IS/Drinker   作:rainバレルーk

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謹賀新年。皆様、あけましておめでとうございます。
本年もどうかIS/Drinkerよろしくお願いいたします。
本年一発目は短いですが、どうぞ良しなに。



第239話

 

 

 

()()()()()()を探し、恋に破れた傷心の凰 鈴音へ()()()()を叩きつけた清瀬 春樹。

その煽り文句と随分()()()()嘲笑のオカゲで、意気消沈していた鈴の心内にメラメラ焔が灯る。

こうして春樹が売った()()を買い叩いた鈴は、彼をボコボコにするの為に備え始めたのだった。

 

「むぐむぐ・・・っ、おかわり!」

 

まず彼女が打倒春樹の為に行ったのは、()()()()()

憎たらしいあの男に向けて『決闘』の二文字を叩きつけた時、鈴は自分がとても腹が減っている事に気づく。

その際、不覚にも腹の虫が唸り声を上げると共に思わず体がフラフラふらついてしまった鈴へ対し、春樹はこう指摘した。

 

「ッ・・・破破破!

そんなザマで俺に勝てるとでも思っとるんか?

阿破破ノ破!!」

 

・・・むかっ腹が立った。

腹が減っているからか、余計にムカムカ腹が立つ。

そんな呵々大笑で自分を嘲笑った春樹の背を歯噛みして見送った鈴は、空腹で目を回しながらも大声で呼びつけたルームメイトのティナ・ハミルトンの肩を借りて食堂へと向かう。

 

「ちょ、ちょっと鈴!?

そんな一気にかきこまなくても・・・ッ」

 

「いいのよ、別に!

私は大丈夫だから!」

 

今の今まで自室に引きこもっていた鈴が、何の前触れもなく食堂に現れて片っ端から飯をかっ食らう姿にティナは勿論の事、周囲の皆はビックリ仰天。

 

「血・・・血が足りないわ!

ティナ、悪いけどジャンジャン料理持って来て!!

じゃないと・・・じゃないと私、()()()()()()()()!!」

 

「わ、わかったわよぉ!

こうなったらトコトン付き合ってやろうじゃないの!!」

 

あれ程までに元気をなくして廃人同然となっていた鈴が、今や気がふれた様に周囲の目など何のそので大口開けて食事をしている。

一体全体、あの男・・・春樹に鈴は何を()()()()()()のかとティナは訝しんで不安になったが、それも一瞬の事。

異様ではあるが、鈴に元気印が戻って来た事を彼女は喜んだ。

 

一方、鈴の事を良く思っていない者達は「どのツラさげて」と、「ついに気がふれた」と、聞こえるかどうかの声量で陰口を叩くが、今の鈴にそんな余裕はない。

もう何日もマトモに食べていなかった為、胃袋がビックリして何度か青い顔をしてしまうが、何とかこれを抑え込んで栄養を取り込む。

そして、胃の許容量めいっぱい飲み食いした鈴は、今度は()()()()にアリーナでIS訓練を行った。

それもただの訓練ではなく、かなりハードな模擬戦闘訓練。

勿論、対戦相手はティナである。

 

「うぉおおおおおッ!!」

「わぁあああああ!?」

 

学園防衛私設部隊ワルキューレ部隊に所属し、ドイツ軍仕込みの本格訓練で鍛え上げられた筈のティナだったが、異常に鬼気迫る鈴に圧されてしまう。

無論、訓練機と専用機では機体スペックに大幅な違いがあるが、それにも増して鈴の気迫は尋常ならざるものであった。

そうしてハードな訓練を終えた鈴は・・・・・

 

「じゃ、おやすみ!」

 

シャワーでジャブジャブ体を洗った後、そのまま速攻でベッドへ潜り込むと一分と経たぬ内に寝入ってしまったのである。

この突拍子もない鈴の行動にティナは「え、えぇ・・・?」と戸惑いの溜息を漏らすのだが、彼女のこのテンションは翌日以降も続く事を彼女は予想だにしていなかった。

 

それから鈴はしっかり飲み食いし、しっかり訓練し、しっかり眠る事をした。

結果、土気色だった顔に血の気が戻って目の下のくまは払拭。

徐々にではあるが、あの凛々ハツラツとした鈴が戻って来た。

 

 

 

