IS/Drinker   作:rainバレルーk

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第247話

 

 

 

―――――「も・・・もうおしまいだぁ!」

 

表には出さぬが胸の内で口々に苦痛さや悲痛さを吐露するのは、倉持技研所属の技術スタッフ達。

彼ら彼女らは篝火 ヒカルノが率いる倉持技研第二研究所が企画した栄えある次世代量産IS機体開発計画に参加していた。

しかし、開発計画と言っても一から機体を開発製作する訳ではなく、政府から下賜された機体を汎用量産機に()()するだけのものである。

されどもその量産機の元となる機体は、ISを()()したあの篠ノ之 束博士が開発製作した機体で、しかも世界各国が実用化に向けて躍起になっている第三世代機を飛び越えた文字通りの新世代型たる第四世代機だったのだ。

 

そんな第四世代型IS『紅椿』を元に量産機開発に着手した倉持技研第二研究所だったのだが・・・ついこの間まで机上の空論だった現行機を遥かに凌駕する機体性能と即時万能対応機というコンセプトを実現した機体だった為、機体を解析するだけでも難航に難航を重ねる始末。

更に防衛省に向けたコンペティションの為に昨今の働き方改革などあってないようなもので、倉持技研第二研究所の面々はそれまで抱えていた仕事を半ば放棄し、休日返上の残業上等で開発計画を進めた。

・・・無論、()()()()()()()()でコンペの日程が一か月以上も早まってしまった際には寝食も惜しみ研究所に泊まり込みで昼夜問わず皆は量産機開発に打ち込んだ。

 

そして、待ちに待ったコンペ当日。

心血を注いで開発した新世代型量産IS『緋蜂』がコンペ審査員を務める防衛省や自衛隊幹部へお披露目されたのである。

 

・・・然して、()()()()()()()()だ。

蓋を開けてみれば、このコンペティションは倉持技研上層部が発言権を有する主要審査員達を抱き込んだ()()()()()だったのである。

勿論、傑作第二世代機『打鉄』を開発して隆盛を誇っていた倉持技研がこんな大それた真似をしたのには理由があった。

それはコンペの相手が、ヴァイオレット・ファフニールの二つ名を持つ()()()()()、清瀬 春樹を擁するIS統合対策部だったからだ。

だからこそ倉持技研は現行機を凌駕する新世代型機体を披露するだけに飽き足らず、()()()の為として()()()()()()()をバラまいたのである。

 

―――――けれども・・・『過ぎたるは猶及ばざるが如し』と云ふ。

倉持技研が良かれと思って行ったこの()()()が、目聡い()()()()()()()を与えてしまったのだ。

その結果、コンペティション当日までの間にIS統合対策部側から賄賂の証拠を捕まれてしまい、あろう事かそのままコンペ最中に真実を暴露されてしまったのである。

しかも近場に警察まで配備させていた手際の良さもあって収賄事件に関わっていたであろう()()()()は連行されてしまったのだ。

・・・と、本来ならばここでコンペは中止となる筈だったのだが、そうはならなかったのである。

 

「・・・さて、それでは気を取り直してやっていきましょうや!」

『『『ッ、えぇ!!?』』』

 

IS統合対策部・・・もとい、この()()()を計画したであろう蟒蛇は、予め事件とは無関係な技術スタッフ達をワザと残してコンペを継続させたのだ。

だが、収賄事件に関わっていたであろう倉持技研の幹部職員は連行されている為、今の倉持技研側は頭を失ったに等しい状態。

更に言えば、()()とやらでここにはいない倉持技研第二研究所所長にして新型量産機開発計画のリーダーたる篝火とも連絡がつかない始末だった為、残された技術スタッフ達は動揺の余り右往左往。

そんな彼らを蟒蛇は・・・春樹はそそのかし、事件とは無関係なコンペ審査員達を連れて予め用意した会場へと案内したのである。

 

「待たせたな、()()()()ッ!」

 

移動先となったコンペ会場はISの模擬戦闘が行える程の規模があり、そこで彼ら彼女らを待ち構える様に柘榴の身の様に深く濃い赤色に身を染めたフルフェイスの人型装甲機体が佇んでいたのだ。

 

