IS/Drinker   作:rainバレルーk

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関係のない話で申し訳なく突然ですが、『鉄のラインバレル』でいいですよね!
改めて、再アニメ化してくんねぇーかな!!

※今回()楯無や他キャラの扱いがぞんざいかもしれません。
ファンの方々・・・本当に申し訳ございません。



第233話

 

 

 

年末暮れの正にクリスマス前に起こった大事件、『エクスカリバー事件』。

そんな危うく英国首都ロンドンどころかブリテン島全域が言葉通り()()し、ついで西ヨーロッパ州が海底へ沈むかもしれなかった世紀のテロと言っても過言ではない事件を収めたイギリス及びヨーロッパ全域の救世主メンバーが一人、イギリス国家代表候補生のセシリア・オルコットは()()()()()()()()()

 

人類史上最高と言っても差し支えない兵器たるインフィニット・ストラトス、通称ISの開発者、篠ノ之 束が起こそうとした狂気的大惨事を未然に防いだ事で、聖剣奪壊作戦へ参加した全員が英国政府並びに英国王室から多大なる感謝と表彰と勲章を受け賜ったのである。

 

その救国にして護国の英雄達は各国から集まった()()()ばかりだったが、おそらく全員が英国王室より騎士ナイトの名誉爵位を授与されるに至った。

中でも特に話題となったのが、実力行使型軍事衛星エクスカリバーの暴走を止める()()()()()()となったメンバーの中で唯一の英国貴族階級出身だったセシリア・オルコット。

彼女は、事件解決に尽力したその多大なる功績から一代限りではあるものの現状爵位よりも一段上の爵位叙勲がなされたのである。

そんな話題と彼女が元来持ち合わせている美貌も相まってか。一躍セシリアの名声は英国のみならずヨーロッパ全土で持ち切りとなった。

 

「・・・・・・・・ハァ―――ッ・・・」

 

御蔭で時の人となったセシリアは、英国王室ロイヤルファミリーと謁見する事が許された他、著名なテレビ番組や有名紙への出演掲載がなされたのである。

だが、周囲から持ち上げられて悪い気がしなかったのも束の間で、今の彼女は気が付けば大きな溜息を吐いていた。

・・・理由を挙げるとするならば、前々から資産家として名が知れていたのも加えて更に事件解決に貢献して有名となったオルコット家と()()()()()()()人間達が近づいて来たからだ。

この”仲良くなりたい”と言う文言は、要するに・・・セシリアに対して多くの()()()()が舞い込んできたのである。

しかもその誰も彼もが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()姿()()()な良家の御令息達。社交界に出れば、世の淑女達が放って置く筈もない煌びやかな紳士達だ。

そんな物語の王子様的ポジションな美丈夫共から手を差し伸べられる様は、見る者からすれば夢の様であるのだが、当のセシリア本人は若干なれども()()()()していた。

 

彼女としては、有名になった途端に群がって来る彼等は角砂糖に集る蟻の如きで、セシリアが若くしてオルコット家の当主になった際に彼女を騙して利権をぶん盗ろうとして来た悪徳親戚連中に等しかったのだ。

それ故、冬季期間中に招待された参加したくもないパーティに社交辞令で受けた際も出された飲み物や食べ物に()()()がないか警戒して精神的負荷を気負ってしまった。

彼女としては、気の休まらない長期休暇であったろう。

 

・・・だが、そんな休みで会って休みでない冬休みの中でも心休まる一時があった。

年が明けてから行われた新年を祝うロイヤルファミリーとの会食の後、遂に精神的疲労で堪らなくなったセシリアは体調不良を理由に全ての予定をキャンセルしてオルコット家邸宅へ引きこもってしまう。

その際、数日間ではあるものの彼女は()()と共に思い想いの時間を過ごす事が出来た。

傍から見れば主従関係で血の繋がりもないが、はっきりと心の底から()()()()()と言える大事な人達と過ごす事の出来た時間は、かなり削られたセシリアの心を確実に癒したのだ。

 

そんな家族達との何気ない日常を過ごしている時、彼女達の観ているテレビ画面へ()()()()が映る。

初めて出た表舞台の檜舞台で縦横無尽に鬼神の如く暴れまわり、耳まで裂ける程に口端を吊り上げて天魔の様に嘲笑う()を目にしたセシリアは自然と頬を緩ませた。

 

―――さて、ここでお察しの方もいらっしゃるだろうが・・・この自他共に認める英国淑女にしてオルコット家の女主人殿は、この『黙れば勇者、喋れば異常者、戦う姿は鬼神の如し』と呼ばれるIS界のゴールドシップに()()()である。

 

『「オルコット家は君の()()()()()であっても・・・()()()じゃないって事じゃ

御家の事を想うのは悪くない。

じゃけど、自分の事も大切にしんちゃい・・・って、事を俺は伝えたかったの!

