IS/Drinker   作:rainバレルーk

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今年は色々とあり過ぎました。
自分自身、流行疫病に罹ったりしたので、来年は平穏無事に過ごしたいです。
・・・と、言う訳で本年最後の投稿です。
若干、駆け足なのは悪しからずです。
あと・・・・・鈴ファンの人すみません。



第238話

 

 

 

最初に言っとくが、これはものスゴく個(・)人(・)的(・)な考え・・・ホントにものスゲェ個(・)人(・)的(・)考(・)え(・)なんじゃが、日本の対(・)象(・)国(・)・・・つまり仮(・)想(・)敵(・)国(・)との距離は非常に近い。

天然の要害である海が周囲にあるとは言え、これは由々しき事態ではなかろうか。

 

そいじゃけん俺は今回の防衛省へのコンペティションで、それを踏まえた開発計画を進めとったんじゃが・・・あ(・)の(・)当(・)時(・)の(・)俺(・)は酷く根を詰めとった。

昼と夜となく機体と武装開発に頭を悩ませとったし、一応は学生身分じゃったから勉学にもいそしんどったし、じゃからと言ってラウラちゃんやシャルロットと過ごす時間を犠牲にしとうなかったけん、必死になとった。

 

・・・あ(・)の(・)時(・)の(・)俺(・)は、でぇれー酷う気(・)分(・)が(・)立(・)っ(・)と(・)っ(・)た(・)。ムシャクシャしとる状態じゃった。

じゃけぇ折角、シャルロットの膝枕で僅かばかりの心地良さを味わとったにも関わらず、「にゃーにゃー、にゃーにゃー!」泣き喚く小(・)猫(・)に起こされた俺の気分はマジで最悪じゃった。

控えめに言うて、布仏先輩からのブランデー入り紅茶が差し出されんかったらブ(・)チ(・)回(・)し(・)と(・)っ(・)た(・)くらいには最低の気分じゃ。

 

そんなこんなでヤン・ウェンリー気分で起き抜けのティーロワイルブランデー入り紅茶を堪能して気分を持ち直した後、ぐすんぐすん泣く小猫の言い分を聞いてやったんじゃが・・・今思えば、小猫からの話を聞いた後のあの時の俺の行(・)動(・)は、もうちょっと考えときゃ良かった。

ハッキリ言うて、頭(・)が(・)足(・)ら(・)ん(・)かった。

赤い彗星シャア・アズナブルの言葉を借りるなら―――――

 

「認めたくないものだな。

若さゆえの過ちというものは」

 

―――みたいな感じか?

・・・・・ちょっと違うか??

じゃけども話を聞いた俺は、自分から進んで面(・)倒(・)事(・)に首を突っ込みに行っちまった。

疲労と神経衰弱と思ったよりもブランデーが多めじゃったティーロワイヤルの酔いのせいじゃと思う。

 

 

 

 

 

―――――◆◆◆◆◆―――――

 

 

 

「やーい!

パ(・)ン(・)ダ(・)女!」

「”りんりん”だって、変な名前だなぁおい!」

 

・・・私をからかうバカな男子どもの声。

今でも覚えてる忘れたくても忘れられない嫌な記憶。

 

日本の小学校へ転校したあの時の私、凰 鈴音は下の名前を理由にいじめにあった。

今だったらそんなバカな連中の軽口なんて無視すれば良かったんだけど・・・あの時の私は今よりももっと負けず嫌いだったし、初対面の相手にからかわれるのもムカついて仕方なかった。

だから私、そいつらをわ(・)か(・)ら(・)せ(・)る(・)事にしたんだけど・・・あいつら徒党を組んで私を袋叩きにしようとしたのよ!

本当信じらんない!!

・・・だけど、その時―――――

 

「お前らやめろよ!

