国際IS委員会とは別離で設立された日本政府が直属の対IS機関『内閣IS統合対策本部』。
その特務機関の副本部長を任されている『長谷川 博文』から見て、世界で”二番目”に発見された男性IS適正者である『清瀬 春樹』は”異様で異常”な人物であった。
齢十五とは思えぬ大人びた雰囲気を持ち合わせながら、時に幼子のように怯え、時に歴戦の老兵のような表情を晒す。
未成年でありながら酒類を好み。中でも度数の高い蒸留酒を好んで飲む様は、豪快でありながら、自らの内にある誰にも言えない”孤独”を埋める為の捌け口の様にも捉える事が出来た。
当初・・・彼は大多数の大人達が判断した様に世界で”初めて”発見された男性IS適正者である『織斑 一夏』の”付属品”、若しくは”代用品”、または”オマケ”扱い。
されど、世界に二人しかいない男性適正者。一夏程ではないが保護の対象とされた。
そんな彼の背後に付く様に上の上から指名されたのが長谷川である。
当時、長谷川は先代達が築いてきたコネを最大限に利用する高い野心を持った政界の若き傑物であった。
だが、目上の議員に対しても顔色を窺ったり媚びた態度を取ったりする事が決してない自分の意思をハッキリと言う向う見ずな一面を持ち合わせていた為に反感を買う事も多く、中でも特にISの登場より次第に増え始めた女性優権派閥との仲は最悪であった。
二番目の男性適正者である春樹の発見が世間へ報じられる直前、事前に情報を誰よりも入手した長谷川は彼をその様な派閥から守る為、持っていたコネを散々使って情報操作を錯綜させた。
何故に彼が赤の他人である春樹にここまでの事をしたのか。其れは彼がIS搭乗者の身内でもなければ、IS開発者の身内でもなかったからだ。
何ものにも染まっていない彼を保護していれば、いつかは此方の益になってくれるのでないかと言う下心が長谷川にはあった。
しかし此の後、彼の期待以上の利益を春樹は怖いくらいに次々起こすのであった。
普段は粗暴で傍若無人な酒浸りのアル中患者な春樹だが、油断していると何処からともなく有益な情報をリークし、此方がアッと驚くような功績を息を吐く様に持って来るのだ。
だから・・・・・
「其処で止まれや、キサン!」
「ッ!!? は、春樹君?!!」
『彼が”誰もいない”場所に向けてリボルバーカノンの照準を構えている事にも何かきっと意味があるのだろう』と思わずにはいられなかった。
◆◆◆
其れは何の脈絡もなく起こった。
なんと今回の新機体発表会に招待された日本代表候補生にして、世界で二番目の男性IS適正者である人物が突如、懐からIS用にカスタマイズされたリボルバーカノンを引き抜いたのである。
その天井に吊り下げられたシャンデリアの光によって黒光りする逸物を見た貴婦人達が「きゃぁああ――――ッ!?」と、絹が裂けるような悲鳴を上げた。
「なッ、なな、なにをやっているんだ清瀬くん!? こんな所でISの武装を展開するなんて、一体何を考えて―――――」
「悪いが高良さん、今はアンタの説教を聞いてる場合と違うんじゃ。それよりも、さっさとここらぁに居る人たちを避難させてくだせぇよッ」
「な、何を言っているんだ君は?!」と、高良を含めた大勢の人間は春樹が乱心したのだと冷汗をかく。
すると、騒ぎを聞きつけた主催者達が武装した警備員を前に彼を囲み始めた。
「一体何事が起こって―――――なッ!? Mr.清瀬?!!」
「春樹!? 一体なにしてるの!!」
駆けつけたアルベールとシャルロットも周囲と同じように冷汗をかいたが、相変わらず春樹は銃口を水平に向けたまま動こうとしない。それどころか、彼はリボルバーの撃鉄をゆっくりと起こしたのである。
「馬鹿な真似は止めるんだッ、清瀬君!! 君も何とか言ったらどうなんだッ?」
・・・と、高良は顔を真っ青にしながら、彼のすぐ隣にいたラウラへ向かって叫ぶ。
ところが彼女は―――――
「ッ・・・春樹の言う通りだ。高良秘書官、この場にいる者を即刻避難させろ!」
「ちょっと、ラウラまで!? というか、いつから居たの?!!」
―――左目を覆ていた黒い眼帯を取り、春樹と同じように自身の専用機を部分展開させた。
まさに一触即発。会場の空気は一気に硬直し、大衆は混乱の余り集団ヒステリーを起こす直前状態になっていた・・・・・その時!
