IS/Drinker   作:rainバレルーk

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どうも。
まずは一か月以上ぶりの投稿になる事を陳謝いたします。
私はパタポンと共に無機物はぶっ壊し、有機物はぶっ潰して来ました。
とりあえず、パタポンは3をリメイクで出して欲しいです。
あと今回は長めとなっていますので悪しからず。
それでは!!



第246話

 

 

 

言わずと知れた日本を代表するIS関連企業である倉持技術研究所・・・所謂『倉持技研』の漸進は、戦傷を負った兵士に対する義肢を開発していた倉持 孫右衛門が日清戦争後に開業した倉持義肢製作所を起源に有する。

その百年来の義肢制作能力は手足の延長線上であるマルチフォーム・スーツたるISとの相性は抜群で、参入当時は手探りだったIS開発から一転してIS第二世代傑作機と謳われる日本純国産のIS打鉄を作り上げるに至った。

しかし、従来の既存兵器を凌駕する性能が『白騎士事件』によって判明したISが世に広まって十年が経った現在・・・いや、十年()()経過()()()()()現在においてISは第三世代開発に着手した段階なのであるが、これは()()()()のではなかろうか。

今やISに取って代わられたかつての空の支配者たるジェットエンジン搭載型戦闘機は、その世代差を一世代埋めるのに最低でも()()余りを要している。

けれどもISはその十年で三世代を網羅せんとしているのだ。

「流石はIS!」「やっぱり旧世代の兵器はダメだな!!」・・・などと言ってしまえばそこまでなのであろうが、これは余りにも()()()()

これは今までのIS開発が()()()()()()()()()()()であった為であろう。

それは夏の縁側で育てるキュウリやゴーヤ、オクラの様に開発に着手すればする程にISなる植物はニョキニョキ蔦を伸ばして実をつけた為であろう。

しかも核兵器開発よりもかける労力と時間が低かった。

・・・だが、何事にも()()()なるものはある。

そして、その停滞期は今までが順調であればある程に重く苦しくのしかかるものだ。

それが倉持技研にとっては第三世代開発であった。

 

なまじっか世界に誇れる傑作第二世代を開発したばかりに周囲がかける第三世代開発の期待は大きかった。

しかし、そんな大きな期待とは裏腹に第三世代のIS開発は難航に難航を重ねたのである。

これが軍事産業から派生した企業であるならば、新たな世代を開発するにはある程度の時間と多大な労力を有する事は覚悟していた事だろう。

けれども元々民間産業畑で、IS産業に参入した事で多大な()()に目がくらみ、調子に乗って第二研究所まで建ててしまった倉持技研上層部はこの事に焦燥感を募らせた。

世界中のライバル企業が第三世代開発に着手し、眼中になかった設立したばかりのIS統合対策部があのフランスの大企業デュノア社と業務提携して第三世代機を開発したと聞けば焦るのも解る。

だが、その()()()()()()の焦りは下の技術者連中へしわ寄せとなって襲い掛かった。

 

今や倉持技研の()()となった第三世代型IS開発の結果を求める焦燥感は、上から上から下へ下へ漬物石の如き圧力となって技術者達の首を絞める。

そんな状況下においても当初は()()()な技術者は真面目に自らの仕事に従事していた。

それは会社の利益の為でもあったが、一番には未だ全容が知れぬISの開発を進める事で人類の進歩に繋がるだろうと思っていたからだ。

だからこそIS開発には多大な労力と資金、そして時間が必要になる事を覚悟していた・・・のだが。

 

ある日の事、倉持技研が設計開発研究として所有していた機体が行方をくらませたのである。

開発が頓挫した欠陥機として()()されるその日まで凍結されていた機体ではあるものの使用されているISコアは貴重。

この事が表立っては不味いとすぐさま秘密裏に捜索が行われたのだが、意外にもすぐに事態は収束へと至った。

 

「やっほー☆

世紀の大()()科学者の束さんだよー☆」

 

こんなふざけた口調だが、ISの発明者として世界的に名高い篠ノ之 束博士が倉持技研から機体を()()し、完全な第三世代型として完成させて()()したと言うではないか。

一体どうして彼女がこの様な()()を行ったのかは不明であるが、意図せずして第三世代機体、『白式』を手に入れる事が出来た倉持技研はこれを自社が独自開発した機体として発表。

