IS/Drinker   作:rainバレルーk

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第83話

 

 

 

「ア”ァ”ア”ッ、痛ェ! 痛ェよぉッ!!」

 

世界中各地に点在する数ある亡国企業(ファントム・タスク)のアジトにて。IS学園襲撃の実行犯であるオータムは現在、病床の上で苦しみ身悶えていた。

 

組織の中でも三本の指に入るであろう戦闘力を持った彼女が何故にこの様な状況下に陥っているのか。其れはやはり今回、オータムが遂行するはずだった任務が原因であろう。

 

今回、彼女は世界初の男性IS適正者である織斑 一夏の専用機『白式』の強奪の為に学園へと潜入。

其の当時、生徒会主導で行われていた王冠争奪戦の喧騒を利用してまんまと一夏を拘束。そして、秘密兵器である剥離剤(リムーバー)で一旦は白式の強奪に成功する。

 

されど何故に彼女達は一夏の専用機を狙ったのか。其れは一夏の駆る『白式』という機体は表向きは日本のIS企業である倉持技研が設計開発していた代物と認識されているが、本当は開発が頓挫して欠陥機として凍結されていたものをISの発明者である『篠ノ之 束』が貰い受けて完成させた機体なのである。

其の為、ISを重要視している者達にとっては喉から手が出る程の代物だ。

・・・まぁ、乗り手が”アレ”だが。

 

話を元に戻す。

白式をまんまと一夏から強奪したオータムだったが、彼女はある”ヘマ”をやらかした。

強奪した此処でさっさと逃走すれば良かったものをオータムは専用機なしの生身で抵抗する一夏へ対して更なる暴行を加え、彼を殺害しようとしたのである。

・・・この行為が自身の後の命運を大きく別ける事となるとは露も知らずに。

 

「許さねぇ・・・ヤツだけはッ、ヤツだけは絶対にぶっ殺してやる!! ア”ア”ァ”!!」

 

全身へ奔る激痛と共にエコーがかって脳内に響き渡るのは、「阿破破破ッ!」と笑う鉄仮面の奇天烈な笑い声。

一夏の心臓を抉りださんとアラクネの装甲脚を振り上げた其の時、突如として彼女の身体は後方へ吹き飛ばされた。

 

「阿破破ノ破ッ!!」

 

・・・と拷問部屋と変貌していた更衣室のドアを破って現れたのは、何処かの光の巨人を模した鉄仮面で表情を隠した不気味な男。其の男にオータムは文字通りボコボコにされた。

男は彼女の首を骨を圧し折る勢いで掴むと何の躊躇いもなく頭部を滅多打ちにする。

メキメキと実に生々しい嫌な音と共に歯や顎を砕かれ、頭蓋骨が陥没する程の殴打を喰らったオータムの顔は何倍にもパンパンに膨れ上がってしまう。

 

勿論、彼女もただ黙ってやられている訳ではない。アラクネの装甲脚の切先で男の脇腹を抉り、骨を確実に砕く事に成功する。

しかしてこの攻撃に苦しみ悶える事無く、男は更にオータムの頭蓋骨を砕く。あらゆる攻撃を受け止めるシールドである絶対防御や操縦者の人体を戦闘時の衝撃やGから護る筈の皮膜装甲(スキンバリアー)を通り抜けて骨を粉々に砕いた。

 

この執拗な男の攻撃に遂に耐えられなくなった彼女は、何故か自分を助けようとした一夏と男の諍いの一瞬の隙を突き、自身の専用機であるアラクネからISコアを引き抜いての自爆攻撃を慣行。漸く男の呪縛から逃げる事が出来た。

其の自爆の際、強奪した筈の白式を奪い返されるという失態をしてしまうが・・・四の五の言ってる場合ではない。

 

すぐにでもあの男から逃げたかったオータムは、救援として駆け付けたサイレント・ゼフィルスを駆るMに命からがら合流。

さっさと撤退をしようとしたのだが、其の背後から不気味な笑い声と共にあの鉄仮面が迫ってくるではないか。

 

そんな状況を何とか打破し、”狩る”側から”狩られる”側の恐怖を植え付けられつつもオータムはMに背負われて空へと脱出。

やっと落ち着けるかと思ったのだが・・・そんな二人を紅白色のおめでたい光が包み込んだ。

 

「・・・ア”ァッ・・・! 嫌だ、ヤダやだヤダヤダヤダッ、やめろ!! ヤメテくれェエ!! 熱いのはもう嫌だぁアアッ!! 助けてッ、助けてくれ!!」

 

「オータム!」

 

ISを纏っていなかったオータムは背中を中心に身体全体を焼かれ、瀕死間近の大火傷を負ってしまった。

其の為、その時の記憶がフラッシュバックしては時折彼女は酷く狼狽した。

 

「大丈夫・・・大丈夫よ、オータム。此処には貴女を傷付ける人間はいないわ」

 

「うぅッ・・・『スコール』・・・ッ!!」

 

そんな動揺するオータムの手を彼女の恋人で組織の実働部隊『モノクローム・アバター』を率いる女性幹部『スコール・ミューゼル』が優しく両手で包む。

その手と声に安らいだのか、オータムは静かな寝息を点て始めた。

 