「・・・喰らえやッ」
ズダァアアンッ!!
『『『ッ!!』』』
ついに春樹の手に握られていたリボルバーカノンが火を噴いた。
だが、銃口から飛び出した徹甲マグナム弾は射撃線上にある高級そうな白磁の壺へ命中する事なく―――――
・・・キィャァッン!
「・・・へ?」
何もない筈の空中で”ワンバウンド”し、天井へ吊り下げられているシャンデリアの支柱を撃ち抜いたのだった。
本支柱を砕かれたシャンデリアはそのまま自重で床へと落下し、ガシャァア―――ン!と大きな音を発てる。
「あッ、あれは・・・ッ!!」
そして、そんな大きな音と共に巻き上げられた粉塵はピリピリと言った音をたてながら、何もなかった筈の空間から重苦しいフードを被った侵入者の姿を顕現させた。
「悪いのぉ、侵入者さん。警告を聞かんかったけん、つい撃ってしもうたわ。・・・・・っで、キサンは誰じゃ?」
「・・・ッ・・・」
侵入者は春樹の問いかけに対し、両手を上げた。
「まさか、早々に降参か?」と、隣でラウラが首を捻っていると・・・カランッと音を点てながら白い筒が床に転がった。
「ッ!? グ、グレネード!!」
『『『!!?』』』
誰かが叫んだか定かではないが、絶叫にも似た大声と共に白い筒は瞬く間にボシュゥウ!と破裂。辺り一面に黒く着色された煙幕を撒き散らした。
「・・・ラウラちゃん、見えてるよな?」
「無論だ」
「なら、左を頼まぁ」
「あぁッ、任せろ!」
皆が煙幕で右往左往しているというに、ヴォーダン・オージェの御蔭で何ともないような素振りをしつつ春樹とラウラは武装を構える。
そして、ズダンッ!と二つの銃声を轟かせた。
ズビシュッ!
「ぐァ・・・ッ!!?」
バリィイイッン!!
そのどちらかが撃った弾が身体へ命中したのか、小さく上ずった声と共に侵入者は窓ガラスを蹴破って外へと逃げおおせる。
〈ふむ・・・血は出てない。だが、血の臭いはする・・・内出血か?〉
「知らんわな。ほいじゃあラウラちゃん、あと頼むわ」
「えッ!? お、おい春樹!!」
春樹はすぐさま侵入者の後を追わんと琥珀を全身展開し、破壊された窓から夜空へ飛び立つのだった。
◆◆◆◆◆
俺は真ん丸お月さんがポッカリ浮かんどる夜空をエラい速さで飛びょうる。
眼下には電飾で彩られた綺麗な街並みがあって、エエ眺めじゃ。・・・ええ眺めなんじゃけども・・・。
「待てや、ゴラァアッ!!」
「・・・・・ッ」
パーティーへ乗り込んで来よったお邪魔虫を追撃するんが忙しゅうて、それどころと違う。
しかもこのヤッコさん。とんでもなくでぇーれぇー速さでちょこまかネズミみてぇに逃げよーるけん、リボルバーカノンの狙いがつけにくい。酒切れで手が震えるけん、余計にじゃ。
こねーな事になるんなら、無理にでもゼロ仮面の隙間からシャンパンでも飲んどきゃあエかったわ。
≪・・・えるかッ・・・聞こえるか、我らが刃!?≫
≪聞こえますか、春樹さん?!≫
「阿?」
ぶつくさ考えよーたら、通信インカムから壬生さんの声が聞こえて来た。あと、何でか知らんがセシリアさんの声も。
「なんなんな二人とも? もしかしなくても俺、とっても忙しいじゃけど!」
≪よく聞け、我らが刃! ヤツは―――――≫
「は?―――――ッ!!?」
壬生さんからの有難い言葉がインカムから全て紡がれる前に、追っていたヤッコさんからズギャンッ!と青い稲妻が飛んで来よった。
俺は其れを何とか避けるんじゃけど―――――
「・・・」
「・・・おいおいおいおいおいッ」
俺が回避動作をした途端、追っとったヤッコさんがこっちに振り返りよった。
しかも、ただ振り返った訳と違う。
ズッポリ頭を覆っとったフードから、どっかで見た事あるバイザーとこれまたどっかで見た事がある銃口の付いた花弁が機体から分離しよった。