―――――その一方で、春樹と鈴が近々の内に決闘すると云う噂話は瞬く間に学園中へ広まってしまう。

しかもその噂はIS学園内部にとどまらず、()()連中の興味をもそそった。

当初は()()()と蔑まれたものの今やヴァイオレット・ファフニールの()()()()()にまで昇格した春樹と自他共に認める実力を有する鈴とのISバトルに皆は興味津々。

共に日本と中国を代表するISプレイヤーになるであろう二人の戦いに政府関係者達が()()()()()と口出しして来たのである。

細々と僅かな身内と友人達だけでやろうと画策していた結婚式に勤め先の重役員達が頼んでもいないのに来るという感じだ。

 

「・・・なんで、こーなるのっ?」

 

おかげで決闘が行われる日に態々大使館から政府の役人がIS学園へ来るというではないか。

まさか、自分達の預かり知らぬ所で日本政府と中国政府の親善試合になり、尚且つ招かれざる来賓客まで来る等とは思ってもみなかった春樹は八の字眉毛で大いに口をへの字に歪めたが、最早今更どういう訳にもいくまい。

けれども・・・酷く気落ちした鈴を立ち直させる()()()()()は達成できたのだから大いに良しとしよう。

 

「・・・どこがだ!」

 

()()で腕組みをしているのは、春樹と鈴の決闘話に参加出来ずにご立腹なラウラである。

その彼女の前には頭を傾げながら正座をしている春樹と申し訳そうに苦笑いを浮かべるシャルロットがいた。

 

「いやぁー、不思議なもんよ。

長谷川さんから電話あった時は、驚き桃の木山椒の木ってな訳でさ。

でーれぇ吃驚よ」

 

「言ってる場合か!」

 

「まぁまぁラウラ、落ち着いてよ」

 

「シャルロットもシャルロットだ!

お前が付いていながら・・・どういう了見だ!」

 

「ご、ごめんなさーい!」

 

大事になってしまった春樹と鈴の決闘にラウラは溜息を漏らすが、彼女としては自分が蚊帳の外で話が進んだ事に一種の疎外感があった為、端的に言ってしまえば・・・()()()()()のである。

 

「まったく・・・へそを曲げた顔も可愛いぜ、ラウラちゃん」

 

「誤魔化そうとするな!

・・・ふふん♪」

 

「あれ、嬉しそうだねラウラ。

リンゴほっぺになってる」

 

「ほれ見ぃ、可愛いじゃろうがな!」

 

「なんで春樹が威張るのカナ?」

 

「ともかくだ!

もう後には引き返せんぞ。

春樹・・・どうするつもりだ?」

 

ラウラの疑問符に春樹は再び首を傾げて腕を組む。

日本と中国の関係は代表的なものであれば領土問題であり、あまり両国の関係は良好とはいえない。

そこに来て両国代表候補生の親善試合。

下手な試合結果など出そうものなら野次が飛ぶであろう。

 

「面倒じゃのぅ。

俺ァもっとこう・・・軽いノリのつもりじゃったんじゃがね?

どう落とし前を着けたもんか・・・」

 

「その前に・・・春樹、鈴と戦うのって初めてだったよね?

どうなの・・・その・・・・・?」

 

「勝てるか、どうかか?

そりゃ・・・・・なぁ?」

 

「疑問文を疑問文で返すな。

しかし・・・シャルロットの()()()()()だがな」

 

うんうんと我が事の様に何処か誇らしげに胸を張るラウラを微笑ましく見るシャルロットだが、彼女の言いたかった事はそうではない。

春樹と鈴の実力差は今や―――――

 

「じゃけども・・・どう転んでも面倒事にならん様にはせにゃあな。

生徒会・・・もとい、楯無の野郎が試合結果にかこつけて賭博の一つでもやりそうじゃし。

ちぃっとばっかし、()()()するかね。

破破ッ!」

 

「春樹・・・とっても悪い顔」

 

「ほどほどにな・・・と、言っても無理な話か。

しかし・・・()()()()()()をしおって!」

 

「阿破破ノ破ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

―――◆◆◆◆◆―――

 

 

 

幼子の口喧嘩の様な煽り合いを発端とした決闘話から数日後・・・。

春樹と鈴の果し合いが行われる事となった第三アリーナには多くの生徒は勿論の事、少なからず政府から派遣されたであろう訪問者の姿もちらほら。

 

「・・・・・ッチ」

 

そんな訪問者達の中から一つの舌打ちがを打ち鳴らされる。

人混みの喧騒によって搔き消されてしまった舌打ちだったが、音源を辿ってみると訪問者達の為に用意された観客席に座すエッジ鋭い眼鏡をかけた切れ長の目が特徴的な20代後半の女性が居た。

実はこの人物、中華人民共和国軍所属のIS候補生管理官であり、名を楊 麗々ヤン レイレイと云う。

早い話が、IS中国代表候補生の鈴の直属上司である。

 

しかして何故に本来は中国本国に居る筈の彼女が、この場に居るのであろうか?