そして、同時期に()()された世界初の男性IS適正者の専用機として与えてしまったのである。

おかげで開発を行っていた第三世代型IS、打鉄弐式の開発計画は頓挫。

勿論、真面目に開発計画に携わっていた技術者はこれに大いに反発したのだが、技研上層部の意向によって握りつぶされてしまう。

それでも開発計画のリーダー格であったある技術者は屈さずに抗ったのだが、何かに理由をつけられてクビ同然の左遷となってしまった。

 

うるさい邪魔者を除け者にし、これで一安心と技研は胸をなでおろす事ができたのだが・・・話はここで終わらない。

このクビ同然の左遷辞令が出た技術者は、失意を胸に抱えて新しく政府が立ち上げるという官民一体企業へ出向した。

その出向先にいたのは、自分と同じように企業で()()()()()として除け者にされて追い出された者達・・・そして―――――

 

―――「阿破破ノ破ッ!」

 

奇妙な笑い声と奇天烈なカリスマ性を持つ偏屈な()()()の男性IS適正者であった。

敵対者の生皮を平気で引き剥がすこの二人目の男・・・清瀬 春樹との出会いによって鼻つまみ者の技術者、芹沢 早太の快進撃が始まったのだ。

 

一方、所内の異分子反乱分子を排除した倉持技研は安定期に入ったかというと・・・そうではない。

上層部の意向に従った者達で構成された技研の経営は一時は安定したのであるが、前述の二人目の男性適正者が周囲の遥か斜め上をいく活躍を成したのだ。

当初は社内の除け者、邪魔者、鼻つまみ者で構成されたIS統合対策部が彼を中心に結束強く纏まり、どういう訳だが知らんが、IS関連企業世界シェア第三位のデュノア社と手を組んで白式に負けず劣らずの第三世代機『琥珀』を開発してしまったのである。

更にその機体をもってして様々な非公式公式に関わらない任務を達成させ、遂には()()()()()の国際公式IS大会優勝者となってしまう始末。

 

更に言えば、あの篠ノ之 束が開発した白式を与えられた筈の期待の新星、最初の男性適正者たる織斑 一夏は()()()をするばかりだったのだ。

「みんなを守ってやる!」という耳障りの良い大言壮語は吐き晒すもののそれに対する実力と実績が追い付かない。

それどころか、危うく任務を台無しにしてしまうかの様な()()()()をしでかすと言う体たらくっぷり。

そのせいで、ある任務において()()()()()()()()()()なる取返しがつかない大失態によって倉持技研は打鉄弐式とそのパイロットをIS統合対策部に持っていかれるという事となった。

然して世界初の男性IS適正者にして、あの世界最強のISパイロット織斑 千冬の弟を手放すのは惜しい。

幸いにも彼は姉に似て端正な顔立ちをしている為、それならば宣伝広告の客寄せパンダにしようと画策していた・・・調度そんな時の事。

なんと篠ノ之 束が御手自ら設計開発した第四世代型ISが倉持技研に舞い込んで来るという千載一遇の()()が舞い込んで来たのである。

 

世界各国が第三世代開発で二の足を踏んでいる中で出現した第四世代型ISは、各国が喉から手が出る程の垂涎の一品。

倉持技研は会社の更なる発展の為、これを元に新型量産ISの開発研究を行わんとした。

・・・ところがどっこい、これもまた()()が立ち込めたのである。

 

その()()たる原因というのが、話題となった第四世代型IS『紅椿』の専属パイロットとなった篠ノ之 箒であった。

この箒なる人物はあの篠ノ之 束博士の実妹であるのだが、どうも自分が専用機体を所有していない為に自分専用のISを姉に()()()()結果が第四世代機と言うではないか。

 

ISの専用機を所有するという事は、その者がある程度の技量と実績を有し、周囲から十分な期待をかけられているという事だ。

だが、紅椿を譲渡された当時の箒に専用ISを有するに値するものがあったかは甚だ疑問である。

一応、中学の全国剣道大会で優勝するという()()はあったが、だからといって専用機、それも最新型を与えられるというのは()()()()()()事態ではなかろうか。

・・・しかもこの箒なる人物は随分と直情的性格をしており、特に彼女が長年思いを寄せていた人物たる一夏が鼻の下でも伸ばそうものなら木刀を振るうか、ISを部分展開しての実力行使を行うと言った暴力行為を容易く行う性格をしていたのである。

そして・・・このカッとなって手を出す性格が、倉守技研に災難を呼び込んだのだ。

 

