・・・一か月ぶりの投稿。
なんかスゴくヴィランな彼。
・・・・・どうしてこうなった?
「き・・・清瀬・・・ッ!?」
心臓目掛けて迫り来る切先鋭い装甲脚にあわや此れまでかと思われた其の瞬間、更衣室の扉ごとアラクネを反対側の壁にめり込ませた人物の名を一夏は驚嘆しながら呟いた。
「ッ、何モンだテメェ?!!」
「!」
しかし、彼の意識はすぐにめり込んだ壁を壊して起き上がって来るオータムへと移る。
其の表情は怒気に満ち溢れ、青筋がはち切れんばかりに浮き出ていた。
「おー、意外とシブトイんじゃのぉ。・・・あッ、そうじゃ。おい、其処で血を吐きょーるボケ」
「へ?」
「オメェしか居らまぁがな、ボケカスの方の織斑。さっさと退けぇや、邪魔じゃ」
「なッ!」
「テメェッ、無視してんじゃ―――――」
だが、警戒する一夏を尻目に彼女へ不意打ちを喰らわせた春樹はあっけらかんとした感想を述べた後、構えたリボルバーの銃口を下げながら一夏に顔を向ける。
相変わらずの悪態に一夏は思わずムッとしてしまうが、そんな彼よりも”獲物”へのトドメを邪魔された人物が今にも噛み付きそうな勢いで叫ぼうと”した”。
・・・何故、この時『した』という過去形なのか。
其の理由を上げるならば、一つしかない
「喧しい」
「ぐェッ!!?」
オータムがガナリ声を発てる前に春樹が彼女の顔面へ向けてズドンッ!と発砲したからだ。
銃口から勢い良く飛び出た弾丸は見事彼女へクリティカルヒット。起こした身体を再び更衣室の壁へと叩きつけた。
「ったく・・・おい織斑、だいたいオメェは危機感言うもんがないんか? 其の頭に被った阿呆丸出しの王冠を狙よーる阿呆共から逃げる為とは言い、知らん人に付いてっちゃあおえまーがな。じゃけんオメェは馬”夏”なんじゃ、おわんご」
そして、何事もなかったかのように再度一夏へ悪態を吐いた。
このゴミをゴミ箱へ捨てる様な何とも自然な動作に彼は思わず「あ、あぁ・・・」と頷いてしまう。
「~~~ッ!! ザケてんじゃねぇぞ、テメェ!!」
「!!」
「・・・阿?」
一方、不意打ちを二度も喰らってしまったオータムは激昂。
すぐさま起き上がり、アラクネの切先鋭い装甲脚を春樹に突き立てんと瞬時加速で一気に距離を詰めた。
「とった!」
「ッ!?」
ズシィヤァアッ!!
一夏の方を向いてボケッとしていた春樹は此れに反応できなかったのか、アラクネの鋭い攻撃が脇腹へと直撃。
「ヒャーッハッハッハッ! 舐めた事してくれた報いだッ、このまま装甲ごと肉をブチ抜いて―――
「何してくれとんじゃ、こんボケェッ!」ゴチン!
―――うゲッ!?」
「フザケやがって、こんボケカス野郎がァッ!!」
バキャァッ!!
「うげぇッアあ!!」
攻撃が命中した事に得意げな笑い声を上げたオータムだったが、其の直後に頭上から振り下ろされた春樹の拳骨が頭部へ的中。
彼女は顔面から床へと叩きつけられたと同時に春樹はオータムの後頭部を右足で力一杯何度も何度も踏みつける。
「え・・・えぇッ・・・!!」
まるでギャグアニメのワンシーンの様な余りに一方的なこの展開に先程まで自身のISを奪われ、心身共にボコボコにされた一夏は酷く動揺してしまう。
そんな彼を余所に気が済んだ春樹は床へ叩きつけたオータムの首を鷲掴んで持ち上げると、親が我が子に言い聞かせるように彼女の眼を見ながらこう言い聞かせた。
「さて、襲撃者さんや。挨拶はこれぐらいにして要件を言うで? 今からお前さんの両手首に其れは素敵な素敵な銀色のブレスレットを嵌めて豚箱にぶち込む。OK?」
「・・・こ・・・この・・・ッ」
「阿? 何じゃって?」
「ブッ、殺してやるッ・・・!!」
ズドォオンッ!!
息も絶え絶えなオータムの声をよく聞こうと顔を近づけた矢先。アラクネの装甲脚に装備されていた全砲門から一斉射撃が行われた。
「このクソ野郎! このオータム様に向かってふざけた真似をしやがってッ、死に晒しやがれッ!!」
至近距離からの一斉射撃が終わった瞬間、オータムは更にアラクネの装甲脚で春樹を切り裂いては刺し貫く。
流石にSEゲージが十分ある機体であろうと、この様な攻撃に晒されれば一溜まりもない。
・・・・・そう、普通ならば。
ゴキャッ
「ッ・・・ひ?!」
生々しい音と共に近くで其れを見ていた一夏は思わず息を飲んだ。
「あ”ア”ッ・・・あ”ア”ア”・・・ッ!!?」
見れば、夥しい白煙からギロリと垣間見えた琥珀色の二つの輝き。
其の眼を持つ彼の手には、苦しみ悶えるオータムが生きも絶え絶えに精一杯の力で自らの首を掴んだ手を振り払おうと殴っていた。
彼女は更に砲撃と斬撃を加え、必死になって春樹の魔手から逃れようと暴れる。
・・・しかし・・・
「・・・・・そうか・・・」
そんな攻撃をモノともせず、彼は更にオータムの首を掴んだ手に力を籠める。
ギチッギチッと耳障りな音が木魂し、アラクネのSEを貫いて鋭い琥珀の爪装甲が彼女の皮膚組織を裂く。
「オメェさんは手荒なサービスがお好みなんか。じゃったら・・・・・お望み通りにしちゃらぁッ!!」
ブチィッ!
