「―――――お、おれ・・・・・おれは・・・おりは、どうしたらええんじゃぁああぁあっ!!?」
情けない声といっしょに目やら鼻やらからボロボロずるずる涙に鼻水を垂れ流す一人の
こいつはバックアップチームの酒盛りに乱入して来ただけでなく、じゃんけんに負けたせいで
しかも酷い酔いでクダを巻きつつウォッカの入った大瓶を抱えてわんわん泣きわめいて手がつけられない。
仕舞いには、この酒乱を俺に押し付けてみんな部屋から出て行っちまった。
おかげで俺は、この左党のガキとサシ呑みする羽目に・・・
「ヴぇええぁあ”ア”ァぁあ”あ”ッ!!」
「うるさいんだよ!
赤ん坊が夜泣きしてるんじゃねぇんだからさっさと寝ろよ!!」
「いやじゃあああ!
まだ・・・まだ呑むんじゃァア!!」
明日も試合があるってのにッ・・・こいつはグズりにグズッて寝ようとしない。
おまけに大事そうに抱えた大瓶を取り上げようとしてもこいつは一向に放そうとしない。
「お前、なんだよ!
折角、今日は勝てたってのに・・・負けたみてぇなツラぁしやがって!
飲むにしても酒がまずくなるだろうが!!」
「じゃ、じゃって・・・じゃって!
うぅうおぉオオオおおン!!」
どうもコイツ、試合が終わった後、うちの業務提携先のデュノア社社長から夕食に誘われたらしいんだが・・・・・どーもそこで
「・・・もういいじゃねぇか。
デュノア嬢
ボーデヴィッヒのお嬢もOKだしてんだろ?」
「ッ、この・・・おわんご!」
「おっわ!?
ば、バッカ!
酒瓶を振り回すんじゃねぇ!
危ねぇだろうが!!」
「中身もう空なんじゃ!
当たっても痛いだけじゃ!!」
「それがダメなんだろうがッ、このバカ!!
もう飲むのやめろ!
酔い過ぎだ!!」
大事な提携先で世界第三位のシェアを誇る大会社の社長が、世界に二人しかいない男性IS適正者とは言え・・・自分の娘を婚約者のいる男にやろうってんだからな。
しかも娘・・・デュノアのお嬢の方も自分は正妻じゃなくて愛人、妾の立場でいいってんだからとんでもない。
目の前のこいつと一緒で、ちょっと・・・いや、かなりイカレテやがる。
そんな狂気染みた親子のせいで、流石の
「な、なんで・・・お、おれ・・・おれなんじゃよぉ・・・!」
「そりゃ、お前がデュノアのお嬢の・・・さしてはデュノア社ならびにデュノア家の恩人だからじゃねぇの?
昔話でもあるじゃねぇか。
窮地に駆け付けたヒーローにヒロインが嫁ぐなんて話はよぉ!」
「でも・・・でも、もうおれにゃあ・・・!
もうおれにゃあ、らうらちゃんがおるんじゃよぉお!」
「だっから!
もう
「
「「
だけど実際問題、こいつが別に一夫多妻・・・ハーレムを作っても問題はないだろう。
否定するだろうが、意外とこいつに向いてる
それに・・・こいつの
特に
「もう諦めろよ。
聞けば・・・お前墓穴掘って、逃げてんじゃねぇか!」
「でも・・・でも、でもおれぇ・・・!!」
・・・煮え切らない。
たまにこいつが本当にあのファントム・タスクを何度も追い詰めた野郎なのかと疑ってしまう。
だが、これがこいつの
大酒呑みの不良で、女の事でいじける様な十代のガキンチョなんだ。
「あぁッ、ウザったらしい!
惚れさせた責任ぐらいとってみやがれってんだい!!
