オランダのアムステルダム空港を経由してベルギーに入国した俺と高良さんは、先に現地入りしていた長谷川さんらぁと合流。
合流した後、今回の新機体発表会に招待してくれたデュノア社の社長らぁと昼飯を一緒にとった。
そん時、終業式が終わった後に直ぐに帰国したデュノア・・・いや、今はシャルロットじゃったな。シャルロットがデュノア社長と一緒に居った。
流石は社長令嬢か。着とるモンも綺麗じゃったし、様になっとった。
まぁ、素体がエエけんな。そりゃー当然じゃわなぁ。
そねーに別嬪なシャルロットを何故か俺と対面する様に前へ座らせたデュノア社長たちとの昼飯は、そりゃあエエもんじゃった。
高良さんにゃあ止められたけど、ヨーロッパの方じゃあワインやこーは水みたいなもんじゃって聞いとったけん、遠慮なく飲ましてもろうた。
其れに出された料理も実に美味かった。特に外はサクサク、中はトロ~りチーズが絡んだ海老のクロケットが美味かったでよ。
そんでもって夜に行われる新機体発表会まで時間があったけん、ホテルの一室で休もうと思うたんじゃけど・・・携帯で壬生さんに呼ばれて、機体整備班の人らぁが居る部屋に入った。
「おめぇが完成したばっかのNH-00型をボロボロにしやがった、清瀬って野郎かッ?」
「え?(ヒィイ~!?)」
・・・じゃが、入った途端にこの有様。
酷くきょーてぇー顔したヤンキー風貌のおにーさんに俺は詰め寄られてしもうた。
「ってかお前、酒臭ぇーな! こっちはおめぇのリクエストに応える為に酒も飲まずにやってるってのによぉ!」
「うわぁッ!? すいません、すいません!!」
「ッ、おいコラ! 何やってるんだ、『芹沢』?!」
この目の下へ酷ぇ隈を刻んだおにーさんに掴みかかられる寸前、俺をここに呼んだ壬生さんが止めに入って来てくれた。
こっちに近づく壬生さんにおにーさんは「ッチ」と舌打ちをかまして、向こうの方へ行ってしもうた。
「大丈夫か、清瀬少年ッ? まったくアイツ、何を人に当たり散らしてるんだよ」
「いや大丈夫ですよ、気にせんでください。つーか壬生さん、あの人は? NH-00型・・・琥珀ちゃんがどーのって言ってたんじゃけども」
「ん? あぁ、前はあの倉持技研に在籍してた俺の大学時代の後輩でね。名前は『芹沢 早太』、琥珀の機体基礎を設計したヤツだ」
「琥珀ちゃんの? なら、挨拶しとかんと」
「やめとけ、今は気が立ってるらしい。それに・・・かなり酒臭いぞ、我らが刃。一体何杯飲んだんだ?」
「一本です」
「本数単位かよ!?」
呆れた様子で、俺は壬生さんにため息を吐かれた。
・・・まぁ、流石に調子に乗っち待った事は反省せんとな。だが、ワインは美味かった。
そんな事もありながら、俺は壬生さんに連れられて技術班の人らぁが集まっとる別の部屋に通された。
辺りを見れば、チラホラと銀の福音事件でバックアップをしてくれた顔も窺える。
その中で、壬生さんは部屋の後方に設置されとったディスプレイを起動させて説明を始めた。
「コホンッ、我らが刃よ。早速だが、先の銀の福音事件で判明したマイナス点は何だったかな?」
「阿? あぁ、はい。そうですね・・・機動性は互角でしたが、なにせ火力不足で戦闘が長引きましたね」
「そうだ。俺は福音との中距離攻撃での戦闘は、コンバットリボルバーで事足りるだろうと言った甘い考えを持ってしまい、それ以上の武装は機動性に邪魔だと判断して付けなかった。それで、戦闘を長引かせた上にあんな怪我をさせてしまった。・・・すまなかった!」
「なッ!?」
そう言って深々と頭を下げる壬生さんに俺だけじゃなく、周りに居った職員の人らぁも驚いた声を上げた。
「壬生さんッ、別にエエですよ。壬生さんらぁが琥珀ちゃんを作ってくれたけん、あの軍用機体を倒せたんじゃし。それにあの事件は突然の事じゃったし、時間がなかった。壬生さんの判断は間違っちゃあいませんでよ!」
「そうですよ、室長!」
「我らが刃の言う通り、あの時の判断が最善の決断でした!」
「皆・・・ッ」
俺の言葉に他の人も呼応してくれた。
それでも壬生さんは「し、しかしだな!」と愚図りを見せる。
・・・つーか、此処の人らぁの俺の呼称ってホントに『我等が刃』なのね。
「グチグチ言ってんじゃないですよ、壬生室長」
『『『!』』』
そんな時、呆れた声と共に部屋の扉を開け放ったのは、さっきのきょーてぇー顔した芹沢さんじゃった。
前髪がちぃとばっかし濡れとるけん、顔でも洗って来たんじゃろうか。
「其処に居る不死身の刃が「もう良い」って言ってるし、ソイツの負ったって言う怪我はソイツ自身がヘマをして受けた傷なんでしょうが。別にアンタが責任を感じる必要はないですよ」
おっふ!?