貴族としての矜持も大切じゃけど、君自身の人生も大切なんじゃなかろうか?」』

 

彼女は否定するやもしれないが、雪の降り積もる邸宅中庭で投げ掛けられた()()()()によって不覚にも()()()()セシリア・オルコットは()()()()()()()()()のだ。

 

・・・けれどもここで大きな問題が一つ。

この未成年でありながら酒を大いに笑って呑む事を好む()()の様な男には、()みたいに愛らしい恋人が居たのだ。

蟒蛇はこの兎に()()()()で、蜷局の中に収めて()()()()()()程に寵愛を注ぐ始末。

しかもあろう事かこの残忍冷酷色ボケの金瞳四ツ目の蟒蛇へ()()()()を寄せる者が他にもいたのである。

その誰もが、どちらかと言えば悪人面で性根のひん曲がった蟒蛇たる()へ多大なる恩があり、尚且つ彼に心底惚れ込んでいる少女達。

 

かく言うセシリアもその一人であったのだが、彼女が蟒蛇に・・・二人目の男性IS適正者たる清瀬 春樹に恋心を抱いたのは、ほんのつい最近の事。

それまでは異性なれども仲の良い友人として見ていたのだから・・・()()()()()()と言えばそうだ。

 

だからと言って、セシリアの想いが弱い等という事は決してない。絶対に。

だからこそであろうか。そんな諦めきれない彼女の心を何処か遠くの地で察した銀髪黒兎・・・()()、ラウラ・ボーデヴィッヒからこんな提案を持ちかけられたのだ。

 

≪どうだ、セシリア。

お前も・・・春樹の()()()()()()()()?≫

「・・・・・・・・・・・・へ???

 

正に寝耳に水。

IS学園の始業式の三日前にあった余りに衝撃的な文言に対し、セシリアは英国淑女にあるまじき呆け顔を晒して幾何かフリーズしてしまった。

だが、聞く所によると春樹に()()()()なオレンジブロンドの子犬、もといシャルロット・デュノアは二つ返事でこれを了承し、既に春樹と念願の()()を果たしたと言うではないか。

またしても衝撃的な事実に襲われたセシリアは、またしても出遅れたと言う事に焦燥感を感じてしまい―――――

 

「ッ、わ・・・私も・・・・・私も春樹さんとの子供が欲しいですわ!!」

 

・・・思わずでありながらまたしても英国貴族淑女にあるまじき後先を一つも考えない発言を発してしまう。

けれども彼女のこの発言をラウラは気に入って「ならば良し!」と大きく頷いてこう続けた。

 

≪なら春樹に告白しなければな!!≫

「・・・・・・・・あっ・・・!?」

 

前々から好き好きアピールをしていたシャルロットとは違い、セシリアが春樹の友人区分から()()()()()()()()にシフトするには、彼へ自分の好意を伝えなければならない。

彼女はその事を失念していた。

 

「・・・ハァ―――・・・・・ッ!」

 

冬休みを終えてIS学園へ帰投したセシリアは、心ここにあらずと云った様子で胸に握り拳をあてながら大きな溜息を吐きつつある場所へと向かう。

無論、向かっている場所は自分の想いを伝えるべき相手がいる部屋。

 

「大丈夫、大丈夫ですわ・・・”もし”なんて考えず・・・・・私は・・・!!」

 

深呼吸をして息を整えたセシリアは春樹がいるであろう()()()()の扉をノックし、「失礼します!」の声を張り上げて入室すれば―――――

 

「とっとと放せって言よーろーがな、このスットコドッコイのおわんごが!!」

「・・・・・えッ?」

 

生徒会室へ先に招かれていた春樹が憤怒の表情で怒声を張り上げているではないか。

そして、どうして彼がこんなにも感情を露わにしているのかは、春樹の足元を見ればすぐに理解できた。

 

わぁーん

はるきくぅうん!!

