IS/Drinker   作:rainバレルーk

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第50話

 

 

 

「来い、白式!」

「行くぞ、紅椿!」

 

作戦開始時間五分前。

『銀の福音討伐作戦』の会議を終え、高速戦闘の経験があるセシリアからみっちりとアドバイスを受けた一夏と箒は共にISを纏う。

そして、作戦開始時間ちょうどピッタリ。一夏を背に乗せた箒は千冬の合図と同時に大地を蹴り上げて蒼空の大空へと飛翔する。

流石は天下に名高きIS開発者が一から造り上げた機体か。二人の姿は一分と経たぬ内に水平線の彼方へと消えて行った。

 

「・・・・・」

 

一夏と箒が飛翔した方向を見ながら、ラウラは真剣な面持ちで太平洋の水平線を見つめる。

「・・・どうしたの、ラウラさん?」という簪の疑問符に「・・・いや、なんでもない」とラウラは単調に返す。

だが、彼女の内には奥歯に物が挟まったような言い表せぬモヤモヤした気持ちの悪い感触が浮かんでいた。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

一夏と箒の二人が出撃した数分後。

箒の紅椿のハイパーセンサーが、前方向へ現れた機体に反応する。

 

「見えたぞ、一夏ッ!」

 

「ッ!」

 

彼女の声に一夏が目を向けると其処には全身が銀色に輝かせ、頭部へ一対の巨大な翼を持つIS『銀の福音』を確認する事ができた。

 

「一気に決めるぞ、一夏!!」

 

「おうッ、わかってる!」

 

一夏は白式の唯一の武装にして最大の攻撃力を誇るであろう雪片弐型を握り締め、この作戦において重要な役割を果たすであろう単一能力『零落白夜』を白い刃へ纏わせる。

 

「今だッ、箒!」

 

「行って来い、一夏ッ!!」

 

「うぉおおおおおおッ!!」

 

一夏の合図で、最高速度で福音に向かっていた紅椿からカタパルトの如く一夏の掛け声と共に凄まじい勢いで白式が発射される。そして、その急転直下の勢いのままに彼は斬り結ばんと刃を振り払う。

 

≪ッ!!?≫

 

突然高速で現れた一夏に対処が間に合わなかったのか。ガギンッ!と鈍く重い音と共に蒼白い刃をその身に受ける福音。

 

「(いけるッ!)いっけぇええ―――ッ!!」

 

この直撃に一夏は福音をこのまま真っ二つにするつもりで更に力を籠める。

零落白夜の攻撃力で徐々に失われていく福音のシールドエネルギー。しかし、福音とてやられっぱなしというわけではない。

 

「なッ!?」

 

自らの身体をぐるりと反転させ後退。

正面に立つような形で白式と対峙し、一夏から動揺の声を引き出した。

 

「こ、このぉおッ!!」

 

だが、臆さずに二発目の零落白夜で叩き斬らんと体勢を立て直し、一夏は再び福音へ目掛けて踏み込んで行く。

 

≪敵機確認。迎撃モードへと移行。『銀の鐘』稼働開始≫

 

「なにッ!?」

 

その踏み込んだ二発目の零落白夜を今度はいとも容易く回避した福音は、なんとも機械的な音声を警告音のように二人へ聞かせた。

そして、装甲の一部であるスラスターをまるで銀の翼を広げるように展開させ、砲塔を露わにする。

 

 

「ッ! 一夏、離れるぞ!」

 

「あぁ!」

 

≪・・・・・La・・・♪≫

 

二人はすぐに福音の近くから離脱する。

しかし、そんな二人を逃がさんと甲高い機械音声と共に福音の全砲口から高密度に圧縮された羽のような形の無数のエネルギー光弾が全方位に向けて発射。

しかも、どうやら発射されたこの光弾は追尾システムが備わっているのか。二手に分かれてそれぞれを追う。

 

「うわッ!?」

 

「一夏?!」

 

そのエネルギー光弾が僅かに白式の装甲へ突き刺さる。

すると光弾は即座にシャボン玉のように弾け、予想以上の破壊力を見せた。

 

「俺は大丈夫だ、箒! だけど・・・なんて連射速度だよッ・・・!」

 

「くッ・・・ならば!!」

 

その衝撃に思わず顔をしかめる一夏。

そんな歯噛みをする彼に変わり、今度は箒が福音に向かって駆けて行く。

 

第四世代特有の展開装甲を発動させ、斬撃そのものをエネルギー刃として放出できる空裂で此方へ向かって飛んで来る光弾を迎撃しながら接近。

その猛攻に対して福音は両スラスターを前面に出し、通常の光弾を射出させると同時に高出力のビームを放って弾幕を厚くする戦法をとった。

 

「やるなッ・・・だが!!」

 

≪・・・La・・・ッ!?≫

 

