IS/Drinker   作:rainバレルーk

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※はお好きなBGMで。



第97話

 

 

 

「なんて・・・美しいの・・・ッ」

 

二次形態移行へ至った琥珀を纏う春樹の姿を目視し、スコール・ミューゼルはそう言って感嘆の言葉を漏らす。

 

「余所見をしている暇が・・・あるのッ?!」

 

そんな彼女に対し、楯無は蛇腹剣の切先を其の金色の機体へ突き立てんと振う。

だが、スコールの纏う『黄金の夜明け(ゴールデン・ドーン)』は其の刃を機体を覆うプロミネンス・コートでいとも容易く跳ね返してしまった。

 

「おっと・・・私ったらついつい。あまりにも彼が美しかったから見惚れてしまっていたわ。まさか、彼がここまでの存在だったなんて・・・今まで私達が放って置いていた事が悔やまれるわ」

 

「ッ!」

 

楯無の攻撃を防いだスコールは御返しとばかりに両肩へ備わった炎の鞭、プロミネンスで彼女を打つ。其れを楯無は展開した水のヴェールで漸う防ぎ切る。

そうして、ジュゥウッと水が蒸発する音が幾度となく繰り返された。

 

「・・・フッ・・・フフフ・・・!」

 

「?」

 

と、二人の属性刃が交じり合う中。突如として楯無は不敵な笑みを浮かばせる。

其の突然の含み笑いに未だ力の全貌を見せていない流石のスコールも眉をひそめた。

 

「なにが可笑しいのかしら、レイディ? 確かに私との手合わせは貴方にとってとても良い経験でしょうね。でも、そろそろ決着を着けましょうか!」

 

そう言ってスコールは周囲へ散らばった火の粉を凝縮させ、サッカーボールサイズの火球を形成する。

しかし、そんな状況にも関わらず楯無はキッとした目付きで彼女を見通す。

 

「いいえ、そうじゃない・・・そうじゃないわ、スコール・ミューゼル。もう終わりなのは、あなた達の方よ、ファントム・タスク」

 

「・・・どういう意味かしら?」

 

「ただでさえファースト・シフトの彼は手に負えないってのに・・・それがセカンド・シフトですって? 冗談じゃないわ!!」

 

「!」

 

実を言うと楯無は焦っていた。

何故ならば、春樹は今までファースト・シフト状態で想像の斜め上を行く成果と衝撃を皆に振りまいて来た男なのだ。

そんな彼の纏うISがセカンド・シフトすればどうなるか・・・少しでも彼を知っている楯無は直感的にこう思った。

 

「”台無し”よ、もう”台無し”にしかならないわ。でも・・・不幸中の幸いって意外とあるものね」

 

「なに?」

 

「彼は・・・いえ、清瀬君は”今の所”は私達の味方よ。でも・・・あなた達はどうかしら? それと・・・・・ここってなんだか暑くない?」

「ッ!?」

ドボォオオ―――オオッン!

 

焦燥感と不安感が混ぜ込まれた冷汗をタラリと垂らしながら、楯無は防御と攻撃によって周囲へ撒き散らされた水蒸気内のナノマシンを発熱させる能力『清き激情(クリア・パッション)』を発動したのだった。

 

 

 

 

 

 

「・・・フフ・・・フフフッ・・・フハハハハハッ!」

 

威嚇の為の唸り声を上げ、両腕のレーザーブレードを構える春樹に対し、サイレント・ゼフィルスを駆るMは高らかに笑い声を上げる。

「なにが可笑しい?!!」と怒りに燃える箒が声を荒らげるが、そんな事などお構いなしに彼女は彼へ語り掛けていく。

 

「待っていた・・・待っていたぞ、ギデオン! 漸く貴様を引きずり出す事が出来た。貴様は今ここで私が・・・引導を渡してやる!!」

 

「ッ・・・うぉおおおおお!!」

 

高らかに宣戦布告を勧告するMに今まで跪いていた一夏が雪片の刃を下から上へと振り払う。

しかし、そんな単調な攻撃を受ける彼女ではない。

 

「フンッ・・・死にぞこない風情が。いつまでも鬱陶しいぞ!!」

 

ドグォオ!

