IS/Drinker   作:rainバレルーk

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第75話

 

 

 

あのキャス狐もどき・・・もとい我らが学園の生徒会長閣下からとんでもねぇ宣言がされてからと言うものの、俺は自分の部屋に引き籠るようになった。

 

理由としては二つある。

一つ目は、担任の織斑先生のえろうキツイ眼から一刻も早く逃げる為じゃ。

『学園祭では、先生らぁもメイド服』言う俺の思案は、一組連中を巧う巻き込んで実現に漕ぎ着ける事が出来た。

ソースとしては、『あっちこっち』で『御庭 つみき』に猫の着ぐるみを着せる事に成功した『戌井 榊』と『片瀬 真宵』の「あ~ぁ、残念だぁ~。ションボリだぁ~」じゃ。

「き・・・着ればいいんだろうッ!!」と、ブリュンヒルデ先生が叫んだ時には、俯きながら皆で「・・・計画通り!」と口角を引きつらせたんはエエ思い出じゃ。

ざまぁ見ろ。

 

二つ目は、勝手に仕組まれた試合で織斑豚野郎に勝ったんにも関わらず、「生徒会に入らない?」と誘って来る会長閣下から、これまた逃げる為。

 

アイツらぁの目の届かん所で、俺が何しようと別にえかろうがな。

こっちは長谷川さんや学園長に迷惑かけんように細々やりょーるのに、なんであの人は態々火を焚きつける様な真似をするんじゃろうかのぉ?

今度、あのいやらしい眼と猫なで声の口調で来たら簪さんにチクってやろ。

 

そんなこんなで、俺ぁ学園で受ける授業以外の時間は部屋に亀みたいに籠とった。

部屋に引き籠っとる間にやる事と言えば、忙しゅうて今まで見られんかったアニメを見たり、琥珀ちゃんにアニメの戦闘シーンを戦闘データとして取り込ませたりした。

特に『ULTRAMAN』や『ONEPEACE』、『はじめの一歩』のデータは一対一でやるIS試合で役立つじゃろうとよーけぇ入れ込んどいた。・・・別に趣味とかじゃないで。

趣味じゃったら『スター・プラチナ』の『オラオララッシュ』とか、『ザ・ワールド』の『無駄無駄ラッシュ』を入れ込んどらぁ。

之を酒でも飲みながらやれたら、えかったんじゃけど・・・そう巧くいかんのが世の常じゃ。

 

引き籠りの俺ん部屋を毎日のように訪れる物好きがおった。

一人目は、俺に酒を飲まさまぁ飲まさまぁとして来るラウラちゃん。

「酒ばかり飲んでいたら、身体を壊すぞ!」と、一杯二杯は許してくれるが其れ以上は飲ませてくれん。

・・・加えて時折、俺をなんか脂ぎった目で見て来る。なんか、きょーてぇー。

 

二人目は、頼んでもいねぇのに食事を作りに来てくれるシャルロットじゃ。

この子は引き籠りがちの俺に栄養バランスじゃー言うて野菜多めの料理をよーけぇ食わして来る。

・・・まぁ、飯ウマなフランス料理じゃけん苦ではないし、そねーなシャルロットに触発されてラウラちゃんも美味い料理を作ってくれる。

じゃけど、この子も俺に酒は御猪口一杯ぐらいしか飲ましてくれんけどな。

・・・あぁ、酒が飲みたい。せめて湯呑み一杯ぐらいは飲みたいでよ。

 

「一組であの織斑くんの接客が受けられるって、マジなの!?」

「マジマジッ! 其れも燕尾服のバトラー姿で対応してくれるって話よッ!」

「しかも、ちょっとしたゲームに勝ったら記念撮影もしてくれるんだって!」

『『『なにそれ、マジヤバくね!?』』』

 

「・・・はぁー・・・ッ」

 

そねーなアルコール依存症の発作が出るか出んかのギリギリの状態の俺を唯一慰めてくれるんは、まだオープンもしてねぇのに教室の前で行列を作る色目気だった女生徒共に対して溜息を吐く織斑の野郎の怪訝な表情じゃ。

 

実に、実に安らぐ。

これからコイツが、自分の綺麗な顔に引きつった笑顔を張り付けて苦しむ事になるんが楽しみでしょうがない。

 

「阿破破ノ破ッ」

 

