バキィイイイッイイン!!
「くゥッ・・・!」
「きゃぁあッ!!?」
恒星のような眩い光を放つ
内部へ入って見れば、辺りはモクモクと多くの煙が立ち込めていた。
・・・何故に彼女は交戦していた二人を牽制し、この様な行動をとったのか。
それはサイレントの回線に彼女の上司から緊急通信が入ったからだ。
「・・・どこだ?」
通信内容としては、サイレントよりも先行して学園へ潜入していたオータムの”救援”に迎えとの御達しである。
・・・だが、サイレントはこの通信に不信感を抱く。
何故ならば、彼女から見てオータムという人物は常日頃から傍若無人な態度をとっているいけ好かない人間ではあるものの、そんな態度が許される程の実力を有していたからだ。
そんな組織でも指折りの実力者が窮地に陥っている事がサイレントには甚だ疑問であった。
「ぜェッ・・・はァ・・・! え、『M』・・・ッ!!」
「ッ、オータム・・・?!」
しかし、『百聞は一見に如かず』といった言葉にあるように、サイレントはISのハイパーセンサーで発見したオータムを見て息を吞んだ。
見れば彼女の顔面は赤く何倍にも膨れ上がっており、身体の至る箇所に裂傷と火傷を負っていたのである。
「オータム、一体何があった? それにアラクネは・・・お前のISはどうしたッ?」
「ウルセェ、うるせぇッ! 訳は後だッ、さっさと此処からズラからるぞ!!」
ヨロヨロと漸う立つオータムに肩を貸しながら声をかけると、彼女は喚きながらサイレントに離脱を急かした。
「くそ、クソッ、糞ッ! ふざけんなフザけんな!! あんなヤツがいるなんて聞いてねぇぞ、クソッタレ!!」
「・・・・・」
サイレントは自分の横で侮蔑の言葉を吐き散らすオータムが”恐怖”や”怯え”に飲み込まれまいと自らを鼓舞しているように感じ、普段の彼女では到底考えられない青い青い表情が強く印象に残った。
「あのクソ野郎ッ、次やるときは必ず・・・必ずぶっ殺してやる!! オレにこんなヒデェ事をしやがってあの野郎ッッ!!」
オータムの脳裏に浮かぶのはある人物の”笑い声”と”眼”。
順調に進んでいた任務を容易にぶち壊し、自分を虫けらの様にコケにしてくれた人間に彼女は強い殺意を抱く。
けれど今は重傷を負った身。
幸いにも自爆する直前にアラクネのISコアは抜いた。コアが無事なら再びISを纏うことが出来る。
その為にも今は逃げるしかない。『三十六計逃げるに如かず』である。
ギャシィイッン!
「「!!」」
だが、そんな二人の背後から何かが勢い良く飛んで来た。
見れば刀身が鮮血の様に色付いた”鉈”が自分達の前にあった壁へ突き刺さっているではないか。
「こ、これは・・・!」
サイレントは其の鉈に見覚えがあった。
半月前、ベルギーで遂行しようとした任務を失敗に追いやった者が装備していた武装に酷似していたのである。
「オータムちゃ~ん、どこ行くの~♪ まだまだ遊ぼうやァ~~~♪」
「ッひ!!? や、やや、ヤツだ! Mッ、早く飛べ!! ヤツがッ、あの野郎が来る!!」
その時、二人の背後から何とも軽やかな歌声が聞こえて来た。
サイレントの肩を借りていたオータムは酷く狼狽し、青い顔を更に青白くする。
「阿破、阿破破ッ・・・阿阿破比比破破破比比比比比ィ!!」
「あ・・・アイツは・・・ッ!!」
煙の中から揺らめく二つの光と気味の悪い笑い声にサイレントは覚えがあった。忘れたくても忘れられない夏の忌々しい記憶が一気に脳内へ蘇る。
「『ギデオン』ッ・・・!」
彼女はハイパーセンサーから肉眼で認識できる距離に立った人物の名を呼ぶ。
ベルギーで起こったテロリスト襲撃事件で自らを撃退し、知りたくもない”味”を無理やり口に詰められた人物の名を。
「阿ぁ、阿アぇ? ア破阿はハ比は比比比ひひッ!! こ子個コりリリャ一体どう言うこここった? ひさ、ひさささ、ひさビさにあうコが居るぞゾ?」
『ギデオン』こと、二人目の男性IS適正者である春樹も半月ぶりに合うサイレントに気づいたのだが・・・様子がおかしい、かなりおかしい。
「さイレんと、サいれント、サイレント! サイレント・ゼフィルス!! き見みミ、君のほほ方からアイに来てくれるななんて・・・うれうれ嬉シイねぇ~♪」
爆発によるダメージからか。片目と片額が露出する程に鉄仮面の一部が吹き飛ばされており、口のある部分からは体液の混じった涎がポタリポタリと垂れていた。
明らかに正気ではない。
「ででデも、今は君によよ、要はない~ンだ。大人しク、其のノ隣に折るくソったれアバズレを寄越せセ!」
「なにやってるんだッ、M?! さっさとオレを逃がせ!! 『スコール』からもそう指示されたんだろうがッ!!」
「・・・ウるちゃい、クタバレ~」
喚くオータムに春樹はリボルバーの銃口を向けてズドンッ!と発砲。
ガシィッ!
