IS/Drinker   作:rainバレルーk

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第77話

 

 

 

突如として現れ出でた謎のパツキン美女・・・もといファイルスさんの接客を終えた俺は、どことなく目を潤ませたラウラちゃんとハイライト先輩がご退場された目を持ったシャルロットにとっちめられた。

二人共まさか俺が指名される事になるとは露にも思っていなかったらしく、魅惑的な色香を持って突然現れたファイルスさんに焦ったんじゃろう。

 

・・・じゃけど、彼女は俺よりも壬生さんの方に気があるみたいじゃ。

あの人、いつの間にあねーな美女とそーいう関係になったんじゃろうか?

ただハッキリと言える事は、ファイルスさんと壬生さんを引き合わせたのは俺の手柄という事だけじゃ。

 

まぁでも、いつまでも二人に変な目で見られとうない俺は、ファイルスさんが福音の搭乗者だった事を素直にゲロった。

後、彼女が俺なんかよりも壬生さんの方に夢中な事も説明したら納得してくれた。

・・・・・納得してくれたんじゃけど・・・

 

何でか知らんが、休憩時間を使ってラウラちゃんとシャルロットと一緒に文化祭を回る事になってしもうた。

・・・なんか、上手く丸め込まれてしもうたでよ。

 

「阿~・・・腹減ったなぁ」

 

そんで、今の俺ぁ教室の入口付近で二人が来るのを待ちょーる。

厨房の仕事が思った以上に忙しかって気づかんかったが、調度昼ぐらいじゃけん、腹の虫がグゥグゥと鳴って敵わん。

口も渇いたけん、喉と心を潤そうにも・・・スキットルはラウラちゃんに没収されてしもうてどーにもならん。

 

「あらぁ? 君にしては珍しく、随分とお疲れ気味のようね」

 

「・・・阿?」

 

そねーな気が悪い時に限って、この水色髪は俺の前に現れる。

ホント、タイミングを見計らって来たみたいじゃ。

 

「なんじゃあ・・・誰かァ思うたら、会長閣下か。こねーな所に居る言う事は、また生徒会の仕事をサボっとるんですか?」

 

「・・・相変わらず口が減らないところを見ると、まだまだ元気なようね」

 

「応とも。そんで、さっきも言いましたが・・・サボりで?」

 

「馬鹿な事言わないの、これは列記とした生徒会の仕事よ。生徒の皆が精力的に文化祭に取り組んでいるかの調査よ」

 

「ほ~ん」

 

軽く受け流す俺の態度が気に入らんかったのか、「・・・何よ、その顔は?」と更識会長閣下は『態度不敬』と書かれた扇子を拡げる。

まぁ・・・この人の事じゃけん、メイド服を着た簪さんにでも会いに来たんじゃろう。

 

「俺の事は別にエエけん、さっさと入ったらどうじゃ? 眼鏡メイドの簪さんは人気者じゃけんなぁ・・・早うせんと他の者に指名権を取られてしまうでよ」

 

リアル貴族のセシリアさんがプロデュースに関わっとるけん、接客スタッフの連中はそりゃあもうクオリティがでぇれぇー高い。

ベースはロングドレスを基調としたヴィクトリアンメイドじゃが、其処から各個人の特徴にあった改造が施されとる。

例を挙げると篠ノ之なら和装小物を。凰さんならスリットの入った中華柄を・・・的な具合に。

 

「其れに何でか知らんが、簪さんの装いはゴスロリ要素が強めでのぉ。フリフリしたスカートが可愛えで」

 

「なッ、なんですって!? 流石は私の簪ちゃんね・・・そうと解れば!!」

 

俺の言うた事にオープンシスコン閣下は目の色を変えて店内へ突撃して行きよった。

・・・あぁ、なんか簪さんに悪い事したみたいじゃわぁ。あとで菓子でも買うて来てやろ。

ついでに布仏先輩に会長がサボっとる事もチクろう、そうしちゃろう。

 

「春樹!」

「お待たせ、春樹!」

 

「おッ、よーやく来たか御二人さん・・・って、なんじゃあなそん恰好は?」

 

待っとった二人の声に振り向けば、其処には執事服からメイド服に装いを変えたシャルロットと大きめの執事服に着られたラウラちゃんが居るじゃあないか。

 

