二泊三日の臨海学校の二日目。
突如として起きたアメリカとイスラエルが太平洋沖にて極秘開発中の軍用IS『銀の福音』による暴走事件。
その暴走ISを討伐せんと、我らが劣化版バナージの織斑の野郎とちょっと見た目が頭の弱そうに見える天才科学者から直々に専用機を受け取った篠ノ之さんが意気揚々と出撃しよった。
・・・じゃけど・・・
なんと俺の予想を大きく”裏切って”、この銀の福音討伐作戦は”『失敗』”という形で幕を引いた。
『スパロボZ2』の『再世編』をやりょーる時、作戦終了の連絡を届けてくれた山田先生が今にも泣きそうな顔じゃったのが印象的じゃった。
その作戦失敗の連絡を聞いて、俺ぁ思わず手で口を覆っちまった。
・・・今にも耳まで”つり上がりそうな唇”と”笑い声”を隠さずにはいられんかった。
≪弾けろッ!!≫
「お~・・・流石は改造度MAXで強化精神を詰め込んだ『紅蓮聖天八極式』。中ボスクラスが輻射波動一発で・・・・・流石、『紅月 カレン』ちゃん、サ〇ライズの歴史を変えただけの事はあるのぉ」
・・・で、山田先生からその連絡を聞いた後、俺はさも何事もなかったようにスパロボの続きに勤しんどる。
今は現実世界の”戯言”より、『ガイオウ』倒してスパロボ世界を救わねばならぬ使命感に俺は燃えておった。
「なら次は、これまた魔改造を施した『藤堂』さんの『斬月』でコイツを・・・・・っと、そん前に俺の”燃料補給”をせんとな」
残弾尽きた酒の補充をせんと、救える世界も救えないでござる。『ノーゲーム・ノーライフ』ならぬ、『ノーアルコール・ノーライフ』じゃ。
・・・別にノンアルコール飲料が悪いという意味とは違う。アレもいろんな味があって美味いんは確かじゃ。
じゃけどやっぱり、俺は酒がええ。
そんな客観的に見てもかなり”アレ”なほろ酔い気分の俺が勢い余ってバンッと扉を開けるとあら吃驚。
「きゃッ!?」
「どわッ!?」
何でか知らんが、俺の部屋の前に立っとった凰さんと鉢合わせしてしもうた。
そんでもって、俺があんまりにも扉を開け放ったもんじゃけん、お互いに吃驚じゃ。
「もーッ、吃驚したなぁ。なんじゃーな、凰さん? 確か今は皆、自室待機なんじゃねぇんか?」
「えぇ、そうね・・・・・清瀬、ちょっと話があるんだけど」
「阿?」
そう言うた凰さんの目は、いつになく真剣じゃった。まるで、これからカチコミにでも行くようなギラついた目じゃった。
そねぇーな目を見てしもうた俺は、容易に彼女がこれから”しでかそうと”しょーる内容が解ってしもうた。
・・・まぁ、当然か。
「清瀬、私はこれから―――「ゆーな、ゆーな、皆までゆーな」―――ッえ?」
「大方・・・あの野郎の『仇討ち』をやろうってんじゃろう?」
ニコリとニヒルに笑う俺の言葉に凰さんは驚いたんか、ちぃと目を見開く。そして、「えぇ・・・そうよッ」とさっきと同じ強い視線に戻った。
「ほぉ~ん・・・「私、覚悟できてます」ってツラじゃのぉ。そねぇーな顔で、他の皆も”オトして”来たんか?」
「・・・ッ・・・」
押し黙る凰さんの横を見ると、其処にはこっちの様子を見るラウラちゃんや簪さんをはじめとした専用機持ちの人がおった。
「・・・嫌じゃ」
「ッ、春樹さん!!」
俺の意図した発言にセシリアさんが噛み付いて来る。
じゃけど、そんな彼女に凰さんは「やめて!」と声を荒らげる。
「別に無理してアンタを誘いに来た訳じゃないわ。アンタは元々、一夏の事が嫌いだものね」
「おーッ、よう解っとるがな。・・・じゃけど、なんで俺を誘いに来たんじゃ? 今の頭数でも十分足りとると俺は思うんじゃけど?」
「それは・・・」
「それは私が春樹を推したからだ」
言い淀む凰さんの代わりに口を開いたんは、ラウラちゃんじゃ。
「なして俺を?」
「春樹、お前は私とシャルロットがIS学園へ転校して来る前に福音と同じタイプの無人機を破壊した実績があるそうだな」
「あぁッ、そねーな事もあったのぉ」
射撃を主軸に攻撃をしてくるという点では、俺が一学期の初め位にブチ回したゴーレムと同じタイプじゃろう。
「じゃけど、アレはたまたま運が良かっただけじゃ。俺にそねーな実力はな―――「ありますわ」―――ッへ?」
今度はセシリアさんが俺に真剣な眼を差し向けて来よった。
「春樹さん。こんな事を言うのは大変悔しいのですが・・・この中で、貴方は一番の実力者ですわ」
