IS/Drinker   作:rainバレルーk

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お疲れ様です。
まず最初に一か月以上ぶりの投稿である事を陳謝いたします。
仕事の方も上手くいかない事が多く・・・この作品の方向性もグダグダですが、お付き合いいただけると幸いです。
それではどうぞ良しなにで。



第243話

 

 

 

IS学園において鋼板を纏った()()()()が決闘を行っている頃―――――

 

―――「ふ~ふん♪」

 

定食屋『五反田食堂』の看板娘として名の知れた五反田 蘭は、無造作にクリップでまとめられた長い髪を左右に揺らしつつ鼻唄まじりに鍋をふるう。

彼女は進学校と有名な私立聖マリアンヌ女学院の中等部で生徒会長を務めているのだが、ある学校へ進学する事を決めていた。

その学校とは、世界にその名を轟かすインフィニット・ストラトス搭乗士・整備士育成を担うIS学園である。

当然、ワールドワイドな学校である為に入学資格のハードルはとても高く、しかも偏差値が高いだけでは入学できない。

けれどもこの五反田 蘭なる人物は学園の敷居を跨ぐに十分な学力とIS適性A判定と云う高い素質を持ち合わせていたのである。

お蔭で、非常に高い倍率でありながらも遂に蘭はIS学園への入学合格を勝ち取ったのだ。

 

・・・然して、エスカレーター式で学院高等部へ進級できるにも関わらず、どうして態々IS学園への入校を決めたのであろうか?

勿論、方々への()()()の理由など色々あるだろうが、彼女の本当の目的はとてもティーンエージャーっぽいものであった。

 

「ふっふっふっ、待っていてくださいね・・・一夏さん!!」

 

それは現在進行形で想いを寄せている()がIS学園に居たからである。

その男とは、女性にしか扱う事が出来ない筈のインフィニット・ストラトスを男性でありながら世界で初めて動かす事が出来た織斑 一夏その人だ。

 

蘭が一夏と出会ったのは、彼女の兄である五反田 弾が中学校で馬が合った彼を自宅へ連れて来た時までに遡る。

当時から一夏はその端正なルックスと異性をときめかせる天然ジゴロな言動も相まり、多くの女子から好意を寄せられていた。

そんな多くのライバルを相手に蘭は()()()()と言う()()()()()()()()で幅を利かせていたのであるが、ISを動かせると云うあまりにも予想外の出来事により、今や片思い相手は()()とも言えるIS学園で新たなライバル達に虎視眈々と狙われているに違いない・・・と、彼女は危機感を覚えていたのだ。

 

だが、五反田 蘭は焦らない。

彼女は自らが有する定食屋の娘なる立場を最大限利用し、一夏の()()()()()為に五反田食堂店主で自身の祖父である五反田 厳の下で日々精進していた。

そして、蘭はIS学園へ入学するや否や、今まで身に着けて来た料理スキルと年下属性を武器にライバル達と渡り合いつつ一夏との距離を一気に詰めようと画策していたのである。

 

「いやー、蘭ちゃんの腕前どんどん上達してってるな!」

「この煮つけとか、先週よりも旨くなってるし」

「こりゃ厳さんの腕前なんてもうすぐ超えちまうんじゃないか?」

 

「ふんっ・・・お前ら、そんなゴマ擦ったって何にもでねぇぞ!」

「そんな事言ってもよ、じーちゃん・・・ニヤケてるぜ?」

 

蘭の作った料理の味見役を買って出た昼時常連達の()()()()に眉をひそめて筋骨隆々の腕を組む厳だったが、愛孫娘を褒められて嬉しくない訳がない。

同じく孫である筈の弾の指摘に彼は「うるせぇ!」と照れ隠しの拳骨を落とす。

 

 

 

・・・・・しかし、既にその想い人は―――――

 

 

 

―――「こんちわー!」

「あッ・・・♡」

 