「ふっふっふ、実はシャルロットの執事服に興味が湧いてな。取り換えっこしたのだ!」

 

「ほ~、そうなんか。じゃけど・・・破破破ッ、ラウラちゃんにはちぃと大きかったんじゃあねぇか? 袖の所が、萌え袖になっとるでよ」

 

俺がそう指摘してやると、「そうか? でも、似合っているだろう?」とラウラちゃんはニコリと余った右袖を顎に当てて微笑みよった。

・・・実に可愛え。

 

「春樹、ボクはどうなのかな?」

 

「阿? あぁ、やっぱり美人は何着ても似合うわな。二人とも似合っとるでよ」

 

そう言ってやると、二人とも「えへへッ」と頬を朱鷺色に染める。

・・・こうしてみると、俺は随分と異質な世界にいるという事が嫌でも理解できちまう。

だってそうじゃろう。こねーにとんでもなく可愛らしい美少女二人に好意を向けられているなんて・・・有り得ない。

 

「つーか、その恰好のまんまで行くんか?」

 

「うん。セシリアから、一組の宣伝も兼ねて行って来てねって。春樹も執事服を着たままで良かったのに」

 

「阿呆抜かせ、駄馬に衣装じゃろうがな」

 

「そんな事ないよ! カッコ良かったのになぁ・・・」

 

「はいはい、お世辞でも嬉しいでよ。それじゃあラウラちゃん、そろそろ俺から取り上げたスキットルを―――「返さないぞ」―――・・・最後まで言わしてもくれんのね」

 

酒でも飲みたい気分じゃが、幾分と目の前の銀髪戦乙女が其れを許してくれん。

・・・手が小刻みに震えて来た。禁断症状が大っぴらに出る前に何とかせにゃあな。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

一年一組の催し物である『ご奉仕喫茶』のスタッフ休憩時間に入った春樹は、自身を丸め込んだラウラとシャルロットと共に文化祭を回り始めようと他のクラスへ足を向ける。

 

他のクラスもそのほとんどが飲食を主力とした内容の店を営んでおり、昼時で腹を空かせている生徒達や学園へ招待された来訪者達には好評であった。

 

「色んな国から生徒が来とるけん、色んな料理が出されとるのォ」

 

「春樹、これも美味しいぞ」

 

「ふふふッ。春樹、口元に食べカスが付いてるよ」

 

流石は世界各国から生徒が集まっている為か、模擬店に出される料理は実に国際的なものばかり。

それらに舌鼓を打ちながら、彼等は他愛もない話をしては「阿破破破破破ッ!」と笑い合う。

 

ISという兵器を取り扱う専門的な学び舎に所属している生徒達も、今日この日は普通の学校生活を楽しんでいる学生でしかない。

ケラケラ、ケラと会話を弾ませて彼等彼女等は笑い合った。

 

「阿ッ、そうじゃった」

 

・・・と、ここで何かを思い出したように春樹が有る方向を見据える。

「どうかしたのか?」とラウラが不思議そうな顔で彼を覗き込むと、春樹はカラカラ笑って「挨拶に行こう」と言った。

 

「春樹・・・ここは?」

 

疑問符を浮かべるシャルロットを連れて三人が立っていたのは、一学年上にあたる二年生のクラスの出入り口。

其の扉を開け放った春樹は、目当ての人物を見つけると手を振って声をかけた。

 

「よっす、サファイア先輩。遊びに来ましたで」

 

「おお。よく来たッスね、清瀬後輩」

 

彼が声をかけたのは、メイド服とまでとはいかないがフリルのあしらわれた改造制服に身を包んだ三つ編みの上級生。彼女の方も自分を呼んだ春樹に答える様に手を挙げた。

この二人のやり取りに横にいたラウラとシャルロットに加え、教室にいた生徒達も興味関心のある視線を向ける。

 

「お・・・おい、春樹。あの女は誰だ?」

「ボクも知りたいなー・・・なんて」

 

「あぁ。あん人はギリシャ代表候補生の『フォルテ・サファイア』先輩じゃ。俺が学園に入学したばっかの時に色々教えてもろうてな。この間、文化祭が始まったらクラスに遊びに来いって誘われてな」

 

「そ、そうなのか」と訝し気な眼で春樹を見ながら頷く二人にフォルテは人懐っこい笑顔を浮かべて手を差し出した。

 

