―――――その日、男は
かつて男は大陸からジャパンドリームを夢見て妻と娘を伴って日本へと渡り、一念発起で自らの中華飯店を立ち上げた。
・・・しかし、経営が軌道に乗って繁盛してきた矢先の事、男の身体を病魔が蝕んだのである。
働き盛りのこれからと云う時に大病を抱え込んだ男はみるみる内に弱り果ててしまい、かつては剛腕の主と言われる程であった面影は何処へやら・・・・・
男は自分が余命いくばくもない事を悟ったのか、それとも自分が妻子の
その後、男は心引き裂かれる苦痛を背負いながら故郷へと出戻る事となるのだが・・・男には心残りが一つ。
自他ともに認める溺愛を注いでいた愛娘の事だ。
病によって徐々に徐々に確実に生気を失いながらも男は娘の事を思いながら近くに訪れるであろう
―――――・・・そんなある日の事。
「どうでしょう?
別段、悪い話じゃあないでしょう?」
入院する男の元を訪れる者が一人。
その訪問者は見るからに
そんなある日突然やって来た訪問者は、男の患った大病の治療を打診して来たのである。
男は医者さえも見放した重病人の自分を治療してくれるなんて美味い話がある訳がないと訝しんだのだが、どうもこの訪問者は自分の主治医に
以前、余命いくばくもない患者を治療と称して
そんな男の緊張状態を汲み取ったのか、訪問者は耳まで裂ける程に口端を吊り上げてのたまう。
「無論、タダでとは申しません。
私からの条件・・・いや、この場合は
ちょいとした仕事をやってもらいたい」
「・・・・・仕事?
あんた・・・こんな俺に何をさせようっていうんだ?」
「大丈夫、大丈夫。
心配しないで下さい。
ちゃーんと
それに・・・身体が良くなれば、大手を振って
ねぇ??
ケタケタと
「―――――さぁ、やって参りました
実況は私、新聞部副部長の黛 薫子と・・・」
「IS学園生徒会長の更識 楯無でお送りするわ」
実況席と化した第三アリーナ管制室から響き渡る快活な声色。
そのアナウンスに応える様に第三アリーナ観客席はわちゃわちゃと賑やかな歓声が響き渡っている。
春樹が吹っ掛けて鈴が買った決闘と云う名の喧嘩が、本人達の預かり知らぬ所で政治利用の親善試合になってしまってから遂にこの日が来た。
おかげで普段ならいない筈の政府関係者らしきスーツ組が、一等観覧席に座しているではないか。
しかし、流石は様々な
それもその筈、多くの観客達は気になる事があったからだ。
「意外に思われるかもしれませんが、今回の親善試合に出場するヴァイオレット・ファフニールの二つ名を有する日本代表候補生の清瀬 春樹選手と中国代表候補生の凰 鈴音選手は、今まで模擬戦闘試合を行った事がありません。
この事に関して更識生徒会長、どう思われますでしょうか?」
「そうね。
春樹く・・・ゴホンッ、清瀬選手は新年の幕開けに相応しいIS国際大会ヴァルキリー・アプレンティスで優勝を修めた事が記憶に新しいわね。
かと言って、鈴ちゃ・・・凰選手も昨年にイギリスで起こったテロ事件を解決したメンバーの一人よ。
イギリス政府から受勲されるに相応しい実力を有しているに違いないわ」
「そうですね。
確かに二人とも実力者である事は変わりません・・・だからでしょうか、
アナウンスがオッズ比を解説している通り、観客席にいる誰も彼もがIS学園生徒会公認の賭博券を手にしていた。
今や模擬戦闘試合の勝敗を賭博対象にするのはIS学園では通例となってしまい、
「IS学園生徒会長である更識会長は今回の一件・・・どちらに賭けたのでしょうか?」
「うーん・・・どうでしょう。
生徒会役員は張る事が出来ないから・・・強いて言うならどちらにも賭けてるって所かしら?」
「なるほど・・・当たり障りのない御言葉なので、あとで改竄しますね!」
「・・・・・新聞部の活動部費はどうなってもいいのね?」
「ッ、ははは・・・じょ、冗談・・・冗談ですよ!
