最近の清瀬 春樹こと、俺ぁ色々と”オカシイ”。
「自覚症状があるだけ、余計に性質が悪い」なんて芹沢さん(弟)から言われてしまう程、最近の俺はイカれとると思う。
◆◆◆
・・・俺がISを動かせる事が解り、こん学校に強制入学してからの四捨五入して約半年の間。俺は普通のヤツなら絶対合わないような面倒事に襲われて来た。
骨や筋肉が千切れるわなんて珍しゅうもなく、死にかけた事なんて数えるのも大儀になるくらいじゃ。
特に臨海学校で軍用ISの福音ちゃんとドンパチやった時は、流石の俺ももう駄目じゃと思うた。・・・まぁ、なんとか乗り切れたけど。
家族と引き離されて色々と苦しい日々じゃったけど・・・それでも俺ぁギリギリの所で踏ん張とった。
そねーな俺をいつも支えてくれとったのは、遥か古の時代から親しまれとる偉大な飲み物・・・そう、酒じゃ。アルコールじゃ。
酒の力で俺は”俺”を保っとった。理性を見失わずに未だ済んどとった。
・・・じゃけど、そんな安定状態は突如として終わりを告げたでよ。
『学園祭』。そりゃあ学生生活を送る上で、最も楽しいイベントの一つじゃろう。
各言う俺もこのイベントを楽しんどった。
IS学園言う所は世界各国から色んな人が集まっとる人種のサラダボウルじゃけん、色んな出店が出て楽しかったし、面白かった。”昔”みたいにボッチじゃなかったしな。
・・・じゃけど・・・じゃけど、あんのオータム糞BBA!!
人が折角、青春を謳歌しょーる時に襲撃かけて来るとか阿保なんかッ? ド阿呆なんかッ? ド阿呆なんじゃな糞BBA!!
御蔭で俺は頭部に酷いダメージを負うて、味覚障害になってしもうたんじゃで! どうしてくれるんなら、あんの糞女郎!! 糞織斑ッ!!
あ~ぁ・・・こねーな事なら織斑なんぞ助けるんじゃなかった。
ハンニバルの忠告なんて聞かんと、サファイア先輩の射的屋で獲った菓子をラウラちゃんとシャルロットと一緒にムシャムシャ喰やぁ良かったでよ。
頭部ダメージのせいで、俺はストレス発散の捌け口じゃった酒が不味く感じてしもうて飲めれんようなってしもうた。
日々の楽しみを奪われた俺ぁ前みたいに自室で引きこもる日々が来るかと思うとったんじゃけど・・・・・其処んところがギッチョン!!
アル中の禁断症状で相変わらず手は振るえて毎日が不安で堪らんが、眼のヴォーダン・オージェの御蔭かは知らんがいつも以上に頭は冴えわたとった。
しかも、ヒビの入りまくった心と反比例するように身体はいつもの異常治癒能力でピンピン。
じゃけぇ心と体のバランスがとれんで、悶々とする日々が多いうなった。
じゃけん健康診断から俺の担当医になってくれて、「もしかして裏でオキシジェンデストロイヤーとか作ってます?」みたいな話題で仲良うなった芹沢(兄)先生に『激情型うつ病』の初期症状と診断されてしもうた。
其れに俺は社会的病質者で、暴力型と支配型の複合型サイコパスの気があるとまで言われた。
まぁ、前者は素直に受け取るけど・・・後者は怪しいじゃろう。
俺は別にサイコパスじゃない。どちらかと言うと俺ぁ後天的なソシオパス。壬生さんの厨二的台詞で言わせると『善意が俺を育て、悪意が俺を歪にさせた』じゃ。
・・・八つ当たりも甚だしいのは自分でも良ー解っとる。
じゃけど、こーでも考えんと俺は俺じゃ無-なる気がしてきょーとくて堪らんよーなるんじゃ。仕方がなかろうがな。
・・・・・酒が飲めれんようなってからの楽しみと言えば、海外ドラマじゃ。
特に『メンタリスト』をファーストシーズンから見直し始めた。
ドラマの展開も『レッド・ジョン』の正体も解っとるが、其れは其れで面白い。
後は、コップ一杯に溜めたラウラちゃんの唾液で処方された抗鬱剤を一気飲みする事と彼女の柔肌に歯型を付ける事じゃろう。
「・・・っと・・・ちょっと聞いてるの、清瀬君?!」
・・・さて、そろそろ現実逃避も程々にこのエセ峰 不二子の相手をしてやろうか。
◆◆◆◆◆
とある放課後の生徒会室。
其処ではある男と女が対峙していた。
「・・・・・」
若いのに白髪が混じった男の方は眠気眼でボンヤリと天井を仰ぎ・・・
「ちょっとッ、聞いてるの清瀬君?!!」
自然色とは到底思えない綺麗な水色の髪の女の方は男に対し、見事な青筋を立てて怒鳴り上げていた。
「阿・・・? あぁ、聞いとるよ。・・・・・何じゃったっけ?」
「ッ、こ・・・この・・・!」
ボーっと呆ける春樹にワナワナと震えながら、部屋の主である楯無は何とか自分を抑えて溜息を「はぁー・・・ッ!!」と漏らす。
何故に彼女がこんなにも憤っているのか。其の原因は二人の間に置かれているテーブルの上の目安箱であろう。
箱の中は蓋が閉まられない程、ギチギチに手紙が詰まっている。
「苦情よ、苦情! これ全部、君への苦情なんだからね!!」
「阿~・・・そーなんか」