≪春樹さんッ。貴方が今追っている機体は先日、イギリスのIS研究施設から強奪されたものですわ! 名前を『サイレント・ゼフィルス』と言って、射撃タイプの機体です!!≫
「セシリアさん、その機体って・・・もしかして、君のブルー・ティアーズちゃんと同じBT搭載型か?」
≪ッ、どうしてその事を春樹さんがご存知でッ?≫
「今、目の前でそのBT兵器を周りへばら撒いたからじゃよ!!」
「・・・喰らえッ」
状況説明も全部できんまま、ヤッコさんは俺に向かってファンネルからビームをビュンビュン撃ちまくって来やがった。
「のわァアア!? また、射撃タイプの敵を相手にするんかよ!!」
射撃タイプの敵にはあんまりエエ思い出がないんじゃけど。シルバリオ・ゴスペルちゃんとか、福音ちゃんとか・・・銀の福音ちゃんとか。
そー言えば・・・俺って、あの手の兵器に一回負けとるわ。強制的にやらされたクラス代表決定試合で。
・・・・・ん? 待てよ。
「つー事は・・・・・この野郎!!」
俺はファンネルからの攻撃を避け乍ら、ボサッとしとる本体に向けてリボルバーカノンの銃口を構える。
こー言う手の武器は脳への神経接続が肝になっとるけん、ファンネルを自由自在に動かせる代わりに他の動作が出来ん筈じゃ。ソースはクラス代表戦でのセシリアさん。
「喰らいやがれッ!!」
ズドンッ!と撃鉄が薬莢ののケツを叩く事で、銃口から大口径のマグナム弾がブッ放された。
酒切れで手が震え撮ったけど、ガンダールヴの能力で照準補正したけんバッチリじゃ。
「ッ!」
ドグゥオッン!
よっしゃあ! どうじゃ、このバイザー野郎ッ!
俺がオメェみたいなBT兵器使いと戦った事がる事を、言うなればセシリアさんを怨むんじゃな。
〈喜んでいる所悪いが、ハルキ〉
「おわ!? なんじゃあなハンニバル、空中に立った状態で急に出てくんなや!!」
〈すまない。だが、どうやら本体への命中は回避された様だぞ〉
「はぁ? なに言うとるんじゃ、確かに弾は当たって・・・・・阿?」
ハンニバルの言葉をよーよー思えば、俺はあんな爆発が起こるような炸裂榴弾を撃った覚えはない。其れに弾が当たったんなら、ファンネルからの攻撃も弱まる筈じゃ。
其れがない言う事は・・・!
ズキュゥウン!!
「ぐフェッ!?」
≪どうした我らが刃ッ?≫
考え事しょーたら、被弾したヤッコさんからファンネル攻撃の比じゃない位のビームが飛んで来て、俺の脇っ腹を抉って来やがった。
「俺は大丈夫じゃ! じゃが、なしてッ・・・って、おいおいおい?!」
ビーム攻撃が飛んで来た方向を見たら、其処には全くの無傷のヤッコさんが俺にライフルを向けとった。
じゃけど、注目すべきは其処じゃない。注目すべきは、野郎の周りにフワフワ浮かんどる青いまな板みたいなもんじゃ。
「『シールド・ビット』!? って、のわァアア!!?」
≪春樹さん!!≫
本格的にヤッコさんの機体が、セシリアさんのティアーズちゃんよりもサバーニャ・ガンダムじゃと関心する暇もなく、ファンネル攻撃の雨霰が俺に降り注がれる。目の前がビームの青い光でいっぱいになって、眩しゅうてしょうがない。
ここで俺は漸くヤッコさんがパーティー会場からさっさと逃げた意図を理解した。
コイツは俺を自分の狩場へ誘い込む事が目的じゃったんじゃ。
「・・・ふん、他愛なし。予想以上に弱い男だ」
・・・野郎、漸く喋った思うたらムカつく事言いやがって。
「じゃけど、こんままじゃあホントに負け―――≪何やってんだ、この馬鹿垂れッ!!≫―――ギぇッ!!?」
落ち込みムードの俺の耳をつんざくように壬生さんとも、セシリアさんとも違う三人目の声がインカムから聞こえて来た。
≪テメェ、またウチのNH―00をボロボロにするつもりか?!!≫
「芹沢さん!」
この国へ来て早々に絡まれたヤンキー風貌の技術者、芹沢さんじゃ。
「んねぇな事言うても・・・ぐへェ!? 糞ッ、ウザったらしいのぉ!!」
ズガンッ!
