IS/Drinker   作:rainバレルーk

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・・・・・IS学園へ向かって飛んで行った()()()()連中を急いで追い駆けてブチ回し、意気揚々と主戦場の鉄火場に乗り込んでみれば―――――

「―――とまらない、とまらないのよ・・・!
ち、血が・・・血がとまらいの・・・!!」

・・・今までの戦闘経験と温故知新で編み出した現代版対IS用ファランクスを組んだワルキューレ・教師部隊の混合部隊と紅椿の量産劣化版とは言え、編隊を組んだ第四世代ISの緋蜂部隊が怒号と雄叫びを上げてバチッバチの乱戦を繰り広げる中・・・鈴さん、凰 鈴音はボロボロ涙を流しとった。
そんなぼっけぇ酷い顔をしとる彼女が抱いとったのは、これまた酷ぇくらい青白い顔色をしたエセ武士娘・・・もとい篠ノ之 箒。

・・・この騒動の発端は十中八九どころか、十割方この女せいじゃ。
()()なら今すぐにでもこの寝とる色ボケを叩き起こして、この騒動を収束させる所なんじゃが・・・そういう訳にも()()はそんな簡単な訳にはいかんかった。

「ど・・・どう、どうし・・・どうしよう?
どうしよう・・・どうしたらいいの??」

泣きべそをかく鈴さんの腕に抱かれとった篠ノ之のメロン谷間からは()()()()()・・・血液が尋常なく噴き出し、身体からは生命力が低下する事を()()()()するみたいに金色の粒子が垂れ流されとった。

素人目の俺の()()()だと、背後から刃渡り長い刃物で一突き。
そうなると()()()はISの絶対防御の許容量を超える攻撃力を持った武装を以てして奇襲攻撃をしたいう訳じゃ。

・・・・・いや、こんな状況で探偵推理ごっこをしとる場合じゃないわな。
・・・ツーか、っていうかじゃ。
その下手人は、俺の可愛い銀髪黒兎ちゃんことラウラ・ボーデヴィッヒに組み敷かれて這いつくばっとたんじゃけんな。

「おどれ、テメっ・・・糞織斑・・・!!」

・・・そん時の俺の顔はラウラちゃんと同じ苦虫を嚙み潰したみてぇに歪んどった事じゃろうて。
確かに俺はこのエセ武士道を掲げる阿呆の事は気に食わんかった・・・気に食わんかったんじゃが・・・・・それでもッ!!

そんな歯が割れるくらいに食い縛る俺に対し、下手人はパキッた目でハイになってやがった。
頭を地面に押さえ付けられても尚、()()()に満ち満ちた目を篠ノ之に向けて嘲笑ってやがった。

・・・そん時に野郎が何を言ってたのかは一々覚えとらん。
「ざまあみろ!」だとか、「仇はとったぞ!!」とか、そねーな感じ。
メタルギアで言う所のスカルフェイスにトドメを刺したヒューイって感じじゃな。

「―――・・・って、言うとる場合か!
鈴さん、退け!!
琥珀ちゃん、スキャンを頼まぁ!!」
〈ガッテンよ!!〉

おもむろに取り出したるわ毎度お馴染みの氷結弾。
その薬液弾頭を薬莢から取り出して、琥珀ちゃんの生体スキャンで判明した出血部分に投与する。
幸いにも心臓を貫く事なく、そのすぐそば横を刃が通っただけ。
これで不完全じゃけども一応は一時的な止血にはなるじゃろうて。

「たすか・・・たすかるの?」

「できる事はやった!
血がこれ以上出んようにはしたが、早うさっさと救急医療班に回せ!
話はそっからよ!!
行けぇッ!!」
「う、うん!!」

血の出すぎで青よりってかは白い顔した篠ノ之を抱えて、鈴さんは急いで乱戦状態の戦線離脱を決行。
この鈴さんの行動にボケカス織斑は「どうして助けるんだよ!?」とか、「あいつのせいでサラは!!」とかとゴチャゴチャ喧しかったけぇ、顔面に氷結弾をぶち込んで黙らせてやった。
うるせぇんじゃボケ!!

