IS/Drinker   作:rainバレルーk

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第62話

 

 

 

《―――――八月の糞暑い残暑が厳しい頃。母ちゃんと父ちゃんは如何お過ごしじゃろうか?

学校に在籍しとる生徒の大半が自国やら地元やらへ帰省していると言うに。俺ぁ、期末テストの点が悪かったけん、夏休みが始まる前から追試テストを受ける事が確定してしもうた。

ほいじゃけど、俺には優しいクラスメイトが居るけん心配いらん。

自国やら地元へ帰る前、頼んでもいねぇのにみっちり勉強を教えてもろうたでよ。

じゃけん、ちぃとばっかし帰るんが遅れるけんな。

ほいじゃあ、また。

 

愛する愚息より。

 

―――追伸。

何か知らんけど、どーいう訳かベルギー行く事になったわ。

お土産にベルギービール買うてくるわぁ》

 

「・・・・・なんじゃあな、こりゃあ?」

「さぁ?」

 

息子から送られて来た暑中見舞いに、清瀬夫婦は頭上へ疑問符を浮かべるばかりであった。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

季節は八月。

蝉の鳴き声が本格的に喧しくなって来る頃。

 

「むぅ・・・ッ」

 

臨海学校の最中に発生した『銀の福音事件』のドタバタの為に期末テストの結果を”捨てた”春樹は現在・・・何故かヨーロッパはベルギーに向かう飛行機内に居た。

その座席シートに座っている彼の表情は、とても気分の良いものとは見て取れない。

 

そんな彼に「清瀬君、そうむくれないでくれよ」と真向かいに座っている高良が声をかけてCAから貰ったシャンパンを勧めたが、「”ジュース”はいらんでよ」と冷たくあしらわれてしまった。

 

「も~、何をそんなに怒っているのさ?」

 

「阿”ッ~? 別に怒っとりゃあせんですよぉ。まさか、追試テストを受ける日にベルギーへ出発するなんて事を当日に聞かされて、納得がいかないだけですだよぉ~ッ」

 

「・・・やっぱり、怒ってるじゃないか」

 

春樹は、そう口をへの字に曲げながら生意気な態度をとった。

・・・何故に彼が此処まで拗ねているのか。それは三時間前に遡る。

 

その日、春樹は朝から行われるであろう追試テストに覚悟を決め込んでいた。

・・・しかし・・・

 

「はぁッ!? 今からっすか?!!」

 

今の今までテスト勉強の為に電源を”切られていた”携帯からけたたましく着信音が聞こえ、彼にベルギー行きを通達したのだった。

 

「夏休み前に、長谷川さんから外国へ行くいう話は聞いとったけんど・・・まさか、今日だとは聞いとりませんでしたからねぇッ」

 

「しょうがないだろう。ベルギー行きの詳しい日程を連絡しようにも、今朝の今まで連絡がつかなかったんだから。其れに、長谷川先生のおかげで追試テストがなくなったんだよ。「テストやりたくねぇええ!」って唸ってたから、てっきり喜ぶかと思ってたけど・・・」

 

「あぁ・・・そうっすね。一週間前の俺なら、そうでしたね・・・」

 

そう言いながら、春樹は窓際から見える雲を細い眼で眺めた。

この一週間、彼は追試テストの為に簪へ自分のテスト勉強を見てもらうように頼んだ。

・・・だが、それを他の人間にも聞かれていた。

 

「ほぅ、テスト結果が悪いとは聞いていたが・・・まさか、教官が担当されている学科で赤点を取っていたとはな・・・ッ」

 

「えッ・・・ラ、ラウラちゃん?」

 

「特訓だ! 春樹ッ、お前に満点を取らせてやる!! それがお前の”妻”となる私の務めだッ!!」

 

「ラウラちゃーんッ??」

 

其処から始まったのは、いつか彼が学年別トーナメント前に彼女から受けた訓練と同等の勉強であった。

酒を含めた一切の娯楽が禁止され、昼も夜も最低限度の行動範囲以外はIS基礎知識の勉学へ費やされた。

そんな猛特訓が終了したのは、ラウラがドイツへ帰国する三日前の事である。

 

「あ~ぁ・・・あんなに勉強したんじゃけどなぁ・・・」

 

「なんか・・・・・ご免ね、清瀬君」

 

「いや、ええんです。長谷川さんに宜しく言っとかんと・・・・・つーか、なんで俺はベルギーに行く事になったんでしたっけ?」

 