「あ・・・あの、その機体はいったい?」

 

倉持技研技術スタッフの疑問符に春樹は耳まで裂ける程にニッカリ口端を吊り上げる。

彼が丸サングラスをかけている為、いつも以上にその様子は怪しさ満点で、思わず「ひッ・・・!?」と悲鳴を上げる者もチラホラ。

 

「この機体は我々、IS統合対策部が開発製作した新機体・・・ギリギリ先月に完成しましたので、それにあやかって『柘榴』と申します」

 

春樹の文言に倉持技研のみならずコンペ審査員達からも驚きの声が混じった感嘆符が漏れる。

国防に使用される新型量産機のコンペティションが行われると発表されてから今日までの期間で、IS統合対策部は二つの機体を開発したという事は驚嘆に値する事実であったからだ。

 

「この我々が開発した柘榴と倉持技研さんが開発した緋蜂とで模擬戦闘を行わして頂きたい。

よろしいですか?

この方が・・・色々と手っ取り早いのではなかろうかと思いましてねぇ?」

 

春樹の文言に倉持技研の面々は戸惑う。

確かに機体性能を比較するとするならば、確かに彼の言う通り機体同士による戦闘でもって勝敗を決めると明暗を分け易い。

しかし、まさかこんな展開になるとは思ってみなかった為、倉持技研側に動揺が奔った。

 

「おや?

別に問題はない筈では?

緋蜂のパイロットを務めているのは、航空自衛隊第七航空団第三飛行隊IS部隊に所属していた元三等空尉、大原 麗美殿・・・私達が通うIS学園のOGと見受けられますが?

実力は申し分ない筈です」

 

倉持技研の専属パイロットの情報まで関知している春樹に増々倉持技研側はいぶかしむが、彼がまくし立てる挑戦的な口調に緋蜂のパイロットである大原はやる気に満ち溢れる。

その彼女からのやる気を感知したか、春樹は翡翠のパイロットである四十院へ目をやった。

 

「よろしいかな四十院さん?」

 

「はい、構いません。

少し残念ですが・・・ここは仕方ありませんね」

 

「よっしゃ!

それでは準備に取り掛かりましょう!!」

 

企業側の戸惑いを他所にパイロット達の了承によって行われる事が決まった新型機体同士による模擬戦闘試合。

残されたスタッフと言っても模擬戦闘試合の準備を取り行う事に倉持技研側は支障はない様で、戸惑いの色が見受けられつつもシャクシャクと戦闘準備を行う。

 

「どうじゃ、いけっか?」

 

一方のIS統合対策部側は最後の調整を行う中、その機体頭部を春樹は軽く小突くと柘榴を纏うパイロットは無言で頷いた。

けれども緊張による為だろうか、固く握りしめられた両手が若干震えているのが見て取れる。

 

「大丈夫じゃ、大丈夫!

勝っても負けてもボーナスは出すけん、心配せんでもええ。

それに・・・今のお前さんでも十分喰い付いていけると思うで?

ええな??」

 

怪しく胡散臭い笑みを浮かべる春樹に対し、柘榴のパイロットは彼の方を向いて何度も大きく頷くと装備品である得物を握った。

 

「清瀬・・・」

「大丈夫ですって芹沢さん!

俺のパイロットを見る審美眼を信じてください!!」

 

「そりゃ心配してねぇよ。

そうじゃなくて・・・うちの柘榴と倉持の緋蜂、機体カラー被ったなって思ってな。

機体名変えて、カラーも変えないか?」

 

「えぇ・・・いやじゃ」

 

こんな春樹と芹沢の雑談を他所に試合会場へ二体の機体が登場する。

奇しくも同系色のカラーリングを纏っているが、両者の位置には大きなずれがあった。

倉持技研専属パイロットである大原が纏う緋蜂は、その名前を体現するかの如く()の様にホバリングしている。

対してIS統合対策部の新機体である柘榴は地に足をつけて緋蜂を見上げていた。

 

「まさか、こんな事になるなんてね。

だけど・・・手を抜くつもりはないわ!