「はじめましてッス、ボーデヴィッヒ後輩にデュノア後輩」

 

「ど、どうも・・・初めまして」

 

「いや~遠目から見るよりも、ずっと可愛らしいッスね~。どうしてこんな二人が、こんな冴えない顔の清瀬後輩に懐いてるか不思議ッス」

 

「破破破ッ、余計なお世話ですだよ」

 

「むッ・・・」

 

軽口を挟みながら会話する二人が面白くないのか、ムスッと少々眉間にしわを寄せるラウラとシャルロットにフォルテが「大丈夫ッス、彼を狙ってる訳じゃないんで」と耳打ちした。

之に頬を紅に染めて慌てる二人に彼女はケラケラと悪戯っ子のような笑みを浮かべる。

 

「・・・先輩、あんまし後輩を揶揄う様な真似は止してくだせぇよ」

 

「なんスか、清瀬後輩? 妬いてるんスか?」

 

「あ~、はいはい。そんで、先輩のクラスの出しもんは何なんですか?」

 

「ヤレヤレ」と溜息を漏らす春樹に「ん~・・・反応が面白くないッスね」と溜息を吐き返すフォルテだったが、気を取り直して催し物で使う道具を彼等の前に出した。

 

「私達のクラスの出し物は『射的ゲーム』ッス」

 

そう言って彼女が手に持っていたのは『コルト1911ガバメント』、所謂45口径拳銃である。

こんなものを出されて驚いたのか、「おいおい、モノホンの銃を使った射撃ゲームでもするんすか?」と春樹が眉をひそめた。

 

「まさか。モデルガンッスよ、モデルガン。本当は本物を使いたかったんスけど、生徒会からの許可が降りなくて」

 

「そりゃあそうじゃろう・・・」

 

「何を当たり前な事を・・・」と若干引く彼を余所にフォルテはモデルガンをラウラとシャルロットに手渡す。

勿論、招待された自分も射的が出来るものだと思っていた春樹も手を出したのだが、彼に手渡されたのは一本の缶ジュースだった。

 

「えッ、やらせてくれないんですか!?」

 

「レディーファーストってやつッスよ。彼氏さんは大人しくジュースでも飲んで待ってって下さいッス!」

 

「いやッ、俺は彼氏とかじゃなくて―――――」

 

「良いから向こうに行ってるッス!!」

 

勢い良く捲し立てられるフォルテに丸め込まれた春樹は、教室の隅へと追いやられてしまう。

 

「まぁ、そこで待っていろ春樹。商品はゲットして来てやる!」

「春樹の手いっぱいに獲って来てあげるからね!」

 

「いや、そねーにいらんけんなッ!」

 

そして、フォルテに何か耳打ちされて鼻息荒くなったラウラとシャルロットが意気揚々と射的場へ乗り込んで行くのであった。

そんな二人を見送った春樹はプルタブをプシュリッと開けて中身を喉へと流しながら辺りを見回して「・・・あぁ、そう言う事ね」と納得する。

 

フォルテが自分をここに呼んだ理由は、後に付いて来たラウラとシャルロットが目的だったのである。

二人の知名度は学園内でも名高く、秘密裏にファンクラブまで出来ている始末だ。

そんな二人を客として引き込むことが出来れば、多くの来場者を見込めるだろうと言う魂胆が彼女にはあったのだろう。

其の企み通り、射的を楽しむ二人に釣られて何人かの生徒が教室の出入口へ駈け込んで来るではないか。

 

「まんまと出汁にされた言う訳か・・・・・まぁ、エエか。”前の事”もあるし」

 

「なんだ、その”前の事”ってのはよぉ?」

 

背後から聞き覚えのある声に振り返ってみれば、其処には随分とセクシーな改造制服に身を包んだ生徒が春樹へ睨み眼を送っていた。

 

「ほらアレですよ、ケイシー先輩。前に射撃場でケイシー先輩とサファイア先輩の中が皆にバレバレだって言う事ですよ」

 

「あ、アレか・・・アレの御蔭で少しの間、周りの目がぬるく感じる様になっちまったんだぜ?」

 

「エエじゃないですか。アレで漸く自他共に認める公認の中になったって言う訳じゃないですか。つまり俺の御蔭じゃ」

 

「・・・ッチ。可愛くねぇ後輩だぜ」

 