あっーと、そんな事言ってる間にアリーナへ出場選手が登場だぁ!!」
都合の悪い話題を蹴っ飛ばす様なアリーナへ注目が行くアナウンスが流れれば、対角線上に設置された出入口から出場者達がスポットライトに照らされた。
青コーナーから現れ出でたのは、紫と白のコントラストが入った当世具足の身に纏った鎧武者。
金焔の前立てに長烏帽子を模った変わり兜、当世具足にも関わらず大鎧の様な大袖、そして顔上半分を覆う金眼四ツ目の面貌が特徴的である。
この鎧武者の如きISたる琥珀を纏う者こそ今や世界に名を馳せる
「―――――・・・破破阿ー!」
その態度たるや太々しく、あの奇天烈な笑い声を発しながら両拳を挙げて観客達へアピールをしている。
最早、勝負をする前から勝者になったかの様な面持ちだ。
「ッ、あの野郎・・・!!」
一方、赤コーナーから登場するのは赤みがかった黒のカラーリングが施されたIS、甲龍を身に纏った小柄な女生徒。
特徴的なツインテールと八重歯であるが、その表情は苦虫を嚙み潰した様に歪んでおり―――
「おんやぁ?
おいおいおいおいおい・・・折角の可愛い顔が台無しじゃあないんか?
えぇ、鈴さんよぉ??」
ぐるり観客席へアピールをし終えた春樹がこれから刃を交えるであろう対戦相手、凰 鈴音に向き直るとワザとらしい台詞を並べ立てた。
この
「ふんッ・・・春樹、あんたが軽口を言えるのも今の内よ。
そのニヤケ面・・・徹底的にぶちのめしてあげるから!」
猫が「シャーッ!」と毛を逆立てて怒る様に肩を怒らせる鈴だったが、
「何よ、春樹!
人の顔をジロジロと・・・!」
「・・・いんや別に。
この前、喧嘩を売った時よりも
春樹の言う通り、ついこの間まで鈴は土気色の表情に目の周りが落ち窪んだ廃人同然と言っても差し支えなかった風貌だったのだが、今現在の彼女にそんな面影はない。
それもその筈、今日この日の為、春樹をコテンパンのボッコボコにする為に鈴はしっかり寝て、食べて、訓練をして、体調を万全状態にして来たのである。
「破破破ッ!
ちぃっとばっか・・・いや、かなり嬉しいもんじゃわぁ。
俺ん為に準備をしてきてくれたんじゃろう?
まるで、待ちに待ったデートの準備をするみてぇによぉ!」
「ばッ・・・バッカじゃないの!?
何がデートよ!
私は、全身全霊の全力であんたをぶっ飛ばしたくて準備して来ただけ!!」
「ほうかい?
じゃけど・・・元気そうになって良かった。
この前会うた時よりも顔色がええでよ」
「え・・・?」
春樹の揶揄い言葉に顔を真っ赤にする鈴だったが、微かに笑う春樹を目の当たりに困惑した。
・・・しかし、それも一瞬ばかりの事。
「そんな元気になった鈴さんにゃあ悪いんじゃけども・・・この決闘、やめね?」
「はッ?
い、今更・・・あんた何ってんのよ?」
自分から煽って喧嘩を売っておいて、一体どういう訳かと鈴は目を白黒させるのだったが、この男は次にこの様な
「じゃってさ・・・こんなにギャラリー集めておいて何じゃけども俺ってば、鈴さんよりずーっと強いじゃんか?