ガラリッ食堂の引き戸が開けられると共に店内へ響き渡った声を聞きつけた蘭は、作業を中断すると満面の笑みで想い人を出迎える。

実は今日、一夏が()()()で学園外にでる事を兄・弾を通じて知っていた為、彼を昼食に招待していたのだ。

・・・・・だが・・・

 

「一夏さん、いっらしゃ・・・・・え?」

 

厨房の暖簾をくぐって一夏を出迎えた蘭の笑顔が一瞬にして困惑の色によって曇り、動揺が全身を駆け巡る。

それは店内に居た常連客達も同じで、白飯を食べていた者は箸を落とし、水を飲んでいた者は中身がなくなってもグラスを傾かせ続けていた。

・・・理由は明白。

 

「へぇ・・・ここが一夏の行きつけね。

随分とぼろ・・・()()()()()な趣きなのね」

 

店内へ入店した一夏の隣に居たのは、誰も彼もが目を引く容姿端麗さを持ち合わせた見た事がない一人の()()

普段ならば、天然ジゴロな一夏が何処かの道すがらで()()()()()外国人旅行客か、()()()()()で彼に勝手に付いて来たIS学園の学友であろうと考えるのが妥当なのだろうが―――――

 

「い、一夏くん・・・今日は随分と綺麗な人を連れて来たのね?」

 

時が止まったかの様な静寂を恐る恐る打ち破ったのは、五反田食堂もう一人の看板娘と名高い弾と蘭の母である五反田 蓮。

しかし、どうして恐る恐るなのか。

それはその突如として現れた謎の美女が、一夏と仲睦まじそうに()()()()()()()からだ。

それはもう・・・()()()()の様に。

 

「ッい・・・一夏・・・お、お前、そのお姉さんって誰だよ?

ま、まさか・・・()()とかってか?」

 

母・蓮に続いて動揺を滲ませつつも言葉を紡いだ弾は、お道化る様に若干相手を揶揄う様に一夏へ語り掛ける。

 

弾としてはこういう似た様な状況は何度もあった。

押しの強い勝気な女が恋人気分で勝手に一夏と強引な恋人つなぎをし、それを見た蘭が焼きもちを妬いて場が凍るなんて事はよくあったのだ。

しかし、大抵は恋愛ごとや異性関係に無頓着な一夏が相手に好き勝手振り回される事が十中八九で、揶揄の言葉の一つでもかけてやれば、「え、いや違うけど」と彼がキョトン顔をするのが()()()()()だった。

それ故に昼間から酒を入れていた常連客等は面白半分、冗談半分でちゃちゃをいれる。

・・・けれども然して―――――

 

「えっ・・・あぁ、やっぱりそう見えるか?」

「・・・・・え?」

 

「なーんてな!」の一言を弾が発する前に一夏がとった行動は、何処か照れ臭そうに頬をかく仕草。

満更でもなさそうに、嬉しそうに照れる男の姿がそこにあった。

 

「紹介するぜ。

この人はサラ・ウェルキン。

俺の・・・えと・・・・・()()なんだ」

「ハーイ、どうも日本のみなさん。

ご紹介に預かった一夏の彼女のサラよ」

 

「はっ!?」

「はぁッ!?」

「ハァアッ!!?」

 

「か、彼女って・・・つまりそれは恋人ってコト!?」

「こいつ、ついにやりやがったのかよ!!」

 

常連客達にとって五反田食堂で起こる一夏絡みの痴話喧嘩は格好の()であった。

これぽっちも女心のおの字も感じ取らない愚鈍な一夏と皆の看板娘たる蘭との関係性はやきもきさせられて甘酸っぱい気持ちになってしまうもの・・・()()()()()

 

「っ、は!!」

 

騒然となる現場だったが、立ち上がった常連客達が何かを察してギギギッと振り返る。

そして、油を注していない歯車の様に首を回せば・・・・・・・・

 

い・・・いち・・・・・いちか、さん・・・?