〈・・・さすがは()()()()()()()ね〉
〈っ、誰!?〉

「・・・・・え・・・誰??」

声のする方へ振り返ってみると、そこに居たのは年の位はエクシアぐらいの赤毛に赤ワンピースを着た女の子じゃった。






第252話

 

 

 

『紅椿暴走事件』・・・後に通称『篠ノ之 箒の乱』とIS学園はおろかIS業界内で語り継がれる襲撃事件の顛末とは以下である。

 

暴走した紅椿が呼び寄せた謎のIS軍団・・・その正体は倉持技研研究所から脱走し、その足でIS学園を急襲した第四世代量産型無人IS緋蜂。

当初、()()()は第一・第二・第三の陣形編隊をとって学園の防衛勢力としのぎを削っていたのであるが・・・そんな彼女達を学園に呼び寄せた()()()が合戦の最中に()()()()()()()()()()のだ。

そして更に悪い事に総大将の撃墜が緋蜂達に情報共有された後、敵対するIS学園側で最大戦力を有する()()が第三陣として学園を急襲する筈だった編隊に大打撃を与えて帰参したのである。

 

この最悪の状況に生き残った緋蜂達は退避行動に移り、退却戦を行う事となった。

けれどもただ退却するだけでは各個撃破を受けて全滅は免れない。

そこから彼女達が導き出した戦略は脱走して来た倉持技研第二研究所まで逃げ込んだ後、研究所を要塞として使用した籠城戦であった。

さながらそれは三方ヶ原において武田信玄が率いる赤備えに破れて敗走し、必死になって浜松城を目指す徳川家康の様である。

・・・だが、かの三方ヶ原の戦いは総大将たる家康が譜代の重臣達を犠牲にしてまで()()()()()からこそ()があった。

一方、緋蜂達は総大将を失い、自分達()()が生き残る為に戦略を立てた。

更に言えば、籠城戦は()()という援軍がいて成立する戦略である。

今や十三騎まで減ってしまった彼女達に味方する者などいるのか。

・・・と、言うかそもそも―――――

 

―――ぉおおおおおっっ!!

≪―――ッ!!?≫

 

・・・彼女達が籠城せんと目論む研究所まで辿り着けるのかも怪しいものであった。

背を見せる赤備えの緋蜂達を追撃するのは()()の軽装鎧を纏い、すみれ色の六枚羽を広げて飛ぶ者。

その姿は見る者によっては悪魔にも天使にも見えた。

そして、そんな者の手に握られていたのは真紅に染まった一振りの()()()()()

 

ひとぉお―――つ!

≪gあ!!?≫

 

追い付かれてしまった緋蜂の凄惨たるや酷いもの。

力いっぱい振り下ろされた赤刃は魂のなき哀れな無人機の脳天へめり込むや否や、そのままパッカーンと真っ二つ。

抵抗の()の字もないまま一刀に伏されてしまう。

しかも本来なら手柄の為にISコアを手に入れるのだが、()は切捨て御免とばかり残骸を捨て置いて次の標的を定めた。

 

ふたぁああつ!!

≪Aぁaッ!?≫

 

再び振るわれた寒空の闇夜に光る灼刀によって今度は袈裟斬りを行い、緋蜂は水しぶきと共に暗く冷たい海の中へ沈みゆく。

しかし、技も術もヘッタくれもない力任せの剣戟に加えて、これまでの鉄火場に対する刀の耐久値は限界に来ていたのである。

 

≪Aaaaaaッ!!≫

「っ、あ!?

テンメェこの野郎!!」

 

みぃいっつ!!」の掛け声が響き渡ったかに思ったのだが、緋蜂の背後を横一線に振るわれた三尺太刀は片腕を斬り落とすも胸辺りで止まってしまう。

その中途半端な攻撃によって緋蜂のノイズ交じりの断末魔が轟くのだが、構わず体から無理やり刀身を引き抜く。

おかげで刃こぼれと共にグニャリと筋が歪むが、それでも構わず斬撃を行うもだから遂に耐久力は限界を迎えてしまった。

 

グギンッ!