「・・・・・は?」
「何だとテメェ?」とばかりに鈴は額へ青筋を浮かべて目を四白眼にする。
けれども春樹はお構いなしにヘラヘラとした態度を崩さない。
「おーっと鈴さん。
勘違いしないで欲しいんじゃけど、別に君が弱いって訳じゃないで。
ただ・・・ただ、俺が
それにさぁ・・・何か、中国本国からIS管理官が来てるって話を小耳に挟んでよ。
いやじゃろう?
「・・・・・清瀬、あんた」
「ん?
何だい鈴さん?」
「せいぜい高々、国際大会の一つで優勝した
その鼻っ柱・・・叩き折って、叩き潰してあげるから覚悟しなさい!!」
再びキレた鈴は「ふんッ!!」とそっぽを向いて肩を怒らせてズカズカ定位置へ向かう。
そんな彼女の後姿を見ながら春樹はケタケタ悪戯っぽい笑みを浮かべるのだった。
◆◆◆
「―――・・・あの男は相手を慰めたいのか、怒らせたいのか、どっちなんだ?」
春樹が長を務めているワルキューレ部隊が陣取った観客席の一等観覧席に隊員でもないのに何故か居る元テロリストの織斑 マドカは訝し気な顔を晒す。
他の観客達にはアリーナ中央で睨み合っていた春樹の鈴の会話を聞く事が出来ないが、昨年のイギリスで起こった一件で鈴と通信チャンネルを共有していたマドカは二人の会話を通しで聞いていた。
そして、それは彼女の隣に居た者達も同じであった。
「まぁ・・・春樹だし」
「春樹クオリティ・・・だね」
マドカの言葉にシャルロット・デュノアは笑みを浮かべ、更識 簪は「うんうん」と首を縦に振る。
「私が言うのもなんだが・・・
どうして相手を貶したり、嘲笑う事をするんだ?」
「おぉっ・・・
「余計なお世話だ。
・・・って、もしやマドマドとは私の事か?」
「うん、そうだよー。
マドっちか、マドマドかで迷ったんだけど・・・マドマドの方が可愛いと思ったのー
いやだった~?」
「いや、別にそんな事はないが・・・
そうか、マドマドか・・・・・うん、いいな」
毒気のない布仏 本音からのニックネーム命名に戸惑いつつも悪い気がしないポカポカ不思議な感覚をマドカは味わう。
「親しい仲であるからこそ出来る軽口だ。
裏稼業から足抜けしたばかりのテロリストにはまだ早かったな」
「元だ、元を付けろ遺伝子強化素体。
喧嘩を売っているのならば、あの二人の後にやってもいいんだぞ?」
「ほう。
それは私としても望む所だな。
相手にとって不足はないぞ。
何なら今からでも!」
「お二方とも・・・私を挟んで殺気を出さないで下さいまし!」
マドカと睨み合うラウラ・ボーデヴィッヒだったが、二人の間に緩衝材として座らせられたセシリア・オルコットの呆れた注意が飛ぶ。
「まぁ、いい。
しかしだ。
今回は・・・いや、今回
「それ、どういう意味よ?」
ラウラの言葉に「確かに」と全員が首を縦に振るのだが、これに異を唱える者がいた。
それは今回の決闘・・・春樹が鈴に喧嘩を売る事になってしまった原因たる人物、鈴の従妹の凰 乱音である。
「まさか・・・アンタ達、鈴お姉ちゃんがあの男に負けるとか思ってるわけ?」
「・・・凰 乱音、実際にお前は春樹と戦った筈だ。
ならば、あいつの実力は少しくらいわかるだろう?」
「確かに清瀬は強かったわよ!
でも・・・でも鈴お姉ちゃんだって相当な実力者だもん!」
「そうだね。
鈴は相当な実力者だよ。
一年ぐらいで専用機持ちの国家代表候補生になるくらいだもんね。
・・・だけど」
「正直言って・・・春樹の実力は
あの大会でも・・・本来の本気の30%も出してないと思う」
「ッ、な・・・何よ、それ!?
