IS/Drinker   作:rainバレルーk

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第87話

 

 

 

「ラウラちゃん、ラウラちゃん」

 

清瀬 春樹の朝は早い。

まずは一人で寝ていた筈のベッドで、いつの間にか自分へ寄り添ってくぅくぅ寝息を点てる銀髪の少女の耳元へ優しく声をかける。

大方、またピッキングで部屋の鍵を抉じ開けたのだろう。

 

「ん・・・んぅ~・・・?」

 

「起きたか?」

 

「んふふッ・・・はるきぃ~・・・!」

 

「ありゃりゃ・・・」

 

だが寝惚けているのか、彼女は自分の額をぐりぐり春樹の胸板へ押し付けるばかり。

彼はそんな彼女に対し、一つの溜息と「・・・一応、警告したけんな」と呟く。

 

・・・ぢゅるり

「ッ、ひィあ!!?」

 

そして、春樹はラウラの耳の中へ自分の舌を否応なし突っ込んだ。

 

ぢゅる、ぢゅる、ぢゅるり

 

「ひッ、ぃイっ・・・やぁ・・・あ・・・ッ!」

 

流れる様な美しい銀髪を梳かし、いやらしい水音をワザと響かせながら彼はラウラの耳垢を舐り取るように中を蹂躙した後、「可愛えのぉ、ラウラちゃん」と優しく甘い声色と共に彼女の瞳を覗く。

 

「は、るきぃ・・・はるきィ・・・ッ!!」

 

赤い右眼と琥珀色の左眼がシットリと潤んでおり、其れがまるで宝石の様に感じられた。

 

「阿~ッもぉおおおおお! 可愛えなぁ、君はホントに・・・!」

 

堪らず春樹はラウラの薄紅色の唇へキスを何度も落とした後、「可愛え、可愛え」とすりすり頬擦りする。

この時、彼女の頭皮を嗅ぐ事を忘れない。

 

「ラウラちゃんはホントに可愛えなぁ~。大好きじゃで、愛しい愛しい銀髪黒兎ちゃん」

 

「ッ・・・ッ・・・ッ」

 

耳元でそんな甘ったるい言葉を囁かれるものだから、ラウラにしては堪ったものではない。

白い肌が赤く紅潮し、身体は硬直する。しかし、其れだけで春樹の手が止まる事はない。

洗濯機に入れた筈の彼の使用済みワイシャツ一枚しか着ていない彼女の全身を弄り、耳元で何度も「好き」や「愛してる」と繰り返す。

そしてまた戯れに何度も「ちうちう」とキスする。髪に、額に、瞼に、頬に。

 

「春樹ぃ、もっと・・・もっとぉ・・・!」

 

其の内、ラウラは春樹にへキスをせがむように彼の着ている作務衣を縋りついた。

 

「阿破破ッ・・・君ってホントに可愛えわぁ、ラウラちゃん」

 

春樹の方も興が乗って来たのか、琥珀色の輝きを両目から溢れ出させ、彼女の頬を優しく撫でまわす。

口から吐く熱の籠った息が互いの顔を覆う。

 

「・・・口、開けれる?」

 

「・・・・・んぁ」

 

恐る恐る開けたラウラの口の中へ春樹は自分の舌を刺し込んだ。

 

「んンッ、ん―――ッ・・・っ!!」

 

彼女の口の中へと押し込まれた春樹の長い舌はラウラの可愛らしい紅色の舌をこれでもかと撫で回した後、自分の口内へ誘い込むように彼女の舌を吸った。

 

「はぁ・・・はぁ・・・ッ、ラウラちゃん・・・ラウラちゃん・・・ッ!」

 

バードキスとディープキスを繰り返す内、遂に辛抱堪らなくなって来た春樹は切羽詰まった声色へ変化していく。

だが「一線を越えない」と心情の元、彼は何とか自信を抑えようとする。

 

「・・・・・別に良いぞ」

 

「・・・阿?」

 

「我慢しないで、私を求めてくれ・・・・・私はお前のモノだ、春樹」

 

「・・・・・・・・あぁっもう、君って人は!!」

 

「きゃっ!」

 

ラウラの無意識な誘惑にタガが外れた春樹は彼女へ覆い被さると、首筋に噛みついた後に先程よりももっと深いキスを交わす。

 

「ッ、んン―――――んっ!!?」

 