「阿らン?」
しかし、オータムの顔面向けて発射された弾頭をサイレントは寸での所で掴み取った。
「え、M!」
「・・・行け、オータム。此処は私に任せろ」
「逃がすか、阿保”ホ”ホ”ほ”ほ”?!?」
春樹は正気の沙汰とは思えない奇声を上げながらバシュッと腰へ装備されているスラッシュハーケンを射出する。
だが、またしても其れをサイレントは掴み取った。
「早く行けッ、早く!!」
「!」
「行カせないィイイッ!?!」
春樹は逃さまいと瞬時加速で迫るが、「そうはさせん」と彼の進行方向にサイレントが立ち塞がる。
案の定、両者は激しい金属音を響かせながら通路から隣の部屋へと壁を突き破って入室した。
「阿”破”破”破”ッ? ジャジャジャジャますーな!!」
「ぐゥッ!!」
遂に言語中枢が狂いだした春樹はサイレントの頭部を掴んだまま次の部屋、次の部屋へと壁を突き破って行く。
その間、自爆したアラクネの火が建物内へと燃え広がっていった。
「ッ、ビット!!」
春樹との揉みくちゃにサイレントは堪らずビーム攻撃を放とうと射程位置へビットを配置する。
「無ダダダダダダッタ!!?」
「な!?」
だが、射程位置についたビットは突如として機能停止する。
理由を挙げるとするならば、遂に頭のイカれた春樹の専用機『琥珀』が有しているAIC能力の賜物だろう。
「阿”阿”阿羅羅ッイィ!!!」
「ぐフぁッ!!?」
AICによる多大な負荷を脳に負いながら、目の焦点が合ってない春樹は狂ったようにサイレントを殴る。
先程までオータムを殴打したように彼女の首を圧し折る勢いで掴んでだ。
「ッ、このォッ!」
「ぶゲッ!!?」
されどサイレントの方も黙ってやられている訳ではない。
彼女は殴打と殴打の間を縫って春樹の顔面へ向け発砲。更に銃剣で突き刺す。
「・・・阿比比比っ?!!」
「ッ・・・この、バケモノめ!」
「おんどりゃぁアアッ!!」
頬を抉る様に突き刺さった銃剣をバギンッと圧し折り、奇天烈な叫びを轟かせながら拳を振り切った。
フルパワーで殴り飛ばされたサイレントは再び隣の部屋へと壁を突き破って入室。
幸い学園祭開催中だった為、一般生徒や招待客は不在。だから存分に暴れまわっても問題は・・・・・あるにはあるが、今はないことにしておく。
・・・二人の背後ではボヤが火災へと発展してしまっていたが。
「阿”アあッ!! 酒ッ、酒酒酒酒酒、酒? 酒! アルあるアル、アルコール!! おヴぉえええッ!!」
サイレントを殴り飛ばした春樹は奇声を上げながら頭を抱えて激しいヘッドバンキングをし、後に部屋の壁が陥没するほどヘッドバッドをして嘔吐を吐き散らかした。
「おヴぉええッ、オエッ・・・! ハァ・・・はぁ・・・ッ!!」
体内の多量失”酒”とアドレナリンの多量分泌、脳内麻薬の過剰摂取によって彼の神経系統はオーバーヒート寸前。
熱を冷まそうにもここには消毒用エタノールどころか水もない。
「おおッ兄弟よ、この旋律ではない! メタリカはバンド名でスタンド!! ジャンボピーマン美味い美味いッ!!」
ジャキッ
・・・いや、冷やすものならばある。
言語中枢異常によって支離滅裂なことを言いながらもリボルバーに弾丸を込め、銃口を自らのこめかみに当てて―――――
「ッ!!」
ズドン!!
