※一万字越え。
※ロランツィーネ・ローランディフィルネィのファンの人、本当に申し訳ございません。
※後半につれてグダってます。悪しからず。
皆は一挙手一投足で、まるで事前に打ち合わせでもしていたかの様に固唾を一斉に飲み込んだ。
長烏帽子は飛竜の頭を象った兜へ変形し、屈託のない白雪の様だった縅や具足が紫色の焔か雷を模した鱗紋様に染まり、更には背中へこれまた飛竜が如き青の翼膜を持った羽根が生えた。
・・・然れども先程とは変わりのない箇所がある。それは面貌に施されたギラギラ眩く燃える焔が零れる金眼四ツ目と耳まで裂ける程に引き攣った口角。
かつての白鎧を身に纏った鬼武者の姿は何処へやら。
今やアリーナの・・・否、テレビ中継カメラを通して全世界の視線を奪うのは、紫紺の戦装束を身に纏う
そして、そんな異様な
≪こ・・・・・こ、こ・・・この男は!?
この男はいったい何度・・・一体何度、私の度肝を抜くのでありましょうか!!?
幾度も・・・幾度もッ、幾度となく我々の常識を覆して来た!
しかしッ、それらさえも序章だと言わんばかりの八面六臂の活躍!!
一体全体この展開を誰が予想したでありましょう!!?≫
パーソナルMCのキンブル・ドゥは、隣で青褪めて言葉を失うルーシィ・ハンネスを尻目に血眼で叫ぶ。
その絶叫は、静まり返ったアリーナ観客席とテレビ画面の向こう側の御茶の間に酷く響き渡った事であろう。
「・・・・・ありゃ?」
キンブルの興奮した声がやまびこの様になって木魂する中、皆の視線や興味を一身に注がれている当該者の清瀬 春樹は呆けた疑問符を呟く。
驚嘆のあまり言葉を失いつつも徐々に正気を取り戻し、ザワザワざわざわ騒ぎ始める観客達の反応よりも彼は対戦相手たるロランツィーネ・ローランディフィルネィが未だ自分の目の前で
・・・言っては何だが、春樹は思わずカッコつけて構えたポーズに羞恥心が芽生え始めて来たのだ。
「・・・・・・・・君は・・・・・いや、
「阿ぃ?」
「
彼はあまり気にしてはいなかったが、今になってよくよく見れば、ロランツィーネの表情は愕然としたものそのものであり、発した言葉尻が僅かにだが上ずって身体が震えている事が見受けられる。
見る者からすれば、彼女が狼狽えている事は明白であり、それが余計に周囲を動揺させた。
「阿ー?
何者・・・なにもの、ナニモノかじゃと?
そねーな事ぁ、とっくに御存じの筈じゃと思うが・・・・・」
「あぁ、そうじゃ!」と、春樹は首を傾げた後に何かを閃いたのだろうか、またしてもニタリ口端を吊り上げる。
そこから歌舞伎の一幕で
「生まれは作州真庭在!
十五で親と引き離され・・・半ば無理に始めさせられたIS稼業!
こちとらちっともその気はねぇが・・・元服もせぬ内に頼んでもないのに来やがる面倒事を打倒し!
今や日ノ本の看板背負って大立ち回りをする羽目になっちまった未だ尻の青い侍大将!
清瀬 春樹たぁ・・・阿ッ、俺の事よぉ!!」
「破ッ破ッ破ッ!!」と呵々大笑を晒す春樹。
そんな彼を目の当たりにし、ロランツィーネはギリリ奥歯を砕けん程に噛み締めると春樹の大見得に応えるかの様に叫んだ。
「きよせ・・・きよせはるきぃいい―――――ッ!!」
ロランツィーネは怒号を響かせると共に得物をレイピア・カウスからビームライフルに設定したスピーシー・プランターへ持ち替え、今や憎き怨敵と成り果てた春樹へ向けてトリガーを引く。
さすればビキュ―――ッン!と独特な発射音を響かせながら撃ち出されたショッキングピンクが一直線に標的へと飛んで行った。
・・・・・ところがどっこい!
「―――――ちぇりお!」
「・・・は?」
春樹は、そんな自分に向って飛んで来るビームを目の前を飛ぶ忌々しい蠅でも払う様に
そして、一気に一瞬にしてロランツィーネの距離を詰めて懐に入るといつの間にか振り抜いていた拳を前方へ突き出した。
「清瀬流対決術、模倣の型
「―――――ッ!!?」
ドッゴゴン!と
≪ッ、な・・・なんだ―――!?