そんな煮え切れない態度とってるとなぁ・・・その内、おっとろしいもんが襲い掛かって来るんだからなぁ!!」
「あぁ、やめてくれぇー!!」
・・・・・なーんて事を言ってたら、本当に
フラグ建てちゃったんだな・・・うん、悪い清瀬。
新年を祝うISによるビッグ・ファイト、ヴァルキリー・アプレンティスの二日目。
Bブロック第二試合が行われている第二アリーナ会場は、前日にも増して大入り満員の大盛況。
勿論、会場に集まった群衆の目的は試合へ出場している選手の活躍だ。
その中でも多くの人間達から
「うっぷ・・・!?」
少年の名は、清瀬 春樹。
そんな言わずと知れた世にも珍しい
春樹は前日に行われた第一試合において、
一つは、新たなる時代の到来に期待する者達の目。
一つは、
特に男性IS適正者の台頭を危惧する後者は、彼の敗北を大いに期待していた。
それを知ってか知らずか、そんな彼女等の機体に応えるかの様に第二試合の対戦相手である凰 乱音は力強く握り締めた青龍偃月刀を振るいに振るう。
「てやぁあああああッ!!」
幾度となく振り下ろされた巨大な青龍刀が抉り、切り裂いてはビィイイッン!と異様な音を響かせる。
この正確無比に繰り出される怒涛の連撃に対し、耐えるかの様に春樹は「ぐッ・・・!?」と奥歯を噛み締めた。
そして、傍から見れば苦戦を強いられている彼を実況者達は捲し立てる。
≪おーっと、清瀬選手!
凰選手の猛烈な攻撃に反応できていないのか、一方的な展開だァア!!
それでも尚、攻撃の手を緩めない凰選手!
いつまで彼女の攻撃に耐えられるのか・・・見ものですね、ルーシィさん?≫
≪そうですねぇ。
やはり、一回戦のあの結果は
ですが・・・おかしい事があります≫
≪おかしい事?
それはなんでしょうか、ルーシィさん?≫
≪凰選手による猛攻を受けている筈の清瀬選手が纏うISのシールドエネルギーゲージが少しも
これは機器計器に異常が発生したのではないでしょうか?≫
解説者のこの発言に「ハッ・・・どこに目をつけてやがる」とシタリ片口端を上げる者が一人。
現在進行形で檜舞台の上で大立ち回りを演ずる春樹と同じ様に
彼はエチケット袋とミネラルウォーターを手に試合会場を見ていた。
「SEゲージが減ってないのは、単純に清瀬の野郎へあのお嬢ちゃん攻撃が
決して計器の故障なんかじゃねぇ!!
あんにゃろう、器用に
「流石は我らが刃!!
俺たちに出来ないことを平然とやってのける!
昨日、あんだけ呑んだくれてたとは思えねぇや!!」
吐き気と頭痛と目の前の事象に興奮するIS統合対策部技術班達だったが、芹沢には腑に落ちない点があった。
「・・・・・あいつ、二日酔いとストレスで
―――◆―――
「せぇええい!」
「・・・おぅえっ」
処刑執行人の振るう処刑斧の如き乱音の青龍刀が、燕が空を自由に飛ぶ様な勢いと共に幾度となく振り下ろす。
しかし、直撃すれば只では済まない彼女から放たれる全ての攻撃を春樹は
そのまるで「当たらなければ、どうという事はない」と言いたげな鉄仮面が、乱音の癪に障る事触る事。
彼女はギリギリ奥歯を噛み締めると今度は戦い方に変化を見せた。
「喰らいなさいよ!!」
甲尾と呼称する下半身から生えた三本の尾っぽの様な武装、その三叉に別れた先端へ一本一本搭載された銃火器がズガガガッ!と火を噴く。
流石の春樹でも振るえば刃が届く至近距離から発射された鉛玉の全てを弾いたり、回避するのは難しかったのか。
いくつかの弾丸が彼の纏う白鎧へ傷を負わせる。
「これでぇえ!!」
「おっとッ!?」
銃撃に怯んだ春樹へ目掛け、乱音は己が青龍刀をこれでもかこれでもかと力一杯振り下ろせば、ガァアッン!と鉄塊を打ち砕く音が響き渡ると共に白鎧を纏った
『『『―――ワァアアアアアアアッ!!』』』
この墜落によって観客席から大歓声が巻き起こる。
多くの人間が勝負は決したと思い、解説席からは乱音が勝利確定を伝えるアナウンスが流れた。
―――――・・・だが!