それは単衣にやはり春樹と鈴の決闘が原因であった。

 

・・・ここだけの話、決闘の主役の一人である凰 鈴音は中国本国でも名の知れた()()()であった。

中学3年時からISの猛勉強を始め、僅か一年で専用機所有の代表候補生になった努力家ではあるものの元来の気性が激しさは目に余るものがあった。

しかも当初、軍上層部からIS学園入学を勧められた際は他国に興味がなく拒否し続けると云う素行の悪さもあった為、随分と扱いにくい存在であった。

 

・・・だが、世界初の男性IS適正者である幼馴染の織斑 一夏のIS学園入学を聞きつけると一転。

元々、軍上層部が予め決めていたIS学園へ入学する筈だった中国出身生徒を()()()()()という形で押し退けて編入すると云う荒業を行ったのだ。

この無礼で身の程知らずとも捉えられる鈴の()()に面子を重んじる一部の軍上層部を怒り狂わせる事となったのだが、これを()()と見た政府高級官僚達がいた。

以前から鈴が一夏と幼馴染であるという情報を掴んでいた官僚達は、あわよくば鈴が一夏と()()()()()()()となる事を大いに期待したのである。

 

幼少期に仲が良かったが、ある日を境に離れ離れになってしまった少女が、ある日突然、自分が通う学校へ転校して来る・・・何とも超王道的少女漫画の様な展開ではあるが、失礼な話・・・傍から見ても()()()と言っても過言ではない鈴だったのだが、彼女には()()()()()()()もなかった。

()()()()で、鈴は一夏の心を射止める事が出来なかった・・・と、ハニートラップに引っかかる事を願っていた官僚達はガックリ肩を落とす羽目となってしまう。

 

・・・然れどもここで中国政府に()()が届く。

理由は不明であるが、何とあの『ヴァイオレット・ファフニール』の二つ名を有する二人目の男性IS適正者、清瀬 春樹と決闘と云う名の本格模擬戦闘試合を行うと言うではないか。

昨年までは()()()一夏の()()()と評されていた春樹であったが、短期間でメキメキ実力をつけて年初めに行われた公式IS国際大会で史上初の男性優勝者として名を挙げた。

しかもこの男、日本へ送り込んだ諜報員による信頼性の高い情報によれば・・・十代半ばにして淫欲を好しとするかなりの()()()

IS学園を防衛する自衛部隊組織と()()()()()後宮ハーレムを作り、とっかえひっかえ学園へ通う令嬢達へ手を出していると耳にしていた。そんな中でも()()()()()()()もない幼女の様な未発達体型をしたドイツ代表候補生に()()()()()()()『HENTAI』であると言うではないか。

こんな機会を逃す手はない。

鈴には悪いが、この()()()を骨抜きに篭絡させ、国家繁栄の為の関係を築かせようと中国政府は画策していた。

 

そんなハニートラップの()()を任せられたのが、楊管理官である。

公式U-18国際大会で優勝したとは言え、他国から見て春樹の実力は未知数。

しかして手前味噌とはいえ、鈴の実力は世界レベルに通用すると中国政府側は確信し、その()()()()()()で春樹を屈服させ、尚且つ鈴のプロポーションで彼の歪んだ()()を掻き立ててしまおうと考えていた。

 

・・・だが、日本ではこういう事を『捕らぬ狸の皮算用』と云ふ。

まず、中国政府はIS学園内において春樹と鈴に交流があるという事を()()()()()()()()()

これは鈴が中国政府に対して報告を怠っていた・・・のもあるが、当時の政府関係者は()()()()の春樹との交流よりも血統サラブレッドの一夏との交流に重点を置いていた為である。

なので、中国政府は若干だが春樹を過小評価していた。

いくら国際大会で優勝したと言っても所詮は()()()

それなりの実力もあるだろうが、大部分は運によるものであろうと評していたのだった。

そして、第二にハニートラップの片棒を担がされる事になってしまった楊管理官は鈴をハッキリ言ってしまえば()()()()()