取り敢えず俺は近場に追ったファンネル一個をリボルバーカノンで撃ち落とし、ビームの集中攻撃の合間をくぐって回避行動を取った。
じゃけど、残ったファンネル連中は攻撃を続けて来るし、加えてヤッコさんからのビームライフル攻撃もバンバン来る。
「こねーな状況でどうやって反撃せぇ言うんですかッ?!」
≪何の為に追加武装パッケージを量子変換したと思ってる?! 両腕の兵装を取り出して戦え!≫
「両腕の武器ッ? そんなモンがどこに―――≪腕同士をぶつけてみろッ、そうしたら出る!≫―――はぁ?!」
こねーな切羽詰まった状況で何を言うとるんじゃ、この人は?!!
「じゃけど、しゃーねぇやるしかねぇ!!」
俺は力任せに両腕をガンッとぶつけた。
すると・・・どうじゃろうか―――――
「ッ、こ・・・こりゃあ!?」
―――ぶつけた両腕から、赤いレーザービームのような糸鋸が展開される。
俺は”実物”でこの兵装を見るんは初めてじゃったけん、つい『KMFモデルの機体にこねーなの付けてもエエんじゃろうか?』と場違いな疑問符を浮かべてしもうた。
「・・・芹沢さん。もしかしてアンタ、あの”作品”のファンか?」
≪・・・答える必要があるか?≫
「ないでよッ!!」
俺は迫って来るファンネルに向かって、ピッチャーがボールを投げる前のフォームをとる。
そのフォームのまま、掌へ溜まった赤いビームを高速回転させてレコード盤のようなリング状にした。
そして、其れを”あの掛け声”と共に一気に放つ。
「”シュワッチ”!!」
「なッ!!?」
掌から放たれた”元祖”とは違った色の『八つ裂き光輪』は、大根でも切るようにザクザクッとファンネル共を斬り裂いていく。
≪お前がどっかから持って来た第四世代のエネルギー回復能力と銀の福音の武装を応用したビーム兵器だ。理論上はSEが尽きるまで撃ちまくれるし、全身へのブレイズルミナスも強化してる。・・・・・って、聞いてんのか清瀬?!≫
「勿論、聞いてますよ! よーするに『ウルトラマンスーツ』なんでしょうッ?」
≪いや、厳密には違―――「ほいなら、反撃じゃァアア!!」―――って、おい清瀬!!≫
「うろぁ阿”あ”オオオオオッ―――!!」
一瞬の隙もあけんと八つ裂き光輪を撃ちまくりながら、俺は瞬時加速で野郎との距離をいっきに詰める。
・・・じゃけど―――――
「―――――って、ありゃあッ?」
「な!?」
―――なんか思った以上にスピードが出てしもうて、まるで瞬間移動したみたいに野郎の懐まで迫る事が出来ちもうた。
・・・ラッキー!
「オぅラぁ阿”阿ッ!!」
ゴキィイッ!!
「がぁアアアアアッ!!?」
何の躊躇いもないフルパワーで、俺は野郎の顔面に向かって上から下へ右ストレートを振り下ろす。
確かな手応えと砕け散るバイザーの破片が宙に舞い、野郎は真っ逆さまに落下していく。
「・・・あッ、ヤベ。そう言やぁ、下は街中じゃったわ」
後悔先に立たずじゃ。
思い出した時には、野郎はドッカーン!て大音量と一緒に何かの建物の中へ突っ込んで行ってしもうた。
・・・ヤベェ、あとで高良さんにどやされらぁ。
◆◆◆◆◆
「・・・ごめんくださぁーい」
春樹は撃墜したサイレント・ゼフィルスを捜索せんと、ポッカリと開いた大きな穴から建物へと侵入する。
中は墜落時の影響からか、様々なモノが散乱し、ゴチャゴチャしていた。
「うわぁ~、やっちゃったわぁ・・・散らばっとるモンを見た感じ、こかぁスーパーマーケットみたいじゃなぁ・・・・・店員さん達、ご迷惑をお掛けします」
誰もいないところで深々と頭を垂れた春樹は、気を取り直して辺りを散策する。
すると、不本意ながらに彼のお目当てのモノと対面を果たした。
「こ、こりゃあ・・・ベルギービール!」
サイレント・ゼフィルスからの煙幕攻撃をものともしなかった春樹のヴォーダン・オージェは、難なく足元へ転がっていたビール瓶を発見する。
