IS/Drinker   作:rainバレルーk

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第73話

 

 

 

「・・・会長」

 

アリーナ管制塔の中央管制室にて、生徒会会計である虚は斜め前に立つ生徒会長の楯無へ訝し気な視線を送る。

 

「ん? 何かしら、虚ちゃん?」

 

「このような事をしても宜しかったので?」

 

今現在の春樹と一夏の実力を見る為とは言え、彼等二人を戦わせる事を彼女は疑問視していた。

首席で整備科に所属する虚から見て、二人のISは同程度の機体能力があると推測される。

だが、機体の纏い手となっている二人の力関係は春樹に分があるだろうという事も推測できた。

 

「勿論。本当は私が織斑君に”身の程を解らせたかった”んだけどね・・・でも、いい機会になったわ」

 

「・・・と、言うと?」

 

「彼・・・清瀬君はVTS事件より前から、才能の片鱗を見せていた。その彼が今や簪ちゃんと同じ日本代表候補生に上り詰め、政府直属の機関が造り上げた機体を纏っている。・・・・・見せてもらおうじゃない、今の彼の実力を」

 

「・・・・・」

 

ディスプレイに映った春樹を指で撫でながらほくそ笑む楯無に虚はただ黙って頷いた。

そして、こう思った。「この人は、ただこの状況を楽しんでいるだけではない」と。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「おい、織斑の豚野郎」

 

全身装甲タイプのIS、琥珀を纏った春樹はなんとも自然に罵倒を織り交ぜながら一夏へ声をかけた。

 

「・・・・・なんだよ、清瀬ッ」

 

対する一夏はギロリと彼に鋭い眼光を見せ、威圧せんとばかりに愛刀である雪片を構える。

 

「なんじゃあな。自分の悪口に反応せんようになった言う事は、オメェさん・・・本気と書いて、マジで戦う気なんか?」

 

「ッ、当たり前だろ!」

 

「おいおいおい、そねーにイガるなや。もっと肩の力抜いて、気楽にやろうぜ。どーせ、俺らぁはあの会長閣下の掌の上で踊らされとるだけなんじゃけん」

 

「ッ・・・清瀬、テメェ・・・ッ!!」

 

春樹のフルフェイスの鉄仮面下からでも解るくらいヘラヘラした声で話す仕草に一夏は「バカにしやがって!」と、更に感情を昂らせた。

 

≪こら、清瀬君。試合開始前に相手を煽らないの≫

 

「煽ったつもりはないんじゃけどなぁ。はいはい、仰せのままに閣下殿」

 

「・・・ッ・・・」

 

管制室から聞こえて来る楯無の声に春樹が答える前で、一夏は意識を集中させる。

そして、VTS事件が起こった学年別トーナメント第一準決勝や銀の福音事件で見た彼の戦い方を思い出す。

 

≪試合開始、十秒前≫

 

「(清瀬の機体は、俺と同じ短期決戦型。だけど・・・アイツの性格から考えて、最初は変則的な戦い方をして来る筈だ)」

 

トーナメント準決勝でも、春樹は真正面から突貫したと思ったらスタングレネードによる目くらまし攻撃を行って来た。

ならば、射撃武装を持ち合わしている彼からの最初の攻撃は銃撃だと一夏は睨んだ。

 

≪開始、五秒前・・・・・三・・・二・・・一・・・≫

 

「(でも、最終的には超接近戦を仕掛けて来る。なら・・・最初の攻撃を防ぎ切ったら、零落白夜と雪羅で一気に片を付ける!!)」

 

過去の春樹の戦闘データを必死に思い出し、自分の戦闘戦略を組み立てる一夏。

そして、戦闘開始の合図が鳴るのを今か今かと待ち望んだ。

 

≪・・・ゼロッ≫ビィイ―――――ッ!

ズダンッ!!

