IS/Drinker   作:rainバレルーk

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第36話

 

 

 

・・・都内某所にある研究施設の一室にて。

 

≪阿”阿”阿”阿”阿”―――ッ!!≫

 

「おおッ・・・!」

「まるで獣、其の物じゃないか」

「本当に、ついこの間まで中学生だったのか?」

 

モニター画面の中で雄叫びを上げながら暴れまわる噂の人物に様々な機関から集められたその道の専門家たちが感嘆の声を上げていた。

 

モニターに映し出されているのは、IS学園内で行われた学年別トーナメントの試合映像。

その中でも今回、世界中で話題に上がっている人物であろう二人目の男性IS適正者『清瀬 春樹』の戦闘シーンがピックアップされていた。

そんな第一試合から準決勝第一試合の全試合を部屋にいる全員が食い入るように見詰める。

 

≪阿”羅”羅”羅”羅”羅”―――ッイ!!!≫

パチリッ

 

映像は世界初の男性IS適正者である『織斑 一夏』が纏う白式に止めを刺したシーンでストップ。

暗がりの室内に蛍光灯の明かりが眩しく灯るとモニターの端からスーツ姿の男が現れた。

 

「さて、これがIS学園から提供された二人目の男性IS適正者、清瀬 春樹氏の資料映像だ。何か質問は?」

 

「はい」

 

スーツの男の言葉に若い研究員風の職員が手を挙げる。

 

「はい、どうぞ」

 

「何故、彼の顔が詳細に映ってはいないのでしょうか? かろうじて、両目が黄色になっているぐらいしか確認できなかったのですが」

 

「それは学園側からの配慮だ。清瀬氏は日本政府に対し、自分の細胞組織の提供の報酬として完全な身元不公表を第一条件に出している。したがって、彼の身元の詳細な検索は控えるように。・・・次は?」

 

「はい」

 

・・・と、次々に質問を投げ掛ける職員達にその質問を的確に返すスーツの男。

 

何故に彼等がこんな場所に集められているのか。

それは先日起こったVTS事件にて、各国のみならず自国の政府関係者までをもの予想を覆す活躍をした春樹へ『専用機』を制作提供する為に集結したのである。

 

 

 

「ゴク・・・ゴク・・・ふぅー・・・ッ」

 

室内の資料映像を交えての制作会議に休憩を挟み、一部の職員達が一時の一服を落ち着かせる。

 

「・・・どう思います、『幕内』さん?」

 

「ん?」

 

休憩所に設置されている自販機の缶珈琲を片手にストライプシャツの若い技術者が、自分の向かい側で煙草をふかす中年の男に言葉を投げ掛けた。

 

「どうって・・・何がよ?」

 

「あの二番目の彼へ提供する為に集められたこの面子がですよ。防衛相関係者に名立たる技研の連中まで・・・彼にそこまでの価値があるんでしょうか?」

 

「そりゃああるだろうさ。よく考えろ、『壬生』よ」

 

「・・・なにがです?」

 

ストライプシャツの若者、壬生へ灰を落とした煙草の穂先を差し向ける幕内。

そんな彼から投げかけられた言葉の意図が解らず、壬生は頭を傾げる。

 

「世界で初めてISを動かした男が、あのブリュンヒルデの弟だって事は今じゃあ誰でも知っている。だから、そのブリュンヒルデと同等の力があるのではないかと危惧した世界からの圧力で彼は日本国籍から自由国籍になっちまった。その点、清瀬っていう子は最初、偶然にもISを動かしただけの”一般人”。そんな子を自由国籍にでもしてみろ、闇夜に紛れて今頃バラバラになってるぜ。それに本人が日本の国籍のままで良いと希望してたしな」

 

「・・・それがあの事件で、あんな活躍をすれば・・・ですね」

 

「そうだよ。眼中にもいれてなかった諸外国は大慌て。念のための保険に匿っていた日本政府はウハウハ。『長谷川』の若がなんとか口説き落としたかいがあるってもんさね」

 

「長谷川・・・って言うと・・・」

 

「あぁ。ほらっ、テレビ見てみろ」

 

幕内が促した先にある休憩所のテレビには、若輩ながらも威厳を感じさせる人物がインタビューを受けていた。

 

「『長谷川 博文』。親父さんの地盤を引き継いで、一気に官房副長官にまで出世。今じゃあ、IS統合本部副本部長になった傑物よ」

 

「幕内さんは面識がおありで?」

 

「あぁ。昔、長谷川の親父さんには世話になった事があるからな。・・・それよりも壬生よ、あれはどうなったんだ?」

 

「あれ、とは?」

 

「ほら、あれだよ」と人差し指を宙になぞる幕内。

最近の年のせいなのか、中々思ったような単語が出てこずに表情を苦悶へ歪めた。

 

「え~と・・・事件の時に清瀬が使っていたフランスの・・・らふぁるなんちゃら、みたいな」

 

「・・・ラファール・リヴァイヴの事ですか?」

 

「そう、それ! その事件に使用されていたラファールがなんで日本に提供されることになったんだ? こっちじゃあ、詳細な情報がまわってないんだが?」

 

「あぁ、それなら製作元であるデュノア社が日本政府に提供を決めたそうですよ」

 

「なんで? そんなのフランス政府が止めるだろう?」

 

「それがどうやら、アチラさんも裏事情を抱えているそうで。フランスの大統領自らが許可を出したそうです」

 

「ほぉ~。だから、フランスとの共同制作と言う訳か・・・おっと!」

 

壁に掛けられていた時計を見るなり、幕内はふかしていた煙草の火をもみ消すと脱いでいたスーツの上着を羽織った。

 

「もうそんな時間ですか?」

 

「あぁッ。・・・まったく、倉持の連中は今回の専用機製作の件にハジかれた事に大そうご立腹よ。また違う妥協案を出してくるだろうさね」

 

「頑張ってくださいよ、幕内”主任”」

 

「お前もな」と、そう言って駆けだしていく幕内の背を見送った壬生は、ため息と共に手元の資料を見直す。

その資料には、予め春樹から聞いていた彼の希望する専用機の理想が書かれてあった。

 

「『中・近距離特化型のコードギアスに出て来た『KMF』みたいな精密高機動の機体』・・・って。・・・あんなに凄い戦い方をするのに、やっぱり十代前半だな。具体性に欠ける。しかもあの資料映像を見る限りでは、絶対に『超接近戦型』の方が良い。・・・と言うか、なんだよ『鉈』って?! 希望する近接武器が剣でもナイフでもなく、鉈って・・・ッ。芝刈りじゃないんだぞ!」

 

「ハァ~ッ」と、春樹からの大分アバウトな要望に大きくため息を吐く壬生であったが、その口角はヒクりと緩んでいた。

 

「だが・・・倉持の連中が作ったシールド無効化攻撃である白式の単一能力、零落白夜を防ぎ切った謎の能力と絶対防御の壁をすり抜ける衝撃を持った攻撃力・・・尚且つ、彼には俺達と同じような”ヲタ”の臭いが感じる。ククク・・・ッ!」

 

「おい・・・また笑ってるぞ、壬生さん」

 

「大丈夫だ、いつもの発作だと思えばなんともない」

 

こうして、各機関の良く言えば『個性的』。悪く言えば『はぐれ者』『一匹狼』『変わり者』『ヲタク』『問題児』『鼻つまみ者』『厄介者』『異端児』の専門家たちが春樹の専用機製作に着手するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳でリハビリ投稿でした。◆◆◆◆◆
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