「おいおい、ちょっとちょっとセシリアさん! 俺ん事、買い被り過ぎじゃって」
ヘラヘラ笑う俺に相変わらずセシリアさんは、その綺麗な青い眼で強く見据えて来よる。
そんな覚悟が伝染するかのように、今度はデュノアと簪さんが俺に目を向けて口を開いた。
「春樹、ボク達は正直言って不安なんだ。だから・・・ボク達に力を貸して欲しいんだ」
「それに・・・あのまま、あのISを放って置いたら、皆が危険。・・・放って置く事はできない」
・・・ふむ。『一人は皆の為に、皆は一人の為に』ってヤツじゃな。
ラウラちゃんは二人だけで戦場へ行かせてしもうた罪悪感みたいなもんが感じられるし、簪さんはセシリアさんとデュノアと同じくあの危険ISを放って置けないって感情が感じられる。
・・・この琥珀色の目玉になってから、人の心情がちぃっと解るようにようになったけんな。
「じゃけど・・・ひー、ふー、みー・・・一人頭数が足らんのんじゃないんか?」
『『『・・・ッ・・・』』』
俺の指摘に皆がバツの悪そうな顔をしよる。凰さんに至っては、ギリリッと歯軋りが聞こえて来そうじゃ。
銀の福音の攻撃で織斑の野郎は意識不明の重体。
何で野郎がそねーな事になったんか。それは同じ戦場に居った篠ノ之さんを庇ったけんじゃ。
「箒は・・・その・・・・・」
「・・・デュノア、言わんでも解る。ホントは凰さんも野郎の傍に居りたいんじゃないんか?」
「ッ・・・当たり前、じゃない・・・!!」
我ながら意地の悪い質問じゃ。
自分の大切な人がとんでもない事に巻き込まれたら、傍に居りたいに決まっとる。俺だってそうじゃ。
じゃけど・・・凰さんは涙をグッと堪えて絞るような声で俺に言い放ちよった。
「そんな事をアイツは望んじゃいない。アイツなら皆を助ける為に動けって言う」・・・と。
俺ぁ思わず「・・・ッチ」と舌打ちがしとうなった。
なんで、こねぇーにエエ女があねーな男に惚れとるんじゃろうと。
「ふむ・・・君らぁの気持ちはよう解った。でも・・・皆、先生に黙って行くつもりじゃなかろうな?」
『ギクリッ』っていう擬音語が顔から読み取れたんは、ラウラちゃんとデュノアからじゃ。
浴衣の下にISスーツをバッチし着こんどるんが、バレバレじゃで皆さん。
じゃが、まぁ・・・・・調度ええ”茶番”にはなったかのぉ?
「清瀬~~~~~ッ!!」
「なッ!? あ、あれは・・・ッ!!」
「お、織斑教官・・・ッ!!?」
阿破破破破破ッ!! ナイスな展開だぜぇ。
流石は長谷川さん、仕事が早~い!
じゃけど、解ってはおったが・・・あねーに恐ろしい形相でドスドス迫って来るんは、かなりきょーてーのぉ。
阿破破ノ破ッ。
◆◆◆◆◆
『銀の福音討伐作戦』失敗から一時間とせぬ内に、ある一団がゾロゾロとIS学園一年生生徒が宿泊する旅館・花月荘を訪れた。
貸切の筈の当館へ訪れた思わぬ来訪者に旅館の従業員達は驚く。だが、そんな彼等よりももっと驚いたのが学年主任の千冬だった。
「私達は”日本代表候補生である”清瀬氏の要請を受けて参った所存であります」
「なに・・・ッ!!?」
旅館を訪れた謎の一団の正体は、日本政府が独自に組織した『内閣IS統合対策部』の副本部長、長谷川 博文が送って来た職員達だったのである。
「これより『銀の福音討伐作戦』の陣頭指揮を織斑 千冬教諭から受け継ぎ、作戦続行を開始します」
「ちょっと待ってください! この作戦はIS学園上層部からの―――こッ、これは!?」
反論しようとする山田教諭へ長谷川の秘書官である高良がある書類を彼女に見せる。
其れはIS学園の長である轡木学園長のサインが書き込まれた許可証だったのだ。
「IS学園の学園長であらせられる轡木 十蔵氏からは許可をもらっております。偽造だと思われるのならば、どうぞご確認ください」
「えッ・・・その・・・あの・・・ッ!」
「よろしいですね、織斑 千冬学年主任殿ッ?」
捲し立てる高良の言葉に千冬は、眉間に若干の皺を寄せて目を細めながら了承とも取れる頷きをした。
「ありがとうございます、織斑先生。・・・ところで、清瀬君・・・いや、清瀬代表候補生は何方に?」
この時、千冬は第一次作戦会議から降りる事を宣言した春樹へ口外禁止の誓約書を書かせるべきであった事を後悔するのと同時に、彼の嘲笑うかのような笑い声を思い出すのだった。
・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