舌打ちをするダリルに春樹は「阿破破ノ破!」と奇天烈な笑い声を上げる。

だがそんな彼に対し、不機嫌な表情から一転してダリルは悪戯っ子の様に口角を吊り上げた。

 

「それよりも清瀬・・・テメェの方こそどうなんだよ?」

 

「阿? 何がですか?」

 

「とぼけんじゃねぇよ。あの二人だよ、ボーデヴィッヒとデュノアだっけか・・・どっちと”寝た”んだよ?」

 

「ごフッッ!?」

 

衝撃的なダリルの言葉に対し、目に見えて動揺する春樹。

其の姿が面白かったのか、彼女は手を叩いて「汚ねぇなー、アハハハ!」と笑う。

 

「ケッホ、ゴほッ! アンタ、いきなり何を言うんじゃ?!!」

 

「なんだよ、別に普通の事だろ? ボーデヴィッヒがテメェに気が有る言う事はオレの耳に入るくらいに有名だし、見たところデュノアも気が有るみたいだしよぉ。・・・で、どっちと寝たんだよ? まさか、二人纏めてモノにしたのかよ?」

 

「普通じゃねぇからな! つーか、どっちとも寝てねぇわなッ!!」

 

「なんだよ、トボケようってのか? ネタは上がってんだぜ、ネタはよぉ。清瀬の部屋に二人が連日訪れてるって話が上級生の間じゃ持ちきりだ。其れも朝方帰るって話もあるじゃねぇか。・・・朝まで部屋の中で何をズコバコやってんだよ?」

 

「ずこばッ・・・!? ケイシー先輩、アンタぁもうちょっと言い方考えんさいや!! あと、其の卑猥なハンドサインを今すぐやめろッ!! つーか、其のネタはどっから出て来た?!!」

 

憤りを隠せない春樹の表情にダリルはケラケラ笑いながら「二年の黛ってヤツからだ」とネタ元を呆気なくバラす。

之に彼は「あんのマス”ゴミ”女郎ゥウウッ・・・!!」と、静かに心内の中で絶叫した。

 

・・・因みに。

この時、文化祭を取材していた新聞部の生徒の背筋が凍ったとか凍ってないとか。

 

「ハハハハハッ! その様子だと、まだ手を出してねぇのかよ。『据え膳食わぬは男の恥』って言葉が日本にはあるんじゃねぇのか?」

 

「はぁ・・・エロい恰好してる割には、よく勉強してるこって。頭痛うなって来たでよ・・・」

 

「うるせぇよ。此処はテメェと織斑以外は皆、女ばっかりだからな。そう言う噂話はすぐに広まるもんだ。どうだ、ざまぁ見ろ」

 

頭を抱える春樹にダリルはマウントでも取ったかのようなしたり顔を晒した後、続けざまにこう言った。「どっちが本命なんだ?」と。

 

「本命・・・? いや、本命もなにも・・・・・」

 

「なんだよ、テメェは”どっちも本命”だとかフザケタ事を抜かしたりしねぇよなぁ? 『古来より、強い雄は雌を囲む』とか言う様なヤツだったら、オレはテメェの”タマ”を潰してやっからな」

 

「じゃからぁ・・・言葉を選べや、ケイシー先輩! 年頃の娘っ子がそねぇな言葉を使うんじゃないでよ!!」

 

「余計なお世話だ、テメェはオレのマンマかよ。それで、どっちが本命なんだよ? 教えろよ、オレとお前の仲だろうがッ」

 

何ともガサツなフレンドリーさで春樹の肩を引き寄せるダリル。

この光景を射的に夢中になっているラウラとシャルロットに見られていないのが、唯一の救いだろう。もし見られていれば、とっちめられる事は間違いない。

 

「ッチ、畜生め・・・・・じゃあ、その質問に答える前に俺の問いかけに答えて下さいよ」

 

「なんだよしょうがねぇなぁ、わーったよ。情報交換のGIVE&TAKEだ、答えてやるよ。それで何だよ?」

 

「じゃあ聞きますが、ケイシー先輩はフォルテ先輩との”これから”を考えてるんですか?」

 

「・・・・・はぁッ??」

 

「何を言っているんだ、お前は?」と春樹の問いかけが理解できないのか、表情を歪めるダリル。

そんな呆気にとられる彼女に春樹は更に続けた。

 