わたちをみすてないでぇえっ!!」

 

年甲斐もなく幼子の様に「びぇええーん!」と泣き喚く水色髪・・・もといIS学園生徒会長、更識 楯無が春樹の足にしがみ付いていたのである。

その隣では、大きな溜息を「はぁ~・・・ッ!」と吐き連ねる楯無の妹である更識 簪に生徒会書記の布仏 虚。

そのまた隣には、優雅に紅茶を飲むラウラ・ボーデヴィッヒと春樹と楯無のやり取りにオロオロするシャルロット・デュノア。

そして・・・・・

 

「あっ、セシリーだ~。

あけましておめでと~、今年もよろしくね~。

練り切り食べるぅ?」

 

相変わらずのほほんとした雰囲気でセシリアに和菓子を勧めて来るのほほんさんこと布仏 本音と―――――

 

 

 

―――◆◆◆―――

 

 

 

・・・時系列は春樹がIS学園に帰還する二日前、始業式の三日前に遡る。

 

「―――・・・まったく、一夏め。

いつまで寝ているつもりだ!」

 

学園の始業式の為に学生寮へ帰って来たポニーテールの少女、日本代表候補生の一人であり、世にも珍しい第四世代IS機体を所有する篠ノ之 箒は学生寮の廊下をノシノシ肩を怒らせて歩いていた。

そんな何処か不機嫌な彼女が目的としている場所は、幼馴染であり想い人でもある世界初の男性IS適正者たる織斑 一夏の部屋だ。

 

「まったく一夏のやつめッ・・・冬休みに私に顔を見せないどころか、私からの電話にも出ないとは何事だ!

それに・・・もう昼前だぞ!

まったく、たるんでいる!!」

 

説明臭いセリフを吐いているが、ほぼその通りである。

エクスカリバー事件後、英国王室から騎士の叙勲等を受け取り貰った世界最強のIS操縦者、”ブリュンヒルデ”織斑 千冬が率いた部隊は、その栄光を胸にそれぞれの自国へと凱旋帰国。

部隊メンバー達はそれぞれの母国で皆は思い想いの歓迎を受け、そのまま冬休みへ突入する事となったのだが・・・一夏は帰国を果たしたにも関わらず家へ帰らないでIS学園寮へ留まったのである。

別段、家庭事情や国家事情等の特別な事情で母国や実家に帰らない者も居たが、それは極々少数派。

そんな極少数に甘んじて冬休みを学生寮で過ごす事を決めた一夏の滞在理由は、エクスカリバー事件で負った()()()()()の治療である。

 

彼はエクスカリバー事件において部隊を率いて作戦遂行の為に宇宙へと上がった際、暴走したエクスカリバーによって()()され、一時的に行方不明となってしまった事があった。

それを苦にして病んだ心をIS学園が有する世界最高峰最新の医療設備で冬休み期間中に治療すると言うのが()()()の理由である。

 

そんなこんなで学生寮で年越しと冬休みを過ごす事となった一夏だったのだが、彼はその期間中、外部との連絡一切を()()()()()のだ。

勿論、それは実姉である千冬さえもで、治療の為に()()()()としたのである。

これに憤ったのが、冬休みの間に()()()()()()達と差をつけようと画策していた箒だった。

彼女は一夏を内心では心配してはいるが、その勝気な性格から文句の様な抗議の様な留守電やSMSメッセージを送ってしまった。

しかし、一夏はこれを全無視なのか、彼から返答が来る事はなかったのである。

これで更に憤った箒は千冬に事情を聴いたのだが、彼女からも満足のいく返答が来る事はなく、逆に「今はほっといてやれ」と窘められる始末。

御蔭で箒は悶々とした気持ちの悪い気分で冬休みを過ごす事となってしまったのだが・・・それも今日で終わり。

三学期開始目前の学園へ戻って来た箒は、こうして早速と想い人の顔を見に朝早くから学生寮へ足を向けた。

 

冬休みの時は箒の方からガツガツ連絡ばかり仕掛けてばかりだった為、SMSで一言「自分の部屋で待っている」と一夏へ送った彼女だったのだが・・・待てど暮らせど彼が箒の部屋を訪れて来る事はなかった。

 

時刻は正午を過ぎる頃。

そうして業を煮やした箒は若干イライラしつつも一夏を昼食に誘う為に彼の自室へ向かっていたのである。

・・・だが、それは何も彼女だけではなかった。

 

「・・・あ、箒」

「むッ・・・?」

 

一夏の部屋まで少しと言う所で箒が顔を合わせたのは、彼女の()()と言っても過言ではないツインテールの少女、凰 鈴音。

 

「なによ?」

「なんだ?」

 

二人は「あけましておめでとう」と短く挨拶を済ませると示し合わせた様に足を揃えた。

両者は忌々しそうに顔を見合わせた後、先程よりも機敏に足を動かし始める。

そして、競って互いの体を圧し合う様になった。

 

「ッ・・・ちょっと邪魔よ、箒!

