「ゴク・・・ゴクッ・・・プヒャァ~! でぇりゃあ美味ぇのぉ!!」
「うむッ、中々だな」
当たり前のように第一試合を通過した俺と少佐殿は、自分へのご褒美として食堂名物の甘~いラッシーを楽しんどる。
しかも、少佐殿の許可が出たけん、料理酒割りじゃ。怪訝な目でこっちを見よーる周囲の連中なんか気にならん程に美味いのなんのって程にでぇーれー美味い。
因みに少佐殿はストロベリーラッシーじゃ。加えて、リスみたいに両手でグラス持って飲みょーる。
・・・可愛えなぁ。
「このまま行きゃあ・・・準決勝当たりにゃあ、野郎と当たるんじゃあないですけぇの?」
「ヤツはAブロックで、私達はBブロックだ。順当に進めばそうなる。それと・・・わかっているとは思うが、清瀬二等兵・・・」
「みなまで言ーなんなですよ、少佐殿」
俺、今回は裏方に徹するって決めとるんじゃ。
それに決めたからには、少佐殿には絶対にあの駄目な方のバナージの綺麗な顔面をズタズタに切り裂いて貰わにゃあのぉ。
「頼みますよ、少佐殿。野郎を磨り潰してくださいよ~、阿破破破破破ッ」
「うむ。任せておけ!」
あ~・・・楽しいのぉ。
充実感ってヤツじゃ。
俺をないがしろにして来た気に喰わんヤツ等を叩きのめして・・・喜んでくれる人がいる言うんは楽しいのぉ!!
阿破破破破破ッ!!
「・・・楽しそうですわね」
「阿?」
「貴様は・・・」
楽しい気分に水を注すように、俺らの方に声をかけて来るもの好きが一人。
振り向けば、随分と久しく感じる御仁が仏頂面でおった。
「誰かー思やぁ、セシリアさん。そーいやー、セシリアさん達もCブロック一回戦突破したんじゃったなぁ。おめでとさん・・・言うんは早いか。順当に行けば、俺達と当たるんわ決勝戦じゃもんな。阿破破破!」
「・・・」
・・・ありゃあ?
なんか、いつもと様子が違うでよセシリアさん。
いつもよりも眉間に皺が寄っとるでよ。
「先の試合・・・見ていましたわ」
「へぇーそうなのかい。セシリアさんもラッシーいる?」
「結構ですわ。それよりも春樹さん・・・あの試合は一体なんですのッ?」
・・・おんやぁー?
なにを怒っておいでですのんお貴族様ぁ?
綺麗な顔で怒っても、綺麗なだけですだよ~?
「「なんですのッ?」って、言われてものぉ・・・SEがなくなるまでボコボコにした方が良かったかのぉ?」
「春樹さん!」
「なんじゃあ・・・君も他の連中と同じように俺の勝ちにケチつけようってのか」
「ッ!」
・・・はぁ~ん、図星か。
「やっぱり、お貴族様にゃあちぃとばっかし”野蛮”じゃったかのぉ?」
「あれは・・・あれは試合ではありませんでしたわ、勝負ではありませんでしたわ! 一方的な暴力。ただの蹂躙ですわ!!」
「それの何が悪いんじゃッ?」
「!」
「試合? 勝負? はッ・・・何をちゃんちゃら可笑しい事よーるんじゃ、セシリアさん」
ISが何とか条約で、国際的にどーのこーの言うても・・・所詮は人斬り包丁の延長線にある代物じゃ。
「ISは兵器じゃ。それを纏って戦う俺達は、所詮は兵士と兵器を繋ぐ”メタルギア”に過ぎんでよ!」
「それは違います! 決してISはそんなものではッ!」
「違うんなら、ISってなんなんじゃ? 人殺しをする為の道具じゃあなけりゃあ、なんなんじゃ? 確かに、発明者様は何かの意図があって作ったんじゃろう。でもなぁ・・・」
かの有名なローマの偉人『ジュリアス・シーザー』はこう言うとる。
『始めたときは、それがどれほど善意から発したことであったとしても、時が経てば、そうではなくなる』
・・・まさにその通りじゃがな。
「それを今実際に使よーる人間は、同じ人間を傷つける為に使って、悦に浸かよーるんじゃろうがな!・・・知らんとは言わさんぞ、セシリアさんッ!」
「そッ・・・それは・・・」
遂に押し黙ってしもうたセシリアさん。
・・・ちぃと言い方がキツかったかのぉ。あとで謝っとこう。
「はーい、通して通して~!」
「・・・阿?」
え、誰?
誰なのぉ?
「ま、黛さん?」
「なんか、騒がしい所失礼するよ。二人目の男性適正者、清瀬 春樹君!」
『まゆずみ』~?
・・・誰ぇ~?