あいつ・・・私に手加減してたってわけ!!?」
「落ち着いてくださいまし、乱音さん。
だけど、この勝負・・・いくら二人に実力差があるとは言え、
セシリアの言葉に乱音は「え?」と戸惑うが、他の皆は「あー・・・」と同意の溜息を漏らす。
実は、決闘が行われる数日前に彼女は春樹からある相談を持ち掛けられていた。
ただ相談と言っても提案に近いもので―――――
「セシリアさん。
セシリアさんって、
―――どうもこの決闘が
彼女は失恋で苦しんだ鈴を横目にオルコット家の問題が解決した事や春樹のハーレム入りを推奨された事で浮かれてしまった事に負い目を感じていた。
学園生活においてセシリアは鈴と公私ともに友情を育んでいた為に余計に感じ入ってしまっていたのである。
そこに来て春樹からの持ち掛けられた意味深な提案・・・すぐにこの提案が彼女は鈴が絡む事だろうと感づいた。
「やはり・・・お前もそう思うか、セシリア」
「はい。
だって・・・春樹さんですもの」
「そうだね。
春樹だもんね。
だけど問題は・・・」
「・・・どういう風にオチをつけるかだね」
今まで春樹がやって来た事を鑑みると彼を知る者達は『『『あー・・・』』』と項垂れて頭を悩ませるのであったという。
◆◆◆
「アイツ・・・ほんとマジでムカつく!」
試合開始の合図を今か今かと待ちながら鈴はギリリ奥歯を嚙み締めて、相対する春樹へ睨み眼を注ぐ。
然して彼女と専用機を有する優秀なISパイロット。心を熱く、思考を冷たく落ち着かせていた。
そして、今一度、これから戦う男が今までどんな戦い方をして来たかを思い出す。
清瀬 春樹なる男は、自らの専用機である『琥珀』を所有する以前から学園を襲撃して来た無人IS機体やらを屠った実績がある。
その実績は琥珀を賜ってから拍車がかかり、暴走した軍用ISや以前のものより強化された無人IS、果てはISを駆るテロリストまでもを相手にして来た。
近々の初めて出場した国際大会で優勝した事で今や春樹の強さは周知されているが、鈴はそれより前から彼の強さを間近で見て来た一人である。
だからこそ彼女に万一つの油断も慢心もない。
相手は全力を尽くすに値する強敵なのだ。
「ふぅ・・・ッ!」
スラリと二振りの青龍刀、双天牙月を展開した鈴は二刀流の戦闘態勢を構えた。
予め甲龍には高速機動パッケージ『風』を追加していた事で、増設スラスター4基と胸部へ衝角状の追加装甲を搭載されている。
本来これはISを使用し疾走するレースであるキャノンボール・ファストの為の機動速度重要視パッケージだ。
けれどもこのパッケージ、追加使用してしまうと甲龍の最大武装である衝撃砲の出力を落としてしまうのである。
しかし、鈴とてただ何となくこのパッケージを選んだ訳ではない。
春樹の主武装は二振りの対IS近接ブレードと一丁の対IS大型拳銃であり、彼女と同じ中距離から近距離を得意としている。
同じ攻撃範囲を得意とするならば、相手よりも速く攻撃を叩き込めば良いと鈴は考えた。
更に言えば、春樹の使用する大型拳銃は回転式の装弾数六発のリボルバー方式。
機体を凍らせて機能不全を引き起こす特殊弾頭・氷結弾を使用するが、弾幕を張ると云うには心もとない。
なら、ここぞという時に発砲する可能性が高い。
そこが
「(アイツ・・・春樹は確かに強い。
でもつけ入る隙はきっとあるわ。
もし高速切替を使うっていっても僅かなラグがある・・・
戦いにおいて、春樹はかなり
傍から見れば卑怯卑劣とも云われる事を平気で行う
けれどもそれは彼が今まで大半の事案で命を懸けて、生き死にの為に行う
そのおかげで初めて出場した公式試合において、周囲から相手を絶対に
「負けない・・・負けたくない!