もうちょっと端を歩きなさいよ!」

「それはこっちの話だ!

鈴、お前こそ端っこを歩け!

私の方が先に真ん中を歩いていたのだぞ!!」

 

何ともどうでもいい理由でいがみ合う二人だが、互いに互いは相手が何処を目的地にしているのかを察していた。

鈴の方もまた箒と同じ様に一夏へアプローチをしていたのだが、フルシカトされた為に実力行使に移ったのである。

 

「私が一番に・・・!」

「先に私が・・・!」

 

「「一夏に会う!!」」

 

遂に二人は自分の専用IS機体を部分展開させると凄まじいスピードで廊下を滑走。

未だ学生寮に帰って来ている生徒が少なかったから良かったものの出合頭にぶつかってしまえば重傷は免れないが、そんな事など二人の頭にはない。

一応、箒は兎も角として鈴の方は理性的であるが、箒に絆されたせいでカッとなっていた。

さて、そんなキャノンボール・ファスト公式大会でも通用しそうな速度で行われたレースの勝者は・・・・・

 

「「とった!!

・・・って、はぁ!?」」

 

一夏の部屋の扉をコンマ何秒の誤差もない程に同時で手に取った箒と鈴は、キッと三角眼で互いを睨み付ける。

だが、こうなってしまえば詮無き事。

二人は何とも渋い顔をしつつも二人一緒にコンコンとノックする。

 

「一夏ッ、入るわよ!」

「一体いつまで寝てるつもりだ、一夏!!」

 

・・・普通ノックと言うものは、相手が部屋に居るかどうか確認するのは勿論だが、相手に入室許可を聞く為の手段である。

これも勿論、部屋の扉の鍵が閉まっていようが()()()()()()()関係ないマナーだ。

ところがどっこいで、二人はノックした途端に扉を開けて部屋の中へ入ってしまう。

そんなまるで()()()()()()の様に部屋へ入った二人だったのだが―――――

 

「―――ッ・・・ちょ、ちょっと何よこれ!?」

 

鈴は一夏の部屋に入った途端、我が目を疑う。

何故ならば、見る場所見る場所にあったのは空き缶・空きペットボトル・空きトレイ・・・所謂生活ゴミが散乱していたのである。

しかもゴミに混じって脱ぎ散らかした服に加えて・・・

 

「ッ、な・・・なんだこの()()は!?」

 

部屋中に漂う何とも言えぬ()()()臭い。

恐らくはゴミ箱一杯になった()()()が臭いの発生源であろうが、そんな事は後回しで鈴は早速部屋の喚起を行う為に窓辺へ急ぐ。

 

「ちょっとどういう訳よ、これ!?」

「そんなもの私が知るか!!」

 

箒と鈴が知っている織斑 一夏と云う人物は、炊事洗濯掃除等の家事全般を得意としている。

これは外に仕事へ出ている姉・千冬に代わって家の中を切り盛りしていた為なのであるが、今の状況を見る限りではありえない。

この見るからに散々たる凄惨な状況に二人は「まさか、部屋を()()()()!?」と顔を見合わせた。

・・・すると素っ頓狂な顔を惜しげもなく晒す二人の耳へ()()()()()()()()が聞こえて来る。

 

「・・・・・うるさいなぁ・・・!」

「「!?」」

 

ゴミが散乱する中でも()()()()であろう奥の窓近くのベットから聞こえて来た喧騒に対する忌々しそうな()()()の声。

無論、その声に反応した二人はすぐさま声のする方へ目を向けたのだが・・・・・

 

「・・・ッチ。

なんだよ、箒に鈴か」

 

これまた何とも言えぬ()()()がする布団からぼさぼさ頭に目が若干充血した酷くやつれた顔をした世界初の男性IS適正者である織斑 一夏が、大きな欠伸と舌打ちと共にモゾモゾ起き上がって来たではないか。

更に言えば、()()()()である。

 

「ッい・・・い、一夏!?

き、貴様なんだその格好は!!?」

「そ、そうよ一夏!!

あんた一体全体どうして・・・ッ!」

 

「ッチ・・・あのさ、うるさいって言ってんだろ!

頭に響くから喚くなよ!」

 

再び舌打ちと肩を搔きながらこれまた再び欠伸をする一夏は、唖然とする二人に対して「・・・で、何の用だよ?」と余りにもぶっきらぼうな疑問符を投げつけた。

 

「な、何の用って・・・一夏、お前が私からのメッセージを無視するから!」

「そうよ!

私だって何回も送ったのに全部無視するなんてどういう訳?!」

 

「メッセージ?