◆◆◆◆◆
騒然とする食堂に入って来たのは、学園内において”色々”有名な新聞部所属の二年生『黛 薫子』である。
セシリアならびに一組の生徒は、クラス代表が一夏に決定した事を記念したパーティーで彼女の存在を知ってはいたが、そんなもの興味ないとサボタージュしていた春樹には初対面だったのだ。
「君が清瀬くんだね。前々から、お噂はかねがね聞いてるよー!」
「はぁ・・・」
取り敢えず、この胡散臭い人物に警戒する春樹。
そんな事などお構いなしに薫子はメモ帳を開く。
「それで早速なんだけど、試合はどうだったかな? 一応、これは一回戦を勝ち抜いて来た生徒全員に聞いているんだけどね。ねぇ、オルコットさん?」
「え・・・あ、はい。そうですわね」
「はぁ・・・そうっすね」
薫子からの質問に困った春樹は隣にいたラウラへアイコンタクトを飛ばす。
其れに対して、ラウラは「好きにしろ」とばかりに視線をまだグラスに残っているストロベリーラッシーへ落とした。
「なに・・・一回戦で立ち止まる訳にゃあいかんですけんね」
「それは・・・織斑くんとの勝負を望んでいるって事かな?」
ザワッと周囲の関心が一気に二人に傾いた。
春樹と一夏の不仲は”色んな意味”で、学園の有名どころとなっている。だからこそ、皆に関心があった。
「・・・えぇ、まぁ」
「そうなんだー・・・ところで、清瀬くん?」
「はい?」
「君がデュノアくんと同室だという情報を掴んだのだけど・・・本当かな?」
ザワッとさっきまでよりも大きくこの会話に関心が集まった。
先程述べた”色んな意味”とは、大方の割合でこの三角関係が大きく取りだたされていたからである。
「はぁ・・・どこからそんな情報を?」
「それは言えないなぁ。・・・それでどうなの?」
「それは―――「その情報は誤りだな」―――って、少佐殿ぉ?」
「最初はシャルル・デュノアと同室だったが、現在の清瀬二等兵は私と共に生活しているぞ」
『『『ッ!?』』』
「少佐殿ぉおッ??」
グラスに入った氷をカラカラ回しながら、ラウラがとんでもない言葉を投下し、周囲からの興味関心が増々集まった。
「え、同室って事は・・・同棲!?」
「まさかの三角関係か~ら~の~四角関係!!」
「清瀬くんとボーデヴィッヒさんは・・・どぇきてぇるぅ?!!」
「ん?」
「はぁァア・・・ッ!」
これにはギャラリーのざわつきもヒートアップ。
ラウラは不思議そうに首を傾げ、春樹は大きな溜息と共に顔を両手で覆った。
「どういう事なんですの、春樹さん!!?」
「え、あ・・・色々、事情があったんじゃっちゃ!!」
「その色々が聞きたいなぁ・・・教えてよ、清瀬くん。ボーデヴィッヒさんから階級名で呼ばれている事と何か関係しているのかなぁ?!」
「あぁッ・・・もう!!」
何もやましい事等一切していないのにも関わらず、周囲から責められているように感じた春樹は力一杯ガリガリと頭を掻き毟る。
・・・その時だった。
「見つけたぞ、清瀬!!」
『『『ッ!?』』』
「・・・阿”?」
凝り固まったギャラリーをたった一喝で退かせる春樹にとっては忌々しい男の声。
その声がする方を見れば、怒りを露わにしている一夏が大股で近づいて来る。
「織斑 一夏・・・ッ!」
「・・・少佐殿、落ち着いて」
ガタリと眉間に皺を寄せて立ち上がったラウラを静止はするものの、一気に不機嫌な表情を春樹は晒した。
「なんじゃあな? 一回戦を勝ち抜いて来た俺達を祝に来た・・・つー訳じゃあないな」
「当たり前だ! なんであんな事したんだよ?!!」
「あんな事?」
どうやら一夏は春樹たちが行った試合に対して、不満感があるようだ。
「別にえかろーがな。ISには絶対防御があるんじゃけん。生身を殴った訳じゃあるめぇしよ」
「だからって、あそこまでする必要があったのかよ! 顔に傷でも付いたらお前、責任をとれるのかよ!!」
「あ~・・・ほうじゃのぉ、確かにな。ありゃあ悪かったわ、すまんすまん」
全然反省していない様子だが、一応の謝罪の言葉を並べる春樹。
そして、不敵な笑みを浮かべてこう続ける。
「なら、今度は傷の目立たん所を突っついてやるわ。目立たん所の骨をへし折って、目立たん所の肉を引き裂いてやるわな。それでええじゃろうがな」
「清瀬・・・お前ッ!!」
「一夏!!」
今にも殴り掛かりそうな一夏に後ろから声をかけて来たのは、この場で名前の出た四人目の人物。
「おーおー、噂をすれば何とやらか・・・デュノアさん」
「清瀬・・・」
見つめ合う二人。
片方は悲しそうな目で、もう片方は侮蔑の目で互いを見定める。
そして・・・。
「なにあの目ッ!? なんで見つめ合ってるの、ねぇッ?!」
「やはり、やはり何かあったのね! そうなのね?!!」
「悲しき運命に別れた二人・・・ネタが、こんなネタが近場にあったとは!!」
二人の無言のやり取りに、腐っている方々が「フンガーッ!」と鼻息荒くメモ帳に何かを書き記していた。
「・・・ッケ」
「清瀬・・・」
「清瀬ェ・・・ッ!」
「織斑 一夏・・・!」
「え・・・何この状況?」
「あぁ、もう・・・またですわ」
『ドドド・・・!』と背景に浮かぶ場景に若干引き気味になる薫子と「ヤレヤレ」と溜息を漏らすセシリア。
食堂は一種のカオスフィールドに変貌していた。
「と・・・兎に角ッ! 皆、試合についての意気込みを教えてくれるかな?」
「「織斑 一夏、絶対潰す」」
「お、OH・・・」
声を揃える春樹・ラウラペア。
「あんな卑劣なヤツに負けるか!! なぁ、シャルロッ・・・シャルル!」
「う・・・うん。(清瀬、ボクは・・・)」
「(はッ! なにかデュノアくんから心の声が!)」
統一感があるようで、実はバラバラな一夏・シャルロットペア。
「「潰す・・・!」」
「望むところだ!!」
「(清瀬・・・)」
様々な思惑が交差する中、こうして学年別トーナメント初日は過ぎて行くのだった。
・・・・・はい。という訳でリハビリ投稿でした。◆◆◆◆◆