こ、こい・・・・・こいび、こいびと・・・って??

ど・・・どういう・・・・・どういうこと、ですか??

 

チワワの如く目一杯涙を溜めてうるうる目を潤ませた蘭が小刻みに震えているではないか。

その悲しそうな表情に常連客達は目の色を変えた。

それはこれから起こるであろう()()を危惧したものであったからだ。

 

一夏、てめぇッ・・・!!

 

五反田食堂に通う常連客の()()()()()

それは店主・厳の孫娘たる蘭を泣かせてはならぬと云う事。

もし、この暗黙の了解を破ろう輩がいるならば、問答無用で厳からボッコボコにされるのだ。

そして今にも滂沱の涙を流しそうな孫娘の悲壮感に満ち満ちた顔を見て、出刃包丁を片手に厳は()()と化す。

 

「ッ、ちょ・・・ちょっと待てよ、じーちゃん!!」

「厳さん、ちょっと落ち着け!

冷静になれ!!」

 

昼間の食堂で一杯やっていた常連客でさえも酔いが吹っ飛ぶと弾と共に厳の前へ立ち塞がる。

けれども激昂していたのは厳だけではなかった。

 

「ザけてんじゃねぇぞ、一夏!!」

「何ッ、俺達の蘭ちゃん泣かしてんだよ!!」

 

冷静な常連もいれば、厳と同じ様に()()の悲し気な顔を見てキレた常連客も居たのだ。

お蔭で現場は一気に混沌と化してしまう。

 

「え・・・は?

なに、みんなして怒ってんだよ??」

 

しかし、この混沌たる原因を作ったであろう当の本人は素知らぬ顔でポカーンと頭の上に疑問符を浮かべるばかり。

その表情が余計に皆の神経を逆撫でてしまう。

 

「織斑のガキ、てめコノ・・・!」

「おめぇ何様だ、コラぁッ!!」

「塩まいてやる、コノヤロウ!!」

 

「だからみんな落ち着けって!

一夏、悪いが・・・お前ちょっと今日の所は帰ってくれよ!!」

 

「は?

なんでだよ?

今日は蘭が何か御馳走してくれるって言うから来たのにさ。

サラだって楽しみに―――――

「頼むから今日は帰れ!!」

―――なっ、おい弾!?」

 

暴徒と化して来た祖父や常連客から一夏達を救わんと身を挺した弾によって食堂から締め出される二人。

この招待を受けたにも関わらず、何が何だかわからないまま追い出されてしまった事に一夏は困惑と不快感で「なんだよ、あいつ!」と眉をひそめる。

 

「悪いなサラ。

折角、美味い日本食を食べさせてやる約束だったのによ。

まったく、弾のやつには困ったぜ」

 

「・・・っぷ・・・フフフ・・・ッ!」

 

「やれやれ」溜息を吐く一夏に対し、どういう訳だかサラは口元を抑えて両肩を震わせた。

まるで「()()()()でも見れた」と、「()()()!」と喜ぶ様にだ。

 

「どうしたんだよ、サラ?」

 

「別に何でもないわ。

でも・・・ちょっと()()()()()ってだけ」

 

「は?

どういう事だ?」

 

ドタキャンされたにも関わらず上機嫌だと言うサラに一夏は益々疑問符を浮かべるが、きっと彼に上機嫌の理由を理解できる日は来ない。

それどころか、きっと自分を励ます為に言っているのであろうと見当違いの解釈をするだろう。

 

一方でサラは見ていた。

締め切られた食堂出入口の先で、きっと母親やおろおろ戸惑う祖父や常連客達に慰めらる蘭を見ていた。

腰が砕けてへたり込み、項垂れてしくしく()()()を滲ませる()()の姿を見ていた。

なんて惨めで、情けない姿であろう・・・と、彼女は()()()

 

「わからなくても大丈夫よ、一夏。

それよりも・・・追い出されちゃったし、ランチどうするの?」

 

「え・・・あぁ、そうだな・・・・・ならラーメンでも行こうぜ!