 

「ッ!」

 

カウントゼロの試合開始のブザー次に鳴り響いた銃声。

其れは、西部劇の早撃ちガンマンのようにリボルバーカノンを腰辺りで展開させた春樹からの攻撃だ。

「来た!」と、予想していた通りの彼の攻撃に一夏は射撃・格闘・防御を全てカバーする事の出来る柔軟性を持ち合わせた多機能武装腕『雪羅』で防ごうと左手を前に出す。

 

「・・・阿破ッ!」

 

「!?」

 

しかし、「その動作を待ってました」とばかりに不気味な笑い声が鉄仮面から聞こえて来るではないか。

其の笑い声に何か嫌な予感がした一夏は咄嗟に回避運動をかけるが、もう遅い。

彼の左手に達した銃弾は着弾と同時に破裂し、内部に収納されていた蒼白い液体をベットリ撒き散らした。

 

「な、なに!?」

 

液体は空気に触れると同時に瞬間凍結し、一夏の左手全体を氷で包んでしまったのである。

これでは、幾ら多機能と銘打った雪羅と言えども能力が使えない。

 

だが、春樹の攻撃は之に留まらない。

彼は「もういっちょ喰らえッ」と、更に三発の銃弾をズダンッ!×3と発砲。

 

「ッくぅ!!」

 

一夏は銃口から放たれた三発の内の二発を間一髪回避する事に成功するが、残りの一発が二次移行により大型化したウィングスラスターの一つに着弾。

スラスターをカチコチの氷漬けにしてしまい、残った三つのスラスターで彼はなんとか空へと舞った。

 

「おおッ、やっぱり使えるなぁ氷結弾は。ええ感じじゃ」

 

そんなヨロヨロとバランス悪く飛ぶ一夏を見ながら、春樹は銃弾の戦果にウンウンと満足げに頷いた。

 

春樹が撃った弾頭は、IS統合対策部開発チームが造り上げた特殊弾『十一式氷結炸裂榴弾』。

銀の福音事件では時間と予算の関係上、実験弾頭が一発しか製造されなかった代物だったが、福音戦で大きな戦果を納めた為に正式な特殊弾頭として採用されたのである。

 

「こ、このッ! 一体、何をしたんだ清瀬?!!」

 

再び鋭い眼光を突き立てながら怒号を放つ一夏に春樹は「言う訳なかろうがな」と銃口を突き付ける。

飛び道具に対する防衛策を先程の攻撃で絶たれてしまった一夏に春樹の射撃を防ぐ手立ては飛んで来る銃弾を雪片で弾くか、避けるしかない。

けれどもし、雪片の刀身で銃弾を弾けば、今度は一つしかない武装である雪片を氷漬けにされると思った彼に銃弾を刀身で弾く手立ては使えなくなっていた。

 

「さぁ。弾に当たりとうなかったら、逃げろ逃げろ! 阿破破破破破ッ!」

 

「くぅッ・・・!!」

 

ケラケラ品のない笑い声を轟かせる春樹に下唇を噛みながら一つ欠けたスラスターで空中を飛び回る一夏。

 

だが、彼もただ単純に逃げ惑っている訳ではない。チャンスを伺っていたのだ。

 

「(左手の雪羅とスラスターに当たったヤツと避けた弾は合計”四発”。清瀬の持っているあのリボルバーってのは、確か弾が”六発”しか入らない銃だ。・・・残り”二発”、銃本体に残った二発の弾さえ気を付ければッ!)」

 

回転式拳銃は残弾数を数えやすいのが利点であるが、其れは相手にとっても同じだ。

正に長所と短所は表裏一体・・・ままならぬものである。

 

「ほらよっとッ」

 

「ッ!」

 

そんな事を考えているとズダンッ!と春樹のリボルバーカノンが火を噴いた。しかし、彼が銃口を差し向けたのは標的である一夏でなく、何故かアリーナの壁だった。

何故そんな事をするのかと疑問符を浮かべた一夏だったが、すぐにその疑問への答えは”背後から襲って来た”。

 

バギィッ!