箒はその弾幕を雨月のレーザーと空裂のエネルギー刃で粉砕し、そのまま福音の腹部へ強烈な一撃を叩きつけた。

この攻撃によって福音は大きく後方へ吹き飛ばされ、体勢を崩すと共に明後日の咆哮へエネルギー光弾をばら撒く。

 

「今だ、一夏ッ!!」

 

漸く出来た決定的な一撃を与えられる隙が出来た事で、今度こそ仕留めんと一夏は福音へ接近して行く。

・・・だが・・・

 

「うおおおおおおおッ!!」

 

「い、一夏ッ!?」

 

この箒が作った隙に乗じて福音へ飛び込むはずだった一夏が、何を思ったのか瞬時加速と零落白夜を同時に最大出力で発動させ、福音とは真逆の方向へと飛んでいった光弾を必死になって掻き消したのである。

 

「一夏、お前は一体何を・・・折角のチャンスをッ!!」

「船がいるんだ! 海上は先生たちが封鎖したはずなのに・・・・・あぁ、クソッ! 密漁船か!」

 

一夏が何を守ろうとしていたのか。その後方を箒はハイパーセンサーで確認すると、この近くで密漁をする漁船がいたのだ。これに一夏がもし気付かなければ、福音の攻撃はあの船に直撃していただろう。

されど、こうしている間に雪片弐型へ宿っていた蒼白い炎はエネルギー切れで消えてしまい、展開装甲が閉じてしまった。

それを見た箒は苛立ちを隠せないようにギリリッと歯軋りをし、一気に叫ぶ。

 

「馬鹿者! 犯罪者などを庇って・・・そんなヤツらは―――「箒ッ!!」―――ッ!!?」

 

「箒、そんな寂しいことを言うなよ。力を手にしたら弱いヤツの事が見えなくなるなんて・・・どうしたんだよ、箒ッ? らしくない、全然らしくないぜ」

 

「わ、私は・・・私は・・・・・ッ!」

 

一夏の文言に動揺の色が隠せず狼狽える箒。

 

「ッ! 箒!!」

 

「え――――――――」

 

またしても何を思ったか、一夏は咄嗟に箒の身体を紅椿ごと抱きしめて反転する。

最初は何をされたのか全く分からなかった彼女だったが、その次に目に飛び込んできた光景へ衝撃を受けた。

 

「がぁあああああッ!!?」

 

「い、一夏ぁああッ!!」

 

福音が安易に近づきすぎた箒へ向けて行った一斉射撃を一夏が代わりに直撃したのである。

掠めただけでも十分な威力を見せた福音のエネルギー光弾。それをまともに何十発も受ければ、一溜まりもないのは確実であった。

 

「一夏ッ、一夏ッ、一夏ぁッ!!」・・・と、箒の悲痛な叫びが海上に木霊する。

しかし、操縦者を守る筈のエネルギーシールドで相殺出来ない程の攻撃を受けた一夏からは何の返答もない。

そのまま二人は真っ逆さまに海へと落下し、大きな水しぶきを上げた。

 

≪・・・La♪≫

 

ただ一機だけ残された福音は二人が海へ落ちた事に対し、機体特有の高い機械音を鳴らす。

まるで勝者だけに許された笑みを浮かべているようであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

所変わって、此処は国会議事堂にある一室。其の部屋の扉の横にはデカデカと『IS統合本部』と書かれた看板が掛けられている。

 

部屋の中では様々な分野の知識を持っている多くの職員達が紙の資料や端末資料に目を通している。

そんな連中に混じって、スーツをビシッと決めたある男がいた。

その男の容姿は中々に整っており、自らの務めを果たしている姿は実に様になっていた。

 

「・・・ん?」

 

ふと、男が小休憩の為に一息入れよう等と思っていると、胸ポケットに入れていた私用の携帯電話が鳴った。

男は大方秘書からの電話かと思っていたのだが、画面へ表示された相手の名前を確認し、すぐさま顔色を変えた。

 

「・・・こんな日に君から電話をかけて来るとは。どうだ、楽しんでいるかね?」

 

男は電話相手と何ともフレンドリーに会話を始めるが、何処かその表情は微妙に引きつっていた。

何故ならば、電話の相手は何の前触れもなくとんでもない情報を渡してくる人物であったからだ。

 

「やはり、日本海や瀬戸内海とは違って太平洋は・・・・・・・・何ッ?」

 

男の顔が柔らかい表情から一気に強張る。

周囲にいた職員達は彼の表情の変化に気づき、やんややんやと騒ぎ始めて来た。

 

そんな職員達へ「シィー・・・ッ」と静かにするようとジェスチャーを送った男は電話相手に聞き返す、「その話・・・詳しく聞かせてくれ」と。

 

すると、電話相手は何とも奇妙な「阿破破破ッ」と言った笑い声をあげた後にこう聞き返した。

 

≪ええけど。その前に幾つか調べて貰いたい事があるんじゃけど・・・よろしいじゃろうか、『長谷川』さん?≫

 

これに日本IS統合対策部副本部長、『長谷川 博文』は大きく頷くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆
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