ここって程じゃないけど、美味い店があるんだ!」

 

「ラーメン・・・それは素敵ね。

私、日本のラーメンって初めてなのよ。

楽しみだわ」

 

人生初の彼女からの「楽しみ」に汚名返上、名誉挽回の面持ちで奮起する。

何処かの()()に鈍感屑と揶揄されるが、場合によって『鈍い』という事はプラスに働く場合があるのだろう。

 

・・・ところで、どうしてこの二人がIS学園から外出しているのかと言うと―――――

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

―――「ちっともわからない!」

 

きっぱり堂々と鼻を吹くのは、大きな胸元に『カガリビ』と書かれた名札が付いたISスーツと白衣を身に纏い、頭に水中眼鏡を着けるというトンチキな格好をした一人の女性。

この女性こそ、二十代半ばの若さでありながら世界有数のIS関連企業の一つ倉持技研第二研究所所長を務める篝火 ヒカルノその人である。

 

そんな若き秀才が他の技術者と共に首をかしげているのは、メンテナンスの為に技研へ運ばれた目の前へ吊り下げられた()()I()S()の為であった。

そのISとは、()()()は倉持技研が設計開発した第3世代型IS白式である。

この白式、前年の暮れにイギリスで発生した『エクスカリバー事件』において当時は机上の空論でしかなかった第三形態移行を発現したIS史上初の機体なのだ。

 

しかし・・・実はこの白式なる機体、当初は倉持技研で開発していたのだが、その開発が難攻に難攻を重ねた事で頓挫。

()()()()欠陥機として凍結されていたものをISの発明者たる篠ノ之 束が()()にもらい受けて完成させた機体なのだ。

お蔭で並みのISなど軽く凌駕してしまう非常に高いスペックを獲得する事が出来たのだが・・・あの非凡な才能を持つ()()・篠ノ之 束が色々な各部分を束が弄りまくった為、()()な技術者達には白式を解明する術がなかったのである。

解った事と言えば、第三形態移行した白式の名称が『王理』と判明した事と第三形態移行の単一仕様能力に『夕凪燈夜』が追加したぐらいだ。

 

「わからない・・・って、そんな堂々と言われても」

 

ISの大きな進歩を塞がんとする困難な壁に対し、はっきり白旗を上げるヒカルノに一夏は壁壁とする。

彼はヒカルノとの初対面時に珍妙な格好で尻を触られたり揉まれたりのセクハラ行為を受けていた為、彼女の事が苦手であった。

 

「でも、わからないものはわからないのだよ、織斑 一夏くん。

目の前の事象をしっかりと受け止める事は大事なのだ!」

 

「は、はぁ・・・?」

 

「いやー、これはさっぱりですね!!」

 

こんな調子である為、何の為にIS学園から外出したのかわかりゃしない。

・・・まぁ、一夏としてはサラとデートが出来て良かったのだが。

 

「じゃあ篝火所長?

白式のメンテナンスは出来ないって事かしら?」

 

「機体を()()()訳にはいかないから・・・完全なメンテナンスは当分先になるね」

 

「あらそう。

なら・・・()()()はどうなっているのかしら?」

 

髪をくるくるいじりながらサラはヒカルノに今自分が一番気になっている事を持ち出せば、彼女は二人を別室へと案内する。

そこは白式と同じ様に様々な器具と多くの研究員・技術者達が()()()()()()()()一室であり、そんな蟻んこの様な彼らが群がっている中心部へ()()I()S()が佇んでいた。

()椿()の様に真っ赤なパーソナルカラーに染められた機体が、()()()()()()()様に吊り下げられていた。

 

「・・・で、どこまで進んでいるの?」

 

「武装の解析と機体各部のメンテナンスは順調に進んでいるよ!