・・・・・あぁ、あれ?

()()()から電源切ってた」

 

「「う、うざ・・・はぁあッ!!?」」

 

我が耳を疑う一夏の発言に再び唖然とする箒に鈴だったが、どういう訳だか余りにも変わり果ててしまった彼に二人はついついムカムカしてしまう。

 

「一夏、貴様・・・なんだその態度は!

自分を何様だと!!」

 

箒はキレた。

いつもの様に理不尽にキレた。

()()の一夏ならこんな理不尽な怒りにタジタジして自分から折れてしまうだろうが・・・この時の彼は違った。

 

「・・・・・そっちこそ何様のつもりだよ」

 

「ッ・・・な、なに?」

「え・・・・・一夏?」

 

一夏は奥歯を噛んで口をへの字に歪ませて眉間にしわを寄せたのである。

その時の彼の目と云ったらまるで()()()()()()()()かの様な冷ややかなものであったのだ。

 

「ウザいくらいメッセージ送ってくるし、いきなり部屋に入って来たと思ったらギャーギャー喚き散らして・・・・・お前らこそ何様のつもりなんだよ!!」

 

「わ、私は・・・・・私はお前の幼馴染として!」

 

「幼馴染?

なにが・・・・・何が幼馴染だよ!!」

 

「え・・・ッ?」

 

「箒、お前さぁ・・・・・()()()()()

ただの・・・()()()()幼馴染な()()で俺に口出しばっかしてくんなよ!!

もう迷惑してんだよ、こっちは!!」

 

ピシィッ・・・・・と、場が凍った音が響いた気がした。

普段なら決して一夏からは聞こえてこない台詞に鈴は「い、一夏・・・あんた!?」とドン引きしてしまうが、彼女以上に衝撃を喰らっていたのは箒の方である。

 

「お・・・お、重い?

私が、重い・・・だと?」

 

「あぁ、そうだよ。

何度も言うけど・・・お前重いんだよ、箒。

恋人でもないのに一々一々、一から十まで俺がやることなす事アレコレばっか言いやがってッ・・・・・()()()()()()、お前!!」

 

「ちょっと一夏!

あんまりじゃないの!!」

 

「お前もだよ、鈴!

お前ら二人して、何が気に入らないのか知らねぇけど・・・いっつも俺の事をボカスカ殴りやがって!

この暴力女ども!!」

 

「なッ・・・!!?

あ、あんたっ・・・一夏!!」

 

「い・・・一夏、貴様ァ・・・ッ!!」

 

今の今まで心のどこか奥底で溜め込んでいた()()を遂に言ってやったとばかりに声を張り上げる一夏だが、一方の鈴は愕然とし、箒はショックで俯きつつも固く握った拳をフルフル震わせると手にした自前の木刀を―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――・・・・・ちょっと一夏、どうしたの?」

「「・・・え??」」

 

―――箒の()()()()()()が放たれる寸前、()()()()()()()から()()()が聞こえて来たのである。

それも何処かで()()()()()()()()がだ。

 

「一体何の騒ぎなの・・・って、誰かと思えば箒に鈴じゃない。

新年早々相変わらず元気がいいこと」

 

「ッ、え・・・ちょ、ちょっと!?」

「き、きき・・・貴様は!!?」

 

シャワー室から()()()()()()()姿()で現れた声の主を二人は知っていた。

自分達と同じ代表候補生でありながら専用機を()()()()()()にも関わらず、エクスカリバー奪壊作戦が行われた英国まで行動を共にしたサラ・ウェルキン二回生であったからだ。

 

実は・・・このサラ・ウェルキンなる人物。

その正体は、IS学園勢の宿敵と言っても過言ではないファントム・タスクはヨーロッパ支部から送り込まれた諜報工作員なのであるが・・・そんな事を一夏ならびに箒や鈴達が知る由もないし、詳細は割愛させて頂く。

 

「ウェルキン!

どうして貴様が、一夏の部屋に居るッ?

そ、それに・・・なんだそのふしだらな格好は!!」

 

「はッ?

何がふしだらよ・・・別にいいでしょ。

()()()()()なんだから」

 

「「ッ・・・はぁ!?」」と三度声を揃えて愕然とする箒と鈴。

そんな二人を余所にサラは未だ濡れている金髪を振り乱しながら一夏の隣へ移動すると()()()()()()で彼の腰へ手を回す。

 

「ちょ、ちょっとウェルキン!

あんたッ、なに気安く一夏に触ってるのよ!」

 

「気安い?

・・・あぁ。

何よ、一夏。

まだこの子達に言ってなかった訳?

