転生したら天津飯だった件   作:せまし

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11.天津飯、孫悟空と戦う

「すっすごい!まったくものすごい攻防戦!あ、あまりにも凄まじいスピードに我々の眼ではその動きにはとてもついてはいけません!!」

 

アナウンサーの言葉通り、悟空と天津飯の動きに完全についていける観客は、武舞台裏で見ている数人の達人を持ってしても1人も居なかった。

 

「残像拳か!!」

 

突然悟空が分身し、天津飯の手が止まる。

 

「俺は残像拳を見破る事に関しては自信があるぞ!そこだ!!」

 

そう言って天津飯は己の上にいる残像に蹴りを放つ。

だが、それは空振りに終わった。

 

「なに!?」

 

「残念でしたーっ!」

 

残像に攻撃し隙を見せた天津飯に悟空が跳びかかる。

しかし、それも空振りに終わる。

 

「え!?」

 

「引っ掛かったな!裏の裏だ!」

 

無防備になった悟空に天津飯の手刀が迫る。

…が、それもまた空振った。

 

「!!!」

 

「裏の裏のそのまた裏だ!!」

 

悟空が天津飯の頭を上から蹴りつける。

だが!またしても空振りに終わる。

 

「!!?」

 

「裏の裏のそのまた裏の…裏だ!!」

 

天津飯の拳が今度こそ悟空をとらえる。

だが、咄嗟に悟空も蹴りを放ち両者は互いに吹き飛ばされた。

 

「「「!!!」」」

 

凄まじいまでの残像拳の応酬に、達人たちは声を失った。

吹き飛び倒れていた両者が、同時に立ち上がる。

 

「やるなぁ!まさか裏の裏のそのまた裏まで読まれるなんてよ」

 

「お前もだ…あの状況で反撃してくるとはな」

 

互いに相手から目を離さず、笑みを浮かべる二人。

そして…二人は同時に観客の前から姿をした。

 

 

二人が地を蹴る音と、時おり聞こえる打撃音だけが天下一武道会会場に響きわたる。

誰も彼もが息を呑んでこの戦いの行方を見守った。

 

「…く、クリリン。二人の動きが…見えるか?」

 

「…た…たまに…どっちかの攻撃が当たった時に…一瞬だけ…」

 

「…オレも似たようなもんだな…」

 

ヤムチャとクリリンがそんな事を言っている中、辛うじて二人の動きを捉えることが出来ていたのは亀仙人と鶴仙人の二人だけだった。

 

「ふふ…二人とも、楽しそうな顔をしおって…」

 

「チッ…鼻につく顔で戦いおる…」

 

 

延々と二人の高速で繰り出し合わされる攻防戦が続き、そろそろ日も暮れようというところで、戦況に変化が起こる。

打撃音と共に吹き飛ばされた天津飯が武舞台の壁に激突し、そのまま倒れたのだ。

 

「おーーっと!?天津飯選手!ダウン!ダウンですーーっ!!」

 

「天さん!!」

 

アナウンサーとチャオズが叫んだ。

アナウンサーがカウントに入り、それをファイブまで数えたところで天津飯が起き上がった。

だが、明らかに息があがっており体力が無くなっている。

いつの間にか武舞台中央に現れていた悟空も同じ様に息があがっていたが、天津飯に比べると軽い方だ。

 

「悟空に比べ天津飯の方はだいぶ息があがってますね…」

 

「おそらく…天津飯は今回初めて全力を出したので、常にパワーを全開で戦っておったんじゃ。それに比べて悟空の奴は力を抜く時は抜き、入れる時は入れるといった風にペース配分が上手かった。経験値の差がもろに出たのう…」

 

 

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ…やるな、悟空…」

 

「天津飯もな…オラ、こんな長いこと打ち合ったのは初めてだぞ…」

 

「俺だってそうだ…しかし…このまま戦っては俺の負けは確定的だ」

 

こうして戦ってみてわかったのは、全力の俺の攻撃は体格差もあってか悟空のそれよりも威力はあるようなのだが、スピードは悟空の方が1枚上手ということだ。

それに、長いこと打ち合ってみて俺が悟空よりも体力の配分が下手なこともわかった。

まぁ…そこは俺が今回初めて全力を出したので、俺が自身の限界をわからなかった事も関係あるのだが…

なんにせよ俺が負けそうだということだ。

 

実は…先ほどの攻防戦の最中、俺の手札の中でも特に強力な太陽拳を使えば場外を狙えるシーンはいくつかあった。

だが…あまりにも戦いが楽しすぎて使えなかったのだ。

悟空との戦いは俺に様々なモノを与えてくれた。

戦いが楽しいという感情、相手の動きを読み切った時の達成感、相手の力量に感服し、次はどんな攻撃が来るんだというわくわく感…その他戦闘経験値や動きのコツ等、自分が戦っている中で成長していたのがよくわかった。