やるのなら徹底的によ!!」

 

奮起する大原の緋蜂に柘榴のパイロットは無言のまま戦闘態勢をとる。

左腕には機体カラーと同じ柘榴色に彩られた大型シールドを有し、右腕部には短く切り詰められた銃身を持つ銃火器が装備されていた。

 

「・・・・・」

「・・・不気味なやつ」

 

無言を貫く柘榴に大原は不信感を抱きながらも試合開始の合図を待てば、会場いっぱいにけたたましいブザー音が響き渡る。

そして―――――

 

「ッ!!」

 

意外にも先に動いたのは柘榴だった。

脚部のスピードローダーを高速回転させて一気に加速するとそのままスピードに乗って試合会場を縦横無尽に駆け回るではないか。

 

「この・・・!

うろちょろと!!」

 

そんな試合会場を駆け回る柘榴に向けて大原は飛び道具であるブラスターライフルを構える。

だが、柘榴があんまりにもちょろちょろ動くものだから正確な照準が定まらない。

それならばと彼女はライフルの出力上げる事で火力を直線的狙撃から散弾の様な拡散式へと変形させてトリガーを絞った。

さすれば銃口からビギャァア―――アン!とショッキングピンクのビームが発射されたではないか。

 

「破破阿・・・ッ!

やっぱり、()()()()()()()()!」

 

然して管制室から戦況を見守っていた春樹は()()()()に顔を歪めるが、極太ビーム砲に相対する柘榴にとっては堪ったものではない。

そこで柘榴がとった方法は―――――

 

「ッ・・・!!」

「なにを!?」

 

柘榴の左腕に装備された大型シールドからバシュッ!と発射されたのは、琥珀や翡翠にも標準搭載されている先端にアンカーが装備されたワイヤー武装スラッシュハーケン。

その弾道が緋蜂へと向かえば、先端のマジックハンドに改造されたアンカーが機体の脚部を捉えると釣針に引っかかった魚を釣り上げるワイヤーを高速で巻き取った。

・・・けれども飛行能力を有する緋蜂の方が出力が高い為、機体を引きずり下ろす処か柘榴の方が浮き上がってしまうのだが、これが逆に功を制する結果となる。

 

「うっわぁあああああああ!」

「うっそでしょ!!?」

 

引きずり下ろすつもりが、逆に()()()()()()()要領によって高くジャンプ。

結果的に地表に向かって撃ち降ろされたビームを回避する事となり、更に緋蜂よりも高いポジショニングをとる事に成功した。

 

〈今じゃ!

撃ちまくれ!!〉

「ッ、了解!!」

 

春樹の号令が鼓膜を揺さぶるや否や、柘榴は呆気にとられる緋蜂へ右腕に装備された銃火器であるバーストマシンガンの銃口を向ける。

勿論、トリガーは引きっぱなし。

弾倉の残弾など気にも留めない。

 

「当たれぇええ―――ッ!!」

 

今まで無言を貫いていた柘榴から発せられた()()()()と共にガガガガガッ!!と凄まじい銃撃音が響けば、銃口から射出された対IS用徹甲弾が雨あられに降りしきる。

しかもスラッシュハーケンのワイヤーを現在進行形で巻き取っている為、柘榴と緋蜂の距離は詰められるばかりで更に着弾率が上昇。

 

〈はい、近接戦闘に移行!

必殺のぶつ切りじゃあ!!〉

「了解です!!」

 

再び春樹からの指示に柘榴は弾数残り僅かとなったマシンガンを投げ捨てれば、右背部に搭載されていたブレードを引き抜く。

そして、その刀身にプラズマを纏わせて振り被る。

 

「ッ、させるかぁあ!!」

「ううぇぇえええ!!?」

 

だが、緋蜂とて素直にやられる()()ではない。

機体本体をコマの様に高速回転させる事で近接格闘を回避すると同時に柘榴を地表へ叩きつけると再びブラスタ―ライフルによる射撃で柘榴を仕留めんとした。

―――――・・・ところがどっこい。

 

「―――えッ・・・ちょっ・・・!?