寄ってたかって・・・それも女一人によ!!」

 

周りは日和って見て見ぬふりしてた中、一人だけ髪を引っ張られて突き飛ばされた私を守ろうとバカどもに立ち向かっていった男がいたの。

 

バカみたいだけど正直に言うとね・・・一(・)目(・)惚(・)れ(・)だったのかも。

小さい頃に見たピンチのお姫様を助ける為に颯爽と駆けつけてくれた王(・)子(・)様(・)に見えたの。

多勢に無勢だったけど私の為に怒ってくれた事がうれしかったのよ。

でも・・・ボコボコにされちゃったんだけどね。

それにボコボコにされたアイツを助け起こした時、偶然にも胸を掴まれちゃったから思わず顔面にグーパン叩きこんじゃったし・・・

それがアイツとの・・・織斑 一夏とのファーストコンタクトで、恋に落ちた瞬間だったの。

 

それからの四年間は本当に色々あって楽しかったわ。

千冬さんは怖かったけど、お互いの家を気兼ねなく行き来してたし、一緒に過ごす時間も多かったんだけど・・・一夏の唐(・)変(・)木(・)さには頭を抱えたわ。

 

アイツってば千冬さんに似て端正な顔立ちで天然ジゴロだったから色々と他の女子達からアプローチされてたんだけど、引くくらい鈍かったの。

ついたあだ名が「唐変木・オブ・唐変木」。

・・・あ(・)ん(・)な(・)事(・)があって、私が日本から離れる事になって、その時にアイツへ向けて言った「料理が上達したら・・・毎日、私の酢豚を食べてくれる?」っていう渾身の告白も「酢豚を奢ってくれる」ってわけわかんない風に受け取ってぐらいに鈍感!

ほんと、マジで意味わかんない!!

 

・・・・・だけど、そんな唐変木の一夏だけど、私は一夏と離れ離れになって本当に悲しかったし、寂しかった。

私は、そんな鬱憤をぶつけるみたいに適性検査で高い適性がある事がわかったISにのめり込んだの。一年ポッチで専用機持ちの代表候補生になるくらいにね。

 

だから、一夏が世界初の男のIS適正者としてニュース報道された時は本当に驚いたの。

前々から軍部の偉そうにふんぞり返ってるオッサン達からIS学園へ入学する事を勧められてたから渡りに船って感じで、私は学園に入学する事を決めたのよ。

 

でも、ちょっと入学手続きとかで手間取っちゃって、途中入学になっちゃたから私が来た時には一夏の天然ジゴロにやられた女子共がチラホラで、しかも私とは違う幼(・)馴(・)染(・)もいるって言うじゃないの!

今度こそ一夏に想いを告げるって決めた私としては負けられないわ!!

 

・・・・・って、思ってた。

思ってたのよ、バ(・)カ(・)な(・)私(・)は。

・・・何度も何度も懲りずに学園を襲って来る不届き者をやっつけて、私達の行く場所行く場所にわくトラブルを解決して来て、一夏と絆を深めてたって思ってたのは、私だ(・)け(・)だった。

あの女、サラ・ウェルキンは、私が・・・私(・)達(・)が積み上げて来たものなんて嘲笑う様に一夏をも(・)の(・)に(・)し(・)て(・)し(・)ま(・)っ(・)た(・)の。

あれほど恋焦がれて、想い続けていたアイツに・・・一夏に力強く抱かれていたのは、私(・)達(・)じゃなくて、あの女だった!

 

・・・悔しい。

すごく、すごくすごく・・・すごく悔しい!

あんな女なんかより、私の方が一夏を好きになったのに!

あんな女なんかより、私の方が一夏の事が好きだったのに!!

 

・・・・・でも・・・私、箒(・)の(・)様(・)に(・)は(・)出(・)来(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)。

いつもの様に感情に身を任せて、一夏をぶ(・)っ(・)て(・)や(・)れ(・)ば(・)よ(・)か(・)っ(・)た(・)のよ!

だけど・・・だけどっ・・・!

 

―――――「俺は・・・俺はサラの事が好(・)き(・)な(・)ん(・)だ(・)!!

