ダンジョンに欲望を求めるのは間違っているだろうか   作:REDBOX

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家族と紐神とステータス

 ギルさんと出会ってから数日過ぎ、僕は商人の馬車に乗ってオラリオに到着した。

 

「おい、ベル。着いたぞ、ここがオラリオだ」

 

「ありがとうございます。わざわざ馬車でオラリオにまで送っていただいて」

 

 この人は、とある衣類を専門に取り扱っている商人さんで、ギルさんと別れたその日にモンスターに襲われているところで出会った人です。でも、その時のモンスターたちは、なぜか僕を見た瞬間慌てて逃げ出しましたが.

 

「気にするなや、こっちは命を救ってくれただけでなく、俺の商品に理解もしてくれてんだ。むしろこっちがお礼をしたいぐらいだ」

 

「そんな、モンスターの時は何もしてませんし。それにおじさんの商品はとても素晴らしいものばかりじゃないですか」

 

「そう言ってくれるのは、お前ぐらいだよ。そうだ、これから冒険者になるお前に俺の商品の中から1つ好きなのをやるよ」

 

「良いんですか! じゃあ、これを貰いますね」

 

 そう言って、僕はおじさんから商品を貰う。

 

「俺はしばらくこの町で商売するから、何かあったら来な。いろいろサービスしてやるぜ」

 

「はい、その時はお世話になります」

 

 そうして、おじさんと別れた僕は、おじさんから貰った“パンツ”を鞄の中に入れて、冒険者の手続きをするためにギルドのある塔バベルに向かう。

 

 

 

 ギルドに入り、いろんな種族の人たちとすれ違いながら、僕は窓口に向かい受付の人の話しかけた。

 

「あの、すみません」

 

「はい、なんでしょうか?」

 

 その女の人は綺麗な笑みを浮かべて僕に答えてくれる。村にはこんな綺麗な人はいなかったから、少し緊張してしまう。

 

「ぼ、冒険者の登録をしたいのですが…………」

 

「冒険者? 君が?」

 

 その女の人は僕をジロジロと眺めてくる。

 

「冒険者っていうのは、君が考えているよりずっと危険な職業なんだよ? 当然命の危険だってあるし、ずっとLvが上がらないことだってあるんだよ。それでもいいの?」

 

「はい! もちろんです! 覚悟ならあります!」

 

 僕はハッキリとそう言う。

 

「そこまで言うなら止めないけど…………」

 

 そう言いながら受付嬢の女の人は用紙を取り出し、机の上に置く。

 

「この用紙に君の名前と種族、年齢、Lvと所属している【ファミリア】を記入して」

 

 ここで僕はあることに疑問を持ち質問した。

 

「Lvと【ファミリア】ってなんですか?」

 

 この時、僕の発言がこの場の時を一瞬止めたことを僕は知らない。

 

「冒険者になるには、まずどこのかの神様の【ファミリア】に所属しないといけないの.そしてLvっていうのは、冒険者の強さのランクよ。最初がLv1で、そこから何かを達成する度にLvが1つずつ上がっていくわ。今の最高Lvは7よ」

 

 へぇ、知らなかった。ってことは

 

「僕は冒険者登録できないってことですか?」

 

「その通り。そんなにしょんぼりしないの。新人の冒険者を入団させてくれそうな【ファミリア】のリストがあるから、そこを訪れたらどうかな?」

 

 そう言って、受付の人が僕にそのリストをくれた。親切な人だなぁ。きちんとお礼をしないと

 

「ありがとうございます。えっと、」

 

 名前が分からない

 

「自己紹介がまだだったね。私はエイナ·チュール、【ファミリア】に入団したら、また会うと思うわ。その時は攻略アドバイザーとして担当すると思うから、よろしくね、ベル君」

 

「はい、その時はよろしくお願いします、エイナさん」

 

 おじいちゃん。まだダンジョンに潜ってないけど綺麗な女性と出会いました。

 

「それと、今日はもう夕方だから、そのリストに載っているファミリアには明日伺いなさい」

 

「はい、今日は、ありがとうございました」

 

 

 翌日

 

「ここは、お前みたいな田舎臭く貧弱なガキが来るような弱小【ファミリア】じゃねんだ! さっさと帰った帰った!」

 

 

 お昼過ぎ、僕はエイナさんから貰ったリストの【ファミリア】全てに入団を拒否された.拒否された理由も大半が僕の見た目の弱さだった。確かに、僕は弱いよ。

 

 ────お前が弱いから何も守れなかったんだ。

 

 あれ、守れなかった? おかしい、今まで僕には守ろうとしたものなんてないはずなのに.

 

 入団を拒否されただけでなく、変な記憶まで頭に過ぎってなんだか気分が悪くなる。だがしかし、悲しきかな。ヒトはどんな状態でも腹が減れば、腹の虫が鳴くのだ。

 

「そう言えば、お昼まだだったな」

 

 お金がたくさんあるわけではないので、出店で何か一品買うだけで済ませようっと、考えながら歩き出そうとした時に僕は1人の男性にぶつかった。

 

 すいません、大丈夫ですか? っと、僕は呼びかけるが、その人は平然と立っていた。

 

「問題ありません。ですが、あなたの様なこの町に来たばかりの人が考えながら歩くには危なすぎます。次からは、気をつけてください」

 

 その人は、終始肩に乗せた人形に話しかけるように注意した後、僕が歩いてきた道を進もうとしたが、僕の方に振り返り僕に話しかけた。

 

「それと、あの角から君を見ている方は知り合いですか?」

 

 僕はその人に言われて、道の角から少し見えている黒い髪に気づいた。僕はその人のいる方に向かった。

 

「あの、僕に何か用でしょうか?」

 

