転生したら天津飯だった件   作:せまし

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思ったよりも時間がかかりそうなので悟空戦は前半後半で別けました。
今回正直自分でもよくわかってないので後から直すかもしれません。


10.天津飯、決勝に挑む

鶴仙人はイラだっていた。

今回の天下一武道会に参加した自分の弟子、チャオズが亀仙人の弟子であるクリリンに負けたからである。

第一試合では天津飯が勝ったのだが、あいつはこの大会の後に鶴仙流を出て行くと宣った大馬鹿者だ。

亀仙人の弟子にその実力差を見せつけ勝利しようとも、嬉しさは半減であった。

 

…三つの目をギラつかせ世界一の殺し屋になると野心に満ちていた少年が、いつからか生意気にも一端の武道家として古巣から飛び出そうとしている。

師匠としては祝福してやるべきなのだろうが…残念ながら、鶴仙人にそこまでの器の大きさはなかった。

 

それだけに、準決勝の第五試合は鶴仙人に衝撃を与えた。

おそらく…もしかすると、自分と亀仙人を超えるであろう実力の老人が(これ程の実力者が近年まで無名だったとは!)、勝利を捨ててまで若い世代に未来を託したのだ。

それも、相手はあの大馬鹿者。

これには鶴仙人も武道家としてほんの少しではあるが、心を動かされた。

…その老人の正体が因縁の亀仙人であることを見破っていれば、絶対にあり得ない事ではあったのだが…

 

 

 

 

準決勝の第六試合…悟空対クリリンの戦いは、クリリンの善戦もむなしく結果的には悟空の底知れない実力に手も足も出ず終わってしまった。

 

「お疲れクリリン…ここまできたら、悟空は本当に人間なのか自信がなくなってくるな…」

 

「ははは…ヤムチャさん。それ冗談になってませんよ…」

 

試合が終わり武舞台裏に戻ってきたクリリンにヤムチャが声をかける。

勝った悟空は、そのまま決勝に望むみたいだ。

 

「天さん。大丈夫?」

 

「あ、あぁ…」

 

俺はチャオズの声に一応答える。

決勝戦前だというのに、俺の頭は今だにさっきの武天老師様との試合の事を考えていた。

 

試合直後は思わず頭を下げてしまったが…正直俺は、まだ武天老師さまの言いたかった事を理解しているとは言えないだろう。

『思いきって飛んでみることじゃ』

彼の言葉が思い起こされる。だが…

 

「天津飯選手!武舞台までお願いします!」

 

アナウンサーの声で現実に引き戻された。

これから行われるのは悟空との決勝戦だ。

集中しなくては。

 

 

武舞台の中央で、悟空が笑みを浮かべ俺を待ち構えていた。

 

「いよいよおめえと戦えるな、天津飯!」

 

悟空は俺と戦うことにわくわくしているようだ。

悟空にここまで認めて貰えていると思うと、光栄なのだが…

 

「以前会った時は…てんで勝てるとは思えなかったが…」

 

この第22回天下一武道会決勝戦は原作の天津飯が唯一悟空に勝った試合。

この試合に勝てねば、俺は本物の天津飯を超える事は出来ないだろう……絶対に勝たねばならない。

 

 

「それではただいまより!第22回天下一武道会決勝試合を始めたいと思います!よろしいですね!!」

 

しんとした空気の中、俺と悟空は互いに構える。

 

「始めッ!!」

 

アナウンサーの声と共に悟空が跳び出した。

真っ直ぐに突っ込んできた悟空の拳を受け止め蹴りを返す。

悟空は俺の脚に尻尾を絡め1回転し、俺の顎にパンチを入れてきた。

急かさず後ろに飛んで威力を流す。

そのままの勢いで俺は宙に飛び上がった。

それを追って悟空が飛び蹴りを仕掛ける。

空中で直線的な動きしか出来ない悟空に、俺は1枚目の手札を切った。

 

「どどん波!!」

 

俺のどどん波は悟空に直撃し、悟空は武舞台に叩きつけられた。

だが、大したダメージは与えられなかったようで次は悟空が攻撃に出る。

超高速で左右にフットワークをして、まるで消えたかのように移動する悟空。

 

「そこだっ!!」

 