いったいなにが起こったと言うんだ―――!!?
わ、私の目が確かなら・・・ローランディフィルネィ選手のビーム攻撃を・・・・・え?
叩き落とし・・・?
いったいどうなっているんだー!!?≫
常人の目では到底捉えられなかった両者のやり取りにMCは目を白黒させながら疑問符と感嘆符が混ざり合わせて喚き散らす。
しかし、それは解説席や観客席だけでなく、
「(な・・・ッ、な・・・なに・・・・・なにが・・・?
なにがおこった、の・・・ッ?)」
ISに搭載されているハイパーセンサーでも感知できなかった攻撃によって打ち付けられた壁から剥がれ落ちたロランツィーネは、片膝を付いた状態で頭を疑問符で一杯にしつつ衝撃が奔った部分へ手を伸ばす。
すると春樹の攻撃を受けたであろう胸部装甲が、見るまでもなく
しかも搭乗者を外的要因から守る筈の絶対防御がある筈にも関わらず、鳩尾が痛んだ。
これはシールドバリアーを突破する程の攻撃を受けた事に他ならない。
「阿ー・・・ごめん、ごめん。
大丈夫?
ちぃとばっかし、やり過ぎちまったかい?」
そんな一歩間違えばパイロットの命を
それが余計にロランツィーネの神経を逆撫でる。
「きよ、せ・・・は、るき・・・・・お、お前・・・ぼ、ぼくに・・・僕に何をしたんだ・・・?!」
「何って・・・アレじゃよ、アレ。
オメェさんもやった瞬時加速よ。
それで距離つめて、鳩尾に一発ドーン・・・ってな」
あっけらかんと受け応える春樹にロランツィーネは「ふざけるな!」と吐き捨ててやりたかったが、どうにも打撃を受けた部分に鈍い痛みが奔ってそれどころではない。
彼女はよろよろよたよた体を揺らしながら態勢を立て直そうとするのだが、どうにも上手くいかない。
今にも倒れてしまいそうだ。
「ッ、おいおいおいおいおい・・・大丈夫かよ?
やっぱり、グーパンはマズかったかぁ?
刀で、ざっぱりしちまった方が良かったぁ?
・・・いや、そりゃーそれで
加減間違えたら大根みてぇーに真っ二つにしちまいそうじゃし」
気遣う台詞を並べてはいるものの、相手を嘲る口元を隠す様子はない。
明らかにロランツィーネを嘲笑している。
「じゃけども・・・呆気ねぇもんじゃなぁ。
ア・レ・だ・け試合前に大仰な事を言よーたのに・・・破破ッ♪」
「こ、この・・・!!」
舌を出してケラケラ揶揄う
「―――あらよっと!」
「ッ、
春樹は、西部劇のガンマンの早撃ちが如く
その衝撃からか、彼女は思わず驚きの声を上げてしまい、スピーシー・プランターの残骸を地面に落としてしまう。
「ありゃ・・・ありゃりゃん?
何じゃ何じゃ、ローランディフィルネィよ?
オメェさん、そねーな
「―――――ッ!!
うっ・・・うわぁあああああッ!!」
ロランツィーネの
この悲鳴によって春樹は増々口端を吊り上げた事により、尻餅をついていたロランツィーネは、羞恥心からか顔を真っ赤にしてスピーシー・プランターの残骸からレイピア・カウスを取り出して構えた。
その時の彼女の構え方と云ったらとてもIS代表候補生とは思えぬ構え方で、手に握られた得物はレイピアよりも
・・・もう今の彼女は春樹の掌の上で踊らされている状態であった。
「―――――はい、無駄無駄ァ」
「あッ・・・!」
激情に駆られてしまった事による単調な行動が、この男に効く筈もない。
自らへ迫り来る刃を片手で難無く払い除けた春樹は、すかさず不用意に接近して来たロランツィーネの頬をもう片方の掌で叩き付ける・・・所謂、
「―――はでブッッ!!?」
しかし、ただビンタと云うには余りにも威力が高過ぎるもので、バチィ―――ン!と綺麗に
≪ふ、
まるで放り投げられたオレンジのようにロランツィーネ・ローランディフィルネィが愛機と共に壁に激突!