「・・・・・M、いるんでしょう?」

 

「・・・・・」

 

眠るオータムを見ながらスコールはキィンと自動ドアを開いて入って来た無言のMへ声をかける。

 

「『ギデオン』・・・彼が二人目の男、『清瀬 春樹』に間違いないのね?」

 

「・・・あぁ」

 

スコールの問いにMは静かに短く答えた。

 

世界で男性IS適正者の二人目として発見された『清瀬 春樹』と言う男。

其の全貌は様々な方面へ手を伸ばしている組織でも把握する事に到っておらず、未だ素顔さえ掴めていなかった。

だが今回オータムの働きもあってか、ベルギーで突如として現れた謎のIS操縦者『ギデオン・ザ・ゼロ』と彼が同一人物だということが判明。

しかし、其れを突き止めたオータムは「どうせ雑魚だろ?」とそれ以上の詮索をやめてしまったのである。

なので、未だ彼の素顔はMがサイレントの内部カメラで捉えた鉄仮面の無骨な表情だけだ。

 

「・・・私達も他の人間の様に彼を見誤ったのね。”おまけ”と侮っていた清瀬 春樹という男を」

 

「・・・・・」

 

そう呟くスコールにMは何も答えない。其の代わりにギュッと両拳を握り緊め、キュッと悔しそうに下唇を噛んだ。

そして、聞こえるか聞こえないかの小さな舌打ちをした後に部屋から退出した。

 

「(・・・・・クソッ・・・クソ、クソクソ、クソッ!!)」ガン!

 

病室から出たMは少し歩いた後、彼女は通路の壁を思いっ切り素手で殴る。

 

「(また・・・またあの男に私は・・・・・)クソッ!!」

 

其の衝撃で手の裏から血が出るが、尚も御構い無しにMは更に何度も壁がヘコむまで殴った。

 

「(”姉さん”に会う前にヤツを・・・ヤツを私の手で・・・ッ!!)」

 

人知れず少女は噛んだ唇から血を滴らせながら、口をへの字に結んだ。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

≪阿”阿”阿羅羅ッイィ!!!≫

 

「うわ~、”はーくん”ってばライオンさんみたいだぁ~」

 

一方の同時刻。

此処ではない何処かに必ずあろう研究所(ラボ)で、ISの発明者である天才科学者『篠ノ之 束』はどう見ても隠し撮りであろう映像を超大型モニターで楽しんでいた。

 

「・・・また見ているのですか、束様?」

 

「あッ、『クーちゃん』!」

 

そんなヒーローショー楽しむ幼子のようなキラキラ輝く目でモニターを見つめる彼女へ、何やらドス紫色のゲル状な物体を皿へ乗せて持って来た流れる様な銀髪を有した少女が背後から声をかける。

其の容姿は、学園へ在籍する銀髪少女と酷似していた。

 

「うん! 何度見ても飽きないから不思議だよ~!」

 

「・・・そうですか。お食事の方はどうされますか、束様?」

 

「クーちゃんの作ってくれたものだもん、もちろんいただくよ~!」

 

そう言って束は彼女から皿に乗せられたゲル状の物体を受け取るとモシャりぐしゃリバリバリと食べた。

其の食べ物から聞こえてくるとは思えない咀嚼音を点てる束の隣でクーちゃんこと、『クロエ・クロニクル』がジッと細い糸目でモニター内で暴れ回る春樹を見る。

 

「んん? クーちゃんもはーくんに興味があるのかな~?」

 

「・・・はい、束様。清瀬 春樹様は、”あの子”の様に越界の瞳(ヴォ―ダン・オージェ)に完全適応されております。・・・それも”両目”ともです」

 

そう言ってクロエは”黒の眼球”に”金の瞳”で彩られた自分の瞳を撫でる。

 

「そうだよね~、はーくんってば意外とスゴイんだよね。なんでISを動かせるのか、束さんでも解んないしさ」

 

「そうなのですか?」

 

「YES YES! ほんと生意気な細胞だよ! でも、そんなところが・・・・・ムフフフ~♪」

 

「・・・束様、楽しそうですね」

 

何処か照れ臭そうに口元を抑えて笑う束にクロエは意外そうな表情を見せた。

何故ならば、篠ノ之 束という人物は今まで自身の妹である箒や親友である千冬、彼女の弟である一夏にしか興味を抱かなかった。

しかし、そんな彼女の前へ彗星の如く現れたのが春樹である。

 

最初は何故に一夏以外の男がISを駆る事が出来るのか理解できず、其の事から『銀の福音事件』時にはドサクサに紛れて彼を殺害しようと目論んでいた。

だが、そんな束の目論見を持ち前の爆発力と不思議な力(ガンダールヴ)で彼は覆したのだから、彼女が興味をそそられるには十分だ。

・・・ただ、いつもと違う点があった。

 

「ふふ~ん♪ また会いたいな・・・はーくんに・・・」

 

「束様・・・?」

 

其れは、束の目がまるで想い人でも思うかのようなシットリとした艶やかな目元をしていた点である。

クロエはそんな彼女の目を不思議そうに見るばかりであった。

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆
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