年が明けてさぁこれから新学期が始まろうかという矢先の事、幼い頃から思いを寄せていた一夏に()()がいる事が発覚したのだ。

しかも一夏の恋人なる相手は、前年暮れにイギリスで起きた軍事衛星暴走事件の水先案内人としてイギリス政府に使わされた一学年上の代表候補生サラ・ウェルキンであった。

 

その際の箒の激情ぶりったらない。

彼女はそんな同じ代表候補生ではあるものの専用機を持ちえない()()と侮っていたサラをあろう事か紅椿でもって殺害せんとしたのである。

幸いにもその場に居合わせていた中国代表候補生の凰 鈴音によってサラの殺害は防がれたのだが、現場となった学生寮一部は凄惨たる有様。

勿論、この殺人未遂ならびに建造物破壊器物破損の一件は到底()()()できる()()を超えていた。

しかも被害者となったサラはイギリス政府から遣わされた代表候補生である為、国際問題待ったなしである。

これはイギリスと日英円滑協定を結んだばかりの日本政府にとっては大きな痛手であり、イギリス政府にとっては大きな()()()()であった。

 

この一件を日本政府は大きく表沙汰にされたくないであろうと踏んだイギリス政府は、日本政府に幕引きを図る為の条件を提示。

その条件とは、事件の()()として使用されたIS第四世代機体紅椿を譲渡する事である。

勿論、日本政府はこれに難色を示したが、あくまで事件加害者の箒が被害者のサラへ謝罪をしなかった場合の()()()であった。

しかし、サラは箒のプライドの高さを見越してイギリス政府上層部へ進言していたのである。

あの気位の高い箒が、自分より指折り数える程に()()である自分に頭を垂れるなど有り得ないと踏んでいたからだ。

サラのその予想通り、箒は謝罪の意思など更々なかった。

自分の想い人を()()()()()()相手に頭を下げるなど太陽が西から昇ってくる程にあり得なかった。

学園地下に()()され、旧知の仲であるブリュンヒルデにして一夏の実姉たる織斑 千冬に説得されようとも意思を曲げる事はなかった。

 

これでは埒が明かぬ。

然して日本政府は第四世代機体をイギリス政府に譲渡する事に難色を示していたのは、()()()の事であった。

実は日本政府は既に紅椿の機体解析を終えていたのである。

この第四世代機体の解析を行ったのは、あの二人目の男たる清瀬 春樹が所属するIS統合対策部。

けれどもこの尋常ならざる速度で解析を終えた事を知っているのは政府上層部でも一部の者のみであった為、イギリス政府には望み通り通常なら解析だけでも何年も要するであろう()()()()を渡す算段であった。

 

・・・ところがそうはいかないのが倉持技研である。

打鉄弐式とそのパイロットたる更識 簪の()()として手に入れた紅椿なのだが、IS統合対策部とは違って解析に難航。

そんな解析が十全ではない状態で舞い込んで来た箒の()()()()は、技研に大きな動揺を奔らせる事となった。

特に白式と紅椿を元に新型量産機体計画を練り、組織上層部から成果をねだられる倉持技研第二研究所所長の篝火 ヒカルノにとっては寝耳に水であり、歯噛みする展開である。

しかも泣きっ面に蜂とばかりに()()()()もあった。

 

「どうすれば・・・どうすればサラが一早く紅椿の所有者になれますか?」

 

紅椿のイギリスへ譲渡された後、その所有者はその功績を鑑みてサラになる事が判明し、それを後押しする様に彼女の恋人である一夏から推薦の声が出たのだ。

この推薦の声は日本政府の耳へと入り、さっさと幕引きを図りたい政府から指示が出たのである。

その結果―――――

 

「―――なーして、コンペの時期が早まったんじゃろうねぇ?」

 

IS統合対策部と倉持技研の次世代量産機体コンペティションの日程が大きく前倒しされたのである。

無論、これは倉持技研がイギリスに紅椿を渡す前に次世代量産機完成を急いだ為だ。

既にIS統合対策部が機体を完成間近までいかせたなる情報をつかんでいた技研は、()()()()()()()政治家や防衛相関係者を使ってコンペ日程をワザと早めたのである。

 

「・・・技研さんも大変じゃのぉ。

おかげで色々と()()()()()頑張らせてもらいましたわぁ!」

 

「腹の中が()()()のお前が言うと増々嫌味たっぷりだな。

そんなに早まったのが、あれか?」

 

「そりゃそうじゃろうて!!