「がァッあ!!?」

 

『跳弾』。

其れは目標などに当たった後に、当たった場所から弾き飛ばされる弾丸の事を指す。

この跳弾を春樹は狙っていたのだ。

 

「ん~、まずまず。・・・じゃけど『リボルバー・オセロット』なら、もっと巧くやったろうなー」

 

自分のやったスゴ技に納得がいっていないのか。春樹はそうボヤきを入れつつ、バランスが取られない様に残った三つの内の一つの大型スラスターをズダンッ!と氷結弾で撃ち抜いた。

 

前と後ろからの攻撃を諸に喰らってしまった一夏はバランスとスラスター制御を誤り、「うわぁあああああッ!!?」と悲鳴にも似た叫びを上げながら地面へ落下。其れは大きな土煙を立ち上らせた。

 

≪織斑君ッ!≫

 

「うわぁ~・・・やっちゃったか? 生きてる、よな? お~い、大丈夫かぁ~?」

 

結構な高さから落下した彼を心配する春樹。

・・・けれど、心配と言っても彼の場合は上辺だけだろう。一夏が完全な再起不能になってしまうと、色々と春樹には都合が悪いのだから。

 

「ッ、うぉおおおおおオオ―――ッ!!」

 

「おッ、生きとった」

 

だが、そんな上っ面だけの彼の心配を余所に土煙を愛刀で掃いながら現れる一夏。

彼は四つある内の無事で済んだ二つのスラスターを精一杯吹かしながら、残弾数が尽きた春樹へ刃を突き立てんと突撃していく。

しかし・・・

 

「ほれ」

 

「なッ―――ゴキャ!―――ぐガッ!?」

 

あまりにも直線的な動きに対し、春樹は其れを難なく避けると一夏の延髄目掛けて手刀を打つ。

人間の急所の一つである部位を攻撃された一夏は、吹かせたスラスターの勢いそのままにアリーナの壁へと激突してしまう。

 

「阿? なんか前にもアイツ、アリーナの壁にめり込んでなかったか? デジャヴゥを感じるのぉ」

 

顎に手を当てながら、いつか起こった事と今の状況を照らし合わせて首を傾げる春樹。

その内、其れがVTS事件で起こった事だと思い出した彼は、管制室に連絡を入れた。

 

「なぁ、会長閣下・・・”まだやるんか”?」

 

春樹のこの問いかけに楯無は≪・・・そうね・・・≫と間を一拍おいて、考える。何故ならこの試合は彼女が予想した以上に力の差が歴然と露骨に表れていたからだ。

 

まるで赤子の手をひねるが如く軽くあしらう春樹にまだ一発も一夏は攻撃を加えることが出来ていない。

楯無がこの決着は”つける”前から”終わっている”状態の試合をこのまま続けて良いモノだろうかと考えだした・・・・・その時ッ。

 

「ッ、もらったぁあアア―――!!」

 

「・・・・・阿?」

 

戦闘不能になったかと思われた一夏が突然起き上がり、残った二つのスラスターで漸う瞬時加速を行って一気に距離を詰めて来たのである。

 

「しぶといのぉ」

 

「ウォオオオオオッ!!」

 

ガギィイ―――ッン!・・・と、一夏の振り下ろした雪片の刃が銀と赤の装飾が施された琥珀の装甲を捉える。

之に「やった!」と遂に漸く当たった自分の攻撃に一夏の内心は昂った。

・・・・・彼が攻撃された春樹の眼を見るまでは。

 

「・・・気ぃ済んだかッ?」

 

一夏が春樹の目を見た後、視界へ広がったのはアリーナの天井だった。

「・・・え・・・?」と何が起こったか理解できていない彼の腹部に今度は途轍もなく鋭い痛みが突き刺さる。

 

ドグゥッ!!

「ぐぇアアッ!!?」

 

右から来たアッパーカットに続いて繰り出された左拳のボディーブロー。その威力たるや、一夏を三m後方へ吹き飛ばす程だ。

 

「・・・逃がすかッ」

 

「ッ!」

 

後ろへ吹っ飛ばされた一夏に春樹は腰から発射したスラッシュハーケンを撒き付け、リールを巻く様に一気に手繰り寄せる。

 

「う、うわぁあああああ!!」

 

しかし、之を一夏は利用しようと考えた。

彼は先程の攻撃とは違い、刃に蒼白いエネルギー波を纏わせた単一能力『零落白夜』を発現させた状態で春樹に突撃を敢行したのである。

 

