転生したら天津飯だった件   作:せまし

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お待たせしました。
今回は勢いだけ感がすごいです。(いつもか)


評価、感想、お気に入り登録等ありがとうございます。


17.天津飯、間に合う

中の都…キングキャッスルで繰り広げられる悟空とピッコロ大魔王の闘いは熾烈を極めた。

悟空が蹴りを入れればピッコロ大魔王も蹴り返し、ピッコロ大魔王が肘を入れれば悟空が殴り返す。

その凄まじい戦いを、既にドラムに電子ジャーを破壊されていたヤムチャはただ見守る事しか出来なかった。

 

 

「いいぞ!僅かに悟空がおしている!」

 

戦いは続き…ヤムチャの目にもその差がハッキリと出始めた。

悟空が少しずつピッコロ大魔王を追い詰める。

だが、このまま黙ってやられるピッコロ大魔王ではなかった。

 

「ゆ…ゆるさん…ゆるさんぞ…!」

 

怒りに震えるピッコロ大魔王。

 

「!?」

 

「ど…どうするつもりだ!?」

 

「おおおお…お…お…!!」

 

ピッコロ大魔王の気が集まり膨れ上がる。

 

「や、やべぇぞ…すげぇパワーを集中してる!」

 

パワーに気圧される悟空の隙をつき、ピッコロ大魔王は悟空の手から戦いの中で機動力を補っていた如意棒を弾き飛ばした。

 

「あっ!!しまった!!」

 

悟空の手を離れ転がっていく如意棒。

 

「棒はなくなったぞ!!」

 

「いかん!素早い動きが!!」

 

ヤムチャが叫ぶ。

 

「終わりだーーーっ!!」

 

ヴォッ!!

 

ピッコロ大魔王の放った爆力魔波の光が、キングキャッスルを包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は少し遡る。

 

 

「誰が乗れないだって?」

 

ランチがドヤ顔でそう言った。

だが、俺が乗れなかったのにランチが筋斗雲に乗れるはずがない。

……まて、何か重大なことを忘れてるような…

 

「ちょっと待ってな」

 

そう言って紙に何かを書き出すランチ。

一体なんなんだ?

 

「な、なんと…そんなことが…」

 

ランチを見つめていたカリン様が言葉を漏らした。

彼女の心を読んだのだろうか。

 

「…よし!」

 

何かを書き終えたランチが、俺の目の前まで来る。

 

「天津飯、これで貸し一つな」

 

「な、なに?」

 

突然の言葉に俺が困惑する中…ランチは自分の髪で自分の鼻をくすぐり大きなくしゃみをした。

……あっ!!

 

「はっくしゅっ!!」

 

金色だったランチの髪が、一瞬にして紺色に変わる。

 

「あ…あらら~?」

 

先ほどまで目付きが鋭くいかにも悪人面だった女性はその面影をなくし、優しい瞳の穏やかな女性が俺の前に現れた。

 

そう言えばそうだった。

ランチはくしゃみで人格が変わるんだ。

実際に会ってからは金髪の方しか見ていなかったのと、1ヶ月の精神と時の部屋での地獄の生活のせいですっかり忘れていた。

 

「げげ!?誰だお前!?どうなってんだ!?」

 

ヤジロベーが驚くのも無理はない…だが、説明はめんどくさいので無視だ。

カリン様は先ほど心を読んでいたので表面上は平気そうだが、それでも驚いているのがわかる。

 

「あ、あなたって天下一武道会に出ていた…」

 

「て、天津飯だ」

 

キョロキョロと辺りを見回していたランチが俺の姿に反応した。

どうやらランチ…こっちの時はランチさんでいいか。

ランチさんの方も天下一武道会で俺の試合を見てくれていたらしい。

 

見た感じだと金髪のランチと紺髪のランチさんは完全に別人格の様で、記憶の共有はしていないようだ。

 

なら…恐らく先ほどランチが書いていたのは、ランチさんに向けた手紙だったのだろう。

自分で自分に手紙というか指示書を出すとはめんどくさい生活してるんだな…

俺がそんな事を考えている間にランチさんはその手紙を読むと、俺の顔と手紙を何度も見直した。

……一体何が書かれているんだ…

 

「…私がこの雲に乗って天津飯さんと一緒にピッコロ大魔王という人の所に行けば良いんですね?」

 

「あぁ…そうしてくれると助かる」

 

危険だなんだと色々思うところはあるが、今は時間が惜しい。

途中まで乗せて貰いあとは舞空術で向かえば良いだろう。

 

「一応ある程度の距離まで行けたらあなたはカメハウスに戻ってもらって構わない。危険だし…ブルマさん達とも会いたいだろう」

 

「え…あ、そうですね。でも、まずは天津飯さんをお送りします」

 

思ったより力のこもった言葉でそう返される。

この状態の彼女とは面識は無いに等しいのだが…原作では何かあっただろうか?

