――
「ラウラってば、他にも教えてくれたんだよ?
特にボクがYoupi!って思ったのはね―――――」
「俺に其のつもりはない!」
シャルロットがとても上機嫌で嬉しそうに語ろうとした文言を遮る様に春樹は声を張り上げる。
そして、グラスではなく直接ウィスキーボトルを掴んで中身を傾けた。
「・・・・・・・・どうして?
ラウラは、
「許すも許さんも・・・前にも云うたと思うが、俺に其の気はないんじゃ」
春樹の酔いは一気に醒めていた。
朗らかな表情は見る影もなく、苦虫を嚙み潰したかの様に険しいものになってしまっている。
「ラウラちゃんは・・・今のあの子はちょっとした気の迷いで、そう云う事を言よーるだけじゃ。
じゃけん・・・真に受けるな」
「真に受けるよ!!」
勢い良く立ち上がったシャルロットの目の血走った事血走った事。
その四白眼で、彼女は自分の下腹部を両掌で撫でながら語り掛ける。
「春樹・・・ボク、夢を見るんだ。
ワールドパージ事件の時のさ。
ボクと春樹・・・そして、
シャルロットの口から出た二つの名前。それは彼女と春樹の間に儲けられた二人の
IS学園が外部からのハッキングによって一時的機能不全状態に陥った際、これを解決せんと当時学園に居た専用機所有者達がシステム復旧の為に電脳世界へダイヴした。
その時、彼等彼女等は見た・・・
「ッ、シャルロット・・・お前、まだ
ありゃあ幻想じゃ、現実じゃねぇんじゃ!」
「幻想?
ううん・・・あれは幻想なんかじゃないよ。
あれは
ボク・・・ボクは、少し先の未来で春樹の子供を
あれは・・・あれは未来のボク達なんだよ!!」
シャルロットは口端を吊り上げて春樹の胸倉を掴む。
だが、春樹の表情は暗い。奥歯をギリリと噛んで噛んで噛み締める。
「シャルロット・・・お前、精神科に行け。
正気じゃないでよ」
「正気じゃない?
そう、かもしれない・・・でも、ボクを
・・・思えば、彼女の人生に
自分がフランスの大会社社長の”隠し子”だと知ったのも束の間、スパイとして態々男装までしてIS学園へ強制入学させられたシャルロット。
当時、父・アルベールと義母・ロゼンダとの関係は最悪。しかも遠い異国の地で右も左もわからぬまま孤独を感じていた。
・・・丁度そんな時に出会ったのが、春樹であった。
彼は転入初日にシャルロットが男装の麗人である事を看破し、軋轢を作っていたアルベールとロゼンダとの和解の架け橋を作り、傾いていた稼業を持ち直させてくれた。
正に彼女にとって、清瀬 春樹と云う男は自分をピンチから救ってくれた”白馬の王子様”であったのだ。
「ボクはこんなにも春樹の事が好きなのに、愛してるのに・・・ねぇッ、どうして?
何者でもなかったボクを春樹は最初に受け入れてくれたのに・・・どうして拒絶するのぉ・・・!!」
悲劇のヒロイン張りに声を震わせながら涙をこぼすシャルロットは、恨み節を呟きながら愛しい彼とキスをせんと掴んだ胸倉を引き寄せる。
しかし、春樹はこれを阻止した。近づく彼女の薄紅色でぷっくりした唇を自分の手で覆って。
「・・・シャルロット・デュノア。
お前には俺よりももっと相応しい人間が居る、居る筈じゃ。
ハリー・ポッターとか、ジョルノ・ジョバーナとか、芥川 龍之介とかよぉ!
お前から見れば、俺はお前の恩人なんじゃろう。
じゃけど・・・俺はお前が思っとる高潔な人間じゃねぇんじゃ!」
「知ってるよ!
春樹は飲んだくれで、変態で、情けなくて、面倒くさがりで、スケベで、冷たい人間だよ!!」
「うぉおい!!?」
「だけど・・・だけど、ボクは春樹の事が好きなんだよ!!
ぐちぐち文句言いながらも誰かの為に傷ついて戦う君が好きなんだよ!!」
「
未だ喚くシャルロットの目を春樹は自分の目で覗き込んだ。
「もう・・・もう俺は半分以上も、もしかしたら三分の二以上も
其れでもええんか?」
その表情は正に
逆立った白髪と燃える金色の四つの瞳に加え、開かれた大口からは蛇の毒牙の様な歯が上下に伸びているのが解る。
普通の人間ならば、それも年頃の少女が一目見ただけでもで卒倒してしまいそうな
・・・ところがどっこい。
「上等だよ!!」
「ッ、こいつ・・・!!」
シャルロットは意志が宿った眼を愛しい怪物へ向けながら高らかな声を響かせる。
さすればその声がビリビリと春樹の鼓膜を震わせ、更に彼の口をへの字に歪ませた。
「ボクは・・・ボクは、ボクは春樹がいいんだよ。
誰でもない春樹がいいんだよ・・・!」
大粒の涙をこぼしながらシャルロットは懇願する。
ボロボロとこぼれた涙が床へ落ちた。
「・・・・・シャルロット、お前は
春樹は何を危惧していたのだろうか。
シャルロットが、彼女の母親と同じ
それとも可能性として
それとも―――――
「・・・
悔しい思いも、憎い思いも、苦しい思いもしたと思う」
「じゃったら・・・!!」
「だけど・・・だけどね・・・・・きっと、きっと
真っ直ぐに視線を外すことなく、シャルロットは春樹の異形の眼を見据えた。
「このッ・・・キチガイめ!
