IS/Drinker   作:rainバレルーk

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第5話

 

 

 

さて・・・あの面倒事に巻き込まれてからの一週間、俺は主に三つの事をした。

まず一つ目は、俺をゾクゾクさせてくれた山田先生に言われた通りにあの鈍器のような参考書を読解した。

本当、久々に勉強と呼べる勉強をした感じじゃ。

 

二つ目は、これも山田先生に言われた通りのイメトレ。じゃけれども、ただ何となく漠然とイメトレをするんじゃあダメじゃ。

そこで参考にしたのは、俺が好きな作品である『コードギアス』と『装甲騎兵ボトムズ』。

あぁ、コードギアスは外伝『亡国のアキト』の方。あっちの方は戦闘シーンがCGでイメージしやすかった。

 

そして最後の三つ目。これはやっぱり射撃場での練習に限る。

来る日も来る日も、『中央に入れて、スイッチ』。今でも耳に薬莢の炸裂音が木霊しているように感じる。

 

・・・実を言うとこの一週間、ダメな方のバナージ・・・もとい、織斑が朝昼晩の三食をこれでもかって云う位にシツコク誘って来やがったのと、織斑を諦めた各国のハニトラ要員共が見え見えの誘惑を仕掛けて来たのがウザかった。

この一週間はほとんど部屋には帰ってない。持病の発作が起きて苦しくても、酒を飲む代わりに銃を撃っては射撃場に泊まった。現実逃避も甚だしい。

 

「・・・うっプ・・・きぼぢわるい・・・」

 

だから、試合当日に久々の酒でグロッキー状態となっている事は全部織斑のせいだ。俺は悪くない。

 

「だ、大丈夫ですか清瀬くん?」

 

「あ・・・ありがとうごぜぇますだ、山田先生。・・・うウッっぷ!!?」

 

「清瀬くん!?」

 

ヤバい・・・マジで吐く。こんなキツい二日酔いは久しぶりじゃ・・・。

 

「先生ぇ・・・ちょ、ちょっと吐いて来ます・・・おゥエッぷ・・・!」

 

そう言い残し、トイレに急ぐ俺。

幸いなことに俺はあの野郎の後に試合をするとの事じゃ。

・・・あ?『そんなに具合が悪けりゃ、休みゃあいいのに』だと?

かー、分かってないね。あの理不尽行き遅れ教師が、んな事許してくれるわきゃあなかろうがな・・・。

 

「・・・あ、だめじゃ・・・先生、吐くわ」

 

「えぇえ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

―――――――

 

 

 

「・・・まだか・・・ッ!」

 

試合会場の第三アリーナの管制室。

苛立ちを募る猛者が一人。ブリュンヒルデと謳われし、織斑 千冬だ。

クラス代表戦に出るクラス代表者を決める小規模の試合だと言うのに、アリーナの観客席は満員御礼。

生徒ばかりか他の教員までもが、まだかまだかと試合を待つばかり。

 

「・・・山田先生、清瀬は?」

 

「は、はい。嘔吐をした後、ゲッソリした顔でピットに向かいましたけれど・・・」

 

「そうか・・・」

 

本来、最初は専用機同士という対等な試合見せた後に訓練機の春樹と試合を行う予定だった。

だが、待てど暮らせど一試合目に出る一夏の専用機が到着しない。

 

「仕方ない・・・ヤツには悪いが、先にオルコットと清瀬の試合を。清瀬には私から言っておくので、山田先生は準備を」

 

「は、はい!」

 

管制室を出た千冬は試合を待つ生徒達がいるピットへと向かう。

 

「あ~~~・・・気持ち悪い・・・」

 

「だ、大丈夫か清瀬?」

 

「うるせぇ・・・全部オメェのせいだ、コノヤロウ~・・・」

 

控えのピットにはISスーツに着替えた一夏と制服姿の箒、そしてうつ伏せになりながらも一夏への怨嗟を唱える春樹がいた。

 

「清瀬・・・具合はどうだ?」

 

「これが良く見えるようなら・・・地元の眼科を勧めますだよ、先生」

 

「そうか・・・・・うん?」

 

「どうしたんだよ、千冬姉?」

 

「織斑先生だ、馬鹿者。・・・この臭いは・・・?」

 

「ッ!? どっせい!!」

 

「き、清瀬!?」

 

千冬の呟きに答えるかのように突如飛び起きる春樹。その余りの変貌ぶりにその場にいた全員が驚嘆する。

 