今日が何日か知っとるんで!?」

 

倉持技研の策略によって一か月弱も早まったコンペティションは二月の半ば、世間が浮かれるヴァレンタインデーに行われる事となったのだ。

これに大いに憤慨したのが新型量産機計画を牽引する一人である春樹であった。

生まれて初めての恋人と過ごす初めてのヴァレンタインに彼は内心ウッキウキで浮かれていたのであるが、今回の一件で御破算となってしまったのである。

 

「・・・だったら学園に引っ込んどきゃ良いだろ」

 

「じゃあ今からでも帰ってええんですか!?」

 

「・・・ダメだよ、春樹?」

 

「やった帰れる!」と息巻く春樹に待ったをかける様に彼の袖を引っ張ったのは、同じく量産機体計画を牽引する一人たる簪。

その隣では、試験試作型量産機パイロットの四十院 神楽が苦笑いをしている。

 

「ラウラからも・・・「自分の受け持った仕事はちゃんとして来い!」って、言われたでしょ?」

 

「うぅっ・・・塩対応。

色々と俺も準備したのに・・・おのれ倉持技研!!

むっきゃぁあああああ!!」

 

「うるせぇ!

いいから準備しろ、コノヤロウ!」

 

「えーん!

芹沢さんじゃって榊原先生とラヴラヴなヴァレンタインデーを楽しみにしとった筈じゃろうて!!

この前の休みに二人がホテルから出てきたとこ見ましたで!!」

 

「ッ、何で知ってんだテメェ!!?」

 

「そんなん、俺がラウラちゃんとシャルロットと()()する場所選びしょーた時にたまたま目撃しちゃったんでさぁ。

部隊の顧問と仕事先の同僚が・・・ちぃっとばっかし、生々しくて引きましたわ」

 

「・・・清瀬、お前スパナで殴っても死ななかったけ?

どれ試してやろう、この色ボケクソガキ!!」

 

「ちょっ!?

芹沢さん!!?」

「芹沢さんがご乱心だぁ!!」

 

額に青筋を浮かべてスパナを握りしめる芹沢を羽交い絞めするIS統合対策部技術スタッフ達を尻目に春樹は「あっかんべー!」とクソガキムーブをかますのだが、簪はそんな彼にお仕置きをする様に片耳を引っ張った。

 

「春樹、八つ当たりしてないの。

もうすぐコンペが始まるんだから大人しくしなさい」

 

「痛てて、地味に痛いって簪さん!」

 

「そういえば・・・()()()は?

時期が早まっちゃったけど、この日の為に準備してきたんでしょ?」

 

「応よ。

じゃけども・・・」

 

「だけど・・・?」

 

「ちょっと緊張しまくっとるみたい。

今、トイレにこもっとる」

 

「・・・大丈夫なの?」

「知らん!!」

 

 

 

 

 

―――◆―――

 

 

 

「さて・・・それではこれより倉持技術研究所とIS統合対策部の両社による次世代量産機体計画の発表を行っていただきます」

 

一か月以上も前倒しとなって行われる事となった二社による日本国防衛相向けの機体コンペティション。

しかし、実情はコンペ審査委員の主要メンバーを倉持技研が()()()()()()()為に相手が並みの企業であるならば技研の勝利が揺らぐ事はない。

その安心感からか、ここに倉持技研が新たに開発を行った次世代IS量産機体の開発主任たる篝火 ヒカルノの姿がなかった。

何やらこのコンペよりも()()()()()があるとの事で、信頼に足る部下達へ引き継ぎ・・・早い話が()()()していたのである。

然して、引継ぎを受け取った倉持技研スタッフ達に焦りや不安の表情は感じられない。

何故ならば彼ら彼女らは第二世代のIS傑作機を開発した実績を有し、その新たに開発した機体はあのIS発明者が御手自ら開発した最新第四世代機をベースとした新型量産機開発に携わった精鋭中の精鋭メンバー。

しかも倉持技研上層部はコンペ審査員を抱き込むなどの裏工作を行う徹底ぶりな為、()()に考えれば()()()事など()()()()()

開発放棄していたとは云え、機体とパイロットを()()()()と云う苦い経験がある倉持技研にとって今回のコンペは、IS統合対策部の()()()()()()()()()()()()()には持ってこいの場であった。

 