一度ならず二度までもアリーナ壁へクレーターを作り上げてしまったァ!!≫
大興奮で設置マイクを手汗びっしょりの手で掴み上げるキンブルを余所に二度目のクレーター作成を行った春樹はロランツィーネを引っ叩いた自分の手をじーっと見た後、口をへの字に首を傾げて一言。
「おいおいおいおいおい・・・
もうちょっと食べたら?
まるで・・・
「おい、大丈夫か?」と一見相手を心配する声掛けだが、その物言いは明らかに相手を揶揄するものであった。
こんな事を
「・・・けるな・・・・・ざけるなっ・・・!
ふざけるなァアあッ!!」
ロランツィーネは文字通りの血眼で歯を剥き出しで憎悪を露わにする。
最早、もうそこにネーデルランドの麗人と呼ばれる者いない。
そこに居たのは、年相応に怒りを表へ出す一人の少女であったのだ。
「ふざけてなんかいねぇよ。
ちゃんと面と向かって戦ってるじゃねぇか。
人聞きが悪いぜぇ?」
「ッ、黙れ黙れ!
な、なにが・・・なにが面と向かって、だ!
ちょこまかちょこまかと・・・まるでキッチンに忍び込んだドブ鼠の様にうろちょろうろちょろと!!
お前なんかッ、お前なんか僕の攻撃さえ
目を三角に奥歯をギリギリ鳴らし、恨み辛みを述べるロランツィーネ。
けれども、そんな彼女に対して春樹はとても単純明快にこう応えた。
「じゃったら・・・
「ッ・・・な、に?」
彼の言葉にロランツィーネは口端をピクピク痙攣させて目を四白眼に見開く。
然れども春樹の言っている事は至極真っ当で、敵を倒すには自分の攻撃を当てるか、圧倒的な力と技量を認めさせる他ない。
「バナナの叩き売りみてぇにあんだけ人に喧嘩を売っておいて・・・
えぇ、オランダの麗人・・・ロランツィーネ・ローランディフィルネィさんよぉ???」
ウザいし、ムカつくし、癪に障る。
勿論、この男のスポーツマンシップもへったくれもない傲慢不遜な態度にIS信奉者やロランツィーネ推しの観客のみならず他の観客達も眉をひそめて野次を飛ばす。
やれ「卑怯者!」だの。
やれ「大人げない!」だの。
やれ「もっと男らしく戦え!」だの。
憤りの声と共に春樹を窘める声、咎め立てる声、扱き下ろす声が四方八方から聞こえて来る。
そんな心無い有象無象の大衆からの声に対し、春樹は片口を吊り上げて呟いた。
「おー、おー、おー・・・どいつもこいつも好き勝手に言いやがる。
人の事を勝手に侮っておいて、人の事を勝手に嘲り笑っておいて・・・いざ俺がちぃとばっかし本気を出してみれば、人を化物みてぇに扱いやがる。
・・・・・ふざけんじゃねぇよ、この
口を三日月に歪めてはいるものの金眼四ツ目の面貌に隠された彼の眼は、これぽっちも笑ってはいなかった事だろう。
元来、春樹は諍いや争いを好む性格ではない。
だが、気に入らない相手・・・敵と認識したものには容赦もなければ、恨みも忘れる事もない。
「テメェの為に俺は、もう二十七時間十二分も
もうそろそろ限界って感じじゃけぇ・・・そろそろ
八つ裂きにしてくれようぞ!!」
「ひッ・・・!!?」
『『『―――――ッッ!!?』』』
その雷に見せられ、当てられ、
口と目をかっ開き、皆は思わず息を
「清瀬流対決術模倣の型、
―――瞬間、彼は一つの
文字通りの『紫電一閃』とはこの事で、視神経は勿論、ハイパーセンサーさえも容易く潜り抜ける速さと共に春樹はロランツィーネへ最速の技を叩き込んだ。
「―――『鏡花水月』!!」
彼女の胸元に放たれた掌底は、熊蜂の顔の様なオーランディ・ブルームの胸部装甲に平手の陥没跡を作る程に強烈。
無論、この攻撃がISの周囲に張り巡らされている不可視のシールドを突破する事など造作もない。
絶対防御がある為にパイロットの生命に危険はないが、攻撃が通っても操縦者の生命に別状ない時にはこの能力は使用されない場合がある。
・・・今回が正に
バギッィイ―――――イン!!