「き・・・清瀬、大丈夫なのか?」

 

「阿ッ破ッ破ッ破! ナニヲイッテイルンダイ、ミス篠ノ之? オレ、ダイジョウブ。インディアン、ウソツカナイ」

 

「なんか、片言だぞ清瀬」

 

「うるせぇ、クタばれ」

 

「あ、戻った」

 

変に不自然な作り笑いを浮かべる春樹。

本当は今にでもぶっ倒れてしまいそうだが、二日酔いだと千冬にバレる訳にはいかない。

 

「先生ッ、俺大丈夫ッス! 今からでも行けます!!」

 

「・・・そうか。なら、今からだ。ラファールを準備してある、行ってこい」

 

「あい! いってきます!!」

 

不自然を通り越して、不気味な笑顔のまま駆ける春樹。

その後ろ姿を怪訝な目で皆は送るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――

 

 

 

「あら、逃げずに来ましたのね。・・・って、なんですのそのお顔は!?」

 

これは用意された訓練機『ラファール・リヴァイヴ』を纏い、アリーナへと出撃した俺を待っていたオルコットさんの第一声だ。

 

「ッ! まさか、具合が悪いふりをしていますのねッ? なんと卑劣な!!」

 

「いや・・・ホントに具合が―――」

 

「ですが、お生憎様! 私、そのような事などお見通しですのよッ!!」

 

・・・あぁ、ダメじゃこりゃ・・・。ホントに俺、具合が悪いんじゃけどのぉ。

つーか、何じゃああのライフル・・・射撃場で見たヤツよりもデカくなっとりゃあせんか?

コッチの武装は量産機用のマシンガンにナイフだけじゃぞ。

『ザクⅡ』か、ガンダムに挑むザクかよ。

すぐに撃墜されるんですね、わかります。

 

「踊りなさい! 私、セシリア・オルコットとブルーティアーズが奏でる円舞曲(ワルツ)で!」

 

吐き出される言葉と共に響き渡る試合開始のブザーとロックオンアラート。

ブザー以上にガンガン鳴り響く頭を抑えながら、回避行動をとる俺。

初めて纏うISに左手の甲のガンダールヴが痛いくらいに反応して、さらに吐き気が胃と食道を襲う。

その時だ。オルコットさんのISフィンユニットから4個のユニットが花弁のように切り離され、そのそれぞれが縦横無尽に駆け回ったのは。

 

「フザけんじゃねぇ・・・ガンダムっつても、ファーストじゃなくてサバーニャの方じゃがな!!」

 

ライフルビットは俺の四方を囲むように追尾し、レーザーをバンバン放って来る。

ザク相手にマジになり過ぎとちゃいますか!!?

 

「其処ですわ!」

 

しかも、ライフルビットとの合わせ技かのようにオルコットさんのライフルが放たれる。

 

「ッ!!」

 

俺は其れを紙一枚かの刹那でギリギリ躱す。ガンダールヴが無けりゃあ、とっくにのされちまってる。

だが、俺はオルコットさんに向かってマシンガンを撃とうとはせん。一発もだ。

 

「(こっちは実弾。向こうのビームみたいに弾がのうなったら、リロードせにゃおえん。チャンスを伺え、反撃のチャンスを!!)」

 

「当たりなさい!!」

 

「(・・・無理かも・・・)」

 

 

 

 

 

 

 

―――――――

 

 

 

「(・・・どうしてッ?)」

 

セシリア・オルコットは頭に疑問符を浮かべる。

その疑問符は時間がたつと共に大きくなり、彼女の心に焦燥感を積もらせる。

 

「(どうして、なぜなんですの!? どうして、一発も当たらないんですの!!?)」

 

彼女の射撃は正確無比だ。同じくライフルビットもだ。

銃口から放たれるその一発一発が、着実に相手を撃ち抜くように発射されている。

 

「・・・・・ッ!」

 

けれども、当たらない。

此方を嘲笑うかのように、目の前の男はセシリアの攻撃を容易く避ける。

・・・不気味だ。

 

「!?」

 

「頂きましたわ!!」

 

だが、漸く壁際へと男を追い込んだ彼女はこれで仕留めんとばかりに整列させたビット達でビームを一斉放射した。

確実に当たる。誰もがそう思った。

 

「・・・阿破破ッ」

 

「え・・・ッ?」

 

