IS/Drinker   作:rainバレルーk

37 / 250
第37話

 

 

 

あの色々と世界各国の要人達を騒然とさせた『VTS事件』から一週間後。

被害鎮静化の為に取り繕われた臨時の学級閉鎖が解除され、漸く授業が再開される事となった日。

 

「え・・・え~とですね。きょ、今日はなんと皆さんに”また”転校生を紹介します!」

 

『『『・・・えッ!?』』』

 

フラフラと心労がたたっている面持ちで教室に入って来た山田教諭の言葉にクラス全員の興味が注目した。

流石に『三人目』の転校生は多いだろうと思っている者も少なからずいたが、好奇心の強い者が多く居るこのクラスでは、早速「誰だろう?」と騒がしくなった。

・・・しかし。

 

「いやぁ、転校生と言いますが・・・すでに皆さんは知っているので、ええと・・・」

 

『『『?』』』

 

その転校生とやらを紹介する山田教諭の様子が明らかにおかしかった。

『挙動不審』と言った四字熟語がこれほどまでにピッタリと言った具合に彼女は百面相をしていた。

 

「と・・・とりあえずッ、入って来て下さい!」

 

「『とりあえず』て・・・」と誰かが呟いたのはご愛敬。

勢いに任せて教室の外で待機する転校生に声をかけて招いた。

 

「失礼します」

 

「え・・・ッ?」

 

聞き覚えのある声にガタリと椅子を鳴らしたのは、未だ頬に湿布を貼っている一夏。

その彼の視線の先にいた人物は、確かに山田教諭の言う通りの「皆さんが知っている」人物だった。

 

『シャルロット・デュノア』です。改めて、皆さんよろしくお願いします」

 

其処には、IS学園の”女学生用”制服に身を包んだシャルロットが佇んでいたのである。

 

「え・・・えッ、えぇッ!?」

「デュノア”くん”は・・・デュノア”さん”だった・・・だと?!」

「美少年か~ら~の~・・・美少女ぉお―――ッ!!?」

 

この状況に頭が追い付かない連中は目の前で起こっている現実を徐々に受け入れ、そして発狂でもするかのような驚嘆の叫び声を上げた。

・・・「新刊がッ!」「イベントがッ!!」という悲鳴はカウントしていない。

 

「シャル・・・お前、もう正体を隠さなくていいのかよッ?」

 

「うん。あの事件から、その・・・”偶然”にも”お父さん”と話をする機会があってね。仲直りって言うのかな・・・ボク達はお互いにすれ違ってたんだよ」

 

「そ、そうか・・・良かったな!」

 

「うんッ。・・・・・これも”春樹のおかげ”だよ」

 

「・・・え・・・ッ」

 

この時、何気なく呟いたシャルロットの囁きを聞いてキリッと一夏の中に不快な痛みが走った。

気にかけていた人間の抱えていた大きな問題が解決して嬉しい筈なのに、それがあの男の”おかげ”とは一体どういうことなのか。

この時ばかりは、先の事件によるダメージのせいなのか。彼の『肝心な時に難聴』という属性は機能しなかった。

 

その刹那の戸惑いの後、「それは、どういう事なんだ?」という言葉が喉から出掛かった時だった。

 

「ちょっと待って・・・確か昨日は、男子が大浴場を使ってたわよねッ?!」

 

『『『ッ!!?』』』

 

この状況下で、まったくもって似つかわしくない事を思い出した生徒がついポロッと口を滑らせてしまった。

そんな彼女の軽口に全員の目が二人に注がれる。

 

「え・・・えぇッ・・・?」

「・・・・・は?」

 

だが、当の本人達は鳩が豆鉄砲を食ったようにポカンと呆けた。

確かに前日は大浴場が男子生徒に初めて解放された日であったという事は間違いない。

しかし、あの事件のダメージによる全身打撲で一夏は入浴を断念。シャルロットに至っては今回の編入手続きによる多忙の為、軽いシャワーで済ましている。

 

だから、クラスの生徒達が期待するような『キャッキャ、ウフフ』な出来事は起きていない。

 

バシィ―――ッン!