「あぁッ、折れたぁ!!?」

 

歪んだまま斜め一線に振るった二回目の斬撃は緋蜂の上半身に修復不可能の損害を与えるのだが、終ぞ歪んだ刀身は中央部からポッキリ。

然してそれだけで終わらず、太刀を逆手持ちにして折れて真っ平になった切っ先で緋蜂の頭部パーツを刺し()()()のだ。

 

こうしてあっという間に三機の同胞を失った緋蜂達だったが、彼女達は()()()()に構っている訳にはいかなかった。

逆に同胞が()()になっている間に何とか逃れようと、()()()()()としていたのだ。

それは()()に備わっている()()()()と言っても過言ではない。

システムで構築された魂を持たぬ無機質な機械のからくり人形()()()が獲得した生物的機能だったのかもしれない。

・・・だが―――――

 

「ここから先には通さない・・・!!」

≪ッ!!≫

 

海と陸の境界線が見えて、研究所まであと僅かばかりと言う時に緋蜂達の前へ現れたのは、第三世代型IS打鉄弐式を纏う更識 簪。

その彼女の背後には新型EOS石英を纏った警視庁特殊装甲機動隊の面々がIS用アサルトライフルとして開発された焔備を構えているではないか。

 

「こっから先は通行止め・・・!

観念して・・・!!」

 

「安全装置解除!

構えぇ!!」

『『『ッ!!』』』

 

『前門の虎、後門の狼』なる格言があるが、その状況に酷似していた。

もし緋蜂達に唇があったのなら穴が開く程に下唇を噛んでいた事だろう。

もし緋蜂達に歯があったのなら砕けんばかりに噛み締めていた事だろう。

 

≪AA・・・ai・・・わい・・・・・こわい・・・!!≫

 

ある一機の緋蜂から放たれたのは自らが感じる()()だった。

思い通りにならない苛立ちもあったろうが、それにも増して自らが()()()()事に対する()()()が彼女の身体を駆け巡った。

 

こわい・・・コワイ・・・!

イヤだッ・・・コワイ・・・たすけ・・・タスケテ!!

おそろしい・・・コワイ・・・怖い・・・!!

 

そして、恐怖というものは()()する。

人間ならば冷や汗をかき、身体を震わせ、果ては失禁してしまっていた事であろう。

しかし、無機質で構造された彼女達にそんな事など出来る訳がない。

ただ初めて感じる()()にフリーズするしかなかった。

 

「―――――・・・ガるるる・・・ッ!

 

身を強張らせる緋蜂達の聴覚へ訴えて来たのは()の如き唸り声。

そんな威嚇音がする方へ彼女達が視覚を移せば、そこに居たのは自分達へ金色に燃える()()()()を向ける()がいるではないか。

片手に折れた太刀を握っている為、傍から見ても不気味さが際立っている。

 

・・・けれどもだ。

敵に前も後ろも挟まれて、自分達を助けてくれる友軍も援軍も望めない状況であっても彼女達に降伏の選択肢はない。妥協点はないのだ。

なればこそ―――――

 

イヤだ・・・嫌だ、いやだ、イヤダ!!

 

ある緋蜂の一体・・・緋蜂α()は突破口を開かんと行動を起こす。

されども前方は自分達の五倍はあろうかという軍勢と並びそろった対IS兵器の数々。

一方、後方は威勢は人一倍あれども折れた太刀を握るばかりの()()()()()

なればこそ彼女はそこに勝機を見出した。

 

かかれ・・・!

かかれ、かかれ!!

 

緋蜂αは仲間を引き連れ切り込んだ。

相手がいくら強者であろうとたった一人。

多勢で相手に向かって突っ切れば、全てではないが生き残れる確率は多いに上がるであろうと仲間達が助かる為に自分を犠牲にしてまで彼女は切り込んだのである。

指示をされるだけの()()が、自分で考えて行動した瞬間であった。

・・・だがしかし、である。

緋蜂達にとってはあまりにも相手が悪かった。

たった一人であろうともこの相手は幾度となく多勢に無勢の戦場を駆け巡った歴戦の猛者・・・ヴァイオレット・ファフニールと名高き清瀬 春樹であったからだ。

 

「・・・・・あぁ、そうかい。

じゃったらせめて・・・!!」

 