笑った。

目の前にいる彼女しか確認できない笑顔をこの男は・・・清瀬 春樹は見せる。初めて向けるマシンガンの銃口と共に。

 

「懺悔しな!」

 

地面を氷上のように滑らかなモーションで動き、ズダダッと構えたマシンガンが火を噴く。

発射された弾丸達は彼を仕留める為に整列したライフルビットを貫き、眩い光と共に破裂させる。

 

「きゃぁあああッ!!?」

 

まさか、自分のライフルビットを破壊される等とは露にも思っていなかったセシリアは、甲高い叫びを上げて目を閉じる。眼を瞑ってしまう。

 

「ッ!!?」

 

だから酷く驚いた事だろう。

再び目を開けば、自分の目と鼻の先でマシンガンの銃口を見せられている事に。

 

「・・・なぁ、オルコットさん」

 

突き付ける銃口の担い手は勿論、春樹。

彼は実に穏やかに彼女へ語り掛ける。

 

この時、まだ彼女には隠し手が残っていた。彼女の専用機『ブルー・ティアーズ』に搭載されたビットは”6機”。

その気になれば、いつでも撃てた。仕留める事が出来た。

 

「な・・・なんですの・・・?」

 

なのに彼女は動けない。動くことが出来なかった。

”どうして動けないのか”。其れはセシリア自身でさえ解らない。理由を挙げるとするならば、彼女は彼の目を見てしまったからであろう。

『確実に相手を始末する』という、”ヤると言ったらヤる”という、ある種の”スゴ味”にセシリアは無意識化の中で恐怖を覚えたのだろう。

 

実際に春樹の目はマジであった。人一人を確実に始末する程に血走っていた。

 

「決めてなかった事がある」

 

「決めてなかった事?」

 

「”ハンデ”の内容じゃ。なにぶんと俺は素人なんでな」

 

『どこが!』とセシリアは叫びたくなる。仮にも国の代表候補生である自分の攻撃を容易く避けるド素人がいるものかと。

 

「一撃・・・いや、一発当てたら終わりにせんか?」

 

「なッ!?」

 

彼女が驚くのも無理はない。今の状況、マシンガンを顔面に向けられている状況は圧倒的に春樹が有利だ。

このハンデを飲めば、彼は間違いなくトリガーを絞る。

 

「そんなハンデ、受け入れられる訳ないでしょう!」

 

「なら、残ったブルーティアーズのビットで今すぐに俺を仕留めろ」

 

「え・・・ッ?」

 

再び驚くセシリア。

彼女に向けていた銃口を地面へ下げる春樹。

 

「俺はクラス代表になるつもりなんてさらさらないし、それに見合う実力も器もない。じゃけど、あんたは・・・いや、君は違うじゃろうセシリア・オルコット。君には実力もクラスを率いる器もある。まぁ、性格はあれじゃけど・・・其処はこれからの成長じゃろう」

 

「一言余計です!・・・どうしてですの?」

 

「あ、なにがじゃ?」

 

「どうして・・・そんな事が言えますの? 私はあなたにあんな事を言いましたのに・・・」

 

「そうさのぉ・・・射撃場じゃ」

 

「え?」

 

「君は射撃場で俺に銃の撃ち方を教えてくれたじゃろう。赤の他人・・・ましてや敵に塩を送るなんて・・・セシリアさんは人を思いやれる優しい子じゃ。そんな子がただの何となくで男を見下す訳ない。何かしらの理由があるんじゃろう」

 

「・・・・・」

 

セシリアは何も言わない。

ただ目の前の男が何故か大きい存在に感じられた。

 

「はてさてと・・・そろそろ決めようか。粉煙が晴れて、二人向かい合ってのボケ立ちじゃあ絵にならん」

 

「なーにー、どうなったのー?」

「見えなーい!」

「勝負はどうなったの?」

 

ビットを破壊した時、春樹は同時に地面の土を目くらましで多く巻き上げていた。

なので観客席からは二人の姿が確認できず、声も聞こえない。

 

「・・・そうですわね」

 

セシリアは主武装であるライフル『スターライトMk-Ⅲ』の銃口を春樹に向ける。

 

「・・・あぁ、そうじゃ。それでええ」

 

そうして土煙が晴れると同時に彼女、セシリア・オルコットはトリガーを振り絞る。

三秒後、撃たれた春樹はリタイアを宣言するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




・・・・・・・・・・はい。という訳でリハビリ投稿でした。
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