だから俺はサラと恋人になったんだ!!」

「い、一夏・・・」

 

一夏はそう私(・)達(・)、私と箒に向かって叫ぶ。

その時・・・私、わ(・)か(・)っ(・)た(・)の(・)。

もう自分の出(・)る(・)幕(・)は(・)な(・)く(・)な(・)っ(・)た(・)・・・って。

もう一夏の視界には、私や箒は映っていなかったってわかったの。

 

その後は・・・・・私以上に目の前の出来事が受(・)け(・)入(・)れ(・)ら(・)れ(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)箒から一夏とあの女を不本意ながら守る事になったって訳。

 

私自身、どうして箒の暴走を止めようと思ったのかわからない。

今思えば、箒と一緒になって一夏をブッて、あの女を引っ叩いてやれば良かったんだけど・・・もう手遅れよね。

 

だけど・・・だけど未練がましいわね。

私は、せめてあのムカつく女、サラに文句の一言でも言ってやろうと事が終わった後、保健室に向かったのよ!

・・・・・でも・・・

 

「あっ・・・あぁ・・・さ、さらッ!」

サラぁっ!!」

「じぅ・・・じゅぷぉ❤

ふふ、可愛いわね一夏❤」

 

怪我をしたって事で保健室に運ばれた筈のあの女は、またを開いた一夏に奉(・)仕(・)していたの。

箒のせいで怪我したなんて嘘っぱちで、二人して保健室で乳繰り合ってたのよ・・・ッ。

 

「・・・っ・・・・・きもちわるい・・・!」

 

だらしない・・・よだれでも垂らした蕩け切った顔の一夏を見て、吐き気がもよおした私は急いでトイレに駆け込んで胃の中を空にした。

お腹の中でグルグル渦巻く気持ち悪いものを便器の中へ・・・吐いて、吐いて、吐いたの。

でも・・・気持ち悪さが治まる事はなかったわ。

それから何を食べても、何を飲んでも味がしなくなった。

 

「うっ・・・うぅ・・・ッ・・・!」

 

苦しかった。

ジクジク胸の奥が痛くて痛くて、どうやって息をしていたのか、わからなくなるくらいに辛かった。

・・・だけどその内、涙は枯れて、私は空虚になった。

あんなに苦しくて辛くて痛かった胸の中が穴でも開いたみたいになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな・・・そんな空っぽになった私の所にア(・)イ(・)ツ(・)はやって来たの。

まるで・・・心の隙間に這いこむ蛇(・)みたいに。

 

 

 

 

 

―――――◆◆◆◆◆―――――

 

 

 

「―――――・・・今更何しに来たのよ?」

 

固く閉じられた部屋の前で仁王立ちするのは、金髪碧眼でグラマラスな女生徒、ティナ・ハミルトン。

そんな冷たい目をする彼女に相対するのは、カチカチ歯を鳴らす白髪金眼で悪人顔の男子生徒、清瀬 春樹。

その後ろには、オレンジブロンドの女生徒、シャルロット・デュノアがオロオロと不安そうな顔をしていた。

 

「何ぃって・・・鈴さんの様子見に」

 

「・・・あれから何日たってると思ってるのよ?

その間、鈴はね!」

 

「解っとるよ。

じゃけども俺にも色々とやる事があったんじゃ。

それに・・・小(・)猫(・)に泣き付かれるまで、俺もまさかこんな状態になっとるとは思わんかったんよ」

 

「ッ、清瀬・・・アンタ!!」

「ちょっと待ってよ、ティナ!」

 

いけしゃあしゃあとのたまう春樹の胸倉をティナは掴むのだが、その間にシャルロットが割って入る。

勿論、鈴はおろか箒の情報は生徒会を通じて春樹の耳に入っていたのだが、抱え込んでしまった仕(・)事(・)と頼んでもないにも関わらずやって来た面(・)倒(・)事(・)のせいで後回しにしていた。

 

・・・・・いや・・・実を云えば、春樹は勝手に思っていたのだろう。

箒は兎も角、鈴ならば、自分達が何もしなくとも勝(・)手(・)に(・)立(・)ち(・)直(・)る(・)のだと思(・)い(・)込(・)ん(・)で(・)い(・)た(・)のだ。

 

「・・・・・もっと早う来るべきじゃった。

俺も勝手に思うとったんじゃ。

鈴さんは、強(・)い(・)人(・)間(・)じゃけん大丈夫じゃろうって・・・勝手にな」

 

「・・・・・ッチ・・・」

 

短い舌打ちの後、「・・・頼んだわよ」と小さく吐き捨てたティナはそっぽを向いて扉前から離れる。

そして、道を道を譲られた春樹は扉の前へ立つと軽快に手をスナップさせた。

 

「Knock、Knock!