うわぁあああああ!!?」

 

トリガーを引いてもブラスターライフルから先ほどの様な極太ビームが飛び出す事はなかった。

それどころか機体が発する飛行能力が著しく大幅に低下してしまい、緋蜂はそのままフラフラ浮遊力を失って墜落。

緋色の装甲版が砂利土のよって汚れる。

 

「な、なにがッ・・・いったい何が起こったっていうの・・・!!」

 

地表に激突してしまった事で土煙を上げる緋蜂のパイロット、大原の疑問符に答える者はいない。

代わりに説明するとすれば、これは緋蜂の元となった機体、第四世代型IS『紅椿』の特性が原因と考えられる。

紅椿は単一能力として『絢爛舞踏』なるエネルギー増幅能力を有していた。

この能力は使用時に展開装甲から放出される黄金色の粒子によって機体が金色に輝き、少ない残量のエネルギーを増幅して一気にフル状態にしたり、従来ならば事前準備が必要でISコア同士のシンクロなど非常な困難が伴う他のISへのエネルギー提供を機体接触するだけで即時実行できる。

然して紅椿はこの単一能力の使用を前提にしており、発動していない時は現行機以上に燃費効率が非常に悪い為、機体がすぐにエネルギー切れを起こしてしまう諸刃の刃。

そして、紅椿を量産機に落とし込んだ緋蜂を開発した倉持技研はこの問題を解決するに至ってはいなかったのである。

しかもこれで単一能力が使えると言う訳でもない。

はっきり言って()()()と言っても差し支えない出来であったのだ。

 

・・・けれどもこんな重大な欠陥を緋蜂開発メンバーが知らぬ訳がない。

本来ならば年単位で欠陥要素を改善するべきなのだが、何が何でもIS統合対策部よりも早く次世代量産機の利権を独占したかった倉持技研上層部が()()()()のだ。

量産機開発の権利を勝ち取る事を優先し、機体の問題点改善を二の次にしてしまったのである。

 

「破ッ・・・金儲けに目がくらんでモノづくりを舐めたツケじゃ、おわんごめ!」

 

この緋蜂の問題点を春樹は予め()()()()()

そもそも倉持技研よりも先にIS統合対策部は紅椿の解析を行っていた為、この第四世代機の問題点を早くに関知していた。

 

「あのでぇれー優秀な芹沢さん達、IS統合対策部のメカニックさんらぁが問題改善に何年も・・・下手すりゃ何十年もかかるって云うんじゃ。

倉持技研の連中が、そう易々と解決できる訳なかろうがな!」

 

それ故にIS統合対策部は次世代量産機を第四世代でなく、第三世代機の路線で進めたのである。

そして、その予想通り倉持技研は機体の問題解決を先送りにしてしまったのだ。

 

「―――今だぁああッ!!」

「っ、この!」

 

砂利土に跪く緋蜂に向かって柘榴は雄叫びながら転倒しそうな程の前傾姿勢で突っ込むのだが、緋蜂とて何もせぬ訳がない。

迎撃の為に日本刀型ブレードを引き抜けば、その切っ先で相手を串刺しにせんと構える。

されども柘榴が怯む事はなかった。

脚部のローラーから焼け付く香しさが漂うまで最高速度を出すと共に前方へ大型シールドを構えれば、そのまま一気呵成に体当たりを行ったのだ。

 

ガィイイ―――――ッン!!

「ッ、ぐぅうう!?」

「うぉおおおおおおおッ!!?」

 

丸みを帯びたシールド表面がブレード先端を弾くと共に緋蜂への体当たりを成功させる柘榴。

然して相手は第四世代ISか。

相手を壁まで吹っ飛ばすには威力が足らず、力の方向も一直線であった為、柘榴は緋蜂へ激突した拍子に上へと弾かれてしまう。

そして、そのままクルクル何回転もしつつ地面へ落ちてしまった。

 

「阿ぁッ、畜生め!

もうちょっとじゃったのに!!」

「言ってる場合か!

担架だ、担架!

担架持ってこい!!

エアバッグが作動したと思うが、担架だ!!」

 

地面への着地失敗を危惧したIS統合対策部面々は冷や汗をかきながら急ぎ柘榴の元へと駆け寄る。

すると皆の心配を他所に震えがあれども足腰しっかりして柘榴は立ち上がったではないか。

 

「ハァ・・・ハァ・・・ッ!

し、死ぬかと・・・死ぬかと思った!!」

 

「大事ねぇか!?

