あの日ガイと遭遇してからと言うもの、俺が修行をしているとどこからともなくガイが現れ、俺の隣で修行をし、時にアドバイスを、時に邪魔をしてくる様になった。
そしてキャバクラ嬢に貢ぐオッサンの様に、何かしらのプレゼントを持ってきては、それがどれだけ素晴らしいかを熱く語り、強制的にそれを身に付けさせてくる。
貰ったプレゼントはプロテインから始まり、鉄アレイ、バーベル、重り付き縄跳びetc……。また原作にも出てきた全身タイツに、根性の文字がプリントされたパワーアンクル。
最初は「おっ?女の子からのプレゼントか?君麻呂も隅に置けないなぁ」なんてニヤニヤしていたママさん&いのいちも、次第に相手が誰か分かったのか、今では哀れむような視線を向けるだけとなった。
俺は何度も断った。何なら未だに断っている。しかし、現世に転生してからと言うもの、丸っきりの善意に余り触れてなかった為、断り辛い。また「子供が遠慮なんてする必要はないっ!安心して貰ってくれっ!(キラーンッ)」と言う彼の圧力に押され、ズルズルと続いている。
「わぁ~っ!キミちゃんまたプレゼントもらったの?すご~いっ!」
今日もまた、ガイからのプレゼントを持って帰ると、我らが姫様が目をキラキラさせて走り寄って来た。
そうそう、俺がこのプレゼント攻撃をいまいち強く断れないのは、いのが毎回楽しそうに喜んでくれるからと言う理由もある。
はっ⁉まさかっ、ガイのやつここまで計算してプレゼントを………?
無いな。
第一ガイは俺の名前も知らないし、いつも俺が帰る前に任務に行ったりカカシに勝負を仕掛けに行っているから、俺の素性を知れる程会話もしていない。絡まれたく無いから修行中の質問もフル無視してるしな。
どうしたものかと参っていたら、ふいにママさんに呼ばれる。声の方向に行ってみると、何やら新しい服を作ってくれたらしい。店に売ってる物と何ら遜色の無い腕前だ。
だが何故に新しい服をと思い質問してみる。服ならここに来てすぐにママさん自身が大量に買い揃えてくれたからな。あの時は次々と着せ替え人形にされ本当に疲れた。
「君麻呂くん今、ガイから貰ったあのダッサい全身タイツをインナーに着てるでしょ。正直買ってきた服に合って無いじゃない?せっかくだし作ってみたのよ」
なんとなんと、これは有難い話だ。
あの変態スーツ、ただ糞ダサいだけなら着なければ良いだけなのだが、無駄に通気性や保温性・伸縮性が良く、一度着れば中々脱げなくなる極上の着心地なのだ。
その一方で、自分なんかの為にママさんが手作りしてくれたと言うのは、くすぐったいと言うか嬉しすぎて困ると言うか……。
とにかく俺はママさんに感謝の言葉を述べ、両手に新しい服を抱いて、自分の部屋へと走って逃げた。
…………顔赤いの、バレてないよな?
翌日、早速ママさんに作って貰った新しい服を着て、鼻歌交じりに木の葉の商店街を歩く。今日は何となく、走って森に行くんじゃなくて街を歩きたい気分なんだ。決して服を見せびらかしたいとかでは無いぞ。
鼻歌がサビに入り、また商店街も人だかりが多くなってきて俺のテンションはどんどん上がっていく。もはや鼻歌ではなく、「ふんっふんっ」って口で言ってしまっているが仕方ない、今日位は構ってちゃんにならせてくれ。正直嬉しくて仕方ないのだ。
そんな俺の構ってオーラを感じたのか、ここ最近でずいぶん仲良くなった少年が声を掛けてくる。
「やぁ、君麻呂。どうしたんだい、とっても上機嫌じゃないか」
声の主であるイルカは、今から任務に向かうのか背に何やら荷物を負い、火影邸の方向に向かって歩いていたのを立ち止まって、俺の目線に合わせて軽くしゃがんでくれる。
「おっ、イルカ兄ちゃんおはよ!今から任務?大荷物なんて珍しいけど」
俺はもう上機嫌で声を返す。あえて上機嫌の理由は言わず、聞いて聞いてオーラをだだ漏れさせながら。
「あぁ、今から里の外で泊まりの任務なんだ。これはその為の着替えや道具だよ。君麻呂こそ、今日は珍しくこんな時間に商店街にいるなんて、何か特別な事でもあるのかい?」
そのイルカの言葉を聞いて、待ってましたと言わんばかりに俺は腰に手を当て、胸を思いっきり張る。さぁ気付け!そして褒めてくれ!!
「ん?何か特に変わった所は無いように見えるけど…………。あぁ!髪紐を変えたのか?似合ってるぞ、君麻呂!」
ちがうちがう、そっちじゃない。
俺は首を振りながら、服がよく見えるように胸を反らしまくる、もうほぼブリッジ一歩手前だ。
「む~~、やっぱり特に変わった所は見当たらないなぁ……………。あっ!服か!新しくその服を買って貰ったんだな!とっても似合ってるぞ!」
そうそう!それそれ!!
100点満点の答えに、俺は満面の笑みでウンウンと頷き、1番知って欲しい情報をイルカに伝える。
「新しい服は正解だけど、この服は買って貰ったんじゃなくて、ママさんに作って貰ったんだ!良いだろ羨ましいだろ、格好いいだろ!」
俺の自慢を聞いたイルカは、「そうか、それは良かったな!」と柔らかく微笑み、俺の頭を撫でた後「やっば、待ち合わせに遅刻する!!」と慌てて火影邸へと走って行った。
俺はそんな優しいお兄さんの背中へ、元気に声を掛ける。
「イルカ兄ちゃん!任務頑張ってきてねっ!!」
心優しい未来の人格者は慌ただしく、しかし爽やかに木の葉の商店街を駆けていく。