だが俺の三つの目は悟空の姿を捉える事が出来た。

悟空を武舞台の壁に殴り飛ばし追撃にラッシュを加える。

今度は効いたのか、少しぐったりした悟空。

俺は二つ目の手札を切ることにした。

 

「とっておきの技をおみまいしてやろう」

 

「な、なにをする気だ!?」

 

「あ、あの技をするつもりだ!」

 

周りが様々な反応をするなか、俺は悟空を高く放り投げた。

この技に必要なのはスピードとパワー、そして…恥を捨てる心だ。

 

「排球拳!いくわよーーーっ!!」

 

「はあーーーーい♥」

 

自分で自分に返事をし、俺は落下する悟空をバレーボールのように追撃し更に打ち上げる。

 

「ワン!!」

 

「ツー!!」

 

「アターーーーック!!!」

 

受け身をとる間もなく悟空が背中からバンッと武舞台に叩きつけられた。

並の武道家なら死んでしまうだろう威力だったと自負している。

だが……悟空は普通に飛び起きた。

 

「ばっ馬鹿なッ!!」

 

武舞台の上からでも鶴仙人の驚く声が聞こえる。

 

「おめえホントにつええな。オラたまげちゃった」

 

「…それはこっちのセリフだ。ケロッとした顔しやがって」

 

「おめえなら力を満々に出しても死なねえから、オラ思いっきりやれそうだ!」

 

「恐ろしいことを言いやがる…」

 

そう…悟空は今まで試合用のパワーと言って力をセーブして戦っていたのである。

俺の天下一武道会決勝はここからが本番だ。

 

「こっからは戦闘用のパワーでやる!だからおめえも本気でこいよな!」

 

「な、なに?」

 

「いくぞ!戦闘開始!」

 

もう待てないといった勢いで悟空が仕掛けてくる。

顔面を狙う1発はなんとか防いだが、その後のラッシュをもろにくらい飛び蹴りで蹴り飛ばされた。

その直後、悟空は吹き飛んだ俺の真下に回り込み俺を空中へと蹴り上げる。

空中に吹き飛ばされながら俺は、先程の悟空の言葉を思い出していた。

 

『おめえも本気でこいよな!』と悟空は言っていた。

確かに手札や切り札的な技はまだ残しているが、俺は肉弾戦は本気で戦っていた筈だ。

 

「か…め…は…め…」

 

下から悟空の声が聞こえてきた。

俺は思考を中断し来るであろうかめはめ波に備え体内の気を集める。

 

「……やめた!」

 

それに気付いたのか、悟空はかめはめ波を中断し…俺は武舞台に降り立った。

 

「うく…」

 

「へっへ~今のは効いただろ?」

 

「あぁ…だが…」

 

俺は自分では先程の疑問の答えを見つけることが出来ず、思いきって悟空に聞いてみることにした。

 

「悟空…お前はさっき、俺に本気でこいと言ったが…あれはどういう意味だ?もし俺を高く評価しているのなら申し訳ないが…俺は格闘戦に関してはずっと本気だった」

 

その質問に、悟空はきょとんと答えた。

 

「なに言ってんだ?天津飯もオラみたいに試合用と戦闘用でパワーを別けてたんじゃねえのか?だっておめえ、全然余裕そうじゃねえか」

 

「な…なんだと…?」

 

悟空の言葉に驚愕する。

俺が余裕そうだと?何を言ってるんだ?

俺はヤムチャとの試合ですら慎重に戦っていたんだ。

 

「オラ、おめえと初めてカリン塔で会った時に、こいつは強ええ奴だって思ったんだ。だから天津飯と戦うのがすっげー楽しみでさ。全力で戦えるってわくわくするだろ?」

 

 

「おめえは強ええ奴と全力で戦うのは楽しみじゃねえんか?天津飯は、なんで戦ってんだ?」

 

 

その言葉に、俺は声を失った。

俺が戦う理由は…天津飯の強さを証明する為…これから現れるだろう強敵達に勝つ為…ドラゴンボールという作品の中で一番強くなる為…

だが…その中に、俺の個人的な感情は入っているのだろうか?