「うッゲばァあ”あ”あ”あ”あ”ッ!!?」
命を奪うには値しないが、その衝撃は確実に
ピキィッと胸骨へヒビが奔り、普段では決して味わえぬ
そして、先程作り出したアリーナ壁のクレーターを更に大きなものへと変貌させ、嘔吐物を吐きつつ五体投地で地に伏せる。
シ―――――ンッと辺りが静まり返るのが・・・いや、テレビを前にして凍り付く茶の間の空気を肌で感じた春樹は、アリーナ中央へ足を向けると全てのカメラへ向かって言い放った。
「・・・いつまで試合終了のブザーを鳴らさないつもりで?
それとも・・・
―――◆―――
「ま・・・け、る・・・・・?
こ、の・・・・・ぼく、が・・・ッ?」
アリーナ壁の破片をパラパラ舞わせながら地面へずり落ちてゆくロランツィーネは嘔吐物で濡れた口を動かす。
国際共通ルールにおいて
崩れ落ちた自分へ背を見せ、己の勝利を高らかに挙げた腕と共に宣言する紫色の
暴虐無人にして悪逆卑劣な
「いッ・・・いや・・・・・いやだっ・・・!
ま・・・まけたくない・・・負けたくない・・・・・負けたくないッ!!」
ワールドクラスのエースパイロットである筈の自分が、事もあろうに
「動け・・・!
動け、動けよッ!
動いてよ、ブルーム・・・!!
お願いだから・・・いい子だから・・・ッ!!」
しかし、体を動かそうにも力が入らない。
今まで共に戦って来た愛機が言う事を聞かない。
否が応でも自分が無力化されたという事を現実がまざまざと突き付けて来る。
・・・それでも・・・それでも―――――
「まだ・・・まだッ、僕は・・・僕はまだ、負ける訳にはいかないんだよ!
だからッ・・・だから僕に・・・・・
―――◆―――
「・・・ッチィ、畜生め。
≪なに?≫
春樹が舌打ちをすると共に口を忌々しくへの字に歪めた事を通信チャンネルの向こう側に居たバックアップチームの面々は疑問に思った筈だ。
だが、すぐに彼が何に対して苦言を呈したのかが理解できた。
―――――「Backspace!!」
『『『え・・・ッ!!?』』』
モワモワっと立ち上る粉塵を振り払って現れたのは、
その焔はとても判別できない絶叫を上げながら苦々しい口元を晒す春樹へと目にも止まらぬ速さで突撃を敢行したではないか。
ギィヤァアアッン!!
「い”ぃッ!?」
辛うじて自らの反射速度と日頃の努力の賜物で習得した高速切替で愛刀の一振りである鈎鉈を展開し、自らに向けられた炎刃を受け止めた。
然らば、凄まじい衝撃音と衝撃波がアリーナは疎か場外まで奔り抜ける。
その
武装と武装の激突の影響によって発生した爆風により、ヴェールを脱ぐ様に山吹色の焔が掻き消えた。
すると―――――
「A”A”A”A”A”A”A”A”A”A”A”ッッ!!」
現れ出でたのは、マントをはためかせる山吹色に輝く全身甲冑の騎士。
その掌には、三つの切先を有する三叉槍が握られ構えられている。
≪えッ・・・ちょっと・・・・・はぁ!?
目の前で繰り広げられている事がとても現実には思えません!
ですが、これは事実なのです!!
噴煙を切り払って突然現れたサンライトに輝く謎の騎士!
されどその正体、識別情報は決勝戦に出場しているオーランディ・ブルームを開示しております!!≫
突如として出現した山吹色の騎士が、最早これまでと思われていたオーランディ・ブルーム・・・ロランツィーネ・ローランディフィルネィだと云う事にパーソナリティは大興奮必至。
≪し、しかし!
どういった事なのでありましょう?
先程まで一方的に苦戦を強いられ、ズタボロの風前の灯となっていた筈のローランディフィルネィ選手がここに来て大復活を遂げたのでしょうか!!≫
≪ッ、ま・・・まさかアレは・・・!!?≫
≪おっと、その反応!
御存じなのでしょうか、ハンネスさん!!≫
≪は、はい!
私も初めて見るのですが・・・おそらくあれは『二次移行』だと思われます!
いえ、そうなのでしょう!!