そんな戦いを太陽拳からの場外で終わらせるのはもったいなさすぎる。

勝ち負けなど気にせず、どうせならおのれの全力のパワーを出し切って戦いたい。

 

あ、でも気功砲は無しだ。

天津飯の代名詞とも言うべき気功砲なのだが、実はカリン塔での修行中にカリン様に

 

「この技はわしが良いと言うまで使ってはならん」

 

と言われているのだ。

まぁ気功砲は威力が高過ぎるし生命力を使う技だしと、正直自信の無かった頃の俺には扱いきれなかった技だ。

使い方を知っているだけで、修練もそれほど行っていない。

いくら自分の強さを自覚したとは言え、流石にそんな練習不足で不安定な状態の技をここで使うのは俺も悟空も危険だ。

 

気功砲ではなく、今の俺が『悟空』と全力でぶつかり合える技…見よう見まねの技だが、これほど相応しい技は他にないだろう。

 

「悟空。俺は次の技に、俺の全ての力を出しきるつもりだ」

 

天津飯の言葉に武舞台裏にいるヤムチャ、クリリン、亀仙人にチャオズの四人も各々の反応を見せる。

 

「天津飯の奴…どんな技を使うつもりだ…?」

 

「鶴仙流の極秘奥義とかですかね?」

 

「………」

 

「天さん…まさか…」

 

天津飯が武舞台の左側に陣取り腰を落とし構えた。

 

「お前も乗ってきてくれることを願うぜ…」

 

そう言って両の掌を揃え前に突き出す。

 

「「え!?」」

 

「まさか!!」

 

「良かった!気功砲じゃない!」

 

「なんでその技なんじゃ!!」

 

会場のざわめきに武舞台裏の四人と鶴仙人の声が混じる。

そして…天津飯の意思を汲み取った悟空も、武舞台の右側に陣取り同じ様に構えた。

互いにニヤリと笑い、気を高める。

 

 

「「か…」」

 

「「め…」」

 

「「は…」」

 

「「め…」」

 

 

「「波ーーーーーーーッ!!!」」

 

 

互いの手からかめはめ波が射ち出され、武舞台中央で激突する。

だが、かめはめ波は爆発することなく武舞台中央に気の塊を作り拮抗した。

 

「か、かめはめ波で押し合いしてる…」

 

「それほどまでに高エネルギーが圧縮されたかめはめ波同士だったというわけじゃ…」

 

クリリンの呟きに亀仙人が答える。

 

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「ぐっ…うぎぎ…」

 

最初は拮抗して中央に留まっていたかめはめ波の激突部分だったが、少しずつ悟空のいる方へ押されていく。

 

「ど…どうやらパワーは俺の方に分があるようだな!」

 

「ま…負けるもん…か…」

 

悟空も押し返そうと力を込めるが、単純なパワーなら体力が落ちていても俺の方が上。

このまま場外まで押し出す!

 

 

「ぐぎ…ぎぎぎ…」

 

かめはめ波に押し出され武舞台を削りながら後ろに後退する悟空。

だが、かめはめ波が自分の手元まで届いた瞬間、悟空が動いた。

 

「だあっ!!」

 

「「「「!!!!」」」」

 

バチッと爆音を響かせ悟空がかめはめ波を上空へ流したのだ。

遮るものが無くなったかめはめ波はそのまま空高く昇っていく。

そしてその光景に会場全員の目が奪われた時、悟空が地を蹴り跳び出した。

 

「だあぁぁぁっ!!」

 

悟空が迫って来るのがわかる。

だが、今の俺はかめはめ波を撃った後で無防備だ。

このまま激突されれば俺の負けは必至。

 

「どどん波!!」

 

なんとか動いた右腕でどどん波を放つ。

残りカスみたいな気では威力なんぞたかが知れてるが、一瞬でも悟空を止められたなら御の字だ。

俺はその間に体勢を立て直し、迫る悟空を向かい打つ。

 

「だりゃあああ!!」

 

「うおおおおお!!」

 

悟空の跳び蹴りが俺の腹にめり込み、俺の突き出した拳が悟空の頬にぶち込まれた。

互いに後ろへたたらを踏み、 同時に倒れる。

 

「りょ、両者ノックアウト!なんと!2大会連続のダブルノックダウーーーン!!」

 

アナウンサーの声に会場がわく。

 

「カウントを取ります!ワン!」

 

「立て!悟空ーーっ!!」

 

「ツー!」

 

「孫くーーーんっ!!」

 

「スリー!」

 

「どっちも立てーーっ!」

 

