「ひゃっは~~~っ!!!これであの狂った戦闘民族とはおさらばだぜっ!!」
やぁみんな元気か、俺は最近元気になった!!
何故ならついこの間、全滅寸前の仲間を振りほどき、戦場から全力で逃げ切る事に成功したからだ。
ここに至るまでの道のりは長かった。
産まれてすぐは皆優しかった。「あぁ、良かった。戦闘民族と言えども乳幼児には優しいのか」と安心した俺に全力でローキックしたい。
問題はその後だ。即効でハイハイを覚え、赤ちゃん言葉だが言葉を話す俺に周囲は狂喜乱舞。調子に乗った俺がチャクラを使い立って走り回った所事件が起きた。
修行と言う名の虐待が始まったのである。流石エリート戦闘民族。才能があれば0歳から英才教育である。俺はこのせいで、言葉を発せなくなる程のストレスを負った。そしてその修行は日に日に激しさを増していく。また、心の拠り所であった現世での両親が死別してからは更に修行が激化する。
死にたくないので必死に忍術や体術を覚え、大の大人に食らい付いていたら、「えっ、こいつやばくね?」と自分達がそう仕向けた癖に強くなった俺を牢屋に繋ぎ、修行以外では決して外に出さず、4歳になった去年からは戦場にまで連れて行くようになる。
やったね!イタチと同じ年に戦争デビューだっ!って喧しいわ。鎖付きの首輪が標準装備のどこが良い。キャッキャうふふだった胎児時代後半の未来の輝きは無くなり、あるのはどす黒い現実。
莫大なストレスを抱えながらも俺は戦場を駆けた。退いたら仲間総出で殺される恐怖の中、ただ自分が生き残る為に目の前の人間を殺す。殺したからと言ってストレスが発散される訳でもないが、何もしないと殺されるので仕方ない。前世の俺であったら卒倒間違いなしの状況だが、人は慣れるもの。俺は何とか日々生き残り、隙を付いて逃げ出す事を虎視眈々と狙っていた。
それが丁度あの日だったのだ。霧の里との戦闘で、これまでと違う精鋭部隊と当たったせいか、俺達かぐや一族はフルボッコ。
毎日牢屋の外から唾を吐きかけてきたオッサン、いつも性的な目で見てきて顔を見るだけで尻の穴が閉まる負の条件反射の産みの親であるジジイ、飯に毎回砂利や虫の死骸を入れてニヤニヤ笑っていたババア。戦場で俺の首輪を常に持っている口の臭い族長。
俺はそいつらが死んで行くのを見て5年ぶりに声を取り戻した、久しぶりの言葉は「ひゃっっっほうっ!!!」だ。たぶん満面の笑みだっただろう。何せ現世初のストレスフリーだったからな。
族長が死に、混乱する戦場のどさくさに紛れ、瞬身の術を使いまくり全身全霊で逃亡。追ってきた若い兄ちゃんを屍骨脈の弾丸で運良く瞬殺。そこからは変化の術を駆使して身を隠しながら、時折すれ違う人に道を訪ねようやくここまでたどり着いた。
門の前では大勢の人間が順番を待つ為にたむろしている。ガヤガヤと活気に溢れるこの情景と、これから自分が切り開く幸福な未来を信じて俺は小声でひとりごちる。
「やっと着いたぜぇ、木の葉の里。待ってろよ、この君麻呂様の爆裂忍者列伝をこの世に轟かせてやるぜ」
そう言って感慨に耽り、ジーンとしていると、前方から一人の男がとことこと近付いて来て、俺に衝撃の言葉を投げ掛けた。
「そこの君、通行証持ってる?」
あ、忘れてた。