ローランディフィルネィ選手は、新たる高みへと
≪なッ!!?
あ、あれが・・・あれが噂に名高い二次移行なのですか!!
私の知識が正しければ、公式大会で二次移行に至った例はありません!
よって、今起こっている出来事は超が三つ付く程の貴重映像です!!≫
ISが備える形態移行の一つである二次移行は、ISコアに蓄積された稼働時間と戦闘経験が搭乗者との高い精神同調で起こる世界でも僅かなエースパイロットにしか出来ぬ稀な事象だ。
そんな目の前で巻き起こる超貴重映像に観客達や視聴者達は試合へ食い入った。
・・・けれども、事はそう簡単な訳ではない。
≪―――――ッ、清瀬!
わかってると思うが!!≫
「理解しとるよ!
見るからに
ロランツィーネのトライデントによる刺突攻撃を間近で防ぎ受ける春樹には、
早い話が、
彼女の「負けたくない、負けて堪るものか!」と云う熱い思いが、機体へ搭載されていた感情と連動するシステムに作用して二次移行に至ったは良い。
だが、どうもロランツィーネはシステムに引っ張られてしまっている様で・・・・・
「なしていっつも俺はこねーな目に合わにゃあならんのじゃ!?
マトモなISバトルをやった試しが―――――
「A”A”A”A”A”ッ!」
―――おわぁあッ!?」
気が逸れたせいなのか。暴走状態のオーランディ・ブルームを纏うロランツィーネの攻撃に圧されてしまい、鈎鉈が弾かれると共に春樹は大きくバランスを崩してしまう。
勿論、この隙を見逃すロランツィーネではない。
バランスを崩した共に彼女は春樹のどてっ腹へ強烈な脚撃を叩き込んだではないか。
「ゲぼらぁアアア―――ッ!!?」
ドゴォオオ―――ッン!!
≪決まったァ―――!!
ローランディフィルネィ選手の強烈な一撃により、清瀬選手がアリーナ壁へと激突!!
痛烈な一撃だぁ!!≫
≪大逆転劇の幕開けです!!
ここから一気にローランディフィルネィ選手の独壇場となるのです!!≫
轢き潰されたガマガエルの如き断末魔と共に吹っ飛ばされた春樹は、今度は自分がアリーナ壁へめり込む事となってしまった。
この状況に彼が気に食わない観客達は大手を振ってこれを歓迎し、『『『ワァアアッ!!』』』と大歓声を轟かせる。
そして、その歓声に呼応する様に解説席からはロランツィーネを讃える声が聞こえて来た。
〈―――――・・・ねぇ、春樹?
第三部でジョセフ・ジョースターは、なんて言ってたかしら?〉
「・・・・・『相手が勝利を確信した時、そいつはすでに負けている』だっけか?」
自身の愛機の諫言に春樹は溜息を一つ吐いた後、カチカチ歯を鳴らして歯を食い縛る。
そして、申し訳なさそうに左手薬指を額へ添えた。
「・・・ごめん、琥珀ちゃん。
不覚をとっちまったでよ」
〈あら?
私、あれぐらいでへこたれちゃうほどヤワだったかしら?
大丈夫よ。
だから・・・もうそろそろいいんじゃない?
「じゃな。
もう・・・
琥珀と春樹の会話を通信チャンネル越しに聞いていた芹沢は、すかさず「
以前、彼は同じ様に機体の暴走に飲み込まれてしまった
再びその様な事になれば、放送事故になる事は待ったなし。
〈とかなんとか言ってたら・・・来たわよ!〉
「A”A”A”A”A”A”A”A”ッ!」
トドメを刺さんと再び三叉刃を構えて突っ込んできたロランツィーネ。
その爆発突進力と真正面から相対するのは勘弁したかったのか、春樹は回避の為に空高く舞い上がれば、そこから始まったのは紫色と山吹色の追い駆けっこ。
≪おーっと、これはどうした事かー!
流石の紫色の竜も山吹色の光を纏う騎士には敵わないのかー!!≫
解説席から聞こえて来たアナウンスにバックルームやVIP席、テレビカメラの向こう側に居る彼を慕う者達は表情をしかめたが、すぐにこの後で起こるであろう
そして、それを思わせる様に春樹は赤刃の得物を展開し、反転攻勢へと打って出た。
「ヴぇろぉあアアッ!!」
ギィヤァッン!!