ようやった、ようやった!

ようやったぞ、美事なもんじゃ!!」

 

「だ・・・だ、だけ・・・だけど()ッ・・・あとちょっとだったのに!」

 

「構うもんかよ!

ようやったぞ御美事なもんじゃ、胸を張れい!!

さぁ、兜を脱いで皆に値千金のツラぁ見せてやれや!」

 

激励の言葉を発しながら春樹は柘榴から兜を受け取る。

すると真っ赤なフルフェイスマスクから露わになったのは()()()()()の―――――

 

「な、なんだと!?」

「そんなまさかッ!!」

「いったいこれはどういう事!!」

 

正体を現せた柘榴のパイロットに愕然と目を丸くしたのはコンペ審査員達だけではない。

倉持技研の面々はおろか、先程まで戦闘を行っていた緋蜂のパイロットたる大原も呆然としてしまう。

それもその筈、第四世代量産ISと戦っていた機体に登場していたのは―――――

 

「―――・・・あの、清瀬さん?

なんで・・・みんな、()の事を変な目で見てるんです?」

 

皆からの奇異の目に思わずたじろいでしまったのは、脱いだ柘榴の兜を小脇に抱えた機体カラーにも負けぬ赤い長髪を有する一人の()()

表情にあどけなさは残るが、見たところ十代半ばの()である事は明白であった。

 

「皆さん、紹介します!

彼の名は五反田 弾!

五反田食堂の看板()()でござい!!」

『『『なっ、なにぃい!!?』』』

 

春樹の声が会場内へ響いた後、周囲から返って来たのは落雷の如き驚嘆の声。

その声に増々柘榴のパイロット・・・弾は戸惑いの色に顔を染めてしまうのだが、逆に春樹は満足感たっぷりで口端をニタリ歪めたではないか。

 

「ちょ・・・ちょ、ちょっと待てください!」

「そうなるとまさか、そのパイロットは・・・もしや()()()の―――――()!!!??」

 

「おっと、おっと、おっとっと!

勘違いしちゃいけませんぜ?

彼は・・・別に()()()()()()ではありませんよ。

年は私と同じくらいですがね!」

 

「だ、だがしかし!

先程、その少年・・・五反田という彼は、倉持技研の緋蜂と模擬戦闘を行って!!」

 

ある一人のコンペ審査員は興奮冷めあがらぬ声色で目を見開くのだが、これはこの一人だけではない。

他の者達も口を抑えたり、体を震わせたり、目を白黒させて目の前の驚くべき事実に動揺を奔らせて強張る。

その彼ら彼女らの反応が、春樹には楽しくて楽しくて堪らなかった。

その彼ら彼女らの感動が、IS統合対策部の面々には嬉しくて嬉しくて堪らなかった。

そんな彼ら彼女らの中で精一杯理性的に装う芹沢が声を発する。

 

「先程の戦闘・・・男である筈の彼、五反田がどうしてIS相手に善戦をしく事が出来たのか?

それは単衣に我々が開発した新機体、柘榴のおかげでしょう」

 

「い、いや・・・しかし、ISはそこに居られる清瀬代表候補生や織斑 一夏氏などの例外を除いて原則的には女性にしか扱う事が出来ない筈です!!」

 

「おっと・・・そこが()()()と言うべき所でしょう」

 

「か、勘違い?」

「いったい、どういう事?」

 

「はい。

そうです、勘違いです。

そもそもですが・・・私達IS統合対策部が一体何時、柘榴をIS・・・インフィニット・ストラトスと紹介したのでしょうか?」

 

「・・・・・はッ??」

 

「改めてご紹介致します。

我々IS統合対策部が対ISとの戦闘を目的として開発した()()()()E()O()S()『柘榴』です」

 

芹沢の発言に再び落雷の如き驚嘆疑問符が轟き響き渡る。

然して周囲の反応は当然と言えば当然の声であった。

 

そもEOS、エクステンデッド・オペレーション・シーカーとは国連が開発したパワードスーツである。

国連が開発したと聞くと聞こえは良いのだが、その実態はあって無いようなパワー・アシストに重たすぎる機体と言った事に加え、シールドが無いのにも関わらず生身の身体が露出し、武装火器類は反動が強すぎて使い辛い事この上なし。