 

その後、ランチさんはカリン様に簡単な筋斗雲の動かし方を習い雲に乗り込む。

俺は筋斗雲に身体が突き抜けたまま彼女の肩を掴んだ。

そして、彼女に負担が掛からないように舞空術を使う。

これは車に自転車を引っ張らせてスピードを出す様なもので…筋斗雲に引っ張られる事で軽い舞空術で超スピードを出せる。

…まぁ、詳しい話は置いといて早速キングキャッスルに向かおう。

 

「頼んだぞランチ、天津飯!」

 

「死ぬなよ!」

 

「はい!」

 

「そ、それじゃぁ行きます!」

 

「よろしくお願いします!」

 

カリン様とヤジロベーの激励を受け、俺とランチさんはカリン塔を飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして時は戻り…

 

筋斗雲の超スピードで移動した俺は、途中の攻撃の余波が届かないだろう安全な位置で筋斗雲から下りランチさんを置いて舞空術でキングキャッスルに乗り込んだ。

 

俺が上空から悟空やヤムチャの姿を発見した時、ピッコロ大魔王はパワーを集中して放つ寸前だった。

今こそ原作のピッコロ大魔王戦で、唯一天津飯が役に立った瞬間だ。

しかし…これが原作通り俺と悟空だけなら、最悪悟空だけを舞空術で救い出せたのだが…今回は近くにヤムチャがいる。

流石に今の俺でもこの一瞬で離れた二人を同時に舞空術で助けるのは不可能だ…どうする!?

 

 

「終わりだーーーっ!!」

 

ヴォッ!!

 

ピッコロ大魔王の放った爆力魔波の光が、キングキャッスルを包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

「気功砲ーーーーッ!!」

 

ザンッ!!

 

ピッコロ大魔王の放った爆力魔波は、上からの衝撃波で押し潰されその威力を地面へと流された。

ピッコロ大魔王の手前に四角い大穴があき、その中で押し込められた気が爆発する。

目の前で大爆発が起こるが、それはピッコロ大魔王の放つ爆力魔波本来の威力とは遠くかけ離れていた。

 

「な…なな…な…」

 

突然の攻撃で自身の最大の技が潰され、驚愕のあまり声もでないピッコロ大魔王。

爆発の余波で吹き飛ばされてはいたが無事であった悟空とヤムチャは、この結果を生み出した存在を上空で発見した。

 

「「天津飯!!」」

 

「…ぶ…無事か…二人とも…」

 

こうして…天津飯は、ついにピッコロ大魔王と対峙した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「き…貴様ら…」

 

怒りでわなわなと震えるピッコロ大魔王と向き合う三人の男。

1人は自分の恐れる魔封波を使える武道家…1人は自分と互角以上の格闘戦を繰り広げた小僧…そして新たに現れた自分の最大の技を潰した武道家…

ハッキリ言って、ピッコロ大魔王にとって今の状況は絶体絶命のピンチであった。

これが誰か二人だけなら、片方を人質に取って形勢逆転を狙えたのだが…相手は三人。

互いが互いをフォローしあって人質を取ろうにも簡単にはいくまい。

にらみ合いの時間が続くなか、ピッコロ大魔王はふと空に目線を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

正直言ってさっきの気功砲はまぐれとしか言いようがない。

気功砲自体を打つのが久しぶりなのに、あんなギリギリの状況で神様を殺さない為にピッコロ大魔王には直撃させないで放たれた気弾だけを狙い打つ。

流石にすべてのパワーをかき消す事は出来なかったが、あの結果は万々歳だ。

もう二度と出来る気がしないしな。

悟空もヤムチャも無事、キングキャッスルは吹き飛んだが原作のように中の都が全て焼け野はらになることもなかった。

…ひとつ問題があるとすれば、ここに来て早々体力を使い果たしてしまったことか。

今は何とか余裕が有るように振る舞っているが、激しい格闘戦になると途端にボロが出るだろう。

どういうわけかピッコロ大魔王はヤムチャにも注意を払っている。

今の3対1の状況なら、悟空を主軸に戦えば負けることはないだろう。

 