昼からアルコール類を摂取していなかった春樹は、床へ横たわるビール瓶に熱視線を浴びせ、ゴクリッと生唾を飲む。
「ビール・・・ビール! しかも、本場もんのベルギービールッ!」
彼は興奮冷め止まぬ荒い鼻息で、ビール瓶の栓に指をかけた。
何故なら、栓抜きが無くても琥珀を装着している今なら指の力だけで開ける事が出来るからだ。
・・・しかし。
〈待つんだ、ハルキ〉
そんな彼の手にハンニバルが手を添えた。
「何をするかハンニバル! 我が愉悦を邪魔せんとするか!?」
〈何故、見得を切るような喋り方をしているのかという事はさておき。今は何処から敵が襲って来るか解らない状況だ。飲酒をするべきではない〉
「知れた事かッ。俺はもう七時間以上も飲んでねぇんだ、邪魔するでねぇ!」
止めるハンニバルからビール瓶をひったくった春樹は瓶の栓を抜き、意気揚々と傾けたのだが・・・・・
「あ・・・そーいやぁ、ゼロ仮面被っとったわ。全然飲めんでよ」
〈・・・マヌケだな〉
「喧しい!! あぁッもう、ウザったらしいのぉ!!」
「・・・ッ・・・!」
冷ややかに嘲笑うハンニバルの隣でプンスコ怒って喚き散らす春樹。
その彼の背後から、息を潜めたサイレント・ゼフィルスがピンク色のナイフを持って静かに、されど勢い良く気配を消して襲い掛かって来た。
「じゃけぇ、こりゃあ・・・キサンに喰れてやらぁ!」
「ごひゅぅッ!!?」
予めサイレント・ゼフィルスの接近を知っていた春樹は、飛びかかって来た彼女の口へ目掛けてビール瓶を突っ込む。
そして、そのまま残ったもう片方の手でサイレント・ゼフィルスの喉を絞めた。
「オラオラオラァッ! パーティーを邪魔してくれたお礼にビールでもご馳走してくれるわ、こん畜生が!! 遠慮せんと美味そうに瓶をしゃぶって、全部飲みやがれッ!!」
「ゴふッ、げふッ、がヒュ、~~~~~ッッ!!?」
無理矢理に口へ捻じ込まれた事で飲み口から溢れ出て来るビールに溺れ、鼻孔を襲う炭酸にもがき苦しみながらも抵抗するサイレント・ゼフィルス。
しかし、タガの外れた春樹の手を振りほどく事は出来ず、目の前がぼんやりと霞んでゆく。
「阿破・・・阿破破破・・・阿破破破破破ッ!!」
そんな彼女の様子をまるで楽しむかのように、仮面で隠されている春樹の口は耳まで裂けるかの如く吊り上げられていった。
「阿ッ破ッ破ッ破ッ破ッ破ッ! そうじゃッ、最後にキサンのバイザーの下にある顔でも見せて貰おうかのぉ!!」
意識が遠のき、抵抗が弱まったサイレント・ゼフィルスのバイザーを彼はケラケラ笑いながらメキメキ音を点てながら剥いでいく。
「なッ・・・オメェは・・・ッ!!!??」
「ッ・・・! ぁああッ!!」
だが、春樹はそのバイザーの下にあったサイレント・ゼフィルスの素顔に驚いた為に寸での所で意識を保っていた彼女の反撃に喰らう。
バキリッと腹に蹴りを喰らい、踏んづけられた蛙のような「げぼッラァアア!?」という断末魔を上げて吹っ飛ばされる春樹。
対するサイレント・ゼフィルスは「み、見たな!」とでも言いそうな表情をし、ギリリッと彼を睨んだ。
「そん顔はッ・・・オメェ、その顔は! もっと、もっと良く見せんさいや!!」
彼女からの手酷い蹴りと視線に臆する事のない春樹はすぐさま立ち上がると、再びサイレント・ゼフィルスへ飛びかかって行く。
しかし、そう簡単に巧くいく筈もなく、彼女から「く、来るな!」とあるものを投げつけられる。
「うおッ!?」
其れは安全装置が外された手榴弾。
春樹がその手榴弾に驚いて間もなく、強い光と鋭い破片を撒き散らしながらドグォオオン!と爆発するのであった。
長くなったでよ。
・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