この一撃必殺の攻撃が通れば、形勢は一気に逆転するだろう。

二人の離れていた距離が三mから二mに、二mから一mに、そして一mから―――――

 

「これで終わりだァアアッ!!」

 

「・・・・・・・・オメェがな」

 

≪ッ!?≫

 

―――・・・一mがゼロmになったその時。

一夏が突き立てようとした切先は空を斬り、その代わりにタイミングを見計らって後ろへ振り抜いていた春樹のカウンターパンチがドグシャァアッ!!・・・と、彼の顔面を捉えた。

 

「ァ・・・あぁ・・・ッ・・・!!」

 

「シャッ!!」

 

放たれた右拳の衝撃に後ろへ反り返る一夏。

その腹部に春樹は躊躇なく二発目のリバーブローをグシャリ!とめり込ませる。

 

「が、あッ・・・!!」

 

彼の打撃はISの絶対防御をすり抜け、確実に内臓へと届いた。

そして、今度は身体がこれ以上離れて行かない様にスラッシュハーケンのワイヤーを釣り竿のリールのように巻きながら、起き上がった彼の顎に再び左拳がバキリッ!と打ち込む。

 

「ァ、―――――ッ・・・ッ・・・!」

 

「・・・・・」

 

上体を下から上へと移動させ、吹き上がる間欠泉のように打ち込まれた拳によって再び跳ね上がった一夏の頭部へ静かに狙いを澄ます春樹。

 

もう春樹の右カウンターを喰らった時点で、一夏の意識は消失しかけていた事だろう。

だがしかし、未だ彼の意識の”完全消失”は成されていない。

『確実なる”トドメ”』を刺す為、春樹は上半身を左右に大きく八の字を描く様に揺らす。

 

「くたばれ」

 

・・・と、馬鹿に単調で冷たい言葉と共に駄目押しの拳が一夏の顔面を捉えた――――――――・・・かに思えた。

 

「阿”ッ?」

 

何故か突然、春樹は一夏へのダメ押しを急停止し、瞬時にランドスピナーを高速回転させて彼と距離を取ったのである。そして、”ある人物”がいる方向を見ながら戦闘態勢を構えた。

その人物とは―――――

 

「あら・・・気配は消したつもりなんだけど?」

 

「・・・(よー言うわ。舐めるような、ぬめった殺気を当てて来た癖に)」

 

春樹の視界の先に居たのは、水色のカラーリングが施されたフルスクラッチタイプのISに身を包んだ楯無であった。

 

「なんじゃあな、今度はアンタが相手か?」

 

管制室で戦いを見守っていた筈の彼女の登場に春樹は琥珀の新しい基本兵装として装備された糸鋸状ビームブレードを両腕に展開。

ブゥウウッン・・・と、ジェダイが振るうライトセイバーのような唸り声で楯無を威嚇する。

 

「其れも良いかもしれないわね。でも・・・その前に、少し冷静になったらどう?」

 

「阿?」

 

彼女の言葉に疑問符を浮かべる春樹だったが、よくよく辺りを見れば・・・いや”聞けば”、ビー! ビー!と試合終了を告げるブザーが鳴っているではないか。

 

「結構前にブザーを鳴らしたんだけど・・・その様子だと、聞こえていなかった様ね」

 

「・・・・・知るか・・・」

 

「・・・え?」

 

「そんな事、知ったこっちゃねぇッ!! 折角、”気持ち良うなって来た”って言うんに・・・もう少しでエエ感じに成れた筈じゃったのにッ・・・何をテメェ邪魔してんじゃ、こんボケェッ!!」

 

鳴り響くブザー音が気に喰わないのか。春樹は突如として声を荒らげ、掌へ高速回転するビームをリング状に形成する。

この彼の行動に「えッ、ちょっと!?」と楯無は身構えた。

 

「清瀬君、試合は終わったのよ。それも君の勝利と言う形でッ」

 

「何が試合じゃッ・・・そりゃあそっちの都合で始めたもんじゃろうがな。じゃったら、終わらせる権利は俺にある筈じゃ!! 其れに『勝ち』じゃと? おいおいおい、ソイツはまだ・・・”生きとる”じゃろうがな」