春樹は折れた太刀を納刀すると両腕のガードを上げれば、黒い稲妻をその腕へ纏わせて左右にあるコネクタを繋げる。

その腕を十字にクロスさせた独特のポーズは、()()()()では抜群の知名度を誇っているものであった。

 

晴天極夜スペシウム光線・・・!!」

 

背部の赤紫の六枚羽・・・エナジーウィングによって威力が増幅がなされた琥珀の単一能力は()を有に包み込む程の黒雷のヴェールとなって発射された。

 

≪ッ―――――!!?≫

 

視覚いっぱいに自らへ迫る漆黒のヴェールに緋蜂αは何を思っただろうか。

お世辞にも()()と言えるものに目覚めた途端、襲い掛かって来た生物なら誰もが恐れる()()に彼女は何を思ったのだろうか。

いや・・・そんな事を思考する間もなく、黒の稲妻に飲まれた緋蜂αは装甲はおろかISコアごと消炭にされてしまう。

それが春樹の彼女に対しての()()でもあった。

 

≪ッ、い・・・イや・・・イヤ!!≫

≪コわいッ・・・コワイ!!≫

 

目の前で仲間が()()されてしまった事で緋蜂達の間でヒステリーが起こり、僅かばかり残っていたであろう統率はかき消えた。

余りの()()に圧し潰されてしまった彼女達は蜘蛛の子を散らす様に逃げ惑う()()をしでかす。

そして、この()()()()に目をつむる春樹ではない。

 

少しでも生存力を上げる為に仲間を捨て、武装を捨てて逃走を図る緋蜂達の背に向けて彼は()()()()()()()を湯水のごとくこれでもかと躊躇いなく送る。

元々、近接戦闘よりも遠距離・中距離の射撃武装を得意としていた春樹にとって抵抗もなく逃げ回るだけの彼女達など訓練で使用する標的ドローンとさほど差異はない。

これは最早・・・一方的な()()と言っても過言ではない。

 

「う、うわぁ・・・」

 

この状況を陸側最前線から観察していた警視庁特殊機動隊所属の野崎巡査は明らかに()()()()()

以前、彼は京都においてファントム・タスク掃討戦で春樹との共闘を経験しており、その際に彼の活躍を目の当たりにしていたのだが・・・それにしたってあまりにも()()()()

暴走したISと真正面からドンパチするものだと身構えていた他の隊員達も徐々にだが構えていた銃口を下へ向け、眼前の光景に思わず()()()()()()()始末だ。

 

「・・・・・春樹」

 

一方的な必殺光線に消炭にはなれねども火を噴いて海面へ浮かぶ機体がチラホラとおり、その炎が闇夜に浮かぶ春樹を照らす。

下からの明かりと胸に輝くクジラの尾ひれの様なクリスタル、そして金色に燃える四つの瞳が怪しく妖しく光っていたのだった。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

記憶の宮殿マインド・パレスにある吹き抜けの大広間。

その中央に置かれた対面椅子とテーブルがあり、テーブルの上にはチェス盤と黒と赤のチェス駒が並べられている。

勿論、このチェスにおいてゲームを行っているのは宮殿の持ち主たる春樹と宮殿の住人であるハンニバル・レクターだ。

 

彼等はこうして精神世界で何度もチェス以外にも様々なゲームを行っており、今回のチェスに至っては117戦目。

無論、戦績は116戦116勝でハンニバルが勝ち越している。

余談だが・・・これは春樹が弱い訳ではなく、ハンニバルが強すぎるのだ。

そして、今回のゲームでも今までの経験則からゆったりソファへ体を預けているばかりか、手元のスコッチを楽しむ余裕しゃくしゃくっぷり。

 

だが、春樹とて黙って蹂躙されるばかりではない。

ゲームを重ねる度に彼のチェスの腕は徐々にではあるが着実に上がっていた。

そのおかげからか、春樹が操る黒陣営のビショップが赤陣営のハンニバルのキングを脅かしてゲームを有利に進める・・・のだが、そこはハンニバルだ。

攻め立てていた春樹を巧みな戦術で追い込み、逆に追い込まれた春樹は観念した様に突っ伏す。

こうなれば、あとは彼の降伏宣言を聞くばかりなのだが―――――

 