このままだと問題なく―――――」

「―――違うわ。

そういう事を言っているんじゃないのよ、篝火所長。

私が言っているのは・・・・・いつになったら紅椿が、この私に()()されるのかと聞いているのよ!」

 

サラは少しイラついた態度で吊り下げられた赤い機体、最新ISたる紅椿を指さす。

第三世代型ISの開発に苦心する人類の前へ綺羅星の如く現れた()()()()()IS紅椿は、巡り廻って倉持技研においてIS界の技術進歩の為に研究解析がなされていた。

本来ならば、この機体はある程度の解析がなされた後で専用機所有者へ返還されるのだが・・・IS学園三学期開始前に紅椿の所有者()()()篠ノ之 箒が怒りに身を任せて器物破損並びに殺人未遂事件を起こすと言う暴挙を引き起こしてしまったのである。

 

無論、箒は専用機没収ならび代表候補生資格剥奪の厳粛なる処分を受けるという当然と言えば当然の結果が待ち構えていたのだが、殺人未遂事件の被害者であるサラは日本政府と英国政府に掛け合って箒にある()()をかけた。

その情けとは、加害者たる箒がサラへ誠心誠意の謝罪をすれば停学や謹慎などの軽い処罰で済ませるというものであったのだ。

常人・・・いや、腹に一物ある者ならば、プライドをかなぐり捨てて心の中で舌を出しながら地面に額を擦り付けて土下座するだろう。

・・・だが、箒にそんな事が出来る訳がなかった。

 

格下の、それも長年の想い人を()()()()()女に謝るくらいなら自分で自分の腹を掻っ捌いた方がマシと考えるぐらいに箒はプライドが高かったのである。

しかし、そんな事などサラや英国政府は()()()()()()であったのだ。

 

「こちらがこれ以上ない程に()()したにも関わらず、先方は条件を飲まなかったのだから仕方ない」

 

・・・と、英国政府は日本政府に問い詰める手筈だった。

しかも最近、日本は英国と現代の日英同盟と称えられる日英円滑協定を結んだばかり。

昨今の日本政府は遺憾砲と揶揄される弱腰外交な態度が多い為、波風を立てない為に今回の一件を飲み込んでしまうだろう。

 

サラはそこまで計算して英国政府に以上の話を持ち掛けたのだろうか、お蔭でその()()()として彼女は、英国へ譲渡された紅椿の次期所有者としての権利を勝ち取る事が出来た。

そのせいもあってサラは紅椿は自分のものだと考えていたのである。

それ故に彼女はさっさと機体を自分のものにする為、こうして倉持技研に直談判に訪れたのだ。

 

「し・・・しかしだねウェルキン女史?

紅椿は搭乗者・・・いや、()搭乗者の篠ノ之 箒女史との生体リンクが施されているから初期化が困難を極めているのだよ?」

 

「それをどうにかするのが、あなたの役目でしょ!

さっさとしなさい!!

私は()()イギリス代表なのよ!!」

 

表沙汰にはしていないが、サラは自分が代表候補生と言う資格を持ちながら専用機を所有していなかった事をコンプレックスに思っていた。

だが、ここで専用機を・・・それも第四世代ISを専用機として獲得すれば、元より十二分な実力を有する彼女にとって代表候補生など飛び越えて代表の地位はカタい。

そうなると益々同じ英国代表候補生のセシリア・オルコットが目の上の()()()()となるが、そこは機体性能の差で圧倒できるとサラは思っている。

 

「おい、サラ!

そんなに興奮しなくても・・・!」

 

「何よ、一夏!