「あららッ? 一週間前に電話で話したんだけど・・・覚えてないの?」

 

「えぇッ、まったく。脳内の殆どがIS基礎知識の単語で埋め尽くされとりますけん!」

 

何故か決め顔で答える春樹に高良は苦笑いを浮かべながら、何故に彼がベルギーへ招集されたかを説明し始めた。

 

「清瀬君は今回、ベルギーの首都ブリュッセルで行われる欧州IS新機体発表会に招かれたんだ。それも主催者側の一つである大手企業、デュノア社からの招待だ。其の招待を受けたから、長谷川先生が学園側に追試テストの中止を取り繕ってくれたんだよ」

 

「ほぉ~ん・・・でも、なして俺がそんなもんに呼ばれるんで?」

 

「・・・え!?」

 

まるで赤の他人ごとのように疑問符を浮かべる春樹に高良は大きく表情を崩した。

 

IS関連企業内において、世界シェア三位を誇る大企業デュノア社。

しかし、第三世代型機体の開発難化の為に一時は経営が危ぶまれる程に追い込まれていた。

其れを意図せずして救ったのが、高良の目の前でボケッと座席へ座る春樹だった。

 

当時、彼はVTS事件の意外な活躍のおかげもあってか、掌返しを決め込んだ日本政府を春樹のバックを受け持っていた長谷川が丸め込め、日仏第三世代型機体共同開発を打診したのである。

 

之にデュノア社社長であるアルベール・デュノアは甚く感銘。

自社の窮地を救うばかりか、当時すれ違いをしていた娘との深い溝までをも埋めてくれたのだから、恩人と言っても差し支えない。

そして、今回開催する欧州IS新機体発表会に出展される機体は、その日仏共同で制作された内の一つであった。

 

「(向こうとしては、微々たる恩返しの一環のつもりなんだろうが・・・恩人の彼がこの様子だからなぁ)アハハッ、やっぱり君は興味深い人だよ」

 

「阿? まぁ、ええわ・・・それよりも高良さん、聞きたい事があるんじゃけどエエですか?」

 

ふてくされ顔から、キョトン顔。そして、今は真剣な表情で高良を見据える春樹。

コロコロ表情を変える彼に吹きだしそうになる高良だったが、いつになく真剣な眼に一応の体勢を整える。

・・・まぁ、どうせ―――――

 

「新機体の発表会なら、パーティーしますよね? 酒は―――「飲み放題じゃないだろうし、一応未成年者なんだから控えてね」―――阿”ァ”ぁ、やっぱしダメですか・・・!!?」

 

「いや、そりゃあそうでしょ」

 

「・・・・・高良さん、やっぱりさっきのシャンパンください」

 

「ジュースだから、いらないんじゃなかったの?」

 

「確かに俺にとってはジュースですけど、アルコールが入っているのでジュースじゃありません!!」

 

「・・・支離滅裂だよ、清瀬君!」

 

「飲まなきゃやってらんねぇでよ!!」

 

・・・そんなこんなで経由地であるオランダ、アムステルダムに到着するまでに春樹はシャンパンと白ワインを計五本開ける事となる。

その後、先に現地へ到着していた長谷川と壬生から「酒臭い」と言われてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

春樹がオランダはアムステルダム空港へ到着する少し前。

先にイギリス、ロンドンを経由してベルギーへ入国したフードを姿のある人物がいた。

 

その人物は偽造パスポートと現地の仲間の手引きにより入国した模様で、ベルギーへ到着するや否や、”組織”の仲間に連絡をとる。

 

≪イギリスでの任務はご苦労だったわ。間を置かずに悪いのだけれど―――――≫

 

「・・・・・」

 

通信機器から聞こえて来る女の指示を、”彼女”は黙々と聞く。

大まかな話の内容としては、ベルギーで行われるIS新機体発表会に出展される機体の奪取。そして―――――

 

≪そのパーティーの招待客名簿に『ハルキ・キヨセ』の名前があったわ。・・・後は言わなくても解るでしょう?≫

 

「・・・」

 

通信機器から聞こえて来る指示に静かに頷いた彼女へ女は≪なら、頼んだわよ『M』≫と最後にそう言って通信を終えた。

 

「ハルキ・キヨセ・・・・・二人目の男・・・」

 

頭からすっぽりと覆ったフードの下から僅かに見えた彼女の輪郭は、『ある人物』と酷似しているのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆
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