しかも作戦行動時間に至っては、三十キロ以上ものバッテリーを背負っているにも関わらず最大作戦行動時間は僅か十数分と欠陥が多い代物であったのだ。

()()()()()()()()()()()曰く、「PKOなどで多大なシェアを獲得するだろう」とのたまっていたが、こんな有様では実践配備など夢のまた夢。

一応は各国で研究されてはいるものの・・・実際に熱心な開発が行われているのは、片手で数える程であろう。

・・・そこに()()は目を付けたのだ。

この目の前に広がる()()()()()()()()に。

 

「我々が開発した柘榴は、今までのEOSが抱えていた問題をすべてクリアした機体となっております」

 

「す、すべて・・・全て!?」

 

「はい。

パワー・アシストの出力は最大で従来の三倍の出力を。

機体重量はISの軽装甲版を流用する事で従来機の二十八%減にし、尚且つ装甲を全身装甲フルスキンにする事で人体露出をほぼなくしました。

銃火器類に至っては、現行ISの実弾系武装を流用する事が出来ます。

使用反動が強い場合は、現地改修する事ができるマニュアルを作成。

先程の模擬戦闘で使用された武装もISに使われていた武装を流用したものです」

 

「そして、大きな問題とされていた作戦行動時間ですが、現行バッテリーよりも数段軽くて長持ちなIS用予備バッテリーを流用使用する事で行動時間を()()()、最大で()()()()を目安として伸ばす事が出来たのでぃす」

 

「じゅ・・・じゅ、じゅじゅ、十時間以上ですって!!?」

「それにISの予備バッテリーや武装を流用できるとすると・・・!」

 

「もちろん、ISの機体に対して供給過多と昨今問題提起されているIS用バッテリー問題の解決とコスト削減にもつながりますし・・・尚且つ()()()()の視野も入れています」

「おぉ・・・ッ、おぉッ!!」

 

IS統合対策部の面々から発せられた言葉の一つ一つによって現場は感動の坩堝と化す。

だが、どこにでも()()()()者はいるもので―――――

 

「―――し、しかし・・・いくら現行EOSの問題点を解決したと言ってもやはりISには劣るものではないでしょうか!」

「そうです!

確かにその新型EOSは我々が開発した緋蜂に善戦しましたが・・・結果はとしては、我々が勝利したのですよ!!」

 

熱気に水を差したのは倉持技研の面々。

確かに試合結果としては柘榴は緋蜂に()()()()()()()

・・・けれどもこれは()()()()()ではない。

 

「・・・確かに柘榴はあと一歩が足らなかった。

あぁ、畜生め!

悔しいのぉ、悔しいのぉ!!」

 

「清瀬さん・・・俺がやっぱり勝っておけば!」

 

「ところがどっこいじゃ!

ちょいと緋蜂のパイロットの大原()()

聞きたい事があります!!」

 

模擬戦闘を終えたIS緋蜂を解除した大原に春樹は疑問符を投げかける。

その疑問符が一体何なのか、彼女には聞く前から解っていたのだろう。

大きな大きな溜息を吐くと共に項垂れた。

 

「・・・何?」

 

「技研さんの作った緋蜂は確かに素晴らしい機体です。

その機体を一流の腕を持っとる大原先輩が操りゃあ百人力・・・いや千人力でしょう」

 

「・・・何が言いたいの?

遠回しに言われるのは気に食わないわ」

 

「ではさっきの戦い、あの柘榴が十機二十機の()()()()()()()()()・・・どうでしょうか?」

 

春樹の疑問符に大原は口を噤んだ。

緋蜂を開発した倉持技研の手前、下手な事は言えなかったのだろうか?

されども彼女は否が応でも解っていた筈、()()()()()()筈だ。

あの模擬戦闘によってISに元々備わっていた搭乗者を()()()()筈の絶対防御が、柘榴によって()()()されてしまった事を薄々感じ取っていたのである。

そして、物言わぬ大原の代わりに春樹がケタケタ口を開く。

 

「『戦いは数だよ、兄貴!』・・・なんて言ったのは誰でしょうか?