鈴さん、いるかい?

話、聞きに来たんじゃけどもぉ??」

 

先程の真剣な表情から打って変わって軽薄な態度の春樹にシャルロットは「ちょっと春樹!?」と焦りを見せるのだが、幾ばくかの沈黙の後、カチャリ扉が開く。

鍵を閉め忘れていたのか、それとも最初から開いていたのかは定かではないが、春樹は部屋へと足をいれる。

 

部屋の中は薄暗く、埃っぽさを感じた。

床には乱雑に散らかった生活用品や食品容器が転がっており、足の踏み場を確保しながら歩めば、奥の窓辺付近へ設置されたベッドの上に膝を抱え込んで突っ伏す人影が一つ。

 

「・・・・・あんたたち・・・」

「ッ、鈴・・・!!」

 

訪問者に対して向けられた鈴の表情にシャルロットは目を白黒させる。

そこにいつもの快活で明るい顔はなく、同一人物とは思えぬ陰鬱な雰囲気が漂っていたのだ。

酷い変わり様の彼女に驚きつつもシャルロットは鈴へ駆け寄ろうとしたのだが、これを春樹は無言で制すると鈴と対角線上になる様にベッドの端へ腰を据えた。

そこから幾ばくかの無言の時間が経過する。

その重苦しい空間で流れる時間はとても息が詰まるもので、すぐ近くで二人の様子を見ていたシャルロットは水の中で溺れる様な感覚に陥る程であった。

 

「・・・なにしに来たのよ?」

 

先に口火を切ったのは鈴の方だった。

彼女は突っ伏した状態で吐き捨てる様に疑問符を投げかける。

すると疑問符を投げかけられた春樹は「う~ん」と軽く頭を傾けた後、口を開く。

 

「君ん所の小猫・・・もとい、君の従妹に泣き付かれちまってね。

そんでもって様子を見に来た」

「ちょっと春樹・・・!?」

 

春樹のあっけらかんとした物言いにシャルロットは渋い顔をするのだが、対する鈴は無気力状態でありながらも春樹の方へか細い声をやる。

 

「そう・・・それは、迷惑をかけたわね。

だけど・・・だいじょうぶよ。

あたしは、だいじょうぶ・・・だから、もうほうっておいてよ」

 

「そんなっ・・・そんな事できないよ!

ほうっておける訳ないじゃないか!!」

 

鈴の繕いの文言にシャルロットは声を張った。

それは彼女が傷心を負った友を心から心配しての言葉であった。

・・・けれども―――

 

「じゃあ、なに?

あたしのこと、笑いにでも来たわけ?

ほ(・)か(・)の(・)連(・)中(・)と(・)同(・)じ(・)様(・)に(・)さ!」

 

「り・・・鈴?」

 

シャルロットの声が鈴に届く事はなかった。

「人の口に戸は立てられぬ」とは言ったもので、学生寮での一件の後、前々から鈴の事を良く思っていなかった連中がこれ見よがしに彼女に対する陰口をたてたのである。

 

鈴の編入時から彼女に対するヘイトスピーチは少なからずあったが、鈴の性格上その様な戯(・)言(・)は気にしていなかったし、尚且つ一夏の事が気になっていてそれ処ではなかったからだ。

しかし、いざ学生寮での一件の後、否が応でも刺々しい言葉達は傷を負った鈴の心を容赦なく確実に抉(・)っ(・)た(・)。

最初は「負けるもんか!」と虚勢を張って平気な顔をしていた鈴だったが、時折見る・・・見(・)て(・)し(・)ま(・)う(・)一夏とサラの仲睦まじい姿に心労を負わされてしまい、そこへ畳み掛けるが如く突き刺されるヘイトに遂に鈴の心は挫かれてしまったのである。

 

「そんなッ・・・ち、違うよ!

