山中さん家の君麻呂くん。   作:ピザポテト辺境伯

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少年君麻呂編 第5話 言って良い事と悪い事の差は思ったよりデカい。

 

 

 

 

 

身に余る幸福に幼児退行し、商店街の道行く人に服を自慢して回ると言う黒歴史を作ってから数ヶ月、充実した日々を過ごしている俺こと君麻呂そろそろ6度目の春。

 

 

この数ヶ月間、いのと和やかに遊んだり、ママさんの家事をお手伝いしたり、いのいちと一緒に山中花屋の店番をしたり、修行中ガイを無視し続けプレゼントだけは貰ったり、イルカと交遊を深めたりと、非常に濃い日常を送らせて貰った。

 

 

その結果、山中家の三人やイルカとの仲は深まり、ガイとも多少は話をする程度まで免疫が付いた。また、嬉しい事に商店街の人々にまで良くして貰い、まさに我が世の春と言える居心地の良さを味わっている。

 

 

そんなリア獣な俺だが、最近あることに悩んでいる。

 

最近会う人会う人が事あるごとアカデミー入学の話をしてくるのだ。それはもう日に何度も。商店街のおばあちゃんなんかは同一日に5回も同じ話をしてきた位だ。

 

 

木の葉の里で忍としての素質がある子供はだいたい6歳ごろからアカデミーに入る。目的はもちろん忍者になるために必要な技術や知識を学ぶためだ。

 

 

しかし、今の俺にアカデミーに入る理由があるだろうか?正直そこいらの下忍どころか、下手な中忍より強い自信しかない俺である。確かに知識は必要だが、精神年齢を考えたら前世の小学生が出来るレベルの勉強を、わざわざ他人から教わる必要を感じない。

 

 

 

いのいちからはまだ話は無いが、実際にされた場合どう答えようか。彼なら俺の過去も実力も多少は知っているから、行く必要は無いと言ってくれそうだが。

 

 

しかしあれか、同年代の友人が必要と言う意見で行かされる可能性もある。でもそれは嫌だな。天使の可愛さを持ついのや、年齢よりも大人びているイルカならまだしも、クソガキ真っ盛りの連中と長時間過ごすなんて苦行でしかない。

 

 

 

どうこの難問を切り抜けるかと考えながら日々を過ごしていると、ある日いのいちの一緒に店番をしている時に、ふいに質問を受けた。

 

 

「なぁ君麻呂、お前、忍者になりたいのか?」

 

 

「はえっ!?」

 

 

見当違いの質問に、思わず声が出た。

何故に今更そんな事を聞いてくるんだろうか?

てっきりこっちはアカデミーの件を聞いてくると思ったのに。

 

だがその目は真剣で、何かを探るような、推し量るような心情が透けて見える。思いの外真面目な空気感に、俺はますます質問の意図が分からなくなる。

 

 

「何でそんな質問するの?」

 

 

「いや、なに。ここのところずっとガイと一緒に修行してるだろ?お前はもう、無理して戦わなくて良くなったのに、どうしてそんな事をしてるのかと思ってな。」

 

 

あなたの言葉の意味が本当に分かりません。と顔に出ていたのか、いのいちはバツが悪そうに困り顔で話す。

 

 

「日々の運動にしては激しすぎるし、何よりガイのやつ、周りにお前の事をいつも真面目に修行してる偉い少年だと自慢して回っているもんだから。一体全体お前は何のために強くなろうとしているのか疑問だったんだ。」

 

 

あぁ、なるほど。

 

いのいちは俺の事をちゃんと考えてくれてたんだな。だから俺に修行を付けたりして来なかったのか。勝手にそう言う方針かと思っていたが、気を使ってくれていたんだな。

 

 

「色々と考えてくれてありがとう、いのいちさん。確かに俺は戦争が嫌いだよ。でも、嫌だからって逃げられる訳じゃないと思うんだ。だから、そうなった時に大事なものを守れるように強くなりたい。その為に、忍者になろうと思ってる。」

 

 

いのいちの暖かい想いを知った俺は、今思っている事を正直に、いのいちの目をじっと見て話す。

 

 

数秒間、無言のまま見つめあった後、いのいちはふぅっと息を吐いた。

 

 

「そうか、賢いお前の事だ。しっかりと考えた末に出した答えだろう。俺はお前の意思を尊重するよ」

 

 

どこか安心したような、そして少しだけ嬉しそうな顔と声音だ。やはり相当気を使わせていたのだろう。

 

 

心配を掛けたいのいちには申し訳ないと思うが、それよりも幸せだと感じる方が強い。自分の身を案じてくれる存在が居てくれる事が、今は純粋に嬉しい。

 

 

そして話はこのまま穏やかに、アカデミーに行かず、すぐ下忍昇格試験を受ける方向に向かうと思っていた。思っていたんだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………どうしてこうなった?」

 

 

 

目の前には腕を組んでこちらを睨み付けるいのいち。場所は近所の空き地で、周囲には誰も居ない。

 

 

 

「そこいらの中忍には勝てるんだろう?ほら、掛かってこい、お前の実力を見せてみろ」

 

 

 

めちゃくちゃ怒ってるぅぅう~~!!

 

 

 

 

 

 

あの後当然の流れで、アカデミー入学を勧められた。だが心は既に決まっている、俺は出来るだけ柔らかい表現で、使える術や知っている知識、戦闘の考え方など、行かなくても良い実力がある事を伝えた。

 

 

そしたらいのいちがとっても嬉しそうに話を聞いてくれ、どんどんおだてて来るもんだから、つい口が滑って言ってしまったんだ。

 

 

「いやぁ、まぁ、うん。正直そこいらの下忍どころか、中忍ぐらいには負ける気がしないよ!あっはっはっはっ!!」

 

 

次の瞬間、首根っこを掴まれ、瞬身の術で強制的にここまで移動させられると、乱暴に投げ飛ばされ何をすんだといのいちを見たら、先程の状態が出来上がっていた。

 

 

 

 

 

 

自分が失言したことを理解した俺は、何とか弁解しようと口を開く。

 

 

「いや、さっきのは何と言いましょうか。言葉の綾と言いますか、口が滑ったと言いますか」

 

 

 

すると、俺の発言を聞いたいのいちは、更に怒りが膨れ上がった様子を見せる。

 

 

「ほう……。口が滑った、か。と言う事は心の中では思ってたんじゃないか。素晴らしい自信だ。ならば今すぐ俺を叩きのめす事も可能だよな、君麻呂?」

 

 

 

しもた~~っ!!言葉の選択ミスったっ!!!

 

 

もう逃げられんぞと眼で語りかけてくるいのいちを前に、俺は仕方なく覚悟を決め、構えを取る。

 

 

 

「さぁ来い君麻呂、今のお前を見せてみろ」

 

 

 

タイミングは不本意だが、相手に取って不足はない。かぐや君麻呂、いざ参るっ!!!

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