―――・・・けれどもだ。然し手だ。

今回、倉持技研が相手にするIS統合対策部なる企業は()()()()()ではない。

短期間で異常とも言える戦績を打ち立てた今や『ヴァイオレット・ファフニール』の二つ名を持つ二人目の男、清瀬 春樹が倉持技研の()()()に気付かぬ訳がなかった。

春樹が身に纏い、数多の戦場を共に駆け抜けた第三世代型IS『琥珀』を開発した芹沢 早太を筆頭とするIS統合対策部技術スタッフ達が、ただの変人奇人ヲタク集団であろう筈がなかった。

 

「ッ、なんだと・・・!?」

「そんなまさか!!?」

 

倉持技研技術スタッフ達は一様にして表情を驚嘆に染める。

今日この日の為、技研が開発した次世代新型量産機の名は『緋蜂』。

あのIS発明者たる篠ノ之 束博士が実妹、篠ノ之 箒の為に作成した第四世代IS『紅椿』をベースに開発した世界各国が未だ到達できていない第四世代新型IS量産機だ。

その紅椿をベースとしている為、その機体カラーは目が覚める程に発色の良い真紅で、更に機体色だけでなく、他にも様々な部分を紅椿から受け継いでいた。

 

今まで机上の空論とされていた機体の両腕肩脚部と背部に装備された展開装甲は、その一つ一つが自動支援プログラムによるエネルギーソード・エネルギーシールド・スラスターへの切り替えと独立した稼動が可能であり、オリジナルには劣るが背部の一つは切り離してビットとしての使用も可能となっている。

しかも緋蜂の主武装となっている刀剣武装は紅椿の主力武装たる雨月と空裂を元にしている為、刺突攻撃の際はレーザー放出をし、斬撃時はエネルギー体を刃として放出する事ができる一対多での中距離戦闘にも適したものだ。

更にこれまた紅椿の射撃武装たる穿千を元とした出力可変型ブラスターライフルを装備している。

正に現行機を遥かに凌駕する機体性能に加え、即時万能対応機という第四世代型のコンセプトを実現した機体だ。

・・・だが、一方で対するIS統合対策部がコンペにおいて披露したものは―――――

 

―――「私達が発表いたします機体は・・・()()()()()量産IS、名を『翡翠』と申します」

 

倉持技研の面々は思わず吹き出しそうになってしまう。

自分達よりも早く第四世代機を解析処理していた筈の彼らが堂々と披露したのは、()()()機体であったからだ。

苔生した様な機体カラーが増々滑稽に思えてならず、自分達はこんな企業を恐れていたのかと失望と勝利への確信が混じった感情に倉持技研関係者は口元を抑えた。

 

「―――――・・・『相手が勝ち誇った時、そいつは既に敗北している』」

 

不意に聞こえて来たそんなセリフに倉持技研の面々は自分達の心をまさぐられた様な不快感に支配される。

声が聞こえて来た方へ目をやれば、そこには白髪をブラッシュアップに決めて丸サングラスをかけた不審人物がドッカリ腰を据えてニタニタこちらを眺めているではないか。

その声の主は一部の倉持技研職員達にとっては目を合わせたくない人物であった。

 

「阿破破ッ・・・じゃあ反撃開始と行きましょうや!」

 

IS統合対策部が披露した量産型IS『翡翠』はパイロットのイメージ・インターフェイスを用いた特殊兵器の搭載を目標とした第三世代。

この第三世代は今までは搭載した兵器を稼働させ制御するにはパイロットに多大な集中力が要求していたであったのだが、翡翠はこの集中力を琥珀によって培ったAIに代替えさせる事でクリア。

然して他の現行第三世代機よりもずっと扱いやすい機体となるだけでない。

 

「我々IS統合対策部が開発した翡翠は互換性を重視した機体となっており、現行で使用されている武装をそのまま流用する事ができます。

しかも生産ラインもそのまま低コスト!!」

 

「おぉ!!」と上がる歓声に対し、さっきまで勝利の笑みを浮かべていた倉持技研の面々の顔へ焦りの色が見え始める。

だが、焦っているのは自社がコンペ審査員を抱き込んでいるなどとは露とも思っていない下っ端ばかり。

事情を知る技研関係者は、巫女服と武者鎧がモチーフとなっている翡翠を纏う四十院 神楽の美しさを楽しむ余裕があった。

・・・まぁ、その余裕もすぐにかき消えてしまうのだが。

 

「それでは、翡翠へ搭載された武装を紹介いたしましょう」

 