・・・結構、心にグサリと来るモンを言うてくれるなこの人!
まぁ・・・じゃけど、この人の言う通りじゃ。あの怪我は俺が無理矢理に負ったもんじゃしな。
「其れに、さっき漸くコイツのご希望通りの火力を持った追加武装パッケージが出来上がったんですからね」
「なんだってッ!?」
「遂に出来たんですね、芹沢さん!」
「納期はもうとっくに過ぎてますけどねッ!」
「おうッ。って、喧しいわ! 誰だ、最後に余計な一言言ったヤツは?!!」
「あッ、おい芹沢!」
顔を洗っても未だに気が立っとったんか、近くに居った職員の一人に掴みかかる芹沢さん。
其れを皆で止めに入り、何とかその場を収めた。
「まったく・・・その短気な性格はどうにかならんのか、お前は」
「すいませんねッ、なにぶんと性分なもんで。・・・あッ、あと清瀬!」
「は、はい!?」
「さっきはすまなかったな。追加パッケージが完成して、興奮してたんだよ」
そう言うて、芹沢さんは今度は紳士的に俺へ握手を求めた。
あぁ、この人・・・もしかしなくても、情緒不安定だ。
「別に構いませんよ。ご存知かもしれませんが、俺は清瀬 春樹です。宜しくお願い致します」
「あぁ、知ってるとも。我らが不死身の刃。俺は芹沢だ、芹沢 早太。だけど、随分と丁寧だな。とても酒を飲んでいる不良とは思えないぜ」
「えぇ。飲んでいると言っても、ほんの少しなので」
「・・・ボトル一本飲んでるぞ、彼は」
「コノヤロウゥウウ!!」
「ぎゃぁあーッ!!? 何でバラした、壬生さぁあん?!!」
・・・と、そんなこんなで大分キャラの濃い情緒不安定気味の芹沢さんと相対した俺は、この人から貰った追加武装と追加装甲パッケージを琥珀ちゃんに量子変換させて取り込ませた。
そしたら、なんか装飾品で付けていたクリスタルが待機状態の指輪にドンドンめり込んで行った。・・・何故に?
壬生さんと芹沢さんに「何で?」って聞いたら、「「知らん!」」と即答された。
それでエエんか、開発部?!
◆◆◆◆◆
「春樹、そろそろ時間だよ」
IS新機体発表会開始時間が迫る頃。シャルロットは春樹が休んでいるであろう部屋をコンコンとノックした。
すると「ヴぇ~い」と何だか具合が悪そうな声と共に扉が開く。
「ッ!? ど・・・どちら様ですかッ?」
そして、その部屋から出て来たのはビシリと決まったフォーマルスーツを着たフルフェイスマスクの男。
予想外の展開に固まるシャルロットに対し、男は不機嫌な声と共に口を開いた。
「阿? 誰って・・・俺以外のモンが出て来たら、きょーてぇーじゃろうがな」
「その声、もしかして―――「もしかしなくても、俺じゃ!」―――ご・・・ごめん、春樹」
そのフルフェイスマスクの男は、少し不機嫌気味な春樹だった。
シャルロットが「なんでマスクなんて被っているの?」と問うた所、なんでも会場にいる他の各国政府関係者や企業関係者に素顔がバレない様にするためだと言う。
「ホントは、俺に酒を飲まさんようにする為じゃと思うけどな。こんな『コードギアス』の『ゼロ』みたいなマスクしとったら、容易に飯も酒も口にできんでよ。つーか・・・クオリティが無駄に高いでよ、このマスク」
「でも・・・ボクは意外にカッコいいと思うよ。なんかピッタリかも」
「・・・どーいう意味じゃ、シャルロットさんや?」
「まぁ、エエわ」と溜息を一拍点いた春樹は「ほれ」とシャルロットに左手を差し出した。
之にシャルロットは「・・・えッ?」と疑問符を浮かべる。
「阿? なんじゃあ、俺のエスコートはいらんか? いらんのんなら別に―――――」
「ッ! い、いるいる! いるから待ってよ、春樹!!」
そんな差し出された彼の左手どころか、左腕へ勢い良く抱き着くシャルロット。
この時、彼女の年の割に豊満な胸が春樹の腕を包み込み、彼は不意にドキリとしてしまった。
フルフェイスマスクを着用していなければ、悪乗りしたシャルロットにカラかわれていた事だろう。
「そ・・・そういやぁ、そのドレス似合っとるのぉ。昼間とは違って、えろう大人びとらぁ」
「そ、そうかな? ありがとう、春樹!」
他愛もない話をしながら、会場へ向かう二人。
だが、シャルロットは知らなかった。
IS新機体発表会には、それこそ隣国でIS部隊を率いる黒兎が勿論来ている事を。
春樹は知らなかった。
このIS新機体発表会でとんでもなく面倒臭い出会いがある事を。
・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