 

天津飯としてこの世界に来たあの日、俺は確かにわくわくしていた筈だ。

だが、いつの間にかそんな気持ちは消えてしまっていた。

今の俺に戦いを楽しむ余裕はない。

あるのはどれだけ上手く戦えるか。

どれだけ本物の天津飯を超えられるか。

どれだけ強くなれるかだ。

戦う相手に対し尊敬の念はあっても…わくわくはしない。

 

 

「天津飯」

 

いつの間に着替えたのか、試合を武舞台の壁側で見ていた武天老師さまが俺に声をかけた。

 

「天津飯。わしにもわかったぞい。おぬしが力をセーブしていたのが。試合中、おぬしは上手く戦うようにしておった。相手を殺さず、圧倒的な実力差を見せ付けず…相手に合わせて手加減しておったんじゃ。だが…」

 

「オレにだって、自分が手加減されていた事くらいわかったぞ。情けない話だがな」

 

そう言ってヤムチャが鼻をすする。

 

「おそらくおぬしは悟空と同じように、全力を出して相手を殺さんようにする為に手加減しておった。じゃが、自覚していた悟空と違いおぬしはそれを自覚していなかった」

 

 

以前、カリン様にも似たような事を言われた気がする。

 

だが…その時の俺は、悟空に会ってその実力を目の当たりし、強くなる事に必死でその事を気にしていなかった。

焦っていたのだ。

天津飯となってから過去の記憶がなかった俺は、自分がどのように成長し強くなってきたのかわからなかった。

自分の自信や実力の起源となる経験や思い出が無かったのだ。

 

突然ドラゴンボールの世界に来て、自分は強いに決まってる!なんて自信満々で思える一般人がいるだろうか?

いや、いない。

 

それでも…確実に強敵がこの先現れる事を知っていた。

だから…手加減してても勝てるような、自分より弱い相手に対して気にしていられなかった。

 

 

「自信の無さから己の実力を正確に計りかね、相手を殺さぬように無意識に手加減して戦い続けた結果、おぬしは自分の実力を見誤った」

 

「だが、今おぬしと戦っておる悟空は、おぬしの全力の攻撃でも耐えるじゃろう。何の遠慮もせず、思いっきり戦えるのじゃ」

 

「戦いを楽しむだけのバトルジャンキーになれと言ってる訳ではないぞ。じゃが、少しも戦いを楽しめんようでは武道家としては二流じゃ」

 

武天老師さまは静かに、心に響くような声で語る。

 

「楽しめ天津飯!今はなにも気にせず、なににも遠慮せず、思いきって飛んでみよ。せっかく全力で戦える相手がおるんじゃ。互いを高め合える、ライバルと呼べる相手が。そんな相手はそうそう見つからん。わしのなんか中途半端禿げのちょび髭ジジイじゃった!」

 

「ふんっ」

 

武天老師さまの言葉に鶴仙人が反応するが、それを無視して話を続ける。

 

「悟空もクリリンもヤムチャもよく聞けよ。おぬし達の世界の中心はおぬし達じゃ。自分を型にはめるな。自由な発想を持て。なにものにも縛られるな。これからはおぬし達若い世代が未来を切り開くんじゃ!」

 

 

 

なにものにも縛られず…全力で楽しめ…か。

流石、武天老師さまだ。

俺の中でがんじがらめになっていた何かが、スッとほどけた気がする。

 

本物の天津飯を超えられるかとか…これから現れるだろう強敵達に勝つ為とか…原作の天津飯が唯一悟空に勝った試合とか…ドラゴンボールという作品の中で一番強くなる為とか…

そういうのは、今は置いておこう。

 

 

今考えるのは、出しきれていなかった俺の全力で、孫悟空と戦う。

勝ち負けなんか二の次だ。

 

 

「へへっ。楽しそうだな、天津飯」

 

「…ああ。俺は今…わくわくしている。全力を出すことに…悟空、お前と全力で戦うことにな!」

 

「オラもだ!」

 

俺達は互いに跳び出し激突した。

 

 




自分で思っていたより強くなっていた主人公。
カリン塔で2年半も修行したのは伊達じゃない!
でも始めて全力を出すうえに経験値に勝る悟空に勝ち目はあるのか!?

ドラゴンボール超は教えてくれた。
作中最強になる為に、独走トップ状態で走り続ける必要はないんだ。
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