って言うか・・・今の私達を見ても察せない訳??」

 

「何をだ!!」

 

「ッ・・・うるさいわね。

でもいいわ。

箒に鈴、私と一夏ね・・・エクスカリバー事件の後、()()同士になったのよ」

 

「「・・・・・・・・は??」」

 

・・・何処か得意気なサラの言葉に声を揃える箒と鈴だが、その声は今までのものとは比べるまでもなく()()であり、また表情も四白眼でピクピクまぶたが痙攣していた。

 

「は・・・ははっ・・・・・ははは!

何を言うかと思えば・・・戯言を!」

「そ・・・そうよ!

いくらイギリスまで一緒に行ったって言っても・・・出会ってそんなに時間も経ってないじゃないの!」

 

「そうだとも!

それに・・・一夏がお前の様なふしだらな女に靡く訳がない!!

そうだろう一夏??

 

突如として放たれた受け入れがたい文言に二人の観目麗しい二人の少女達はとても目も当てられぬ酷い表情を晒した後、すぐにそのハイライトのない眼球をギョロリと自分達の想い人へ向ける。

然らば、異様な目を向けられた男は・・・一夏は少し二人から目を逸らしながらも意を決した様に顔を締めて言い放つ。

 

「・・・あぁ。

あぁ、そうだよ!

俺は今・・・彼女と、サラと()()()()()()

サラは俺の彼女、恋人だ!!」

 

「ッ、い・・・いい、一夏!?」

「あ・・・あんた、一夏!

言っていい冗談と悪い冗談が!!」

 

「冗談なんかじゃない!

俺は・・・俺はサラの事が好きなんだ!!

だから俺はサラと恋人になったんだ!!」

 

一夏の激烈な肯定文に()()()()を示す箒と鈴だが、彼はダメ押しとばかりに捲し立てる。

一見してそれは惨い行為にも見えた。

 

「まぁ、一夏ったら情熱的ね!

むチュゥッ♥

「「!!」」

 

真剣な表情で自分の発言を肯定した一夏に気を良くしたサラは、ショックに震える二人の目の前でこれ見よがしに彼の唇を()()かの様なキスをする。

それもただのキスではない。自らの舌を相手の口腔内へ差し込んで、くちゅくちゅ舌を絡ませ、ぴちゃぴちゃ歯茎を舐め回すかの様な情熱的で濃密なキスであった。

 

「ッ、んンっ!」

 

「あら♥

一夏ってば、また()()()()()()()()

あれだけ()()()()()・・・本当、かわいい♥」

 

「なっ・・・な、なな・・・何してんのよ、ウェルキン!!」

 

自分の目の前でサラの()()()手付きの餌食となる一夏に顔を真っ赤にする鈴だったが、そんな彼女を鼻で笑う様にサラは言い放つ。

 

「ナニって・・・そんなのSEXに決まってるじゃない」

 

「せ、せく・・・せっく・・・!!?」

 

「私達、冬休みの間中・・・ずーっとベットの中で()()()()()()()の。

もちろん今朝もね。

だから体も()()()もベトベト。

・・・どういう意味か解る?」

 

得意気に舌なめずりをするサラの笑顔のなんと妖しく艶やかな事か。

しかも隣では「や、やめろよサラ・・・!」と恥ずかしそうに顔を赤らめる一夏がいる為、鈴の表情を苦悶にするには十二分過ぎた。

そんな渋柿と苦虫を嚙み潰した様な表情を晒す彼女の隣で―――――

 

「・・・・・・・・だ・・・・・そだ・・・!」

 

「え?

何よ、箒?」

 

うそだ!!

 

箒はポニーテールを振り乱して泣き叫ぶ様に歯茎を露わに声を震わせると再び一夏へ目を向ける。これでもかと白目を見せつけるかの様な四白眼でだ。

 

「ほ、箒・・・?」

 

ちがう・・・・・ちがう、ちがう・・・ちがう!

い、いちか・・・ちがうだろう、いちか!

おまえは・・・おまえが・・・・・!!

 

気付けば箒は無意識であろうか、ぼろぼろ、ぼたぼた滂沱の涙を流しながら縋り付く様に一夏へ手を伸ばす。

・・・・・ところがだ。

 

「・・・やめろよ、箒。

みっともねぇぜ」

 

い、いちか・・・!!?

「箒!!」

 

一夏は冷たく彼女をあしらったのである。

伸ばした腕を振り払われた箒は力なくゴミ溜めの様な床へ打ちひしがれてしまうが、そんな痛々しい箒へ向けて()()たるサラが言い放つ。

 

「ほら、これでわかったでしょ?