「・・・なぁ、ハンニバル。

お前、いつ紅椿を()()()()()?」

 

「・・・なに?」

 

()()()()()()の事じゃ・・・!」

 

てっきり「参った!」か「チキショウめ!!」が来るものだろうと思っていたハンニバルには予想外のセリフであった。

そして、この文言に彼は自分が成した事が春樹に()()()()()事が判明したのだが、ハンニバルに別段慌てた様子はない。

顔を覆う手指の隙間から見える金瞳に一拍おいて彼は語り掛ける。

 

「ふむ・・・あの時だ。

熱海での一件・・・春樹、君達が銀の福音事件と呼ぶあの時さ」

 

『銀の福音事件』…アメリカとイスラエルによって特殊射撃による広域殲滅を目的に共同開発された軍用ISたる銀の福音シルバリオ・ゴスペルがハワイ沖で試験運用していた際、外部からの不正アクセスによってコア・ネットワークがクラッキングされてしまい、他のIS全てを敵機と誤認するといった暴走を起こした事件である。

当事件は()()にも付近で臨海学校を行っていたIS学園の専用機所持者達によって暴走機体の大破・停止によって収束した。

その事件の最中に行われた第一次銀の福音討伐作戦において、事件解決のキーマンとして出撃した白式のパイロットたる織斑 一夏が撃墜される事態が発生。

作戦実行海域で宝石サンゴの密漁を行っていた密漁者を助けた事による撃墜だったのだが、自分が密漁者達を犠牲に福音を撃破しようと考えた為に一夏が撃墜されたのだと重い責任を感じた篠ノ之 箒は姉。篠ノ之 束から譲渡されたばかりの第四世代型IS紅椿を一時的で短時間だが()()したのである。

その際、放棄を宣言した箒から紅椿を取り上げたのが春樹であった。

半ば強引に世界各国が喉から手が出る欲したであろう第四世代機を手にした彼は自らの異能力ガンダールヴを使い、紅椿の解析を行ったのである。

・・・その時、その時だ。

春樹の記憶の宮殿に()()()()()ハンニバルが紅椿のコアへ()()したのだ。

 

()()・・・あの当時は自分の事を赤い月、()()と名乗っていたな」

 

「・・・・・御しやすかったか?」

 

「さぁ・・・どうだろうか?

特にこれといった印象はない。

しいて言うなら・・・()()だ。

私がこれまで出会った者達と大差はないさ」

 

そう言いながらスコッチを呷るハンニバルの()()()()()表情ったらありゃしない。

「喉が渇いたから水を飲んだ」と同じ様に彼はAIとは言え、形成された一つの人格を()()してしまったのである。

とても人の為せる技ではないのだが、「()()()()()()だ」とハンニバルは紅椿のコア人格・・・アヴィゲイルを()()()()時に手に入れた情報を春樹に教え与えた。

いわく、アヴィゲイルこと赤月は世界で最初に作られたISだと。

いわく、全てのISは操縦者の夢を具現化する為に働くのだと。

いわく、過去に赤月は「強くなりたい」と願った箒と共に織斑 千冬が駆るIS暮桜と戦い、その機体に致命的な損傷を与えたのだと。

 

「・・・どうしてそれを俺に知らせんかった!」

 

ハンニバルから討ち取った赤駒を叩き付ける春樹。

紅椿と赤月が同一機体であり、過去にも同じ様な()()()()をやっていたのならば、今回の()は防ぐ事が出来た筈だ。

そうすれば・・・

 

「・・・知らせてどうする?」

 

「っ、な・・・何を言よーるんなら!」

 

「あの娘がブリュンヒルデと過去に戦闘を行った記憶は、あの自称()()・・・篠ノ之 束の手によって封印されていた。

それに・・・知った所で、彼女の暴挙を()()()()()()()()()()()()だろう」

「ふざけんじゃねぇッ!!」

 

いけしゃあしゃあと他人事の様にのたまうハンニバルに対し、春樹は声を荒らげてテーブルをひっくり返した。

過去にも同様な事があれば、それに対する対策も出来たろうし、防ぐ事だって出来た筈だ。

そうすれば・・・あんな凄惨な事態にはならなかった筈だ。

 

「春樹・・・まさか、罪悪感を抱いているのか?