 

春樹はそう言いながら、膝から崩れ落ちている一夏を指差す。

 

「確実なトドメを、完全なるトドメをッ・・・刺してやる、刺してやる、刺してやるッ!!」

 

「ガルルルッ!」と、彼は獣のような唸り声を上げる。

何故、春樹がこんなにも興奮しているのか。其れはやはり楯無にフィニッシュパターンを邪魔された事が大きな要因だろう。

 

当初、彼は一夏との模擬戦闘に乗り気ではなかった。

だが、戦っていく内に春樹の感情は大きく昂って行き、彼の内にある凶暴性のスイッチが入ってしまった。

・・・”食事”を邪魔された事に”獣”は大きな怒りを顕わにする。

 

「・・・そう。君がその気なら、お姉さんにも考えがあるわ」

 

「考え? もしかして、そりゃあ俺の周りをフワフワ浮かんどる”水粒”の事をよーるんか?」

 

「!」

 

春樹の言った言葉に楯無は少し目を見開く。

彼の言った水粒とは、楯無がもしもの為と散布していたナノマシンで構成された霧の事であった。

 

「『清き激情』と書いて『クリア・パッション』と読むんじゃったかなぁ? 確か、ナノマシンで構成された水を霧状にして攻撃対象物へ散布。そんでもって、其のナノマシンを発熱させることで水を瞬時に気化させ水蒸気爆発を起こす・・・そうじゃよなぁ?」

 

「ッ・・・どうしてそんな事を知っているのかしら?」

 

「おいおいおい、簪さんの打鉄ちゃんのブースターを組み立てる時にアンタの専用機を応用した事を忘れたんか? 調度そん時、”偶然”にも知る機会が有ってのォ」

 

「覗き見なんて・・・悪趣味ね」

 

「あぁ、俺もそう思う。此れじゃあ、妹の部屋に盗聴器や隠しカメラを設置する輩と同じじゃのぉ」

 

「・・・ちょっとッ、その話は今関係ないでしょ!」

 

「おんやぁ? 別にアンタの事なんて、一言も言うとらんのんじゃけど・・・そねーな顔をする言う事は・・・・・んん?」

 

「こ、このッ・・・!」

 

二ヤツいた春樹の嫌味ったらしい笑みに楯無はナノマシン内部の温度を上昇させていくのだが・・・・・

 

≪・・・お姉ちゃんッ?≫

 

「か、簪ちゃん!?」

 

管制室から、静かでありながらドスの効いた簪の声が聞こえて来るではないか。

 

≪春樹・・・どういう、事?≫

 

「さぁのぉ。つーか本人がそけぇ居るんじゃけん、聞いてみたら?」

 

「ちょっと! 清瀬君、君ッ―――≪ちょっと、お姉ちゃんッ?≫―――は、はい!」

 

≪あとで・・・ううん。やっぱり、今・・・話があるんだけどッ?!≫

 

「ひぃいい!!」と声は出さなかったが、怯えた感情が楯無から伺えた事に春樹は「阿破破ノ破!」と笑ってしまう。

この学園の生徒会長であり、大国ロシアの国家代表である彼女が妹の簪にこれから怒られるであろう事が面白くて堪らなかった。

 

「破破破破破ッ。俺、帰るわ」

 

「えッ!? 君、まだ戦うんじゃなかったの?!」

 

「いやぁ~なんか、興が逸れたわ。其れに、アンタにゃあ俺よりも厄介な相手が居るようじゃしなぁ」

 

≪・・・春樹ッ?≫

 

「おっと、目を付けられる前に退散すらぁ。じゃあ、其処でクタバリかけとる野郎の片づけ頼んだで」

 

「あッ、ちょっと!!」

 

「ほいじゃあのぉ~」とそう言って、先程のシリアスが幻だったかのようにさっさとアリーナから退散してしまう春樹。

≪彼にして遣られてしまいましたね、会長?≫と笑い声を抑える虚の声に楯無は「ぐぬぬッ」と楯無は歯噛みするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆

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