「・・・春樹さん、また悪い顔して。そんなに一夏さんが苦しむ顔がお好みで?」

 

「応ッ」

 

「まぁ、なんて良い笑顔。ハァ・・・その調子で接客も頼みますわよ」

 

なんか、セシリアさんから呆れ顔で注意を受けたでよ。

じゃけど俺、接客をやるつもりねぇしな。其れに嫌われモンの俺よりも、皆から好かれとる野郎がやった方がえかろうに。

 

「おっと、もうすぐ開店時間じゃ。さてと、気を引き締めますかな」

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

いよいよ今日は待ちに待った学園祭当日。

世界最強の兵器であるISを扱うとは言え、九割を超える女子率を有するIS学園は熱気に包まれていた。

其れに加え、今年は例年とは違って男子がこの学園に居る為、彼女たちの熱気にはある種の『スゴ味』が感じられるほどの雰囲気が感じられる。

そんな熱に浮かされた彼女達が真っ先に向かうのは、噂の男子生徒がいる一年一組の『ご奉仕喫茶』だ。

 

「お帰りなさいませ、お嬢様」

 

・・・と、扉の入口では燕尾服に身を包んだ一夏が長蛇に並ぶ最前列を歓迎する。

この時点で気をやられて鼻血を吹いた生徒は数知れずで、其の反応に一夏は困惑気味に口角を引きつらせた。

そんな魔の入口を抜けた先では、メイド服に身を包んだ一組生徒達が接客をしている。

 

・・・因みに。シャルロットだけ、一夏と同じ燕尾服に身を包んでいる。

何故かと言うと彼女の男装の件から執事役が似合うのではないかと言う案が飛び出し、満場一致で可決されたからである。

この事にシャルロットは不服であったが、「ええがん、君はああ云うんが似合うんじゃけん」と春樹から説得されて着る事を渋々了承。

其のせいか、一夏の後に出迎える男装麗人執事シャルロットにノックアウトされる女生徒が続出する事となった。

 

「わーッ! 忙しい忙しい!!」

「ちょっと、さっき注文したヤツはまだなの?!」

 

この大盛況の御蔭か、厨房は接客場よりも苛烈な状況下に置かれていた。

捌いても捌いても一向に減る様子どころか、増えて行く客数。

予想を大きく上回る盛況ぶりに、サボって一夏の燕尾服姿を見ようと画策していた連中はパニック寸前状態に陥っていた。

 

「・・・皆ッ、一旦手を止めんさい!!」

 

『『『!?』』』

 

そんな天手古舞な状況下に陥っている場に大きく男の声が響いた。

皆の視線を追えば、その先に居たのは皿洗いの為に腕をまくった春樹が「ヤレヤレ」と腰に手をやっているではないか。

 

「皆、とりま落ち着けや。最初にやった手筈通りにやりゃあエエんじゃけん。慌てるこたぁなかろうが」

 

「で、でも!」

 

「こーいう時はホントにパニくったヤツからヘマをやらかすでよ。本格的にパニックになる前に一拍呼吸を吐いて、情緒を落ち着かせんさい」

 

「う・・・うん」

 

「すぅー・・・はぁ~・・・」と春樹に言われた通り、深呼吸を行う生徒達。

その呼吸で情緒が少しは安定したのか。彼女達の表情から焦燥感が引いて行った。

 

「さて・・・一拍おいた処で作業再開じゃ。鷹月さんと谷本さんらぁAチームは配膳、夜竹さんと相川さんらぁBチームは調理じゃ。あと、重てぇもんが有ったら俺を呼びんさい!」

 

『『『はッ、はい!』』』

 

こうして彼は大慌てとなっていた彼女達を沈める事に成功する。

何故、春樹がこの様な事が出来たのか。其れは彼が無意識の内に『言葉』を『武器』としてガンダールヴに認識させたからだ。

これによって、彼の放った言葉は一種の催眠効果を持つ事となった。

 

「・・・なんか皆、えろう素直じゃのォ?」

 

こんなスゴ技をしていると言うのに無意識な為か、普段ならば起きない不思議な事柄に春樹が首を傾げる春樹。

そんな彼を尻目に「は・・・春樹・・・ッ!」と血相を変えた簪が厨房に入って来たではないか。

「なんじゃあ、どーしたんなら?」と怪訝な顔をする春樹に彼女はただ一言こう言った。

 