「SIYAAAAA!!」
くるり反転すると共に瞬時加速で距離を詰めた春樹の三尺太刀の重い一撃がロランツィーネのトライデントを捉え、真っ赤な刃と白銀の刃の激しい鍔迫り合いが巻き起こった。
「A”A”aOooOOOOO!!」
「やっぱり槍相手に太刀は、リーチ差があるのォ!」
そこから何度も幾度となく剣戟の応酬が繰り返されるのだが、ヴォ―ダン・オージェは疎かISのハイパーセンサーを持ち合わせていない人間からすれば、高速飛翔する紫色と山吹色の物体が衝突する度に凄まじい金属音と火花が飛び散ってるだけにしか見えない。
普段からISバトルを見ていない
けれども・・・―――――
≪云っては何ですが、断言いたしましょう!
この試合は史上稀にみるベストバトル!!
今までの試合が、まるで御遊戯会に見える程です!!≫
特に現役選手は、新世代がこれ程までの実力を有している事に
そんな事など露知らず、空中を舞台とした二人の間では怒涛にして壮絶な激闘が行われている。
雲一つない晴れ渡った蒼天の下、紫色と山吹色の光線となった鋼と鋼が、力と技が、技と力が、衝突し合う心地の良い音が小刻みなれども大きくアリーナ中へ、テレビカメラを通じて全世界へ響き渡る。
・・・しかし、幾度も幾度も刃を重ねる中で、
「―――――・・・A”aッ?」
ロランツィーネは・・・いや、オーランディ・ブルームは
自分が徐々に徐々に僅かばかりであるが、確実に
受け止めた刃が先程よりも速く重い。
振り下ろし、突き崩そうとした切先で空を切る感触が先程よりも多くなる。
追い付き追い越せとして渡り合っていた筈であろう自分が、いつの間にか相手よりも出遅れている事に否が応でも理解できた。
「A”・・・A”Aッ・・・・・iTe・・・Oしテ・・・?」
「阿ん?」
「どOsiテ・・・ドオシテッ・・・・・ドウシテ、
オーランディ・ブルーム・・・いや、その姿がどことなくあるOCGに登場するキャラクターに似ている為、そのキャラクターから名前をとって『オーランディ・ブルーム・ガイア』としよう。
その二次移行に至ったオーランディ・ブルーム・ガイアから聞こえて来たのは、ノイズ交じりの何処か機械的な声にもならぬ声で
「わタシ、ハ・・・ツ、ヨくナッタはズ・・・・・ハヤ、くナったハズ・・・な、ノニ・・・・・ナノに・・・ドウシテ、トドカ、ない??」
鋭く素早くトライデントの三刃を振るうばかりか、その切先からビームまで発射して疾風怒濤の攻勢に打って出るオーランディ・ブルーム・ガイア。
然れどもその攻撃を春樹は容易に斬り弾いては、難無く回避する。
そればかりか、着実に確実に隙間を縫う様に
まるで、ひっくり返った虫をチクチクと針で刺すかの様にだ。
「ナん、ナンダ・・・なんなンだ、オマえワ・・・っ!」
不気味で、不可解で、奇妙で、奇天烈な赤光の三尺太刀を振るう紫紺の竜鎧を纏う男をオーランディ・ブルーム・ガイアは・・・
そんな怖々とした問い掛けに男はこう返す。
「・・・さぁ?
面貌から垣間見える口元を
この攻撃を回避する事は出来ないと瞬時に察した彼女は、斬撃を防ぐ為にトライデントの三叉刃で受け止めた。
だが、その斬撃は今までとは比べられない程に強烈。
ガッギャァアアアアアン!!
「ッ!!?」
防御した筈のトライデント
無論、このまま墜落するなど以ての外。
彼女は二次移行する事によって復活したスラスターを逆噴射させ、急ブレーキをかける様にバランスを保つ。
「―――――そうじゃ。
そこが一番、
地面に平行して空中停止したロランツィーネは刹那ばかりであるが、体の良い的とも捉えられる。
春樹はその的へ三尺太刀の切先を向け、刀の峰へ軽く右手を添える
「清瀬流対決術模倣の型、
彼のその姿を目にし、春樹が何をしようとしているのか・・・何の技を繰り出そうとしているのか、解る者には理解できた。
その技は、幕末に名を轟かせた新撰組の三番隊組長・斎藤 一が得意としている剣技―――――
「―――『牙突』ッ!!」
ゴッギィイャァアアン!!