わかったならさっさと出ていきなさい!」

 

「ッ・・・ウェルキン、あんたねぇ!!」

 

サラは高笑いの一つでもしたい程に気分が良かったのだろう。

だからなのか、少しばかり調()()()()()()()()()()のだ。

・・・これが良くなかった。

 

「・・・・・・・・えの・・・・・いだ・・・」

 

「ほ、箒?」

「え?

なに?

負け惜しみ?」

 

おまえの・・・・・おまえのせいで・・・おまえのせいで、いちかはぁああっ!!

 

サラの放った言葉は鏃となって箒の心を抉る。

それがただでさえ高い気位プライドを持つ彼女の激情に触れてしまった事で、箒は激昂に身を任せて自身の専用機、紅椿を展開し―――――

 

 

 

 

 

―――◆◆◆―――

 

 

 

「―――阿ー・・・そんでもって、紅椿の暴走・・・・・いんやこの場合は、感情的になった篠ノ之による()()行為によって、現場となった学生寮の一室ならびに両隣三部屋が()()

現場に居た部屋主の一人、織斑 一夏が応戦するも同居人のサラ・ウェルキンが全治二週間の負傷。

・・・怪我はしたが、死なんかっただけ幸いじゃけれども、うん・・・・・アレじゃな・・・「OH MY F〇CK‼」って訳か!

あのボケカス共がッ!!」

 

何回も何回も目を通す度に口汚い台詞を並び立てる春樹に対し、「あはは・・・そうね~・・・」と苦笑いを浮かべるのは彼の向かい側に座る楯無。

 

「そ、それでね春樹く~ん?」

 

「いやじゃ。

おえん。

知らん。

はいッ、この話終わり!

俺ァ帰るでよ!!」

 

「待って待って待って待って待って待って待って!!」

 

今先ほど読んだ報告書に加えて、生徒会室の机上には幾つもの書類の山が積み重なっている。

然らば、面倒臭い事が待ち構えている事は必然。

しかも―――――

 

「待たん!!

それにじゃ、それに!

なしてッ・・・なして()()()がここに居るんじゃ!!」

 

両眼から金の焔を零す戦闘態勢状態の春樹がガナリ立てて指差す先に居たのは、さも平然と当たり前の様にIS学園生徒会書記係たる布仏 虚が淹れた絶品特製紅茶をすする一人の女子生徒。

 

「―――・・・少しは落ち着いたらどうだ、()() ()()()

それにまだ紅茶に手を付けていないではないか。

美味しいぞ。

こんなにも紅茶を美味と感じた事がないくらいにな」

 

「・・・生憎と、俺の事を最低三回も()()()()()()()()()人間の前で優雅に茶をすすれる度胸はないんじゃ、俺ァ。

ツーか、布仏先輩の紅茶が美味いんはコーラを飲んだらゲップするくらい確実な程に美味い事は知っとらぁな!!」

 

その未だ新品の香りが匂い立つIS学園制服を着込むあの()()()()()()()を思わせる黒髪少女は、幾度となく春樹へ刃を向けて来た元ファントム・タスク構成員の『M』こと織斑 マドカであったのだ。

 

「おいコラ、楯無!

なしてここに()()()()()が居るんなら!

エクスカリバー事件の後、ICPOに引き渡されたんじゃねぇんか!!」

 

「それは簡単な事だ、清瀬 春樹。

エクスカリバー事件の後、私は更識家を通して日本政府に司法取引をしてな。

ファントム・タスクの情報や各国の機密情報を受け渡す代わりに身の安全を保障して貰う事になった」

 

「それがなして、オメェが学園に居る事と関係あるんじゃ!?」

 

「ん?

なんだ知らないのか、清瀬 春樹?

IS学園は世界でも有数の高セキュリティを誇る場所だからに決まっている」

 

コテンと首を傾げるマドカに対し、春樹はギリギリ奥歯が砕ける程に歯噛みをする。

春樹本人としては、今まで何度も自分の命を狙って来た人間が傍へ転がり込んで来た事に危機を感じた事であろう。

 

「まぁ、清瀬 春樹。

お前と同じ様に織斑 千冬・・・()()()も私が学園へ転入する事には反対していたらしいのだがな。

よく言うだろう?

『危険な者程、手元に置け』とな」

 

「あったっけか、そんな言葉!?」

 

「・・・もうやめろ、春樹。

話が前に進まん」

 

平行線をたどる話に口をへの字に歪ませる春樹だったが、これでは一向に話が進まないと側に陣取っていたラウラが彼を抱き込んだ。

 

「・・・それで、楯無会長。

貴様は春樹に・・・私達に何をさせようと言うのだ?」

 

「えッ?