「がハァッ!!?」

 

「一夏ァ!」

「貴様ァ!!」

 

「ゴーレム共ッ、そいつらを近づけさせるな。そいつは後で私が仕留める」

 

最低限の動作で雪片の切先を躱したMは容赦ない一撃で一夏をアリーナ壁際まで蹴り飛ばす。そして、邪魔者達を近づけさせない様に生き残ったゴーレムⅡ達を防御陣形に配備させた。

 

「さぁ・・・これで邪魔者はいない。私と貴様、一対一の―――――・・・・・んッ?」

 

「・・・・・」

 

彼女としては、ここでベルギーの夜に学園祭襲撃と続いた三度目の正直を決しようという時なのであるが・・・先程まで自分を見て唸っていた筈の彼がいつの間にか静かになっているではないか。

そんな彼の金眼四ツ目の視線を追ってゆくと、其処に居たのは未だ気を失っているセシリアであった。

 

「ッ、何所を見ている? 私を見ろッ、ギデオン!」

 

「・・・・・」

 

自分に注目する様に再度促すMだが、一方の春樹は彼女等眼中にないようで唯黙々と心配そうにセシリアを見つめるばかり。

 

「き・・・貴様ァ・・・ッ!!」

 

そんな彼の態度が気に入らないMはジャキリとスターブレーカーとビットの銃口を差し向け、容赦のないショッキングピンクの雨霰をゲリラ豪雨の如く降りしきらせた。

土砂降りのレーザー光線は鈍い音と土煙を上げ、春樹のいる場所に大きなクレーターを形成する。

 

「は、春樹・・・ッ!」

 

ハイパーセンサーで捉えた土煙の中で突っ立ったままの彼を案じ、シャルロットが叫ぶ。

其の悲痛な叫びをBGMに立ち上る土煙の前でニヒルな笑みを浮かべるM。・・・だが、すぐさま其の表情はへの字に曲げられる事となる。

 

 

単一能力(ワンオフ・アビリティ)起動。これより顕現へ移行します》

 

突然、白煙の中から聞こえて来たのはゴーレムⅡが発する機械音とは違う幼い少女の声。

そして、其の次に皆が目の当たりにしたのは、腕を十字に組んで”あのポーズ”を決める春樹の姿であった。

 

「あ・・・あの構えは、スペシウムこう―――――」

「皆ッ、伏せろ!!」

 

ある特撮シリーズを知っている簪は、其のポーズを見ただけで彼が何をしようとしているのかが理解できた。

其の十字を組んで放たれる光線の威力を知っているラウラ達はすぐさま身を屈ませた。

 

《単一能力『晴天極夜』発動》

シュワッチ!

ザビャァアアアアアアアアアアッ!!!

「なッ!!?」

 

独特の掛け声と共に十字へ組まれた腕から発射されたオレンジ色の贈り物は吸い込まれる様に一直線にMへと向かって突き進む。

無論、此れを受け取り拒否したい彼女は自身の前にシールドビットを並べ立てるのだが・・・如何せん、相手が悪過ぎた。

 

バグォオオオオオ―――オオッン!!

 

必殺技の贈り物は並べ立てたシールドビットを飲み込み、アリーナ外壁へ激突。其のまま腹を食い破る様にスタジアムの外まで続くトンネルを形成したのだった。

 

「う、うわぁあッ・・・!?」

 

身体を起こし、被害状況を確認したシャルロットは若干引き気味に声を上擦らせた。

何故ならば、光線が突き抜け通ったであろう道筋は灼熱のマグマの様にドロリドロリと液状に融けていたからである。

 

《ガッ・・・gPー・・・ッ・・・!》

 

・・・ついでに加えて言うと、そんなとんでもない光線の射線上に偶々配置された一体のゴーレムⅡが斜め半分になった状態で喘いでいた様はトラウマものであった。

 

「ハ、ハハッ・・・ハハハッ、フハハハハハ!! そうだ、そう来なくてはなッ、ギデオン!!」

 

間一髪の所で春樹の放った単一能力を回避したMは、何故だかご満悦にせせら笑った。

そして、今度は此方の番だと甲高いソニックブームを響かせながら、彼に向かって瞬時加速を合わせた銃剣突撃を行う。

 

「ハァアアアアアアア!!」

 

ッ!