息も出来ない程に激しいキスの為、徐々にラウラの意識は遠のいて行き―――――

 

「あ・・・あぁ・・・っ・・・・・」

 

―――しまいに彼女は自らの意識を手放し、力なく身体をベッドへと沈ませた。

 

「ハァ、ハァ・・・あ、危なかったぁ~~~ッ」

 

度重なるラウラの早朝襲来に磨きのかかったキスで彼女の意識を刈取った事に成功した春樹は、焦燥感を漂わせながら胸を撫で下ろす。

 

ベッドを抜け出した彼は息を整えながらキッチンへと向かい、最近使わなくなったウィスキーグラスへ水を注ぐ。

そして、芹沢博士の経由で手に入れたアヘン系鎮静剤をラムネ菓子でも食べるかの如く貪りながら水を呷った。

 

「ちょっと、ラウラ! また部屋を抜け出して―――

「阿?」

―――ッ、え?」

 

砕かれた錠剤が食道を通るになって漸く部屋の扉が勢い良く開け放たれる。

春樹は自室の扉を開け放ったオレンジブロンドの人物へこう言い放った。「遅いで、シャルロット。何やっとんじゃ?」と。

 

「あと少しで俺ぁ一線を越える所じゃったんじゃぞ。ちゃんと見張っとれよ」

 

「それはラウラが部屋にバリケードを―――――って、そういう事じゃなくて! ラウラに何したのかな?!」

 

「聞く必要があるんか? キスで黙らせたに決まっとろうがな」

 

「な・・・!?」

 

さも当たり前の様に答える春樹にシャルロットは泡を食った後に「むむむっ!」と頬袋を膨らませた。

 

「・・・何じゃ、其の顔は? 羨ましいんか?」

 

「べ、別に羨ましくなん―――

「あっそ。なら、もう一回ラウラちゃんにしとこうかなぁ」

―――ッ、ダメ!!」

 

もう一度ラウラへ迫る彼の腕を咄嗟に掴むシャルロット。

そんな彼女に対し、春樹は先程までラウラへ向けていたものとは違う視線を突き刺す。

 

「・・・なら、誰にすればエエんじゃ?」

 

「そ、それは・・・・・」

 

シャルロットは幾分か押し黙った後、搾るような小さな声で「ぼ・・・ボクにすればいいんじゃないかな?」と呟いた。

それを聞いた春樹は「じゃぁ、口開けぇや」と彼女を促し、其れにシャルロットは顔を紅潮させながら渋々口を開ける。

 

じゅるりッ

「ん、んッ―――――ッ!!?」

 

其の開いた口へ春樹は自分の舌を押し込んだ。

 

「んっ・・・むちゅ・・・クちゃ、カチュ・・・ッ・・・」

「・・・・・・・・」

 

彼は片腕でシャルロットを抱き寄せ、残った片手で彼女の髪や頬を撫でながらただ黙って深いキスを落とす。

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・ッ」

 

口から垂れる銀の糸と共にキスを終えてみると、シャルロットは目をトロンとさせて息を切らしていた。

 

「大丈夫か?」

 

「う・・・うん。・・・ね、ねぇ・・・春樹? もう一回・・・しよ?」

 

目を潤ませ、彼の作務衣の裾を摘まみながら再びキスをせがむシャルロット。

彼女の様な美少女とキスするだけでも有り得ない事なのに、そんな少女がISを動かす以外は取り柄がないと学園生徒達から揶揄させる彼にキスを迫っているのだ。余程の理性的な男でないと、この様な誘惑に耐えられる筈がなかろう。

・・・・・だが。

 

「いや、ええわ」

 

「え・・・」

 

彼が最も成りたく無い筈の”屑野郎”に為りつつあった春樹は、シャルロットの誘いを無下にあしらったのである。

勿論、シャルロットは「ど・・・どうしてかな?」と疑問符を投げかけた。すると・・・

 

「そろそろ用意せんと朝飯に間に合わんよーなるし。其れに・・・」

 

「そ、それに?」

 

「やっぱり、ラウラちゃん方が・・・”美味い”けんな」

 

「ッ・・・最っ低!!」

バチィイイッン!!