「「そーなんか」って・・・君ねぇ!! 君がボーデヴィッヒさんと、その・・・あの・・・ッ」
「阿? なんじゃーな、ハッキリ言えや」
「ッ、き・・・キスよ! ここ最近、いつでもどこでも彼女とキスばっかりしてるじゃないッ! その苦情なのよ、これは!!」
「ほ~ん・・・」
興味なさそうに感想を吐露しながら、箱の中を弄って何枚かのクレーム文を読む。
手紙の内容は、やれ破廉恥だの、やれ不潔だの、やれラウラさんが可哀そうだのといったもので、中には「くたばれ、清瀬 春樹!」や「私達のボーデヴィッヒさんを返せ、この■■■■■野郎!!」等と言ったドストレートな侮蔑の言葉まであった。
「別に良かろうがな。ラウラちゃんとの行為は互いに合意の上じゃし、遺伝子的にも俺と彼女は相性も良えし、其れにラウラちゃんの方が美味いし。この間、キス代わりにシャルロットの首を絞めてみたんじゃけど・・・変な高揚感以上に首へ鬱血痕が残ってしもうたけんな。毎日は出来ん」
「・・・ちょっとなんかとんでもない事が聞こえたけど!? デュノアさんの首を絞めたって何?! お姉さん、初耳なんだけどッ?!! 君はもう生徒会の一員なんだから、生徒の模範となる様にちゃんと自覚を持って―――
「・・・おい、待てやッ」
―――な、なによ?」
声を張る楯無に春樹の低く重たい声が割って入ると彼はゆっくりと立ち上がり、血走った琥珀色の眼を見開いて叫んだ。
「俺はもう生徒会の一員? 一員じゃと? オメェが勝手に俺を生徒会へ強制入会させたんじゃろうがなッ! フザけんじゃねぇでよ、このメスガキが!!」
「め、メスガキ!?」
予想だにしていなかった蔑称にフリーズしてしまう楯無だが、更に春樹はギャーギャーと罵詈雑言を吐き散らす。
其れに負けじと一瞬戸惑っていった彼女もキーキーと反論した。
この様に二人が言い争う原因となったのは、学園祭で話題となった『男子生徒争奪戦』が関係している。
IS学園学園祭終了後、春樹の予想していた通り、争奪戦と各部活に振れ込んだ筈の生徒会が学園に二人しかいない男子生徒を取り込む事になった。
しかし、この決定に春樹は不服であった。
自分が酷い外傷で床へ伏している時に勝手に籍を移動されたのだから尚余計であろう。
「なして俺が好きでもねぇ仕事をする為に生徒会に入らにゃあならんのじゃ?!!」
「それは前にも言ったでしょう! 君はもう自由に動ける身じゃないのッ。今月末にはキャノンボール・ファストがあるし、私達が織斑君と君を”ヤツら”から守ってあげないと!」
楯無の言った『ヤツら』とは、噂の過激派組織『亡国企業』の事だ。
学園祭で一夏の専用機奪取に失敗した彼女らは再び襲撃をかけて来るだろうと上層部は予想しており、其れが次の学園行事であるキャノンボール・ファストに決行されるのではないかと疑心暗鬼を起こしていた。
「守る? 守るじゃとッ? 守ってくれとりゃせんがな、実際!!」
「ッ、そ・・・それは・・・」
春樹の言葉に言い淀む楯無。
彼は学園祭襲撃事件の原因は学園内部にスパイが潜入している事と、生徒会が学園祭期間中に催した参加型演劇『シンデレラ』の影響で警備が手薄になった事だと考察。
学園長である轡木へ妥当な処分を求めたのだが・・・其れよりも様子が酷くおかしくなった春樹を彼は重要視し、楯無へ処分の代わりとして春樹の監視を命じたのである。
「そ、それでも私は轡木学園長から君達の護衛の任を預かっているの! だから私は君達二人を守る為にッ!」
「あー解った解った、皆まで言うな。この話何回目じゃ、まったく」
「なッ・・・!? 元はと言えば、君が始めたんじゃない!!」
話に飽きた春樹は突然話を切り上げ、懐の中から小さなボトルを取り出して中の処方薬を適当にジャラジャラ掌の上へ出す。・・・・・尋常ではない量を。
「清瀬君、飲み過ぎではありませんか?」
「これぐらいでないと不安で不安でしょうがないんですよ、布仏先輩」
「・・・それは薬物依存なのでは?」という虚の呟きを余所に春樹は彼女から紅茶を受け取り、其れで一気に薬を呷った。
「んグ・・・ング・・・あ~そうじゃ、会長」
「・・・何かしら清瀬君?」
「さっきの話じゃけど・・・ラウラちゃんとの情事は合意の上じゃし、キス以上の事はしとらん。じゃけぇ、これからも何時でも何処でも好きな時にラウラちゃんとキスすらぁ。楽しみが其れぐらいしかないけんのぉ」
「ッ、本当に・・・本当に君って云う人は・・・・・お姉さん、頭が痛くなるわ」
「年上ぶるな耳年増。碌な恋愛を・・・と言うか、初恋もまだじゃろうが。いつまで実の妹の盗撮動画をオカズにするつもりなんじゃ?」
ドゴォオオ―――オンッ!!
ブチリッと堪忍袋の緒が切れると同時に清き激情が春樹を生徒会室の窓から吹き飛ばしたのであった。
・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