 

春樹はMが自分の胸へ突き立てようとした銃剣を躱し、すかさず銃口と切先を下へ向けながら両手で抑えた。

 

ラウラちゃん・・・!

 

「ッ・・・解った!」

「「!?」」

 

其の時、彼はラウラと鈴へアイコンタクトを送る。

其れを理解したのか、ラウラは負傷した簪とシャルロットの首根っこを掴むと退却を急いだ。

 

「ラウラさんッ、私・・・まだ、戦える!」

 

「ダメだ!」

 

「どうしてさ?! 味方は多い方が!!」

 

首根っこを掴まれた簪とシャルロットは春樹に加勢しようと渋るが、そんな二人にラウラは悔しそうな表情と声色でこう言った。「私達がいると・・・ッ・・・春樹の邪魔になるのだ!」と。

 

「な、なんでそう言う事言うのさ?!!」

 

「見ただろう、さっきの春樹の単一能力を! 今のアイツはまだ力の調整が出来ていない。そんな状態の春樹に加勢しても、負傷した私達では巻き添えを喰らう事になるぞ!!」

 

「ッ・・・!」

 

ラウラの言葉を聞き、簪は思わず下唇を噛む。自分が情けなく思えてしまい、悔しくて仕方がなかった。

だが、其れはラウラやシャルロットとして同じ事。彼の足枷になってしまっている今の状況に歯を軋ませる。

 

《―――――ッ!!》

 

「「「!?」」」

 

そんな辛酸を舐める三人の前へ現れたのは、最後の一体と成り果てた鋼鉄の乙女。

 

ッ、皆!

 

「余所見をするな、ギデオン! 私を・・・私を見ろ!!」

 

ッチ・・・!

 

ゴーレムⅡの魔の手から三人を助けに行こうとする春樹だが、彼の征く手をMがバイザー越しでも理解できる程の笑みを浮かべて阻害する。

 

「っく、このぉお!」

 

《!》

 

ラウラは二人を守ろうと飛び出すと大型レールカノンの照準をゴーレムⅡへ差し向ける。

しかし、ゴーレムⅡはレールカノンが火を噴く前に近接ブレードを砲口へ突き刺し、意図的な暴発を引き起こした。

 

ボォオッン!

「ぐぁああ!!」

 

「ッ、ラウラ!? こっのぉ!!」

 

《ッ・・・!》

 

レールカノンの爆発の影響で吹き飛ばされたラウラを助けようとアサルトカノンを連射するシャルロット。

其の掃射攻撃が通じたのか、ゴーレムⅡは怯んで防御態勢をとった。

 

「簪ッ、今のうちにラウラを!!」

 

「う、うん!―――――ッ、危ないシャルロットさん!!」

 

「えッ―――

《ッ!!》

―――うわぁああ!!?」

 

ラウラに気を取られた隙を突かれ、シャルロットの腹部へゴーレムⅡのボディーブローが振るわれる。

彼女はこれを咄嗟にシールドで防ぐが、叩き込まれた拳の威力は表面を砕いてシャルロットを殴り飛ばすには十分であった。

 

《・・・ッ・・・!》

 

「・・・!」

 

「今度はお前の番だ」と言わんばかりに無機質なメインカメラを簪へ差し向けるゴーレムⅡ。

彼女は思わず小さな悲鳴を上げそうになるが、負けじとMの襲撃時に折られた薙刀の切先を差し向けた・・・其の時だった。

 

「・・・いつまでも調子に乗るんじゃないわよ!!」

「貰ったァアッ!!」

 

《ッ!?》

 

「ッ、篠ノ之さんに凰さん!」

 

ズシャリッ!とゴーレムⅡの背中へ三刀の斬撃が加えられる。

一刀目は鈴の青龍刀が横に薙ぎ払われ、二刀目と三刀目は箒によって縦へと撫で切られた。

 

「・・・えいッ」

《―――ッ!!?》

 

反撃に出ようと急速反転したゴーレムⅡだったが、其の隙を簪が見逃す事は無く、即座に下腹部へと薙刀の切先を突き刺す。

 

「さっきはよくもやってくれたわね!!」

「一夏の援護を邪魔しおって、このッこの!!」

「えいッ、えい!」

 

簪の攻撃でバランスを崩したゴーレムⅡを三人は一気に袋叩きにするのだが―――――

 