 

春樹の発言に彼女は堪らず自身の専用機を部分展開させた手で彼の頭部を振り払ったのだった。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「清瀬、あんたその頬っぺたどうしたのよ?」

 

「阿?」

 

朝の生徒達でごった返す食堂。

其の隅の方で朝食を静かに食べる噂の男、春樹に声をかけて来たのは、中国の国家代表候補生である凰 鈴音だ。

そんな彼女が指摘したのは、手の形に赤く腫れ上がった春樹の左頬。

 

「あぁ、今朝方ちょっとな・・・皆まで言わんでもエエじゃろう?」

 

「えぇ。どーせあんたの事だから、あの二人に事に関してでしょう? 最近、サイテー具合に磨きをかけて来たわよね」

 

「あぁ、ありがとうよ」

 

「褒めてないわよ」

 

鈴はそう溜息を突きながら、皮肉を漏らして朝食をつつく彼の前へと座る。

 

「・・・んで、学園一の嫌われもんの俺の前に座るとは、どーいう要件じゃ? 物好きチャイナ娘。愛しの種豚野郎とはご一緒じゃないんで?」

 

「種豚って・・・あんた、サイテー具合と一緒に一夏嫌いにも磨きをかけてるわよね」

 

「あぁ、ここ最近は特にな。・・・で、相談かなんかがあるんじゃろう?」

 

「そう言う察しの良さが一夏にあれば、もうちょっと楽なんだけどね」

 

「まぁ、いいわ」と鈴は春樹に自分の相談事やらを話し始めた。

話の内容としては、キャノンボール・ファストが行われる今月二十七日は、なんとあの世界初の男性IS適正者で鈴の想い人である一夏の誕生日だと言う。其の彼に一体どんなプレゼントを贈れば良いのかというものだ。

其れを聞いた春樹は「ッチ!」と躊躇いのない舌打ちと苦虫を嚙み潰したような表情を晒すが、とりあえずは彼女の言う事を黙って聞く事にした。

 

「アイツももう高校生だし・・・男子ってどんなものを貰ったら喜ぶの?」

 

「・・・そー言うんは、中学ん時の同級生に聞きゃあ良かろうがな。あの豚にも一応、野郎の友人がおろーがな。そいつに聞けば?」

 

「いるにはいるけど・・・一夏の事で揶揄ってくるに決まってるし、気が進まないのよ」

 

「俺も気が進まんわ」と思いはすれど、春樹は「そうじゃなぁ~」と首を傾げる。

彼にしてみれば、汚物が人の皮をかぶって歩いている様な男に贈るプレゼントを考えるなど拷問でしかないが・・・学園内でも数少ない仲の良いクラスメイトの一人である彼女の相談事を無下にするのも些か気が引けた。

 

「プレゼントねぇ・・・あんまりパッとは出てこんなぁ」

 

「何よ。あんた、友達からプレゼントとか貰った事ないの?」

 

「ねぇよ。だって俺、友達なんぞ居らんもん。小・中の時はイジメに合よーて、ボッチじゃったし」

 

「え・・・」

 

発言に戸惑う鈴を余所に春樹はふと自分の左腕を見る。すると其処に巻かれている筈の腕時計がなかったのだ。

大方、早朝のゴタゴタで巻いてくるのを忘れたのだろう。

 

「・・・凰さんや、時計はどねーじゃろうか?」

 

「時計?」

 

「置時計じゃねぇで、腕に巻く腕時計じゃ。学生やら社会人には必須じゃろうて」

 

「時計・・・うん、良いわね! あんたにしちゃ、良い考えじゃない!」

 

「あぁッ、俺にしちゃあエエ考えじゃろう?・・・贈るんが、あの豚なんが気に食わんが」

 

ぶつくさ険しい顔で愚痴る春樹に鈴は「一夏に似合う腕時計ってどんなのがいいと思う」と問いかけていたので、彼は「其処まで知るか」と返す。

 

「まぁ、いいわ。ありがとうね、清瀬! 参考になったわ!」

 

「まぁ、礼はエエけん。俺ぁ喰い終わったけん、先に教室行っとるで」

 

「じゃあ、また教室でね!」と手を振る鈴に答えた春樹はスタスタ教室へと足を向ける。

 

「阿~ぁ・・・なぁんで、あねーにエエ女が織斑のような豚にゾッコンなんじゃろうか? 阿~・・・恨めしぃ、妬ましぃ。阿ぁ・・・殴りたいなぁ、絞めてやりたいなぁ!」

 

・・・其の時、春樹は鬱屈とした感情を撒き散らしながら四白眼をして口角を吊り上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆
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