私もそう思います。

そう思うからこそ()()はEOSを、柘榴を開発したのです」

 

『不敗の魔術師』と讃えられる戦術家は必勝の戦略を語る際、『まず敵に対して少なくとも()()の兵力を備え』・・・云云かんぬんと続けた。

そして、こうも言っている。

 

『戦略的条件が互角であれば、無論、軍人の能力は重要です。

ですが、多少の能力差はまず数量によって補いがついてしまいます』

 

・・・と。

それ程までに戦力が多数である事が重要である事を説いているのだ。

これを春樹は知っていた。ついでに言えば、日本史や世界史で起きたであろう戦史の実情をほんのちょっぴり知っていた。

寡兵で大軍を打ち破った事実は、全体的に見れば僅かばかりである事をほんのちょっぴりだが理解していた。

だからこそ春樹は新世代EOS柘榴を開発したのだ。

ISに勝るとは言えぬが、ISよりも汎用性があって大量生産する事が出来る()()を。

 

未だISはその核となるISコアの作成方法がブラックボックスとなっている代物。

それ故、ISをこれ以上作る事は出来ず、ISコアを()()()()()する事で世代進化を行っている。

けれどもそんな事実があれども今や核兵器に代わって世界情勢の優劣を決めるのもまたISであった。

これはISが攻撃・防御・機動に対して非常に高い能力を有して究極の機動兵器と讃えられる以外に特に搭乗者の生命を守る防御機能が突出して優れている為であろう。

この全てのISに備わっている操縦者の死亡を防ぐ能力『絶対防御』は理論上、近距離核爆発にも容易に耐える堅固さがIS、インフィニット・ストラトスの()()であった。

 

・・・しかし、そんな絶対防御を()()()する事が出来る兵器が登場すれば?

個々としてはISに劣りはするものの大量生産によって編隊作成に至る事が出来れば?

どうなるかは想像に難くない。

尚且つ、十代半ばの戦闘素人が半月も要らぬ訓練によって欠陥機とは言えども最新第四世代ISに負けじと食らいつく事が出来る性能と操作の容易性男を有す機体なら猶更である。

 

「・・・・・清瀬候補生、よろしいでしょうか?」

 

「はいっす!

何でありましょうか!!」

 

「どうしてあなたはその機体、柘榴の開発に携わったのでしょうか?」

 

コンペ審査員の一人である自衛隊幹部が春樹に疑問符を投げかける。

その何とも神妙なその面持ちから発せられた疑問符に対し、彼は丸サングラスを外してハッキリと答えた。

 

「それは・・・私が()()()()()だからです」

 

露わになった琥珀色の瞳で真っ直ぐに見通して放った春樹の文言に「え・・・?」と皆は戸惑う。

それもその筈、今までの春樹の活躍を鑑みるに彼が()()()な性格をしていると思われていたからだ。

 

「破破破・・・皆さんの反応を見るからに意外にも思われるかもしれませんが、そもそも私は争いが好きではありません。

気に食わない相手、面倒な相手、嫌な事をして来る相手がいればさっさと逃げます。

そんな連中と関わり合う事自体が嫌いなんです。

ですが・・・こうも思っています。

殴られたら()()()()()()の力で()()()()()()()()()()()と」

 

「殴られたら、殴り返す・・・?

殴られた以上の力で?」

 

「はい。

あらゆる諍いが言葉で解決するのならば、これに越した事はないでしょう。

ですが、言葉によって諍いが解決した例は僅かばかりです。

それに言葉で解決しようとする者に対して、面倒な相手は余計に調子に乗って仕掛けてくるでしょう。

・・・そねーな相手は()と一緒じゃ、畑を荒らす()()と変化ない!!」

 

「おっと!」と春樹は思わず出てしまった()()に口を抑えた後、再びニッカリ口端を歪めてのたまった。

 

「私はあんまり頭がよくないので、簡単な事をぐちゃぐちゃ難しく言ってしまいます。

つまりは・・・力を保持していれば、誇示していれば、殴られる事はないと思っています。

それが()()()だと思っています。

右翼思想に思われるかもしれませんが、その抑止力を作る為に私は開発に携わったのですッ!!」

『『『ッ!!?』』』

 

ワザとか無意識かは知らぬが、春樹は琥珀色の瞳から金の焔を溢す事で()()を発すると存分に()()()()()()焔火は網膜を通ってコンペ審査員達の脳漿へ届く否やその余りにも眩しく禍々しくも強烈な光は存分に()()()()()()()()()

するとどうなるか?