「「一夏ぁあッ!!」」

 

『『『!?』』』

 

されど、そんなあらぬ妄想に思考を支配されたある生徒二人が片や座っていた椅子と机をひっくり返し、片や教室の扉を蹴破って来た。

 

「一体なんだってんだよ、箒に鈴ッ?!! 俺は昨日、大浴場には行っていな―――」

 

落ち着いて考えれば、すぐに勘違いだと合点がいく話なのだが・・・生憎、二人ともどうやら思い込んだらそのまま突貫するような似通った性格の様で・・・・・

 

「問答―――ッ」

「―――無用ッ!!」

 

揃った掛け声と共に箒は竹刀を振り回し、鈴はドゥウッン!と両肩に展開した衝撃砲を解放させた。

 

「デュノアさん、危ないッ!!」

 

「わッ!?」

 

一夏よりもこのままでは箒の竹刀は当たらずとも、加減無しの鈴の衝撃砲にシャルロットが巻き込まれてしまうと直感した後列の席のセシリアが飛び出す。

幸いにも、間一髪で回避に成功したのだが。

 

「う、うわぁあああッ!!?」

 

代わりに一夏へ二人の攻撃が一辺倒に襲い掛かる。

あのベルセルクと化した男から運良く生き残ったにも関わらず、こんな勘違いで消し炭にされるのかと思われた瞬間だった。

 

「―――――やらせはしない!」

 

「「ッ!」」

「・・・へ?」

 

二人の攻撃を一瞬の内におさめてしまった人物が、両者の間に割って入ったのだ。

 

「大丈夫か、織斑 一夏?」

 

「ぼ・・・ボーデヴィッヒッ?」

 

その人物とは、黒衣の専用機を身に纏ったラウラであった。

彼女は機体に備え付けられているAICで鈴の衝撃砲を無効化し、手甲で箒の竹刀を弾いたのである。

 

「ちょっと邪魔しないでよッ、コイツには裁きを喰らわせてやんないと!」

「そうだぞッ、邪魔をするなボーデヴィッヒ!!」

 

自身の妄想による筋違いな興奮作用に我を失って、訳の解らない事をのたうち回る両人へ「まぁ、落ち着け」とラウラは力づくで二人をねじ伏せた。

 

「よく考えてみろ、二人とも。織斑 一夏は先の試合で全身打撲を負っているのだぞ。そんな人間が、意気揚々と風呂になど行くんものなのか? それとも多くの日本人は皆、どんなに瀕死の重傷を負ってもそうなのか?」

 

「・・・あッ・・・」

「そ・・・そう言えば、そうね。・・・流石によく考えてみれば・・・」

 

改めて二人は一夏の身体を見る。

脳震盪の為に未だ顎や頬には白い湿布が目立ち、一時は肋骨にヒビがはいっていると言われた重傷者が意気揚々と風呂に行くものだろうか?

・・・能天気な一夏なら有り得るかと一瞬思ってしまったが、普通はあり得ないと二人は合意に至った。

 

「す、すまなかった一夏!」

「流石にあんたでも、そんな怪我で大浴場には行かないわよね・・・」

 

「当たり前だろッ、一体何考えてんだよ!!」

 

激昂する一夏にシュンと反省する二人。

そんな彼を「まぁ、落ち着け」と宥めたのは意外にもラウラであった。

 

「二人は貴様とデュノアとの間に何か良からぬことがあったのかと心配したのだ。許してやれ」

 

「な、なに言って!?」

「そうだぞッ! 別に私は一夏とデュノアの事を心配していた訳では・・・ッ」

 

ごにょごにょと薄紅色に頬を染めながらモジモジする二人に対し、一夏は・・・・・

 

「は? 俺とシャルが良からぬ事って・・・・・え?」

 

何の事だがさっぱりだと勘付きもしないままに頭へ疑問符を浮かべた。

これには察しの良いシャルロットは「ハハハ・・・」と乾いた苦笑いを浮かべ、セシリアは「ハァ~ッ・・・」と溜息を漏らした。

 

「・・・なるほど、これは酷いな。教官の言っていた通り・・・苦労するな、二人とも」

 

「フンッ」と箒と鈴を見ながら鼻息を漏らすラウラにカチンと来たが、なにぶんと正論な為に反論できない。

 