ボクは鈴の事が心配で!!」

 

「しんぱい?

あぁ・・・勝(・)者(・)の(・)余(・)裕(・)ってわけ?

聞いてるわよ、シャルロット・・・あんた、春樹とた(・)だ(・)な(・)ら(・)ぬ(・)関(・)係(・)になったんだってね?」

 

「そ、それは・・・えへへ❤」

 

「ッ・・・照れてんじゃあないわよ!」

 

頬紅を染めるシャルロットに鈴はムカッ腹が立って仕方がない。

歪(・)な(・)が(・)ら(・)も(・)自分の欲する関(・)係(・)を手に入れたシャルロットとあれ程までに欲した関係を手にする事が出来なかった鈴。

両者は正に対局の位置にいた。

 

「わらい・・・わらいなさいよ!

わらえばいいわ!!

ほかのヤツらと同じように負(・)け(・)犬(・)だって、わらいなさいよ!!」

 

「り、鈴・・・」

 

同情とは時として惨いものだ。

時としてはそれは蔑まれる事よりも屈辱的である。

鈴は、悔しくて悲しくて恥ずかしくて憤っていた。

酷く重たくて苦くて渋い感情がグルグル腹の中を駆け巡って不快で不快で仕方がなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――・・・調度、その時だった。

 

「阿破ッ・・・阿破破、阿―――ッ破ッ破ッ破ッ破ッ破ッ!!」

「えっ・・・?」

 

淀んだ部屋へ突如として響き渡った奇(・)天(・)烈(・)な(・)笑(・)い(・)声(・)。

勿論、こんな相手を心底煽るふざけた嘲笑を出す者など一人しかいない。

ベッドの端に腰を据え、天井へ向かって吠える大(・)蛇(・)の様に大口開けて笑っている春樹。

無論、その嘲笑が自分に向けられている事を察知した鈴から睨まれてしまうのだが、当の本人ははばかりなく笑い続けた。

 

「春樹、あんたッ・・・なにが、おかしいのよ!」

 

「破ッ破阿―――・・・何、ちぃっとばっかお(・)か(・)し(・)い(・)点(・)があったもんでな。

思わず、吹いちまった訳じゃ」

 

「おかしい点って・・・春樹、鈴にそんな事言ったの?」

 

「応よ。

さっき鈴さんは、こう言うた・・・「他のヤツらと同じ様に負(・)け(・)犬(・)だって、笑いなさいよ」ってね。

それが、ちょっとおかしゅうてね」

 

愉快そうにケラケラ両肩を震わせる春樹に対し、「なにが・・・なにが、おかしいっていうのよ!!」と鈴の不機嫌で不快そうな怒号が響くのだが、相も変わらず彼はニッカリ歯を見せつつのたまう。

 

「鈴さんや、何か勘違いをしとるようじゃけん教えてやるわ。

負け犬の負(・)け(・)犬(・)た(・)る(・)所(・)以(・)は負(・)け(・)た(・)からじゃねーんじゃ。

戦(・)っ(・)て(・)負(・)け(・)た(・)けん、戦(・)わ(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)連中に負け犬って呼ばれるんじゃ。

まぁ、要するに・・・戦わんヤツは、負(・)け(・)犬(・)に(・)も(・)な(・)れ(・)ん(・)のじゃ!」

 

「―――って、人の受け売りじゃけどね」と言葉の最後を締めくくった後、春樹は鈴へ指を差して吐き捨てる。

「君は戦(・)っ(・)た(・)んか?」と。

 

「ッ、な・・・なによ!

あ・・・あたし、あたしだって・・・ッ!!」

 

「じゃあ、直にあの糞野郎・・・もとい、糞(・)ッ(・)タ(・)レ(・)鈍(・)感(・)屑(・)の織斑に好(・)意(・)を伝えたか?

私は貴方が好きですって、貴方を私は愛していますって言うたか?