罪悪感を抱いているのなら・・・君がそんな事を言うのは()()()()だぞ?」

 

「・・・は?

何じゃとキサン・・・ッ!!」

 

「私がアヴィゲイルを()()()()様に・・・君も()()の脳を()()()()()だろう?

同じ事だ」

 

ハンニバルの言った「彼女」とは、今回の乱で腹部を刺し貫かれるといった重傷を負ったサラ・ウェルキンの事である。

このサラは実はファントム・タスクヨーロッパ支局の()()()であり、エクスカリバー事件で尖兵として暗躍し、その正体を春樹によって看破された人物であった。

その折、IS琥珀の()()()の実験台として彼女は春樹に脳みそを()()()()()()()()のである。

 

「その影響で彼女は彼、一夏を虜にしたのだろう?

私のやった事は君の思惑を()()()()()やったにすぎない」

 

「違う・・・!

俺はそんな事・・・!!」

 

「自らが望んでいる事を拒むな」

 

ハンニバルは知っていた。

春樹にはラウラやシャルロットという愛おしい恋人達がいながらも鈴に僅かばかり懸想していた事を。

しかし、そんな鈴の想い人は春樹が鈍感屑と揶揄するあの糞鈍感屑と揶揄される一夏。

その意識があってか、彼は脳をいじったサラを一夏にけしかけた・・・の()()()()()()

 

「春樹、君は理性的でありようと()()()()()()

もっと自らの欲望をさらけ出さなければ―――――」

「うるせぇんじゃぁあ!!」

 

「やれやれ」と首を振るハンニバルに顔を真っ赤にした春樹が襲い掛かるのだが、「おっと」と軽快に回避すると共にハンニバルは春樹を蹴り飛ばしてしまう。

そして、「げぇッ!?」と腹を抑えてのたうち回る彼の隣で襟を正した。

 

「まったく・・・!

それにだ、春樹?

そう罪悪感を()()()

 

「か・・・かたる、じゃと・・・?」

 

「そうだ。

本当は罪悪感を少しも・・・これぽっちも()()()()()()()だろう?」

 

ハンニバルの疑問符に対し、春樹はギロリと目を向ける。

一つの目の中に()()()()がある()()()()()を向ける。

白髪を逆立てて睨むその姿はとても人とは思えぬ。

 

「何を言うて・・・!」

 

「君はソシオパスを自称している・・・がその実、本当は自分を()()()だと思っている。

・・・そんな訳がない!」

 

ハンニバルは微笑む。

だが、まるでそれは獲物を威嚇する肉食獣が如き表情であった。

 

「清瀬 春樹・・・君は異常者だ。

異常者でなければ説明つかない程だ!

そんな異常者であるからこそ君はここまで生き残る事が出来た。

だからこそ君は私を()()()()()()()()()()のだ。

それに君は知っておくべきだと思った」

 

「知る?

何を・・・?」

 

()()事をだ」

 

いつか春樹はハンニバルに言った。

「逃げれば一つ、進めば二つ・・・()()()()()」と。

このセリフをあの時の春樹は単なる勢いで言った訳ではない。

ある程度の()()があった上での発言であったろうが、自分の行為が周囲へどんな影響を与えるかがイマイチ想像性に欠けていた。

 

「覚悟がある・・・等と口で言うのは簡単だ。

だが・・・結果がどうであれ、自分の行った行為を()()()様ではいけない。

それは奪った相手に対する()()に他ならないぞ」

 

自分が生き残る為に他者から奪う・・・それは正に()()に通ずると言っても過言ではない。

それが肉であれ、魚であれ、野菜であれ、何であれ、口にするのならば、その命に感謝をして食さなければならない。

 

「だからこそ・・・春樹。

君には知っておいて欲しかったのだ。

これから君がやっていこうとする行為にどんな結果が伴うのかを」

 

うずくまる春樹の肩をハンニバルは叩いて寄り添う。

すると先程まで小刻みに動いていた身体の震えは収まっており、彼はうずくまったままハンニバルへ問う。

 

「・・・ハンニバル、いくつか質問をしてええか?