・・・撃鉄で薬莢を蹴り上げた。
「ゲホッ、ゲホ! い、一体何が・・・・・って、な!?」
春樹の殴打から漸う立ち上がったサイレントは、目の前で仰向けに引っ繰り返っている彼に仰天する。
先程まであんなに執拗に自分を攻撃していた男の頭部がカチコチに”凍っていた”のだから無理もない。
「な、なんなんだ・・・本当に何なんだ、コイツは!?」
突然襲い掛かって執拗に攻撃をして来たと思ったら自分の頭を氷漬けにしている春樹に動揺しつつ、「今のうちに」とこの場から立ち去ることにした。
勿論、一応のトドメを刺すことも吝かではなかったが・・・彼女としてはこれ以上この男に関わり合いたくなかった。
ソロリそろりと体重移動させながら、その場を立ち去ろうとした・・・・・その時。
「・・・・・」
「!?」
氷結弾で自分の頭を撃った春樹がまるで絡繰り人形のように無言で起き上がり、また随分と機械的にカクンと琥珀色の目を向ける。
その余りの不気味さにサイレントは小さく「ひッ・・・!!」と悲鳴を上げ―――――
「~~~~~~~ッ!!」
―――其の場から逃げ出すようにブースターを命一杯吹かせた。
「(逃げないと、早く此処から・・・早くアイツから逃げないと!!)」
サイレント改め、Mは脅えていた。
この世に生まれ出でて数々の戦場を跋扈し、砲火を疾駆した百戦錬磨の生体兵器が”恐怖”していた。
背後から猛スピードで迫り来る頭部がカチコチに氷漬けとなった人間が正しい二足歩行で走ってくるのだ。そりゃあ怖い。
「オータムッ、掴まれ!!」
「え、M?!」
途中、先に逃げていたオータムを拾い更に速度を上げるMだが、其れを狂った春樹は距離を拡げる事無く猛追する。
「やっと追いついた!!」
「もう逃がしませんわ!!」
「覚悟しろッ、テロリスト!!」
そんな二人の前に漸く閃光弾を搔い潜って来たラウラと鈴、Mの攻撃から回復したセシリアが現れた。
「どけッ、クソガキども! 頼むから其処をどいてくれ!!」
「くッ! ビット!!」
進行ルートを塞ぐ三人にオータムはすがるような声を張り上げるすぐ隣で、Mはビットを展開するのだが・・・・・
「おいッ、どうしたM?! さっさとビットを出して戦わねぇか!!」
「・・・出来ない・・・ビットが、ビットが使えない!!」
「~~~ッ、ふざけんじゃねぇッ!!」
あろう事か、ビットは春樹のAICによって再起不能にされてしまっていたのだ。
前門の戦乙女に後門のキチガイ・・・二人は正に絶体絶命の状況である。
「ッ、こうなれば!!」
この状況を打開せんとMは窓から脱出を図った。
ガシャンとガラスを蹴破り、蒼空の彼方へ瞬時加速を命一杯吹かす。
「あぁッ、もう!!」
「このままだと逃げられてしまいますわ!」
「一体どうすれば・・・・・って―――――」
「「「一体何があった(んです/んだ)の、(清瀬)春樹(さん)ッ!!?」」」
空高く逃走する二人を見ながらラウラ達は歯嚙みをする前に眼前へ現れたズタボロカチコチの春樹に吃驚仰天。
「・・・・・」
けれど、一方の春樹はそんな三人などお構いなしに逃げるM達の方を見据えると左手首のコネクタへ右手首の制御ユニットを接続。その構えは、大抵の男子なら誰もが通る道と言えるほどのキャラクターの必殺技であった。
「・・・・・く・・・」
「「「く?」」」
「・・・クタばりやがれ・・・ッ」
そして、今にも息も耐えそうなか細い声と共に右手首へ接続された左コネクタを一気に下へスライドさせる。
ズビャァアアアアアアアアッ!!!
さすれば、右手首の射出口から凄まじい勢いで眩い紅白のレーザービームが放出された。
「ッ!!?」
「うッ、うぎゃぁあああああ!!?」
ドッゴォオオオオオ―――オオッン!!
空へ逃走し、やっとこさ一息吐けると思っていたオータムの断末魔と共に二人は春樹の放ったスペシウム光線(仮)に飲み込まれてしまうのであった。
「どうじゃ、ざまぁ・・・みや、がれや・・・!!」
侵入者二人が光線に飲み込まれた事を確認した春樹は張り詰めていた糸が切れたのか、前に倒れ込む。
「は、春樹!!」
そんな彼にラウラは猪の一番に駆け寄って抱き寄せる。
未だ現状が読み込めていない彼女はアタフタと動揺し、顔を青くして体を揺さぶった。
諤々とラウラの手に揺られながら春樹はこう一言。
「・・・・・・・・酒が、飲みたい・・・」
そう言葉を紡いだと同時に意識を手放すのであった。
・・・決め技の為の一話。
・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