《・・・・・・・・ッ!!》

 

「「「ッ!?」」」

 

―――鋼鉄の乙女も流石に大人しく再起不能になるつもりはないらしく。内蔵されていたビーム兵器を使用し、三人を牽制した。

 

「まったく・・・しぶといわねッ、ホント嫌になるわ!」

「ヤツを倒さない限り、いつまで経っても一夏の仇が討てないではないか!!」

「・・・そんな場合じゃないと思う・・・」

 

《ッ―――――ッ!》

 

簪は箒の言葉にボソリとツッコミを入れつつ、警戒態勢をとる。

一方のゴーレムⅡも彼女達を仮の主人の邪魔をさせまいと立ちはだかり、アリーナのシールドバリアーを破壊する程の威力を持ったビーム砲を構えた。

 

「「「・・・ッ・・・」」」

 

《・・・・・》

 

互いが互いを睨み抜き、膠着状態へ陥る。

けれど、そんな重苦しい空気はある意外な人物によって崩されたのだった。

 

「・・・・・バーン」

 

《ッ!!?》

 

「「「え?!」」」

 

三人の周りを円を描いて飛ぶ燕の様にショッキングピンクの流星が駆け抜け、更に箒と鈴が付けたゴーレムⅡの”背後”にある斬傷を更に深く抉った。

 

 

「ッ、セシリア!!」

 

鈴が振り返ってみれば、其処には指を折り曲げて片手で小さくピストルを作ったブルーティアーズを駆る彼女が意識を取り戻していたのである。

 

「すいません、遅くなりましたわ! さぁッ、皆さん!!」

 

「「「おう!!」」」

 

土壇場の土壇場で自分の納得のいく偏向射撃(フレキシブル)を放つことが出来たセシリアは追撃の号令をかける。

其の彼女の声に反応し、三人は一気に攻勢へと打って出た。

 

「チェストォオオオオオッ!!」

「ヤアアアアア!!」

「はぁあああああ・・・ッ!」

 

《ッ!!》

 

ザギィイッン・・・と鈍くも響く金属音がゴーレムⅡの体表へ木魂する。

 

《・・・・・ッ!!》

 

『『『なッ!!?』』』

 

しかし、流石はタフな機体か。

此の攻撃が決定打になることはなくゴーレムⅡは周囲の全員をマルチロックし、一斉射を放たんと砲塔を構えた。

 

「させるか!」

「大人しくしておいてよ!!」

 

ズオォオッン!!

《ッ―――!!?》

 

されど勝機は彼女等を選んだようである。

ゴーレムⅡの攻撃から何とか漸う回復を果たしたラウラとシャルロットの銃撃が鋼鉄の乙女顔面へクリティカルヒット。ゴーレムⅡは顔から煙を上げて身体を仰け反らせた。

 

「さて・・・それじゃあ、トドメは」

 

「うむッ、任せたぞ・・・・・・・・一夏!!」

 

「ウォオオオオオオオオ―――――ッ!!」

 

そして、最後のトドメはMによってアリーナの壁際へと蹴り飛ばされていた一夏が受け持つ事と相成った。

 

彼は瞬時加速で一気にゴーレムⅡとの距離を詰め、大きく振りかぶった雪片弐型を振う。

勿論、刀身は白式の単一能力である『零落白夜』のエネルギー波が纏われている。

 

「これで・・・終わりだァアア!!」

 

《!!!??》

 

ズシャリッ!!・・・と上から下へと振るわれた刃は確実にゴーレムⅡを捉え、其の身体を斜め一線に両断。

其のまま鋼鉄の戦乙女は断末魔を上げる間もなく地へと伏したのであった。

 

「ハァ・・・ハァ・・・次は・・・アイツを・・・ッ・・・!」

 

「「一夏!!」」

 

最後の一体であるゴーレムⅡを切り裂いた事で区切りがついたのか。気力に体力が追い付かず、一夏は糸の切れた人形の様にバランスを崩して跪く。

そんな彼を支える箒と鈴であったが、ラウラやセシリアを始めとした四人は此処よりも苛烈な激闘が行われている方向へ目を向けるのだった。

 

ヴ”ぇろ”ぉおお阿”ア”ァあ”ぁああアアアッ!!

ハァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆
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