・・・・・肉が千切れる音が一つ。
バギィッ!!
・・・・・骨が砕かれる音が一つ。
そんな聞くに堪えない生々しい音が何ともリズミカル且つテンポ良く繰り返されると同時に鼻から吹きだした血が銀色の拳を濡らし、折れた歯が無機質な鉄仮面にコツンと当たって床に転がる。
「オメェッ、みたいな、輩が、居るから! いつまでッ、経っても、世の中、良く、ならんのじゃッ!!」
一切躊躇いのない殴打に最初は「がッ!」「ぐァッ!?」等と短い傷声を上げていたオータムは段々と静かになり、逃れようと反撃していた手と装甲脚はダラリと力なく床へ寝そべる。
「・・・やめろ・・・・・やめろよ・・・もうそれぐらいで良いだろ、清瀬!! それ以上やったら、ヤバいって!!」
「五月蠅ッ、役立たずは引っ込んどれや!!」
「うわぁッ!!?」
春樹のオータムに対するこの暴力行為に一夏は咄嗟に彼の背中へ飛び付く。
だが、白式を纏っていない彼が琥珀を纏っている春樹に敵う筈もなく。容易に振り飛ばされ、床へ叩きつけられる。
「この糞タレのボケカス女郎が! オメェみたいな屑はッ、クタバッテこそ世の中の為に成るんじゃッ!!」
「やめ・・・やめろッ・・・やめてくれ・・・!!」
「くたばれ! クタバレッ! クタばりやがれッ!!」
「やめろぉおオオオッ!!」
キィイイ―――――ン!!
悲痛な一夏の叫びに答えるかのように春樹の殴打によってオータムの手から零れ落ちた待機状態の白式が眩い光と甲高い音を発した。
「もうやめろ、やめてくれ清瀬・・・ッ!!」
「・・・・・阿?」
其の光が部屋を包んだ後・・・自身を呼ぶ声のする方へ春樹が振り返ってみれば、其処にはオータムが放った剥離剤によって奪われた筈の白式を纏った一夏が雪片の切先を此方に向けて構えているではないか。
「阿”ァ? なんじゃあオメェ・・・刃を向ける相手が違うんじゃあないんか?」
色々と指摘する部分はあるだろう。しかし、そんな事は今は気にするまでもない小さな事である。
「もうやめろ、清瀬。それ以上やったら・・・!」
「・・・オイ・・・オイオイ・・・オイオイオイ、織斑くんよぉ。オメェ、お人好しにも程があるんじゃあないんか?」
一夏の態度を見るなり、春樹は首を掴んでいたオータムを床へドシャリ!と叩きつける。
そして、彼女の頭部へ足を乗せるとグリグリと捻じ踏んだ。
「コイツは・・・この糞阿婆擦れはよぉッ、織斑。何が目的か知らんが、学園に潜り込んで悪さをしようとしやがったんじゃで? 皆が楽しみにしとった学園祭を打ち壊そうとしたんじゃで? 其れにさっきまでオメェさんを亡き者にしようとしょーたがな。そねーな悪党を野放しにできまぁーが。それなのに・・・それなのに、それなのにッ! この悪党を成敗しょーる俺に刃を向けるとはどういう事じゃ?!!」
春樹から発せられる絶叫が、一夏には何もかもを吹き飛ばす暴風のように感じられた。
されど一夏は其れに負けじとグイッと身体を前に出す。
「ッ、だけど・・・だけどそれ以上やったらダメだ、やめろ!」
「・・・・・・・・五月蠅ぇなぁ・・・」
「え・・・ッ・・・?」
ヒュンッと一夏は自分の頬に何かが掠ったように感じた。
何かと思って頬を撫でてみれば、指に赤い液体とヌルリとした感触が伝わった。
「き・・・清瀬、お前・・・ッ!!?」
驚いた一夏が春樹の手元を見てみれば、其処には高速回転するエネルギーの光輪が甲高い音を発しているではないか。
「ええか、織斑? 俺は今・・・アルコールが切れてメロメロなんじゃ。其れを紛らわす為に気持ち良うなっとったって言うんに・・・・・邪魔しやがって・・・ッ」
其の手元の光輪から徐々に上へと視線を映せば、明らかに正気を失っているように見える琥珀色の両眼が銀色の鉄仮面の下から垣間見えた。
「責任として・・・・・今からオメェをグチャグチャにしてやらぁ」
「ッ!!?」
「阿破破ノ破」と乾いた笑い声と濃厚な殺気が一夏を包む。
そんな正に一触即発の状況下において・・・・・。
「・・・・・・・・く・・・ッ」
「・・・阿?」
「えッ?」
「くた・・・ばり、や・・・がれ・・・ッ・・・・・!!」カチリ
今の今まで春樹に踏んづけられていたオータムが何かのスイッチを押したのだった。
・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