私が紅椿を持つ事が反対な訳ッ?」

 

ヒカルノに食って掛かるサラを止めようとした一夏だったが、藪を突いて蛇を出す状況となってしまう。

四白眼を見開いた恐ろしい表情の彼女が胸ぐらをつかんでグイッと差し迫るそれは、とても恋人に対してする行為ではない。

どちらかと言えば、言う事を聞かない()を手酷く()()()様だ。

 

「私はやっと・・・やっと専用機を持つ事ができるの!

それなのに一夏は、私のそんな()()()()()望みをダメだって否定するの!?」

 

「そんな・・・いや、俺は別に否定なんて!!」

 

「っ、あぁ・・・あぁ、そう!

一夏、あなた・・・()()()、篠ノ之 箒に未練があるんでしょ!?」

 

「は、はぁ・・・ッ!?」

 

「そうよ・・・そうよね!

私なんか・・・私なんかよりも・・・!!

あの幼馴染の方がずっと・・・ッ!!」

 

掴みかかって喚き散らしたかと思えば、急にしおらしく目を潤ませて顔を背けるサラ。

そんなまるで悲劇のヒロインを演じている彼女に対して一夏はここで―――――

 

「そんな訳ないだろッ!!」

「ッ・・・い、一夏・・・?」

 

自分の胸倉を掴んだサラの手を包み込む様に握った彼は、部屋いっぱいに響き渡る声量を発した。

その声に紅椿を囲む研究者や技術者達も振り返る。

 

「俺は箒よりも・・・()()()()()よりもサラの方が大事に決まってるだろ!」

 

「一夏・・・!

ご、ごめんなさい!

私ったら、つい・・・!」

 

一転して態度を軟化させた彼女を「いいんだぜ」と抱き寄せる一夏の様子は恋愛ドラマのワンシーンの様だが、こんな所で痴話喧嘩など勘弁して欲しいものである。

 

そもそも日本が英国に対して紅椿の譲渡を渋っている様であるのは()()()だ。

日本政府は昨年の夏頃に()()()()()なる独自ルートで第四世代ISの設計図を既に入手していた。

しかし、未だ謎が多く解明の糸口も見えない第四世代機を持て余しているのが正直な感想だ。

それよりかは第四世代機譲渡し、その代わりとして英国が独自開発に成功しているビーム兵器技術を入手した方が都合が良い。

 

「(ッチ・・・こっちは時間がないっていうのに呑気な二人だね!)」

 

しかも日本が第四世代機設計図を入手している事を知っているのは、極一部・・・さしては今や倉持技研の宿敵と成り果てたIS統合対策部関係者のみ。

それ故か、紅椿の現物とメンテナンスで手に入れた白式のデータを基に『次世代型量産機計画』を進めているヒカルノにとっては、貴重な第四世代ISを高々学生風情の痴話喧嘩のせいで外国に渡したくないのが本音だ。

それに()()()()()()I()S()()()()の活躍のせいで急成長したIS統合対策部は無視できない存在になってしまった。

だからこそ譲渡までのタイムリミットまでに必要な情報を抜き出し、他に類を見ない機体を作成したかったのだが・・・

 

「あの・・・篝火さん?」

 

幼子をあやす様にサラを抱き締める一夏から発せられた猫撫で声にヒカルノは()()()()を感じ取った。

 

「どうすれば・・・どうすればサラが一早く紅椿の所有者になれますか?

その為だったら俺・・・!!」

 

「っ・・・!

(この()()()()!!)」

 

一夏の発言に心の中でヒカルノは苦虫を嚙み潰し、彼の胸の中で抱かれるサラは口元を大きく歪めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆

『岸部露伴は動かない:懺悔室』
めっちゃ良かったです。
原作の短編をあそこまでするなんて・・・キャストならびにスタッフのジョジョ愛があふれた作品でしたわ。

あと最近、ハーメルン作品において『シグルってたまるか』って作品にはまっております。
作者先生の文才と投稿頻度には憧れましたわ。

…ワンサマー氏と和解すべきだと思う人ー?

  • はーい!!(^^)/
  • えー!?(・_・;)
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