悟空とヤムチャに合図を送る。

いよいよ最後の攻撃を仕掛ける…その時、ピッコロ大魔王の瞳が俺たちの後方の空に泳いだ。

その顔に邪悪な笑みが広がる。

 

「悟空!!」

 

「だりゃぁーっ!!」

 

悪い予感におそわれ俺は悟空に向かって叫んだ。

その声と共に悟空がピッコロ大魔王に向かって飛び出す

だが、ピッコロ大魔王は気弾で土煙をあげ悟空の目をくらませ俺たちを無視して俺たちの後方の空へ向かって飛び上がった。

 

「な、なんだ!?」

 

ヤムチャの叫び声が響く中、俺は後ろを振り返る。

視界に写るのは上空にたたずむ黄色い雲と、そこに向かって猛スピードで突っ込むピッコロ大魔王の姿。

あの黄色い雲は…っ!!

 

「ランチさん!!」

 

俺は残る全ての力を出して空へと飛び上がる。

先ほどの爆発音が気になったのか…こちらの様子を見に来たのであろうランチさんと彼女の乗る筋斗雲。

それに向かうピッコロ大魔王…恐らく彼女を人質にするつもりだろう。

 

「はーっはっはっはっ!!」

 

俺は全速力でピッコロ大魔王を追いかけるが、スタートの差を埋められない。

ピッコロ大魔王の笑い声が驚いた表情のまま固まったランチさんに近づいていく。

クソッ!!このままじゃ間に合わない!!

 

 

「波ーーーっ!!」

 

突然、後ろからかめはめ波が飛び出して俺の横をすり抜けた。

かめはめ波は筋斗雲に手が届く寸前のピッコロ大魔王に向かう。

かめはめ波でピッコロ大魔王の動きを止めるつもりか?

だが、あの程度の威力のかめはめ波ではピッコロ大魔王にはなんの効果もない!!

俺がそう思ったその時、かめはめ波はピッコロ大魔王をするりと避けてランチさんの乗る筋斗雲を四散させた。

突如足場を失った事で重力に引かれて下に向かって落ちるランチさん。

それは、今にも掴む寸前だったピッコロ大魔王の手を空振らせた。

 

「今だ天津飯!!」

 

かめはめ波を撃ったのであろうヤムチャが叫ぶ。

 

「おのれぇ!!」

 

ピッコロ大魔王が唸り空中で方向転換するも、俺が先にランチさんを抱き掴む事が出来た。

 

「天津飯さん!」

 

「喋るなッ!!」

 

ランチさんが声をあげるがそれに答える暇はない。

人質を奪おうと迫り来るピッコロ大魔王。

俺はランチさんを抱き締めたままピッコロ大魔王に飛び出した時の勢いをのせてオーバーヘッドキックを叩き込んだ。

地面に向かって叩き落とされるピッコロ大魔王。

 

「ぐぬっ!!」

 

「悟空ーーーーっ!!」

 

俺は下にいるであろう悟空に向かって叫んだ。

 

「オラの全てを…この拳にかける!!」

 

気弾を放ち爆発音と共に弾丸のように空に上がる悟空。

空中で体制を立て直したピッコロ大魔王がそれを迎えうつ。

 

「弾き返してくれるわっ!!」

 

「つらぬけーーーーーっ!!」

 

「はーーーーーーーーっ!!!!!」

 

 

 

ズンッ

 

悟空の小さな身体が、ピッコロ大魔王に突き刺さり…その身体に大きな穴をあけた。

 

 

 

「や…やった!!」

 

見上げるヤムチャが呟く。

 

「勝った…か…勝ったぞーーーっ!!」

 

悟空が拳を握り涙を流しながら叫んだ。

俺も、ランチさんを抱えたまま彼らのもとへ向かう。

 

…上空で死の間際にピッコロ大魔王が卵を吐いたのを三つ目の瞳が捉えたが、見なかった事にした。

流石に生まれたばかりのマジュニアを狙うことはしない。

ピッコロさんは今後の大事な仲間(予定)だしな。

 

 

 

こうして…何とか俺たちは、ピッコロ大魔王に勝利することが出来たのだった。

 




長かった…やっと終わったピッコロ大魔王戦。

ヤムチャは魔封波の練習でかめはめ波の操縦が上手くなりました。

次はピッコロ大魔王編エピローグだけどまた時間かかりそうです…気長にお待ち下さいませ。

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