「ほらッ、先輩はアメリカの代表候補生で将来有望だ。其れに合衆国じゃあ”同性同士の結婚”も認めらとるじゃろうがな。そー言う将来の事を考えとるんかと俺は聞いとるんです」

 

「け、けけッ、結婚!? 馬鹿言えッ、オレは―――「なんじゃあ、サファイア先輩との事は遊びじゃあ言うんですか?」―――はぁッ!!?」

 

春樹のこの問いかけで、一気に形勢は逆転した。

顔を真っ赤にして慌てふためくダリルに彼は追撃の手を許さない。

 

「あんな可愛え人よりもエエ女が出て来たら、そっちに乗り換えるつもりなんかアンタは?!」

 

「ザケた事抜かしてんじゃねぇぞ、清瀬!! フォルテみてぇな良い女が他にいる訳ねぇだろうがよッ!!」

 

「あぁッ、そうなんか?! じゃったら、健やかなる時も病める時も汝はフォルテ・サファイアを愛する事を誓いますか?!!」

 

「当ったり前だろうがッ! オレはフォルテを愛してるッ!!」

 

鼻息荒く目を血走らせながらダリルは大声でそう叫んだ、叫んでしまった。・・・ここが教室であるという事を忘れて。

「・・・阿破ッ」と罠にかかった獲物を嘲笑うかのような春樹の下品な笑顔に「・・・あッ!?」と、自分がとんでもない事を行ってしまった事に彼女は気づくが・・・もう遅い。

 

「ダ、ダリル・・・先輩・・・!」

 

振り返れば、其処には顔を真っ赤に熱の籠った瞳でダリルを見つめるフォルテが足を震わせているではないか。

辺りは先程の喧騒が無かったかのように静まり返り、皆の視線は二人へ釘付けとなって息を飲んでいた。

 

「フォ・・・フォルテ・・・お前、どっから聞いてた・・・ッ?」

 

「え、えと・・・清瀬後輩が私とダリル先輩のこれからを聞いて来たところ、からッス・・・」

 

フォルテの言葉を聞き、ダリルはギョロリと春樹を睨む。

だが、一方の春樹はまるで『バットマン』に出て来る『ジョーカー』の様に口角を吊り上げて一言・・・「さぁ、続きをどうぞ」。

それだけ言うと、彼は射的を終えて手にいっぱいの商品であるお菓子を抱えたラウラとシャルロットの方へ歩む。

 

「(清瀬ェッ・・・テメェ、ブッ殺してやるぅうう!!)」

 

「(阿破破破破破ッ! ざまぁ見さらせ、おわんごがッ!!)」

 

眼と眼で会話する二人を余所に只ならぬプレッシャーがダリルを押し潰していく。

この後、気を利かせたクラスメイトが何ともムーディな音楽をかける。

そして、フォルテとダリルを二人っきりにしようと教室にいた全員が蜘蛛の子を散らしたように退室。

ご丁寧に出入り口へ『貸切中』と張り紙を貼り付けて。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「な・・・なんだか、凄い現場に居合わせてしまったな」

 

「で、でも・・・とってもロマンチックだったよね」

 

「公開プロポーズなんて・・・やるのぉ、ケイシー先輩」

 

二年生のクラスであったサプライズに興奮冷めやらぬラウラとウットリした様子のシャルロットを引き連れて一組へ帰投する春樹。

―――――しかし、そんな穏やかな雰囲気がある人物によって一変する。

 

〈・・・ハルキ〉

 

「ッ!!?」

 

「ん? どうかしたのか、春樹?」

 

生徒も来客者たちもこぞって集まる学園の中央広場で、春樹が一番聞きたくなかった男の声が鼓膜を震わせた。

 

「・・・いんや、別に」

 

「別にって事はないんじゃないかな。なんだか、とっても目が怖いよ?」

 

「阿・・・あぁ、急に腹が痛くなってな。トイレ行ってくるけん、二人とも先に教室へ帰っといてくれや」

 

そう言うと春樹は二人と別れ、トイレへ向かう・・・フリをし、周囲を見渡しながら隣にいる幻覚へ語り掛ける。

 

「・・・で、敵はどこじゃあハンニバル?」

 

〈あの人物だ〉

 

右眼を溢れんばかりの琥珀色に輝かせる彼にハンニバルは怪しくも魅惑的な笑顔と共に標的へ指を差すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆
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