「それよりも・・・織斑 一夏!」

 

「な、なんだよッ?」

 

そんな二人を鼻で笑ったラウラだったが、ISを解除すると一夏の名をいつもの様にフルネームで呼ぶ。

今度はなんだと身体を強張らせる一夏だったが、その次の彼女の行動に彼は「!?」と驚く。

 

「貴様にやってきた無礼を詫びる。すまなかった」

 

何故ならば、出会った当初から敵対視して来たラウラが自分へ深々と頭を垂れて謝罪したのである。

これには一夏のみならず、クラスの全員も驚嘆した。

 

「私は織斑教官・・・いや、織斑”先生”に憧れるあまり、その存在の一番近くにいた貴様に対して嫉妬していたのだ。オノレの未熟さゆえに・・・それであの試合で私は暴走してしまった。『許してくれ』とは言わない。ただ、貴様に私のやった事を謝罪したかった。申し訳なかった、織斑 一夏。そして、クラスの皆にも私の勝手で不快な思いをさせてしまった。すまなかった」

 

そんな”らしくない”ラウラの姿に驚愕するクラス全員にも、彼女は謝罪の言葉とお辞儀をしたためた。

やはり職業病の軍人独特の威圧感は少しあるが、言葉の一つ一つからラウラの誠意は見て取れ、その表情の反省の色にクラスの皆も納得した。

 

「べ、別に・・・俺は気にしてねぇぜ、ボーデヴィッヒ。だから、顔をあげてくれよ。皆もそうだろッ?」

 

「そうだよ~。全然気にしてないよ~、ラウラウ~!」

「うん。まぁ、織斑先生に憧れて暴走しちゃったてのは解るかな」

「気にしなくていいよ、ボーデヴィッヒさん!」

 

「ッ・・・ありがとう、皆・・・!」

 

皆からの温かな言葉に受け止められ、ラウラはホッと胸を撫でおろす。

その時の安堵の表情から漏れた彼女の笑顔の破壊力は凄まじいものであり―――

 

『『『(か・・・可愛い!)』』』

 

―――・・・皆を虜にするのに、そう時間はかからなかった。

 

「ッ! そうだッ、それで山田先生!」

 

「は、はい。なんでしょうか、ボーデヴィッヒさん?」

 

そんな朗らかな笑顔を浮かべた後にラウラはキョロキョロと辺りを見回す。まるで、誰かを探す様に。

そして、その誰かを本題とばかりに山田教諭に声をかけた。

まさか、彼女から声をかけられるとは思ってもみなかった山田教諭は若干シドロモドロになりながらも、聞く姿勢に入った。

 

「は、春樹は・・・清瀬 春樹はここにはいないのですかッ?」

 

「えッ」

 

「そう言えば!」と、シャルロットもこれに反応した。

彼女もまた、自分の問題と向き合わせ解決の糸口を掴ませてくれた春樹にお礼が言いたかったのだが、その肝心な春樹が教室にいなかった。

 

実はVTS事件後、春樹の容態は悪いと生徒達は聞かされていた。

その内容としては、右腕の複雑骨折に全身打撲。それに出血性ショックといったものだった。

その為、治療に専念する為にこの一週間は面会謝絶となっており。漸く彼が回復したと言う一報を聞きつけ、ラウラは一組のクラスに来たのである。

 

しかし、ここに春樹はいない。

未だ病室にいるのではないかと考えるが、ここに来る前にラウラは医療棟に立ち寄って彼が退院した事を確認している。

 

ならば、彼は何処にいるのか?

 

「え~と・・・清瀬くんでしたら―――――」

 

「「!」」

 

山田教諭から語られた言葉にラウラとシャルロットの二人は教室を後にしようとするのだったが・・・・・

 

「・・・これは一体、どう言う事だッ?」

 

『『『ひッ!?』』』

 

破壊された一組教室の扉の前には、何とも言えない恐ろし気な表情で腕組をしているブリュンヒルデが立っていた。

 

・・・・・勿論。鈴は出席簿アタックを喰らう事、間違いなしである。

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳でリハビリ投稿・・・じゃなくても、良いかな?◆◆◆◆◆
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。