絶対に勝つ!!」
覇気は上々、細工は流々、仕上げを御覧じろとばかりに再び決意を固めた鈴。
さすれば決闘開始の合図がけたたましくビィイ―――ッ!とアリーナいっぱいに鳴り響く。
「ッ・・・!」
決闘開始のブザー音に観覧席の目という目が二人に注がれるのだが、対戦相手を目の当たりにする鈴は
・・・尋常ならざる異様な違和感に。
「・・・破破!」
春樹は
口端を最大限まで吊り上げて、歯茎が見える程にニッカリ浮かべた強烈な笑顔。
顔上半分を覆うきらきら光る琥珀色の四つの眼が尚余計に彼の異常さを引き立たせた。
更に言えば、春樹は何とも言えぬ不可解な構えをしていたのである。
艶やかに赤く光る三尺太刀を片手に禅構えをし、もう片方の手を見えない様に背後へ回していた。
狂気的な笑顔でこちらを一点に見つめ、傍から見ると隙だらけの棒立ちでありながらも
春樹は相手に攻撃を仕掛けさせておいてカウンターパンチを狙う戦い方を得手としていた。
そんな明らかな
「・・・・・どうしたんよ?」
不気味な雰囲気を纏って笑顔を浮かべたままの春樹は疑問符を投げかける。
ビクリと体が動きそうになるが相手に飲み込まれまいと鈴は無意識に丹田へ力を入れた。
「・・・何がよ?」
「いんや・・・来ないんかなぁって思うて。
ほれ、鈴さんて細かい事とか気にせんと猪突猛進で切り掛かるもんじゃと思うとったけん」
「・・・春樹、アンタの狙いはカウンターパンチって事はわかってるのよ。
だからそうやすやすと仕掛ける訳にはいかないの」
「阿破破!
さっすが鈴さんよ!
あの
このままだと長時間の膠着状態になるだろうと察知した春樹は思い浮いた様にカチカチ歯を鳴らした。
そして、何を思ったのか、ポイっと彼は構えていた三尺太刀を地面へ
「ッ・・・な、何してんのよ!?」
地面へ転がる金属音を耳にした鈴は目を見開いて叫ぶ。
しかし、そんな彼女を尻目に春樹は背中へ回していた手も前に出し、パッと開いた掌を見せた。
「さぁ、これでどうよ。
これがホントの
これでも仕掛けてこない訳ぇ?」
「こ、この・・・!!」
明らかな挑発である。
ニッカリ笑顔で首を傾げた春樹は「鬼さんこちら、手の鳴る方へ」と柏手を打つ。
むかっ腹が立つ事この上ないが、こんな事で頭に血が上る鈴では―――――
「―――・・・そんな消極的だから横から
この
「ッ、春樹ィイイ!!」
地雷発言に怒髪冠を衝いた鈴は怨嗟の声と青龍刀を振り上げると共にスラスターを噴かせ、一直線に春樹との距離を詰める。
その速度たるや瞬時加速並みだ。
「・・・出たな春樹の
「あっ・・・そんな下手に近づいたら!!」
相手との距離を詰める鈴に目を見開く観客達を他所にラウラは呆れた溜息の如く言葉を吐き、シャルロットはアワアワ焦って口を手で隠す。
けれども二人の声が聞こえる筈もなく、鈴はそのまま斬撃の有効距離まで接近し、春樹の頭をカチ割らんと青龍刀を振るう。
「・・・・・破ッ!」
「なッ・・・―――!?」
だが、その刀身が春樹に届く事はなかった。
何故なら彼の背後からヌルリと現れ出でたマジックアームがガシリッと自らに向けられた一振りの刃を受け止めたのである。
そして、もう一振りの斬撃さえも春樹の片手によって容易に
「―――ダメじゃがん、鈴さん。
そんな簡単に
「グぅッ・・・!?」
