IS/Drinker   作:rainバレルーk

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第95話

 

 

 

・・・・・・・・此の世界は”悪夢”じゃ。

孤独が俺の心を苛ませ、悪意が血を沸かせ、狂気が骨を軋ませる。

束の間の休息は綿飴の様に甘い・・・じゃけど、其れ以上の苦難と痛みが俺を蝕む。

『リスク・オブ・マイライフ』・・・なんて、『クロウ・ブルースト』は言っておったが、この世界での俺のリスクは余りにもデカ過ぎる。

 

確かに前の世界じゃ味わえないエエ思いもした。

俺みたいなボンクラにラウラちゃんやシャルロットのようなトビキリ上玉の美少女が思いを寄せ、前の世界じゃ飲む事も出来んかった一級品の酒を湯水みたいに飲めれた。

じゃけど・・・其れらぁを手に入れる為に流した血と砕いた骨はあまりにも多すぎるんじゃないか?

 

ISが動かせるからと言う理由で、俺の退屈でも平穏だった筈の人生はもう元には戻らん。

勝手に期待され、勝手に失望され、勝手に戦わされ、勝手に利用される。理不尽じゃろうがな。

 

・・・知っとる。世の中は理不尽じゃ。運が悪いと言えば其れ迄の事じゃ。

奪い奪われ、喰らい喰われるんが世の常じゃ。

そねーな事は何百、何千、何万年前から変わっとらん。

 

・・・解っとる。そんな事はもう何年も前の小学校の時から知っとるし、解っとる事じゃ。どんなに苦くても”其の道理”を飲み干して来た。

 

じゃけど・・・じゃけど、じゃけど・・・なして俺ばっかりこねーな目に合わにゃあならんのじゃッ? なして俺ばっかりが血を流す? 骨を砕かれる? 心を潰される?

”アイツ”ばかりが皆から理由もなく賞賛され、何のリスクもなしに力を得る事が出来るんなら?

そねーな事は簡単じゃ。アイツはこの世界にとってなくてはならない”主人公様”じゃからじゃ。

アイツが居らんかったら”物語”は始まらん。じゃけん、アイツは生まれながらにして全てを得る立ち位置におる。

俺が手を下さずともラウラちゃんの事もシャルロットの事も全部アイツが、あの野郎が解決しとる。

 

・・・・・なら俺は? じゃったら俺はなんなんじゃ?

俺は一体何の為にこねーな”異常な世界”に・・・”異”世界に居るんじゃ?

 

〈・・・喰われ、奪われる為にだ〉

 

・・・・・・・阿?

 

〈所詮、君は”彼”を引き立たせる為の存在でしかない〉

 

・・・・・なしてッ、なして俺がッ?

 

〈弱いからだ〉

 

・・・弱い?

 

〈あぁ。君も良く知っているように、何時の時代も弱者は存在する。強者が自らの欲を満たす為にね。だから、いじめは無くならない〉

 

・・・・・・・・

 

〈弱さは『悪』だ。君もよく知っているだろう。これまでの進化上、異端の種は絶滅して来た。生き残った者が常に勝者だ〉

 

勝者・・・

 

〈君はこの世界では異端者。いずれはこの世界の枠組みから落とされる。・・・其れは嫌だろう?〉

 

ッ・・・嫌じゃ、そんなん嫌じゃ!

どうすりゃエエんじゃ? どうすりゃ、俺は強うなれるんじゃ・・・”博士(せんせ)”ぇッ!!?

 

〈其れは簡単な事だ、ハルキ・・・『(わたし)』を受け入れろ〉

 

え・・・?

 

〈強くなりたいんだろう? 誰にも、誰からも脅かされない力が欲しいだろう? 其の”左手の甲”に刻まれた”紋章”以上の力が〉

 

・・・ッ・・・

 

〈さぁ・・・どうする?〉

 

・・・

・・・・・

・・・・・・・・なぁ、ハンニバル・レクター?

 

〈・・・何だね、ハルキ?〉

 

俺は・・・もう疲れたでよ。

 

〈あぁ・・・可哀想に、私の可愛い”半身”よ〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

「・・・せく・・・よせくん!・・・清瀬君!!」

「Mr.清瀬!!」

 

「ハァッッッ・・・・・!!」

 

アルベールの声と高良に激しく揺さぶられ、春樹はまるで息を吹き返したように大きく息を吸い込んだ。

意識を取り戻した彼がまず最初に思った事は、高良の顔が近い事と自分の身体が地に横たわっている事である。

 

「ありゃッ、高良さん・・・どした?」

 

「どうしたじゃないよ、清瀬君!!」

 

当然の事ながら春樹は自分が何故にVIP席の床へ仰向けで寝かせられている事を疑問符を投げ掛ける。・・・が、其れ処ではないといった具合に慌てた高良の声が部屋に響く。

どうやら春樹はテロリスト集団の急襲によるショックで気絶したのだと皆から思われていた。

実際は薬の飲み合わせによって一時的な意識不明に陥ったのだが・・・今は其の事で議論している場合ではない。

 

「早くここを離れないと! 轡木学園長ッ、避難ルートは?!」

 

「はいッ、皆さん此方です!」

 

「・・・・・」

 

「ッ、ちょっと!? 何をしているの、Mr.清瀬?!」

 

大慌ての一行を余所に、まるで他人事のように春樹は襲撃者が暴れている会場内を見て呆けていた。

其のあっけらかんとした姿にロゼンダもついつい声を荒らげてしまう。

 

「清瀬君、彼女達の事は心配だろうけども今は―――――ッ!?」

 

早く逃げる様に春樹へ促そうとした長谷川だったが・・・其の声を彼は何故か途中で飲み込んでしまった。

彼が何故に言葉を飲み込んでしまったのか。其れは―――――

 

「・・・学園長、長谷川さんに社長らぁを連れて先に行っといてくれませんか?」

 

「なんですって!?」

「何を言っているんだ、Mr.清瀬?!!」

 

春樹の言葉に信じられないような驚嘆の声を上げるデュノア夫妻だが、其の隣ではIS統合部組二人と轡木が「あぁッ、またか・・・」と半ば呆れたような表情を晒した。

 

「・・・行きましょうか、デュノア社長に夫人!」

 

「ここに居ては彼の邪魔になってしまいます。さ、お早く!」

 

「「えッ・・・え?」」

 

何が何だか解らずに連れ出される二人を背後に春樹はただ黙ってサイレント・ゼフィルスと六体のゴーレムⅡ達が暴れ回るアリーナ会場内を見渡す。

其の沈黙が彼を良く知る長谷川達にとってはとても酷く不気味に感じられた。

 

・・・其れを裏付ける様に一行が避難完了した五秒後。VIP席は地響き轟かせて大爆発を起こす。

其の爆発によって白煙立ち昇るVIP席跡からは、四つの金色の炎がボワッと揺らめいていた。

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆
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