「フゥ・・・フゥ・・・フゥッ・・・!」
自陣営のバックアップチームの喜びの声が通信インカムから聞こえているにも関わらず、乱音はキッと目を三角にして対戦相手が落ちていった方へ自分の得物を構える。
「ッ・・・なにが・・・なにがッ、
あんだけ余裕ぶっておいて・・・まさか、このままオダブツなんて事はないでしょうね?!」
乱音は八重歯を剥き出しにして吠えた。
さながら「やんのかぁ~!?」と毛を逆立たせる猫の様であり、彼女の容姿と相まってその何処となく可愛らしい姿に沸くISファンも居る始末。
けれどもこの
凰 乱音なる人物は、大会出場者の中でも指折りの実力者だ。
その高いIS適正と戦闘力から台湾自治政府の中国対抗策として飛び級で代表候補生に選抜される程である。
そんな実力者である彼女だからこそ現在進行形で相対している目の前の男の
優勝候補筆頭格と評されていたスペイン代表候補生と対戦し、見事に勝利した春樹をニュース番組の辛口コメンテーターと同じ様に乱音も
性別が男性というだけで、世にも珍しい男性IS適正者というだけで、専用機と日本代表候補生の地位を授与された
どうせ周囲の
どうせ・・・男なんて。
「こんなものなの!?
あんたの実力なんてやっぱりこんなものだったの?!
・・・違うでしょ?」
・・・違う。
目の前の男は、自分を「子猫」と揶揄う男は、とても自分の人知では計り知れない
幾つか数える程の手合わせで何が解るかと疑問を投げかけたいが、乱音は今まで何度も助けて来てくれた自分自身の
すると―――――
「―――うぇっほ・・・ゲホゲホ・・・ッ!
阿ー・・・今日はホントに朝から最低最悪って感じじゃわぁ。
頭は痛ぇし、気持ち悪ぅて何度も吐いちまうし」
ぶらぶら片手を払いながら首をコキコキッ回して土煙の中から現れた長烏帽子形兜と白糸縅二枚胴具足を纏った一人の男。
≪おーっと!
もはやこれまでかと思われていた清瀬選手が起き上がって来たぁ!!
しぶといッ、これはしぶとい!!≫
≪ですが、これは起き上がらなかった方がよかったのかもしれませんよ?
力の差は今見た通り
外野がなんやかんや言っているが、彼はまるで気にせずに何事もなかったかの様に溜息にも似た声を呟いて、グーッと気持ち良さそうに伸びをした。
「じゃけども・・・やっと?
漸っと
もうええじゃろ?」
「・・・・・なにがよ?」
「ほれ・・・君もさっき言よーたがん。
こっからは、ハンデなしでやってやらぁな」
春樹の発言にピキッ・・・と、再び額に青筋浮かべた乱音は自分を落ち着かせるように溜息を「ふー・・・!」と吐けば―――――
「上等!