翡翠の主武装は現行の防衛武装である対IS用のマシンガンやグレネードランチャー他、第二世代量産IS打鉄が使用する超長距離射撃装備『撃鉄』までをも使用できるだけでなく、この翡翠の為に開発された武装も存在した。

そのどれもが、春樹の専用機である琥珀の武装を元としたものである。

特にIS統合対策部が独自開発した高周波振動武装MVSSメーザー・ヴァイブレーション・サムライソードを使用した日本刀型武装『時雨』と薙刀型武装『鋼融』の威力は斬撃や刺突によって従来の装甲版を切断破壊するには十分であり、更に特殊射撃用武装として開発された長弓型武装『為朝』は審査員を驚かすには十全であった。

特に矢もなく、弓の弦を引くだけでエネルギー体の矢が形成されて発射できる機構は絶賛に足るものである。

 

一方で第四世代の緋蜂は生産ラインを一から構築するか、現行ラインを改造する為にコストがかかるだけでなく、量産機と謳いながら第四世代である故に特注としてこれもコストがかかるのだ。

 

「国防には何にしても金がかかります。

国防には金と時間に糸目をつけない事が一番良ろしいが・・・時間は兎も角、金は何処から来るのか?

我々の懐・・・国民の血税であります。

ヤマアラシのジレンマですよ。

極端な事を言えば、『タダ同然で最高の戦力を!』・・・なんて事は到底無理ですけどね」

 

「よっ!

芹沢屋!!」

「・・・やめてよ、恥ずかしい」

 

それに第四世代は未だ謎の部分が多い。

色々と正体が知れぬものを国防に使うというのはいささかどうなのであろうか。

それでも倉持技研の勝利への確信は揺るが―――――

 

「―――あっ、そうそう。

ちょっと皆さんに見て頂きたいものがありましてね」

 

機体紹介の途中で割って入った白髪丸サングラス・・・もとい春樹の登場に倉持技研の面々は本能的に恐怖を感じ、IS統合対策部の面々は「待ってました!」とばかりに立ち上がった。

するとIS統合対策部職員達はそそくさとプロジェクターを用意すれば、そこへ映し出されたものに「ッ、な・・・!?」とパイプ椅子を蹴り上げた者がチラホラ。

正確にはコンペ審査員席と倉持技研陣営席からだ。

 

「あら・・・!

この人、なんかえらい分厚い茶封筒持ってますねー?

あららー?

この茶封筒もらってる人とあげてる人・・・審査員席にいるあなたと倉持技研さんとこの人に似てません?」

 

「しゅ、主任!!?」

「須山局長ッ、あなたは!!」

 

「ちょ、ちょっと待て!

いきなりなんだこれは!?」

「そ、そうだ!

こんなのはコンペに関係ない!!」

 

「そういきり立たないで下せぇ!

ちゃんと写真だけじゃのうて、音声と映像と証人の発言も纏めてありますんで!!」

 

「なっ、なに・・・!!?」

 

そこから始まったのは防衛相幹部と倉持技研上層部による()()の証拠のオンパレード。

会合の写真に話の内容、封筒や箱に入っていた()()()()()()()の数まで正確に網羅していたのである。

しかも怒涛の勢いで次々と曝される為、反論の余地もない。

そして、最後には―――――

 

「これって、()()()だから何になるでしょうかねぇ?

教えてお巡りさーん!」

 

「はい、呼ばれたお巡りさんです」

「全員動かないでください!!」

 

ゾロゾロと警察手帳を片手に大人数で入って来たのはスーツを身に纏った捜査官達。

そんな彼らに春樹はピースをすると何人かがピースを送り返した。

・・・どうも()()な様だ。

 

そんな訳で収賄に賄賂疑惑がある者達が証拠映像証拠品と共に連行された後、茫然騒然となる現場に一つ拍手が響く。

無論、音の発生源は白髪丸サングラスのクソガキである。

 

「さて、どうします?

ここは簡単に機体同士の力比べと参りましょうか?」

 

そう春樹はニッカリ微笑むと()()用意していた試合会場へと皆を案内した。

さすれば、そこには翡翠とは違う()()()に彩られたフルスキンタイプの機体が佇んでいるではないか。

その()()()()()に春樹は笑いかけた。

 

「待たせたな、()()()()ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆

…ワンサマー氏と和解すべきだと思う人ー?

  • はーい!!(^^)/
  • えー!?(・_・;)
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