「は、春樹・・・お客さんから・・・”ご指名”だよッ・・・!」

 

『『『・・・え!!?』』』

「・・・・・阿ッ?!!」

 

簪から出た信じられないような言葉に春樹のみならず、厨房に居た全員が驚嘆の表情を浮かべた。

 

「・・・あッ。あぁ、そうか! 俺を指名する言う事は、IS統合部の人らぁが遊びに来―――「ううん、違う人。それも・・・女の人だよ」―――へッ?」

 

素っ頓狂な声を上げる彼を余所に皆は「誰だ、誰だ」と厨房からホールを覗き、春樹を指名して来た女性客を探す。

そして、「・・・あの人」と簪が示したお客に再び皆は「えッ!!?」と仰天の声を上擦らせる事となる。

何故ならば・・・其のテーブル席に長い脚を組んで座っていたのは、モデルのような容姿と鮮やかで艶やかな金髪を持った美女が居たからだ。

その人物は、明らかに周りにいる生徒とは違った『大人の女』特有の色気を漂わせていた。

 

「・・・誰ェッ???」

 

「えッ・・・春樹、知らないの?」

 

「知らんわ、あねぇーな美人! つーか、ホントに俺を指名したんか? 織斑の野郎と間違えとりゃあせんかッ?」

 

予想外の出来事に今度は春樹がパニック状態へ陥る。

そんな慌てる彼に簪は「ううん・・・あの人、ちゃんと「清瀬 春樹をお願いね」って・・・」と宣告を下す。

 

「ええぇッ、ホントかよぉ・・・! ヤベェ、完全にマニュアル外じゃがな。どーすりゃあエエんじゃ・・・?!!」

 

「春樹さん」

 

狼狽える彼の肩を叩く人物が一人。

振り返ってみれば、其処には満面の笑みを浮かべたセシリアが春樹に何かを差し出しているではないか。

 

「あの・・・セシリア、さん? なんぞ、コレ?」

 

「こんな事もあろうかと予備の燕尾服を用意していましたの。・・・勘の良い春樹さんならば、私が言わなくてもお解りになられると思いますが?」

 

「・・・因みに聞くけど、拒―――「ありませんわ」―――・・・最後まで言わしてもくれんのね・・・」

 

「はい。それにアドリブは春樹さんの得意分野・・・でしょう?」

 

この時、春樹はこの場から退散しようと逃走ルートを確認したのだが・・・既に逃げ道は事態を勘繰った生徒達の悪ノリによって潰されていた。

 

「・・・セシリアさん・・・君、狙撃手よりも指揮官の方が向いとるんじゃない?」

 

「ホホホッ、御誉めに預かり恐縮ですわ」

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「お待たせ致しました、お客さ―――・・・いえ、お嬢様。当喫茶の第三執事の清瀬 春樹でございます」

 

「あら・・・こんな私でも『お嬢様』と呼んでくれるのね?」

 

ほぼ強制的に燕尾服を着させられ、頭に整髪料をつけられ、琥珀色の右目を隠す為に黒いモノクルを掻けた春樹は、自分を指名した人物の前へと佇んで首を垂れた。

『馬子にも衣裳』ではなく『”駄馬”にも衣裳』と自分を内心の客観視で卑下する彼を横目に彼女は「うふふ」と艶やかな笑みを浮かべる。

其の笑みは周りにいた同性の生徒達も思わずうっとりする様な表情だったが、彼女の素性を知らぬ春樹には不気味に映った。

 

「破破破ッ、御戯れを。・・・それで、ご注文は如何なさいますか?」

 

「そうねぇ・・・・・じゃあ、この『執事にご褒美セット』をお願いできるかしら、執事さん?」

 

この注文に春樹は思わず「阿”ッ?」とドスの効いた声が出そうになった。

上記の品は、皆に楽しんでもらう(一夏に苦しんでもらう)為に彼が提案したものだったのである。

春樹は此れを「か、かしこまりました。少々お待ちください」と口元を引き攣らせながらキッチンテーブルへと戻って行く。

 

「ふふふッ・・・すいません、春樹さん。笑っては駄目なんでしょうけれど・・・『自業自得』と言うものですわね。ふふふッ」

 

「頑張ってね、きよせん」

 

「あぁ・・・ありがとう(・・・覚えとれよ、セシリアさん!!)」

 

