東方逆廻語《トウホウサカシマガタリ》 作:八雲藍好き好きチュッチュ
「うぅ・・・お腹空いたよぉ・・・」
唐傘をさしてとぼとぼ歩く水色の髪色の少女。
「さっきの女の人、驚くどころか炎で攻撃してきたし・・・もうあの竹林には近づかないでおこう・・・」
ふらふらと人気の無い脇道に入り、道からは影になった大樹の木陰に倒れ込む。
「・・・この草、食べられるかな・・・この葉っぱも青々しくて・・・」
葛藤混じりに草を掴み、情けなさからじわりと浮かんだ涙が零れ、ゆっくりと口元に運ぶ。
「こらっ! 何してるの!?」
覚悟を決めた刹那、伸ばされた手によって草を掴んだ手が止められる。
「あぅ・・・」
「座れる? ・・・ほら、これ食べなさい」
涙の滲んだ視線の先には、紅白を基調にした巫女服の少女。差し出されたのは、おにぎり。
「ゆっくり食べなさい、一気に食べると戻しちゃうから」
「えぐっ・・・おいひい・・・」
「あぁもう、泣き止みなさいな、しょっぱくなるわよ?」
赤と青の目から零れ続ける涙を、霊夢は優しく拭いてあげるのだった。
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「おにぎりありがとう、わちきは多々良小傘、唐傘の付喪神」
「博麗霊夢、博麗の巫女よ・・・ところで、何でまた草なんか食べようとしてたの?」
おにぎりを食べ終え、泣き止んだ小傘と、霊夢が互いに自己紹介をすると、霊夢が早速尋ねる。
「その・・・わちき、人の驚きの感情が主食だから、少し前まではひもじい思いをすることなんて無かったんだけど・・・」
「けど?」
「最近は、驚かすと『宝探しの邪魔だ!』って怒りの感情ばっかり向けられて・・・それに、里での働き口も無くて、普通のご飯も食べられなくて・・・」
「成程ねぇ・・・」
霊夢は少し思案し、懐から一枚の札を取り出して額に翳す。
「早苗、今何処? ・・・まだウチね、丁度良いわ、一度戻るから待ってて」
札を懐に戻し、小傘に背中を向けてしゃがむ。
「乗って」
「う、うん」
小傘はおずおずと霊夢の背中に乗り、弱々しく掴まる。
「少し揺れるけど、我慢して」
霊夢は地を蹴り、揺らさないように、しかし速度を出して、博麗神社に向かって飛び立った。
ーーーーーーー
「あ、あの・・・」
小傘は戸惑っていた。
幻想郷で知らない者はいない、あの博麗の巫女に、ご飯を食べさせてもらい、お風呂に入れられて、寝間着であろうゆったりとした浴衣を着せられ、今は髪を梳かれている。
「小傘ちゃんは気にしないで良いんですよ」
早苗が優しく言うも、小傘は不安そうに浴衣の裾を握る。
「こうやって困ってる妖怪を助けてあげるのも、博麗の巫女のお仕事だそうですよ?」
「ほ、ホントに?」
「ん、まぁね・・・紫が言うには、博麗の巫女っていうのは、『人と妖怪との中立の立場』だから、一方に肩入れしちゃ駄目なんだけど・・・困る人間を助けるのは良くて、困る妖怪を助けるのが駄目なのは変でしょう?」
「霊夢さん、やっぱり優しいですね」
「うるさいわよ、早苗・・・よし、終わり。今日はうちに泊まっていきなさい」
「あ、私もお泊まりしたいです!」
「諏訪子は兎も角、神奈子が煩いんじゃないの?」
「実はもうお泊まりするって言ってあります!」
「あのねぇ・・・」
繰り広げられる会話に、不安と緊張で握り締めていた手は、いつの間にか緩んでいた。
緩んだ手に引っ張られるように、小傘の表情も自然と緩み、笑みが零れる。
「あ、小傘ちゃん、やっと笑顔になりましたね」
「えっ・・・」
「早苗はずっと心配してたのよ、小傘がずっと泣きそうな顔だ、って」
ふと、付喪神になってから・・・それ以前も含めても、ここまで思われた事はあっただろうかと、そんな事が脳裏をよぎる。
つぅ、と涙が零れ、思わず手を目元に伸ばし、自分が泣いていることに気が付いた。
「小傘ちゃん・・・」
早苗が近付き、胸元に小傘を抱き寄せ、優しく頭を撫でる。
「今日までの悲しい思い出は、泣いて忘れちゃいましょう。泣いてる顔は私が隠してあげますから」
「うっ・・・あっ・・・あああああぁぁぁぁぁあ゛ぁぁあ゛ぁあ゛ぁぁっっっっ!!!! ごわ゛がっだっ!!! あ゛の゛ま゛ま゛じんじゃうがどお゛も゛っだ!!!! うあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「もう大丈夫ですよ・・・」
霊夢は一瞬、早苗と小傘に、過去の藍と自分を重ね、きっと泣き疲れて眠るだろうな、と考え、布団を敷きにそっと客間へと向かった。
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小傘が眠ってから、霊夢と早苗は向かい合って座り、今後の小傘の処遇をどうするか話をしていた。
「うちに置いてもいいけど、私相手だと畏まっちゃうでしょ、あの子。早苗のとこに置いたげなさい」
「収穫祭のお手伝いだけでも十二分に助かりますから、私は大丈夫ですよ。さっき神奈子様と諏訪子様に事情をお話したら許可を下さいましたし」
「そう・・・日が暮れるまでまだ少しあるわね、もう少し
霊夢は立ち上がり、外へと向かう。
「分かりました、おゆはんの用意して待ってますから、遅くならないようにしてくださいね?」
「ん、ありがと」
背中に投げ掛けられた言葉に霊夢は軽く応え、改めて神社を後にした。
───Stage2 CLEAR