彼女自身は門閥出身の自他共に認めるエリートなのであるが、そんな自分が十代半ばの我が儘盛りの小娘に()()使()()()()事に苛立ちが隠せなかった。

更に言えば、神聖なISを使って下卑た考えを巡らせる政府や軍上層部にもハラワタを煮やしていたのだ。

だからなのか、今回の一件に楊管理官は消極的で、本人としては一刻も早く本国への帰国を望んでいた。

 

「―――・・・失礼ですが、楊 麗々管理官でお間違いないでしょうか?」

 

そんな常に何処か苛立ちのある神経質な顔立ちをしている彼女へかけられた一つの声に目をやれば、そこに居たのは朗らかな笑顔を浮かべた男が一人。

 

「ッ・・・これはこれは。

長谷川 博文副本部長とお見受け致します」

 

気難しい顔の楊管理官に声をかけたのは、今や飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長している官民一体IS企業、IS統合対策部の上層メンバーで、日本政界有力若手代議士の一人と謳われる長谷川 博文であった。

 

「光栄です。

中国国内のIS候補生を管理する立場にいる楊管理官に知っていただけるとは」

 

「何をおっしゃいますか。

長谷川先生の名は我が中国でも名高いものですから」

 

楊管理官の言った事に間違いはない。

今や中国政府にとって長谷川は()()()()()日本国政治家の一人であったからだ。

日本政界の対大陸・対中国陣営に属する有能な人材であり、あの春樹の()()を握る重要人物だ。

そんな男が自分の顔を知っており、尚且つ自分を訪ねて来た事に彼女は虚を突かれるもすぐに気を取り直して事にあたる。

けれども一方で、長谷川は朗らかな笑みを絶やす事なく穏やかな物腰で接するのだが、それが余計に楊管理官の緊張を高めた。

 

・・・はてさてこんな状況ではあるが、一方の長谷川の心中も決して穏やかではなかったのである。

二人目の男性IS適正者であり、勇猛果敢なヴァイオレット・ファフニールの二つ名を有する春樹を配下に持つ長谷川であるが、この春樹と云う男は非常に()()()()()人間であった。

別に特段春樹の素行が悪い訳でも我が儘であると言う訳ではない。

・・・だが、この男は何を()()()()か解らないという掴み処のない存在であったのだ。

命令に忠実で、頭もよく回り、敵を屠るに十分な能力を有しており、回復の足取りの軽いのなんの。

ただ・・・ついほんの一年前まで地方の一般中学生だったとは思えぬ程に智勇兼備で不撓不屈()()()

更に未成年でありながら稀代の大酒飲みで、敵対者には異常な()()()を向ける傾向にあったのだ。

特にワールドパージ事件において、学園防衛システムが一時的機能不全に陥った隙を利用して学園内へ不法侵入し、その当時防衛対応を担っていたIS学園生徒会長の更識 楯無へ危害を加えた戦闘構成員を迎撃して再起不能にしただけでなく、命を奪い取るまでもなくその者達の鼻を()()()()、耳を()()()()()、歯を()()()()、顔を()()()()、身体の皮膚を()()()()()といった残虐非道が例に挙げられる。

しかもこの下手なスプラッター映画よりも悲鳴絶叫の血飛沫満載の行為を録画映像媒体として平然と報告書として提出していたのである。

 

・・・当初、長谷川は春樹に対して同情的な感情を向けていたが、徐々に徐々にはあるが、彼に対して恐れを抱く様になって来た。

後々、清瀬 春樹と云う人物を()()()()()()だろうと考える様になったのだが、最早時既に遅しと直感する自分もいる事にも長谷川は悩ましいさを募らせていたのであった。

そんな春樹から今回の鈴との一件についてこんな連絡が一つ。

 

「長谷川さん、何だかあんまりにも話が大きうなってしもうて申し訳ありません。

じゃけども・・・心配せんで下さい。

どうにかして()()()()()()けん」

 

・・・心配である。

心配で仕方がない。

今度は一体全体どんな事を()()()()のか、長谷川は心配と不安で腹の辺りがキリキリシクシクと痛むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆

新年一発目の映画は『室町無頼』でした。
大泉 洋・・・よかったですわ。

…ワンサマー氏と和解すべきだと思う人ー?

  • はーい!!(^^)/
  • えー!?(・_・;)
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