厨房から注文の品のハーブアイスティーと冷やされたアイスポッキーのセットである『執事にご褒美セット』を受け取った春樹は、意を決してテーブルへと足を進めた。

 

「お待たせ致しました、『執事にご褒美セット』になります」

 

「ありがとう」と注文の品を受け取った彼女に対し、春樹はこのまま厨房へ逃げ帰りたい。だが、彼はそんな心を押し殺しつつ彼女の正面へ腰かけた。

 

実はこの『執事にご褒美セット』なるものは、客がスタッフに対してお菓子を食べさせると言った内容だったのである。

・・・一体、どこのホストクラブだ。

 

「うふふ。それじゃあ早速―――「その前に少し宜しいでしょうか?」―――・・・何かしら?」

 

「お嬢様は・・・私と面識がありましたでしょうか?」

 

パフェグラスからポッキーを手に取った彼女に春樹は前置き無しの直球的な質問を問いかけた。

世界的に有名な世界最初の男性IS適正者にしてブリュンヒルデの弟である一夏ではなく、彼を訪ねて来たという事は何らかの裏事情に関わっている。

春樹としては、『ベルギーの一件』に関わっていない事を祈るばかりだ。

 

「あら、酷いわ。あんな”激しい夜”を忘れるなんて」

 

そう艶やかな笑みを浮かべて彼女は返答するのだが・・・目の前に居る彼に対し、この対応は間違っている。

一夏ならば、「あわわッ!?」と顔を真っ赤にして慌てふためくだろうが・・・春樹は違う。

 

「・・・・・阿”?」

 

ドスの効いた声と共に二人掛けテーブル下からカチリッと撃鉄を起こす金属音が木霊する。

冗談を冗談だと解った上でいつでも相手を仕留める迎撃態勢をとるのが、この男だ。

 

「・・・正気? こんな人だかりで私を撃とうって言うの?」

 

「”覚悟”の上じゃ。其れにお嬢様、アンタを逃して周囲の皆に危険が及ぶ事の方がヤバかろうがな」

 

引き金に手をかけ、ニコリと春樹は口角を上げる。・・・だが、その眼は明らかに獲物を射程距離内に捉えた獣其の物であった。

幾ばくかの無言が二人の間で続けられた後、「・・・・・解った、解ったわ。私の負けよ」と彼女は両手を上に挙げた。

 

「・・・それじゃあ、お嬢様。アンタの正体を教えて―――「おや、来ていたのか」―――阿”?」

 

これから目の前の人物の正体に迫ろうかと思った、その時。背後から聞き馴染んだ声が聞こえて来たので、振り返ってみると・・・

 

「あら、”千冬”。随分と可愛らしい恰好をしているじゃない」

 

「ッ、しまった・・・メイド服を着ていた事を忘れていた・・・!!」

 

春樹と一組生徒の策に嵌まってしまい、自身をゴシック調のメイド服に身を包んだ千冬が居たのである。

そんな彼女を正体不明の人物は親しそうに下の名前で呼んだのだ。

 

「阿ぁッ? 織斑先生ェ、この人の事を知っとるんですか?」

 

「なに? 知ってるも、なにも・・・清瀬、お前も会った事があるだろう」

 

「・・・はぁ?」

 

千冬の言葉に春樹は疑問符を頭にこれでもかと並べたてる。

彼がどんなに記憶の断片をひっくり返してみても、思い当たる人物が該当しなかったのだから。

 

「無理もないわよ、千冬。彼は私を助けた後、意識を失ってしまった聞いていたから」

 

「其れを解った上でからかう様な真似をするな、『ナターシャ』。コイツはその手の冗句が嫌いな男だ」

 

「は、えッ・・・え? どういう事?」

 

相変わらず疑問符を浮かべる彼に”ナターシャ”と千冬から呼ばれた人物がキチッと敬礼を構えと微笑みを浮かべ、こう言った。

 

「私はアメリカ合衆国軍所属のISパイロット、『ナターシャ・ファイルス』。・・・と言ってもアナタにはシルバリオ・ゴスペル、『銀の福音』の”搭乗者”と言った方が解るかしら?」

 

「・・・・・えッ!!?」

 

謎の人物の明かされた正体に春樹は素っ頓狂な声と共に目を見開く。

『銀の福音事件』から二か月以上経って漸く、影の英雄とその英雄に救われた戦乙女は会合を果たすことが出来たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆
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