蛙の子は蛙・・・いんや、
「やめなさい!
いくらなんでも口が過ぎるわ!!」
思わず放った心無い春樹の一言を一喝する声が一つ。
振り返れば、そこにはしっかり眉間にしわを寄せたロゼンダがオロオロした表情のアルベールを連れて立っているではないか。
そんな二人の登場に「ッ、お・・・
「破ッ・・・やっぱり、窺っとったか。
大方、俺をベロベロに酔わせて
ランスロットを
春樹の言ったランスロットとエレインと云うのは、アーサー王伝説等に登場する人物達である。
ランスロットとは、言わずもがなかの有名な騎士王アーサー・ペンドラゴンが率いた円卓の騎士の一人。
一方、エレインとはカーボネックのエレインと一般的には呼ばれるペレス王の娘で、聖杯伝説のキーキャラクターだ。
さして、このエレインなる人物は、その持って生まれた美貌によって魔女の恨みを買ってしまい、酷い呪いに苦しんでいた。
そんな彼女を救ったのが、円卓騎士一の色男たるランスロットであったのだ。
勿論、自分の窮地を救ってくれた騎士にエレインは恋をしてしまうのだが・・・このランスロットなる男はあろうことか主君アーサー王の妻たるグィネヴィアに首ったけ。
そのせいもあってか、エレインの恋は悲恋になってしまう・・・と思いきや、このエレインは中々に
彼女は
因みに・・・この時エレインが身籠ったのが、後年に聖杯を見つける事となるガラハッドだ。
以下の前述を例に出しつつ春樹は糾弾すれば、二人はグッと奥歯を噛み締めた。
「ほう?
図星・・・じゃったか?
愛娘の為に随分と策を弄したもんじゃ。
最初の頃にシャルロットを邪魔もん扱いして、泥棒猫の娘と引っ叩いた親とは思えんわ!」
「やめて、春樹!
お父さんとおかあさんを悪く言うのはやめてよ!!」
「シャルロット・・・ッ」
シャルロットはデュノア夫妻と春樹の間に割って入ると二人へ怒りを向ける彼に対して声を張り上げる。
「二人は関係ない。
これは・・・これはボクの考えだよ。
春樹は、いい加減に見えて責任感があるから・・・一回でもなし崩しに関係を持てたらって!」
「尚の事余計に悪いわッ、おわんごめ!!
お前は俺を舐めとるんか!」
上下の牙を剥き出しにし、金色に燃える四つの瞳を四白眼に見開く春樹。
しかし、どうしても春樹との関係を持ちたいシャルロットは引く気はないのか、顔を突き出して一歩も動かない。
状況は膠着状態。
けれどもここで春樹はある事を思う。
「社長・・・いや、アルベールさん。
あんたは、自分の娘が配偶者の居る男の妾になってもええ云うんか?」
「え?」
「気になったんじゃ。
さっき俺が思わずシャルロットの事を貶してしもうた時、夫人・・・ロゼンダさんは隠れとったのに突然出てきて憤りを露わにした。
じゃけども一方のシャルロットはそんなのは関係なさそうな感じ。
シャルロットは、なりふり構わず俺と関係を持ちたそうじゃ。
・・・
以前、シャルロットは春樹に対して「自分は何番目でもいいから!」等と云っていたが、彼女の義母たるロゼンダは、どうもラウラから彼を
「・・・どうなんじゃッ、アルベール・デュノア!
貴様は折角打ち解けられた愛娘を恩人とは言え、俺の様な”バケモン”にくれてやるつもりか!!
云っておくが、俺はラウラちゃんを手放すつもりはない!
其れでもええんか?!」
「春樹くん、あなた!?」
春樹はしめしめと思った事だろう。
世界シェア第三位を誇る大会社の社長が自分の愛娘を婚約者がいる身でありながら「お前の娘を妾にしてやる!」等と戯言を云う男においそれとやる訳がない!・・・と、彼は考えた。
無論、ロゼンダは「あなたは何を言っているの!?」と目を三角にして更に憤りを露わにしたではないか。
「・・・・・私は娘の・・・シャルロットの幸せを願っている。
今まで娘の為に何もしてあげられなかった私に出来る事ならなんでもしよう」
「お父さん・・・」
「・・・アルベールッ」
「そうでしょう、そうでしょう」
「だから・・・私はシャルロットの意志を尊重する。
シャルロットが望むのなら・・・・・いいだろう」
「うんうん・・・・・・・・って、はい?」
「春樹くん・・・私は構わないんだ。
シャルロットも会社も君に
「何でじゃッ、ボケェエ!!」
・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆
…ワンサマー氏と和解すべきだと思う人ー?
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はーい!!(^^)/
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えー!?(・_・;)