 

「す・・・す、素晴らしい!!」

「なんてものを開発したんだッ、あなた達IS統合対策部は!!」

「まさに日本の国防を担うに十分・・・十二分な機体だ!!」

 

皆は割れんばかりの万雷の拍手と共にIS統合対策部を褒め称えたではないか。

傍から見ればコンペ審査員達が嬉々として()()した様にも見て取れた為、突然どうしたのかと倉持技研側は「え、ちょっと・・・!」置いてけぼりを喰らってしまう。

 

「いや、しかし・・・倉持技研さんは実に惜しい。

もし、当初のコンペ日程通りになっていれば我々の出る幕はなかったでしょう」

「え・・・?」

 

「あの第四世代紅椿を量産機体へ落とし込めた技術力の高さは流石としか言いようがありません。

ですが・・・()()()()()()()()()

惜しや、惜しや・・・!」

 

そんな最早蚊帳の外となってしまった倉持技研にそう声をかけたのは他ならぬ春樹であった。

彼は悔しさと悲しさを織り交ぜた表情で語る。

すると・・・・

 

「ッ・・・そうだ、確かにそうだ!」

「本部の連中が、日程を前倒しなんてしなけりゃ・・・もっといいものが出来た筈なんだ!!」

「チクショウ・・・!

そもそも準備期間が短すぎるんだよ!!」

「ってか、賄賂で審査員買収してたって・・・私達技術者が手にかけたものを信用していないっていう事じゃないの!」

「そうこっちゃな。

上の人達らぁは信用ならん!!

だいたい主任や副主任が収賄を知っとったって事は・・・篝火所長も知っとったって事やんか!!」

 

倉持技研側から今の今まで溜め込んでいた不満が口々に聞こえて来るではないか。

このこれから起こるであろう内輪揉めの()()発生を見た芹沢は眉間にしわを寄せて鼻を鳴らす。

 

「フンッ・・・!

(流石は清瀬の野郎だ。

本来ならこっちに向けられるヘイトを技研上層部へ向けやがった。

当分の間・・・いや、下手しなくとも倉持は第二研究所を失うだろうな。

そんでもって空いた穴を俺達IS統合対策部が埋めるって寸法か。

これが清瀬の()()()()の通りなら・・・・・・前々から思っていたが、とんでもないガキだ)」

 

口にはせずとも春樹の末恐ろしさに対し、芹沢は畏敬の念を抱く。

それはIS統合対策部の面々も同じで、こちらはどちらかと言えば()()にも近い賛美であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――・・・・・然れども春樹の()()()()は余りにも上手く出来過ぎていた。

これは倉持技研に対しての情報を対暗部組織である更識家を通じて得ていた為である。

そして、警察庁にコネのある長谷川の力を借りて罠にハメたのだ。

 

前々から春樹はIS統合対策部が成長し、勢力を広げる為には倉持技研は()()()()()()()()()であると考えていた。

そのタンコブを打ち滅ぼす決定打を今日打ち放つ事が出来て彼は御満悦であったのであるが・・・・・

 

「えッ?

お、おい何だよコレ??

ちょっと来てくれよ!!」

 

「なんだよ、どうしたんだよ?」

 

「緋蜂が・・・()()しようとしているんだよ!

()()()()()()()()()()()!!」

「はぁッ!?

どういうこっちゃ!!?」

 

・・・どうやら春樹が暴いたのは氷山の一角に過ぎず、その下にはもっと深く暗いIS界隈を揺れ動かす事態があったようのだ。

 

―――――グポンッッ―――――

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆

どうやっても倉持技研が()()()未来しかなくなりました。
キャラが勝手に動くって聞いた事ありますが・・・本当ですね。

映画『CIAO』
・・・うーむ、うーん。

…ワンサマー氏と和解すべきだと思う人ー?

  • はーい!!(^^)/
  • えー!?(・_・;)
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