斬撃を受け止めた瞬間、春樹は二カッと笑みをこぼしながら躊躇いはおろか容赦もなく、鈴の隙だらけの上半身へドガッ!と強烈な蹴りを放つ。
さすれば彼女の小柄な体躯は元居たスタートダッシュ地点を超えるまで蹴り飛ばされてしまった。
それでも鈴は態勢を立て直そうとスラスターを逆噴射させてブレーキをかける。
「―――ヴぇロォアアぁああッ!!」
しかし、そのブレーキ行動に合わせて今度は春樹が突撃を慣行する。
そんな彼の手には先程挑発の為に地面へ投げ捨てた筈の三尺太刀が一振り。
これは予め太刀の柄頭にワイヤーを引っ掛け、鈴へ蹴りを放った瞬間に手元へ戻る細工を施していた為だ。
自らの得物が手元に戻った春樹は、この世のものとは思えぬ絶叫を上げながら刃を振り上げて一気に鈴との距離を詰める。
その構えは薩摩の示現流に見られる『蜻蛉の構え』。
「この野郎!」と子供が喧嘩の際に棒を持って振る形に近いが、侮るなかれ。
新選組局長として名を馳せる近藤 勇は、現場へ赴く新選組隊士達に「薩摩の初太刀は外せ」と言うほどに強烈な斬撃が繰り出されるものだ。
・・・だが、惜しいかな。
前情報なしで初めて対する相手には初見殺しと言える程に強力な剣技ではあるが、鈴は春樹がこれを得意としている事を認識しており、その対処さえも把握していた。
「舐めんじゃないわよ!!」
すぐさま彼女は姿勢制御用補助エンジンであるバーニアを片方噴射させて回避行動を図る。
この春樹の疾走しながら斬る攻撃は軌道が直線と単純な為、専念すれば回避も容易く、避けてしまえば側部へ大きな隙が生じた。
しかもタイミングはバッチリで、太刀を振り下ろす瞬間にターンをするが如くバーニアを噴射した事で斬撃を避ける事に至る。
あとはケダモノの様に叫ぶ春樹へ青龍刀を振り下ろせば良い。
「はい!
そうはイカの金時計!!」
「ッ!?」
されどもガギン!と春樹の纏う鎧の大袖が盾の役割として鈴からの斬撃を受け止める。
これに一拍の間もおかず、春樹は手元の太刀を高速切替でコンバットリボルバーカノンに換装させ、その銃口を彼女へ差し向けた。
「この!!」
「うわっお!?」
しかし、そう何度も攻撃を受ける鈴ではない。
春樹がトリガーを引くよりも早く彼女は高速機動パッケージを追加した事で近距離拡散使用となった肩部衝撃砲を射撃すれば、ドグォッン!と不可視の砲弾が炸裂。
すると斬撃を防いだ大袖ごと今度は春樹の体躯を後方へと吹き飛ばすのだが、大したダメージ負っていないのか。春樹はひらり身を翻して態勢を立て直した。
「破ッ・・・破破!
阿破破破ッ・・・阿―――ッ破ッ破ッ破ッ破ッ破ッ!!
流石は凰 鈴音!
たったの一年ポッチで国家代表候補生まで上り詰めた稀代の天才肌よ!!
一筋縄ではいかぬ・・・いかんなぁッ、おい!!」
くるくるくるりとリボルバーを回しながら呵々大笑と肩を震わせて鈴を称賛する言葉を放つ。
けれども芝居がかったワザとらしい口上に彼女は口元を引き攣らせる。
「いやみったらしいたら・・・ありゃしない!
本当にムカつく男よ、アンタは!!
人の事をコケにして楽しい?!」
「応よ!
楽しい!!」
「ちょっとは悪びれなさいよ!
このバカ!!」
鈴は更に憤りを募らせた。
先程の一戦で彼女は春樹が手を抜いているのではないかと感づいたからだ。
自分に対して
尚且つ、そのニヤケ面が癪に触って仕方がない。
「春樹・・・アンタ私の事、舐めてるでしょ?