え、あぁ・・・えっとね春樹くん達には、生徒会の仕事を()()()()もらいたいなぁ・・・って」

 

「じゃけんそりゃ無理じゃっちゃ!」

 

ラウラに膝枕されて頭を撫でて貰う事で落ち着きを取り戻したとは言え、牙を剝き出しに威嚇する春樹。

 

「俺は・・・いや、俺と簪さんは次世代型量産IS計画で試作機を携わる事になるけん、忙しゅうて無理じゃっちゃ!!」

 

春樹の言い放った文言に「うんうん」と頷いた更識 簪は「だから・・・お姉ちゃんに構ってるヒマない」と()()()を刺すのだが、楯無は血を吐く思いをしながら尚も()()()()()

 

「そこをなんとかお願い!

それに私のお願いを聞いてくれたら・・・お姉さん、春樹くんの為になんでもしてあげる♡」

 

「結構です。

間に合ってます」

 

「ちょっと春樹くん!!?」

 

「うふん♡」と渾身の色目を向ける楯無だったが、代わりに返って来たのは冷淡な春樹の返答。

それでも彼女は諦めない。

懐柔がダメならば―――――

 

「ッ・・・あぁそう!

お姉さんに対してそんな態度とっちゃうんだ!

でも・・・いいのかなぁ~?」

 

「阿?

何ならな??」

 

「春樹くんがシャルロットちゃんにも()()()()()事をよ!

ヴァルキリー・アプレンティス大会の後、君がフランスに行ってシャルロットちゃんと()()をしてたか、お姉さん・・・知ってるのよ!!」

 

「た、楯無会長さん!?」

 

楯無は更識家の情報網によって知った春樹とシャルロットの()()をネタに脅迫して来たのである。

IS学園生徒会長・・・いや、対暗部暗部組織の更識家の当主であろう者が何とも卑劣な行為をしたか。

これには彼女と親しい間柄の簪や虚もおろか、本音でさえもドン引きで、シャルロットに至っては顔を真っ赤にして慌てふためいた。

・・・・・ところがどっこい。

 

「阿ん?

いや、別に構わんでよ」

 

「・・・・・へ・・・??」

 

ラウラに膝枕で頭を撫でられながら春樹はいけしゃあしゃあ言い放ったのだ。

勿論、この彼の発言に周囲は一時唖然となってしまうが、更に春樹はこう続けた。

 

「俺がラウラちゃんだけじゃのーて、シャルロットにも手を出した事は・・・()()()()た事は、事実じゃけんね。

その事をネタに()()()()()事は想定済みじゃ。

じゃけども楯無・・・いや、()()よ?

俺に対して、そねーな事をしようとして来た連中に俺が()()()()()()か・・・知らん訳があるまい?

 

膝枕から身を起こしつつ春樹はギョロリと金色に燃える()()()を楯無へと向けて()()()()口を下弦の月へ歪ませる。

・・・因みにだが、『笑顔』とは本来は敵に対する()()()()に由来すると言う説がある。

そんな凶悪な笑みを見せられた楯無は、ゆっくりと―――――

 

「―――ご・・・ごめんなさい!

出過ぎた真似を致しました!!」

 

「ははぁーッ!」と深々と首を垂れる楯無に簪と虚は大きく溜息を吐き、本音とセシリアは「お・・・おぉーッ」と感嘆符を漏らし、シャルロットは顔を真っ赤にして「は・・・はるき♡」とうっとり蕩けた。

 

「ははははは!

流石は清瀬 春樹だな!

更識 楯無、この男を敵に回せば至極手強いのは私が保証してやろう!」

 

「そうだろう、そうだろう!

私の酔っ払い・・・春樹を脅そうなどとは、片腹痛いな!!」

 

春樹の強気な態度にどういう訳か鼻高々なマドカとラウラ。

そんな二人の自信満々な声援に気を良くした春樹は口端を更に歪めて楯無へこう畳みかける。

 

「あとさ、刀奈・・・お前、まだ俺に()()()()()()あるじゃろ?」

 

・・・異形の目を晒す春樹からの疑問符に対し、面を上げた楯無は苦笑いをしつつ―――――

 

「・・・・・・・・テヘぺろ♡」

「・・・生皮剝ぐぞ、テメェッこら!」

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆

…ワンサマー氏と和解すべきだと思う人ー?

  • はーい!!(^^)/
  • えー!?(・_・;)
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