「フォー!」

 

「負けるな悟空ーー!」

 

「ファイブ!」

 

「天さん頑張れーーっ!!」

 

「シックス!」

 

「今度こそ勝つんだ!悟空!!」

 

「セブン!」

 

「起きんか悟空!!」

 

「エイト!」

 

「立て!天津飯!!」

 

「ナイン!」

 

 

 

朦朧とした意識の中で、カウントと声援が聞こえる。

その中に、いくつか聞いたことのある声が混ざっていた。

立たなくては。

だが、俺の身体は言うことを聞かない。

薄れゆく意識の中、俺の前で何かが動いた。

そいつは…小さな…それでいて大きな背中で俺を見下ろした。

…ははっ。それでこそ…

 

 

「ゆ…優勝したもんねーっ!」

 

フラフラの悟空が立ち上がり、笑いながらピースサインをする。

本来必要のないポーズだったのだが、前回大会を知る者にとっては違う意味を持っていた。

 

「…テン!!天津飯選手立ち上がれません!!立ったのは孫悟空選手!…前回大会の雪辱を晴らし…ついに!孫悟空選手!!天下一武道会!優勝ーーーーーっ!!!」

 

こうして…大歓声と拍手の中、第22回天下一武道会は無事終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…天津飯に会って行かんのか?」

 

「…ふん。奴は元々この大会が終われば鶴仙流から抜けるつもりだったんじゃ。本来なら負けた時点でわしが殺してやるところなんじゃが…どうせこのままくたばるだろうしの。金の出ん殺しは面倒なだけじゃ」

 

「…なんじゃお前。気持ち悪いのぉ…」

 

鶴仙人と亀仙人の怒鳴り声が人の少なくなった天下一武道会会場に響く。

戦いは終わり殆どの観客は帰り、残ったのは大会運営陣と鶴・亀両仙人の関係者達だ。

そして…先の決勝で初めて己の全力を出し、体力を使い果たした天津飯は…今だ倒れたまま武道会場内の医務室の中だ。

今日中に起きることはないだろう。

 

「行くぞ、チャオズ」

 

「…はい」

 

その後、鶴仙人は大会に来ていた数人の弟子とチャオズを連れ、天下一武道会をあとにした。

 

「さよなら天さん…」

 

 

 

 

 

亀仙人御一行も武道会場から出て帰路につく。

そんな中でウーロンにプーアル、ブルマとクリリンに囲まれる悟空。

 

「やったじゃねえか悟空!」

 

「おめでとうございます!」

 

「やっと孫くんが優勝したって感じだったけどねぇ」

 

「ははは。けどやっぱ天津飯は強え奴だったなぁ」

 

「それに勝ったお前はどんだけ強いんだか…あれ?悟空、お前荷物は?」

 

クリリンの指摘で、自分の荷物を忘れてきたことに気付いた悟空。

 

「あ、いけねぇ!じいちゃんのドラゴンボールと如意棒!」

 

「お前くたくただろ?いいや、オレが取ってきてやるよ」

 

「すまねえ、サンキュー」

 

そう言って武道会場に戻るクリリン。

そんな会話をしている後ろで、ウミガメにヤムチャ、それにランチと亀仙人が寝ている天津飯の今後を考えていた。

 

「…鶴仙人さん達、行ってしまいましたね…」

 

「天津飯の奴はどうしますか?このまま1人置いていくというのも…」

 

「お、オレは一緒にカメハウスに連れていくべきだと思うぜ!!」

 

「そうじゃな。これから行く宛があるかもわからんし…一応今晩は近くのホテルに泊まって、明日1日天津飯が起きるのを待ってからそのあとのことを考えようかの…」

 

話も一段落ついたその時

 

「ぎゃあ~~~っ!!」

 

「「「!!?」」」

 

「な、なんじゃ!?」

 

「クリリンの声だ!」

 

突然の叫び声に、武道会場に戻る一行。

目に飛び込んできたのは倒れたアナウンサーとクリリンの姿だった。

倒れていたアナウンサーが声を絞り出す。

 

「ば…化け物だ…そいつが…そこにあった袋から変な球と…武道会の名簿を奪って…逃げた…」

 

「ど…ドラゴンボールと名簿…?」

 

アナウンサーの言葉に理解が追い付かない亀仙人達。

そんな中、クリリンに駆け寄っていた悟空がポツリと呟いた。

 

「し…死んでる…」

 

「ななっ、なに!?」

 

「く…クリリンが……殺された…!!」

 




第22回天下一武道会決着!
原作より強くなった故に、原作のような決着を望まなかった主人公。
結果負けてしまいましたが。

そして…さらばチャオズ…ピッコロ大魔王編にお前の出番は無い!
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