「がッっっフ!!!??」
『『『なぁッ!!?』』』
瞬時加速による突進で間合いを瞬きの間に詰めると共に放たれた平刺突技は、オーランディ・ブルーム・ガイアの胸部装甲へ直撃。
その勢いのままアリーナ地面へドンッ!!と大きなクレーターを形成する事になった。
目まぐるしく状況が変わる中、高速戦闘を何が何だか理解できずにいた観客達や視聴者達でも今のは理解する事が出来る。
・・・ところがどっこい!
「―――――オォウッラァア!!」
「ぐっげェエエエッ!?」
『『『ッ、ええぇ―――!!?』』』
間髪入れず、春樹は穴ぼこの中心でくの字となったロランツィーネの頭部をドッガ!と蹴っ飛ばす。
それこそまるでゴールに向かってシュートを蹴るが如くだ。
そんなオレンジ色のサッカーボールと化したかに思われた彼女は、すぐに態勢を立て直そうとするのだが、春樹はそれを許さない。
「おんどりゃぁああッ!!」
ザッシャン!!
「んがぁああッ!!?」
距離をとらんとバックステップしようとしたロランツィーネへ彼は躊躇もへったくれもない斜め一線の斬撃を喰らわせる。
その斬撃は先程の者よりも更に鋭利で重かった為か、二次移行に至った事で新たに顕現した新武装たるトライデントの柄ごと断ち切ってしまい、更に更にこれも間髪入れずに彼女の腹部へ続けざまにまたしても脚撃を放ったのだ。
これにより、またしてもくの字となって吹き飛ばされてしまったロランツィーネは、今度は地面へと打ち付けられてしまった。
「ㇵぁ・・・ハァ・・・はァ・・・ッ・・・」
しかし・・・ロランツィーネそれでも尚、肩で息をしながら漸う立とうとする。
持ち手を斬り落とされた事で長さが半分になったトライデントを杖にしてフラフラする全身ベッコベコのボッコボコの凹みまみれの騎士にかつての輝きはない。
「・・・ガルルッ」
そんな満身創痍のロランツィーネへいつの間にか接近していた春樹は、容赦なく彼女の喉元を掴み上げた。
・・・・・最早、決着はついていた。
―――――だが・・・
「・・・ロランツィーネ・ローランディフィルネィよ?
悲痛な叫びが聞こえる中、解説席から実況アナウンスよりも息を飲む音が聞こえる中、彼は砕けた兜から垣間見えるロランツィーネの瞳を見ながら語り掛けた。
すると彼女は苦々しそうに忌々しそうに口元をへの字に歪め、そして―――――
「ハァ・・・はァッ・・・お、おまえ・・・お前はッ・・・・・お前は、僕に倒されるべきなんだ!!」
ロランツィーネは短くなったトライデントの刃で春樹の脇腹を突き刺さんとした。
・・・けれども、そうはならない。
何故ならば、
春樹はその尾っぽでもってロランツィーネの刺突攻撃を防いだのである。
「ッ・・・こ、の・・・バケモノ・・・・・!!」
「バケモン、ね。
阿破破ッ・・・誉め言葉と受け取っとくわ。
VS凰 乱音戦でロランツィーネの乱入を受けた際、彼女から言われた軽蔑侮蔑の一つ一つを春樹は覚えていた。
彼は皮肉を呟きながらロランツィーネの首元へ顕現させた鈎鉈の刃先を添わせて一言。
「
するとロランツィーネは観念した様に片口を吊り上げて呟いた。
「フッ・・・つ、
それが最後の力だったのか。
口惜しそうに呟いたロランツィーネは、トライデントから手を離すと共にそのまま意識を失ってしまったのだった。
またしてもシンっとアリーナが静まり返る。
そんな息を飲む音ばかりが馬鹿に良く響く中、世界初の
「まだ・・・
この『割鶏牛刀』みてぇな試合をよ?」
『割鶏牛刀』
・取るに足らない小事を処理するのに大袈裟な方法を用いる事。
・小さな物事を裁くのに大袈裟な方法・手段など必要ないと云う戒め。
・鶏をさばくのに牛を解体する大きな包丁を用いる意味から。
・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆
…ワンサマー氏と和解すべきだと思う人ー?
-
はーい!!(^^)/
-
えー!?(・_・;)