「ふぇっ! ぼ、僕はヘスティア。こんな形だけど一応神様をしている」

 

 どうやら、この神様は僕に気づいたのに気づかなかったらしく驚いて返事をした。僕も人に教えられて気づいた身なのでなんとも言えませんが

 

「おや? 貴女はヘスティア様ですね。私の主神の友神だとか」

 

「君は.あぁ!! ヘルメスのとこの【眷属】だね。それで君の主神は今はどうだい?」

 

「ヘルメス様は、今オラリオ外のある遺跡の調査に向かわれております。まぁ、こちらにいてもケーキを作ってるだけなので、いてもいなくても大して変わりませんが.それよりも、ヘスティア様はなぜこの子を見ていたのですか?」

 

 神様って遺跡の調査とかするんだぁ。遺跡と言えばギルさんから貰ったあの防具にあったあの窪みはなんなんだろう? ギルさんも分からないって言ってたけど

 

「そうだった。ねぇ、そこの君。冒険者になるために【ファミリア】を探しているんだよね?」

 

「はい、でもどこの【ファミリア】も僕を入団させてくれなくて」

 

「そこでなんだけど、僕の【ファミリア】に入らないかい? 誰もいない駆け出しの【ファミリア】だけど「入ります」えっ! いいのかい」

 

「神様も見ていたと思うですけど、僕はギルドから紹介された【ファミリア】全てに門前払いされたんです」

 

「う、うん。それは途中から見ていたよ」

 

「それを見ていたのにも関わらず僕を誘ってくれた。貴女の【ファミリア】に入る理由はそれだけじゃ足りませんか?」

 

 僕はやっと巡ってきたチャンスを逃したくない。他に誰もいない、確かに駆け出しの【ファミリア】だけど、僕にはそれを選べる権利や力なんてない。何より嬉しかったんだ、僕を見た目で判断せずに【ファミリア】に誘ってくれたことが。

 

「神様、僕、ベル・クラネルを貴女の【ファミリア】に迎えてくれますか?」

 

「分かったよ。僕も【ファミリア】を作るのは初めてだから、至らないとこも多々あると思うけど、一緒に頑張っていこうじゃないか、ベル君」

 

 

 この1人の人間と神の出会いは、いずれオラリオに新たな歴史を刻むことになる。

 

 

 

 

 その後、僕ほ神様に連れられてとある書店へとやって来た。

 店に入ると、店長のお爺さんが神様に声をかけてくる。神様はお爺さんに断りを入れて、2階の書庫へ向かった。

 何でも、神様は初めての子供に【恩恵】を授ける場所は、前からここだと決めていたらしい。

 

「さ、服を脱いで、ここに座ってくれ」

 

「服をですか?」

 

「そう、上着だけでいいからね。今から君に僕の【恩恵】を刻むからね」

 

「あぁ、そういうことですか」

 

 神様の言うことを理解した僕は服を脱いだ。僕はなんだかウキウキしていた。神様も初めて【恩恵】を刻む事にウキウキしていたようだ。

 

「神様、脱ぎ終わりました」

 

 ベルside out

 

 

 ヘスティアside

 

 僕は今日初めてできた【眷属】に【恩恵】を刻んでいる。刻み終わるのに少し時間があるから、軽くベル君と話すことにした。

 

「そう言えば、ベル君はどうして冒険者になりたいと思ったの?」

 

 僕達はまだ、出会って1時間も経っていない。

 今更だが、あの場にいたヘルメスの【眷属】は、あの後すぐにどこかにいった。

 去り際に今度ヘルメスが帰ってきたら、ケーキが送られてくると言葉を残して、ヘルメスがケーキを作るようになったのは800年前位からだったかな? 

 ものごとの誕生にすごい祝うようになっていた。それがどうしてかは知らないけど。

 

「どうしてなりたいかですか? 前にも同じこと聞かれたんですけど、僕はダンジョンに出会いを求めて、冒険者になろうとしていました」

 

「出会いって女とかい? それにしていたってことは、今は違うのかい?」

 

「はい、ここに来るまでの旅の途中でやっと気づけたんです。僕は目の前で助けを求める人を救える英雄になりたいんです」

 

「それは大きな目標だね、僕は好きだよそういうの。それに出会いを求めるよりもよっぽどいい」

 

「神様も笑わないんですね。でも、僕は出会いを諦めた訳じゃありません。どんな英雄だって出会いを通して英雄になっていくんですから」

 

 それにと続けてベル君は口に出す。

 

「僕を小さい頃から育ててくれた祖父がよく言ってました。『ハーレムは至高だ!』って」

 

 なるほど、全ての元凶はそのお爺さんか。

 

「君、絶対育ての親を間違ったよ」

 

 そんなことを話しているとベル君の【恩恵】を刻み終え、僕はベル君の【ステータス】を確認した。

 

 ベル・クラネル

 

 Lv.1

 

 力  :I 0

 

 耐久 :I 0

 

 器用 :I 0

 

 俊敏 :I 0

 

 魔力 :I 0

 

 

《魔法》

【】

【】

 

 

《スキル》

 【欲望摩耗】(プトティラコンボ)

 成長に必要な経験値が激増。

 欲望を摩耗させて、太古の力を得る。

 器が危険な時、太古の力が暴走。暴走後ステイタスがダウンする。

 

 

 

 僕はベル君の【ステータス】に現れたスキルに注目した。そもそも余程のことがない限り初めからスキルが現れることはない。加えて現れたスキルに僕は戦慄させられた。

 

【コンボ】それは、800年前のとある英雄が持っていたスキルと同じものだ。加えて言うなら、そのスキルは神々の欲望によって生み出されたものを使って発動するものだ。

 

(ベル君、君はいった何者なんだい)


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