跡形もなく消し飛ばしてあげる!!」
竜の頭部を模した武装『龍咆・単式』の砲口へエネルギーを収束させていくではないか。
この龍咆・単式は、春樹の学友であり中国代表候補生である凰 鈴音の纏う専用IS、甲龍に搭載されている龍咆を量産型にしたもので、空間自体に圧力をかけて、その衝撃を砲弾として打ち出す衝撃砲である。
「ふっっ・・・飛べぇええッ!!」
乱音は湧き上がってくる衝動を吐き出す様にボグォオオ―――ン!と春樹へ目掛けて特大の衝撃弾頭を発射。
その威力たるや当たれば確実に並みのISならばダメージレベルCランクまで陥れる事が出来るだろう。
「よっしゃ・・・琥珀ちゃん。
音楽頼める?」
〈いいけど・・・そのゲロ袋どうするの?〉
「大丈夫・・・使い方ならいくらでもあるけん」
〈うっわ、悪い顔。
いいわ、何にする?〉
「うーん・・・そうじゃのぉ。
じゃあ、気分を上げて・・・『ゴジラ』テーマで!」
何故か春樹は余裕綽々で持っていた納刀状態の三尺太刀を腰へと佩き直すと仁王立ちの構えをとる。
回避行動をしないこの自殺行為ともとれる動きを見て、解説席に座る口喧しい連中は「潔く負けを認めるのか!」だの「これぞ日本男児!」だのと戯言を並べた。
しかし、彼らは・・・世界は春樹の真の実力を見る事となるのだ。
「ヴ”ェえ”え”ろろろろごうろろろあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ッあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”―――――ッ!!」
『『『ッ―――!!?!??!!』』』
ビリビリ鼓膜をつんざき切り裂くかの如く、アリーナ全体を打ち震わせるかの様に轟響いた一喝の咆哮は、周囲へ幾台もあるカメラレンズにヒビを入れると共に一直線で春樹へ向かって突き進んでいた不可視の砲弾を胡散霧消に
「・・・・・・・・・・・・・・・へ・・・?」
乱音は滑稽とも受け取れる随分と間の抜けた声を呟いた。
目の前で一体何が起こったのか理解不能な状況なのだが、そんな刹那のフリーズに陥った彼女へすぐに
ゾォオオオオオ―――オオオッン!!
「ッ、きゃぁあああああ!!?」
不可視の砲弾を打ち消した
彼女はそのあまりの威力に体勢を崩されてしまい、まるで川底の小石の様にゴロゴロと転がった。
「―――・・・ッ、な・・・なにが起こったの・・・!?」
自分の身体が何処にあるのかわからない程に上下左右激しく振り回された乱音。
漸く濁流から解放された彼女が目を覚ました時、最初に見たのは―――――
「ふしゅるるぅう・・・ッ」
「う・・・うそでしょ・・・!?」
―――獣の様な唸り声を上げ、朱塗りの鞘から
「・・・・・おい?」
皆が唖然と静観する中、鬼武者・・・春樹は抜刀した三尺太刀を肩へ担ぎつつ乱音へ語り掛ける。
静かなれども鬼気迫る表情(?)で疑問符を投げかけられた事に彼女はビクッと体を震わせた。
「何しょーるんなん?
いつまでも尻餅ついとらんで、早う立ちんさいや」
「・・・・・あッ・・・!?」
春樹に言われて敵前でありながら自分が
「ッ、ちょ・・・ちょっと・・・!?」
しかし、
会場場所が南半球の季節は夏であり、冷房が効きすぎて寒い訳でもないのに諤々ガクガクがくがく足が震えて力が入らない。
そんな彼女の様子に春樹は短い溜息を一つ吐くと担いだ太刀を下ろした。
「阿~っと・・・手貸しちゃろうかぁ?」
「い・・・いいわよ、別に!
す、すぐに立つから・・・待ってなさい!!」
青龍刀を杖にして立ち上がった乱音に春樹はいつか見たネイチャー系番組に出て来た生まれたばかりの小鹿の面影を見た。
「ハァ・・・ハァッ・・・!
ま、待たせたわね!」
「ホントじゃわ。
いつまで待たせるんよ?
此処が戦場じゃったらもうとっくにヤラレとるで?
良かったなぁ・・・此処が
ニタニタと憎まれ口を叩く春樹に乱音はギリリ奥歯を噛み締める。
これではすっかり掌の上でいいように転がされる
「で、でも・・・アンタ、自分が千載一遇のチャンスを無駄にした事に気付いてんの?」
「・・・阿?」
「ここまでこのアタシをコケにした男はいないわ!
ここからは本気でいくから覚悟しなさい!
もうアンタに勝ち目はなんてないのよ!!」
それでも負けず嫌いの乱音はキリッと目を三角に口端を吊り上げて強気な発言をする。
すると春樹は少しだけ首を傾げた後―――――
「・・・・・破ッ、破破・・・破破破ッ!
阿破破破破破ッ!