・・・シャルロットは言うたぞ!」

 

「は、春樹!?」

 

「シャルロットは俺に言うてくれた。

「君の事が好き」じゃって、「君の事を愛してる」って、恥ずかしげもなく火の玉ドストレートって言うてくれたんじゃ!」

 

「ちょ・・・ちょっと春樹っ・・・は、恥ずかしいよぉう」

 

突然自分の事を話題に出されて動揺するシャルロットだが、春樹はお構いなしに何(・)故(・)か(・)得(・)意(・)げ(・)に(・)紹介する。

 

「鈴さん、君はシャルロットにこう言うたな?

勝者の余裕、ってよ?

正しくその通りじゃ。

シャルロットは戦(・)っ(・)た(・)。

そんでもって勝(・)っ(・)た(・)!

余裕があるのも当然と云う訳じゃ!

それに比べて・・・君はどうじゃ、鈴さん?」

「・・・・・」

 

暗に「嘆くには早い」と言わんばかりに再び鈴へ指差す春樹。

しかし、彼女からの返答はなく、代わりに春樹のカチカチ歯を鳴らす音ばかり木魂する。

このだ(・)ん(・)ま(・)り(・)に彼は業を煮やした。

 

「ッ・・・!!

(何とか・・・何とか言えよぅ、凰 鈴音!)」

 

表には出さねど春樹は歯噛みする。

彼はどういう訳だか自分でも知らんが、悔(・)し(・)く(・)て(・)堪(・)ら(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)。

目の前の女が、絶望して悲しみに埋もれて苦しむ顔を見るのが嫌(・)だ(・)っ(・)た(・)。

然れども春樹は、自分の指が掌へ食い込む程に拳を固く握りしめている事に気づくと一つ大きく溜息を吐く。

 

「・・・・・そうか。

あぁ、そうか。

本(・)気(・)じゃなかったんじゃな?」

 

「・・・・・・・・なんですって?」

 

聞(・)き(・)捨(・)て(・)な(・)ら(・)ぬ(・)一(・)言(・)にピクリ耳を動かした後、鈴はキロリと春樹へ鋭い視線を送る。

その目の奥に彼は何(・)か(・)を感じ取って心内でほくそ笑む。

 

「本気じゃなかったんじゃろ?

じゃけぇそねーにウジウジしとるんじゃろう?

過去の美(・)し(・)い(・)思(・)い(・)出(・)を壊しとうないけん、本当は好(・)き(・)で(・)も(・)な(・)い(・)男(・)を無理に想っとるだけなんじゃろう?」

「ッ、春樹あんた!!」

 

「鈴!?」

 

春樹の胸倉を掴む鈴。

しかし、その手は彼の万力にかかれば簡単に圧し折れる程にか細く、顔色は土気色で目の下にはくまが刻まれている。

けれども・・・春樹を睨む瞳は怒(・)り(・)の感情がメラり燃えていた。

 

「とりけし・・・取り消しなさいよ!

あたし・・・私がどんな思いでアイツの事を、一夏の事を思っていたのか知らないくせに!!」

 

「知らんな、そねーな事!!」

 

声色に正気が戻って来た鈴の手を振り払った春樹は、随分と癪(・)に(・)障(・)る(・)笑顔と共に言い放つ。

 

「鈴さん。

俺が底(・)意(・)地(・)の(・)悪(・)い(・)野郎じゃって言う事は知っとるじゃろう?

それに言葉だけで俺を納得できる程に君が口が回るとは到底思えん!」

 

「じゃったら・・・どうする?」と春樹は口端を吊り上げる。

「どねやって俺をわ(・)か(・)ら(・)せ(・)る(・)?」と蟒蛇は嘲笑う。

すると・・・鈴は、歯を食いしばって叫んだ。

 

「私とッ・・・私と決(・)闘(・)しなさい清瀬 春樹!

その減らず口、私が叩き直してあげるわ!!」

 

その叫びに蟒蛇は終ぞニタリ歯を見せるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆
それでは皆々様方、良い御年をお迎え下さい。
来年もハーメルンでよろしくお願いいたします。

…ワンサマー氏と和解すべきだと思う人ー?

  • はーい!!(^^)/
  • えー!?(・_・;)
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