その前に・・・ルークでキングルークをとる」

 

春樹は口を拭い、金瞳四ツ目をハンニバルへ向けながら彼へチェスゲームの続きを記憶チェスで挑んだではないか。

 

「あぁ、勿論だ。

何かな?

ビショップがルークを取ってチェック」

 

「以前、お前は言ったよな・・・「いつか君を滅ぼす」ってよ。

ありゃぁ・・・本音か?

ビショップでルークをとる」

 

「本当さ。

だが、今は()()()()()()()()

ビショップでビショップをとる」

 

「何?

ルークでルークを」

 

「私としても本当は滅ぼすつもりでいた。

それこそ隙があればいつでもだ。

しかしだ。

君の成長がもっと見たくなったんだ。

ポーンでルークを倒す」

 

「そりゃ・・・命拾いした訳じゃ。

ビショップでビショップをとる。

ところでじゃ、ハンニバル。

もう一つの質問じゃ」

 

「いいだろう。

何かな?

クイーンでナイトポーンをとる」

 

「ハンニバル・・・お前は本当に俺が創り出した()()なんか?」

 

途端、ハンニバルの表情に変化があった。

それは一瞬で僅かばかりの事。

常人では決して判別できないポーカーフェイスとポーカーフェイスの隙間。

そんな刹那ばかりの沈黙の後、ハンニバルは文言を紡ごうとしたのだが―――――

 

「―――・・・いや、言わんでもええ。

俺から聞いといて何じゃが・・・()()()()()()

 

「何だと?」

 

ハンニバルを遮る様に春樹は彼のウィスキーグラスを取り、それを一気に呷って丸氷まで嚙み砕く。

 

「お前さんが俺の作った幻影であろうが、百貌ある()()()()であろうが・・・ハンニバル、お前は俺が苦しい時にいつも傍にいてくれた。

お前が何者であれ・・・それで俺にゃあ十分じゃ。

そねーなお前の期待に俺ぁ応えたい!

ありがとうなハンニバル。

改めて()()()()()でよ」

 

「春樹、君は・・・」

 

「そんでもってビショップでビショップを取ってディスカバードチェック・・・いんや()()()()()()()じゃ!」

 

空になったグラスを胸に圧し付けられたハンニバルは目をパチクリさせた後、堪える様に口元を手で覆って笑い声を嚙み締めた。

 

「クククッ・・・参った。

随分と成長したな春樹・・・嬉しい限りだ」

 

「応ともよ!

どんなもんじゃい!!」

 

ニッカリ笑顔を浮かべた春樹に対し、ハンニバルは満足そうな表情で自分の胸に圧しつけられた空のグラスへウイスキーを注ぐ。

 

「さて・・・なれば()()()()よ。

祝杯と共に君の目指すあり方を教えてくれないか?」

 

「俺には信長や秀吉・・・ましてや家康なんて才はないかもしれん。

じゃが・・・なるんじゃったら俺は()() ()()()になりたい!!」

 

「伊勢 新九郎・・・伊勢 盛時か」

 

「応よ!

俺の・・・()()()()()達の為に俺はやるぞ!

もう迷わん!!

俺は俺と言う主の為に・・・俺は奪うんじゃッ!!」

 

こうして蟒蛇は腹を決めた。

自分の為、奪われたくない為に奪う事を是とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「伊勢 新九郎 盛時か。

なれば・・・()() ()()()()を打ち倒さねばならないな。」

 

この世界さくひん()()()

ならば、どう転んでもそれが正しい世界となるのだから()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆

『伊勢新九郎盛時(宗瑞)』
室町時代中後期の武将。
京の都や西国で室町幕府や足利将軍家に重臣として仕えた備中伊勢氏の出身であり、駿河守護の今川氏や堀越公方家にも使えていたが・・・

・・・名前からしてマイナーだが、後世の()()たる()()()()()()()の方が有名である。
その名は・・・『北条早雲』。

…ワンサマー氏と和解すべきだと思う人ー?

  • はーい!!(^^)/
  • えー!?(・_・;)
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