阿―――ッ破ッ破ッ破ッ破ッ破ッ!!」
大いに大いに・・・実に大いにゲラゲラけらけらと自分の顔を片手で覆いつつあの奇天烈な笑い声を上げた。
その笑い声は舞台はおろか、未だキンキン耳鳴りがする者がいる観客席まで聞こえて来たではないか。
≪こ・・・ここ、これは・・・これはいったいどういう事なんでしょうか、ルーシィさん?≫
≪な、なんなの・・・なんなのよ、あの男は・・・!!≫
不気味に恐ろしく怖ろしく悍ましく愉快そうに不愉快な笑い声を響かせる男へ皆の注目が集まるのは自然な事だった。
ゴクりと生唾を飲む者が居た。
目を四白眼に見開く者が居た。
口端を吊り上げる者が居た。
手を組んで祈る者が居た。
それは現場となっている会場に居る者達ばかりではない。
蜘蛛の巣が張ったカメラレンズの向こう側に居る視聴者も同様であった。
老いも若きも幼きも男も女も誰しもが上下の
「―――――コケにしてんのは、ソッチじゃろうがな」
突然笑い出した春樹は、これまた突然笑う事を止めた途端、打って変わって口元をへの字に
金眼四ツ目の装飾のある仮面を被っていながらも彼の機嫌が酷く悪いのは明白であり、体からムワりと異様な雰囲気が漂う。
「は・・・はぁ?
アンタ、何言って・・・?」
「どいつもこいつも舐め腐りよってからに・・・!
そいでそねーな大口叩く割に大した力もやっちゅーもねぇヤツらばっかりじゃ!」
方言丸出しで喋る春樹の言葉が理解できない乱音は怪訝な表情をするが、何か彼が仕掛けて来る事は理解出来た。
それならば―――――
「(先手必勝!
一気にかたをつけてあげる!!)」
乱音はゆっくりと青龍刀を構え、未だ震えが残る足へ無理矢理に力を込めた。
そして、話に夢中な春樹へ目掛けて一気にスラスターを噴かす瞬時加速を行ったのだ。
「―――なめんじゃないわよ!!」
相手との間合いを文字通り瞬時に詰める事が可能な速度と共に振り上げられた青龍刀。
彼女はそれを春樹の脳天目掛けて一気に振り下ろせば、ズドォオオン!と大きな衝撃音が轟いた。
「―――――ッ、あ・・・あれ?」
だが、乱音は首を傾げた。
それもその筈。振り下ろした刃の先にあの無礼な男の顔はなく、その代わりに空を切ったのだから。
「・・・・・まだ、人が喋りょーる途中でしょうがァアッ!!」
バチィイ――――イイン!!
「キャァアア!!?」
疑問符を浮かべた直後、彼女の臀部へ落雷の如き衝撃が奔ると同時に乱音の身体は十m以上も吹っ飛んでしまい、「ぎゃぼん!?」無様な着地を晒してしまう。
一体何が起こったのか、乱音には訳が分からなかった。
けれども一部始終を見ていた観衆達はまたしても唖然と口を広げ、その観衆の中でも春樹サイドのIS統合部所属の芹沢は「やりやがった・・・!」と頭を抱えた。
「あいつ・・・尻を
瞬時加速を行うと共に青龍刀による斬撃を行った乱音よりも速く回避行動を行った春樹は、自分の
「テンメェ、此の野郎・・・人が文句を垂れよーる途中で斬りかかるとは、どういう性格しとるんじゃボケェ!!