舐め腐ってるでしょッ?」
「阿ん?
いんや、別にそんなんじゃねーでよ。
ただ・・・やる前にも言うたが、俺が本気出しちゃうとすぐに終わっちゃうからね。
もっと見せ場を作ってからにしよう思うて」
「それを・・・舐めてるって言ってんでしょうが!!」
更に怒り状態となった鈴は二振りの青龍刀を連結させる事で長柄武器に変貌させると再び春樹との距離を一気に詰める。
この彼女の行動に春樹はリボルバーを撃鉄で撃ち鳴らす。
ズダン! ズダン!!と発砲音と共に発射された弾頭は、着弾すれば機体を瞬時に凍結させてしまう氷結弾。
「おぉうりゃぁあああああッ!!」
「ッ、おんやまぁ!?」
ところがどっこい。
鈴は自らに向けられて放たれた氷結弾を難なく叩き落とす。
これによって刃が特殊弾頭を切り裂く事で刀身は凍り付いてしまうのだが、彼女の勢いが止まる事はない。
剣術は勿論、槍術にも長けた連続攻撃が慢心する春樹に向かって放たれた。
「そらそらそらそらそらぁああッ!!」
「おっとっとっとっと!!?」
春樹はリボルバーから太刀へと武装を切り替えて応戦するのだが、両端に青龍刀の大ぶり刃が付いた槍と太刀ではリーチ差がある。
それに加えて、高速機動パッケージが追加されているおかげでいつも以上に速い斬撃と刺突撃が繰り出される為に反撃の隙がない。
「うぅりゃぁあああああッ!!」
「おわッ!?」
そんな連続攻撃の締めに繰り出された上下の振り下ろし強烈な斬撃をガギンッ!と太刀で受け止めた春樹。
彼はここで刃を振り払って反撃の蹴り技を鈴に向かって放ったのだが―――――
「―――悪い足癖ね!」
「ッ、たらヴぁ!?」
彼女は健脚を避けつつ、逆にドロップキックを春樹の顔面へ喰らわせた。
しかし、これだけに飽き足らず、鈴は腕部から高電圧縛鎖を展開。
先端が分銅状態となっている為、勢いよく放たれた縛鎖はグルグルぐるりと春樹の首に巻き付けば、一気に高圧電流が駆け巡る。
「阿ビャビャビャッ!!?」
カートゥーンアニメの様に体が痺れた春樹は悲痛な叫びを上げて墜落し、もわもわ土煙を発生させた。
「ハァ・・・ハァ・・・ッ・・・!
どうよ、春樹・・・アンタ、これでも本気を出さないつもり?!!」
呼吸を整えながら鈴は得物の切っ先を墜落地点へ向けて言い放つ。
一方、観客席では鈴に賭けた生徒達は大喜びで歓声を上げるが、勿論これで終わる春樹ではない。
ヴァイオレット・ファフニールの二つ名は伊達ではないのだ。
〈・・・・・春樹?
あぁ、言われてるけど・・・どうすんの?〉
「・・・・・仕方ないのぉ。
ほんじゃあ、ちぃっとばっかし
ええかい、琥珀ちゃん?」
〈是非もなしってね!〉
ブワッと土煙を振り払った春樹はパッパッ機体に付着した土埃を掃えば、カチカチ歯を鳴らした。
そして、大きく呼吸して息を整えると―――――
・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆
『孤独のグルメ』
井之頭 五郎の大冒険・・・!!
おじさんが飯食ってるだけの映画なのに・・・どうしてこんなにも面白い!!?
『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』
やりやがった!
やりやがったなスタジオカラー!!
すげーッ、やりやがった!!
…ワンサマー氏と和解すべきだと思う人ー?
-
はーい!!(^^)/
-
えー!?(・_・;)