もう許さん・・・オメェさんが台湾人じゃけぇ、ちったぁ穏便に済ましてやろうか思うたが・・・俺を舐め腐りやがるその態度に加えて、ボロ雑巾にしちゃらぁ!!」
春樹は太刀を脇構えの体勢をとり、脚部のローラーダッシュを高速回転させて乱音との距離を一気に詰める。
「こ、こいつ・・・!!」
乱音は言いたい事が沢山あった。
「女の子のお尻を蹴り上げるなんてどういう神経してんの!?」とか。
「背後から攻撃してくるって、この卑怯者!!」とか。
・・・けれども今やそんな事を言っている場合ではない。
ロックオンアラートで我に返った彼女は、体を起こして体勢を立て直し、自分目掛けて猛スピードで迫って来る春樹へ青龍刀によるカウンター攻撃を行う。
とても正確に眼球を抉る様な刺突攻撃である。
「あらよっと!」
「はッ、ちょっと!?」
ところがどっこい。
春樹はギィン!と自らに突き付けられる筈だった刃を太刀で切り上げた。
下から上へと太刀で打ち上げられた事で、青龍刀を握った両手が上がる万歳の形をとってしまい、腹部へ大きな隙が生まれてしまう。
その部分を下半身の射撃武装である甲尾でカバーするだろうと察していた春樹は、それよりも早くそこへ所謂ヤクザキックをドガッ!と蹴り込んだ。
「ッ、きゃぁあああああ!!?」
ドゴォオオン!!
再び蹴っ飛ばされた乱音は、くの字に曲がって後方の舞台壁面へと激突。
そんな光景に『『『うぅわぁ・・・!』』』と観客席から呟きが漏れた。
≪よ・・・容赦が、容赦がないぞハルキ・キヨセ!
オーガ、『ONI』の異名は伊達ではない!!
今までにこんな苛烈な試合があったでしょうか!!≫
≪今ので凰選手のSEゲージがかなり減らされてしまいました。
なんて
こんな事が許されるなんて!!≫
解説席からのコメントに春樹は「阿ん?」と首をひねる。
しかし、今まで彼が携わって来たISバトルが
普通のISバトルは、操縦者の生命を守る絶対防御を
肉を斬られる事も、骨を砕かれる事も、内臓を潰される事もない。
・・・だが、そんな事などこの蟒蛇が知ったこっちゃあない。
「『武者は犬ともいへ、畜生ともいへ、勝つことが本にて候』・・・って訳じゃけん、徹底的にやってやらぁ!」
戦国時代は越前国の武将たる朝倉 宗滴の格言を述べた春樹は、どういう訳か抜刀していた太刀を朱鞘へと納刀すると空手の呼吸法である息吹の構えをとった。
これはどういう訳か?
「あー・・・!?
あいつー、マジかー、マジでやんのかー!?」
彼がやろうとしている事が何なのか察してしまった芹沢は、「アッチョンブリケー!」と両頬を手で押さえた。
そして、芹沢の予想通り、春樹は両腕の専用武装を展開してからのエネルギー充填を開始。
するとバチバチバリバリとめでたい紅白の色をした雷が両腕へと奔り、その赤雷と白雷が纏われた腕を
その体勢は、
「これで・・・完全なるチェックメイトじゃァアアッ!!」
十字に閃く赤白の稲妻を解き放つ為、パラパラと破片と土煙が舞う方へ彼は右手首のコネクタに接続した左手首を下へとスライドさせ―――――――
―――「させないよ!!」
「阿”ッ!?」
バビューン!と、必殺技発射直前だった春樹へ真横から飛来してきたのは、青紫色をしたプラズマ弾。
この奇襲攻撃に即座に反応した春樹は、発射寸前だった
ローラーダッシュを逆回転させると共にスラスターによる瞬時加速を行う事で何とか直撃を避ける事が出来たのだが、無論、自身の必殺技でフィニッシュを決められなかった事に苛立ちを隠せない春樹はプラズマ弾頭が来た方へ焔が零れる金眼四ツ目を向けて吼える。
「テンメェッ、いったいどこの何もんじゃい!!?」
さすれば春樹と壁にめり込んだ乱音の間へ割り込む様に舞い降りたのは、ISを纏うショートカットの銀髪にオレンジ色の瞳を持った美少女であったのだ。
「これ以上の蹂躙・・・いや、
このロランツィーネ・ローランディフィルネィがね!!」
・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆
…ワンサマー氏と和解すべきだと思う人ー?
-
はーい!!(^^)/
-
えー!?(・_・;)