ヴィジランテ -スクライド ILLEGALS- 作:カズくん
スクライドに寄せすぎるとヒロアカの軽快な感じが大分重たくなってしまう・・・!
クロスオーバーって難しいですね・・・。
ちなみに次はたぶん来週になります。
市議会議員の誘拐、救出、ビル倒壊といった事件が起こった翌朝。
事件が起きたのと同じスラム街の一角にある建物に、こそこそと侵入を試みる影があった。
まず建物から語ろう。
その建物は、古びてはいるものの小綺麗で、よく掃除されている印象を受ける。
更に観察眼の鋭いものなら、高い位置になるほど掃除が疎かになることから、子供か背の低い異形型の者がよく掃除をしているのだろうという事に気付けるだろう。
元々は診療所かなにかだったようだが、既に診療所としての機能を無くして久しいのか、診療所独特の臭いはもう残っていない。
そんな建物にこっそりと侵入を試みている青年は、茶色の髪を目にかからないように分けており、緑色の長袖長ズボンに茶色のジャケットを羽織っている。
泥棒というよりも、朝帰りのサラリーマンがこっそりと帰宅している様を彷彿とさせる様子で、こっそりと玄関を開けて家の中に入っていく。
このこそこそとしている青年こそ、何を隠そう最近この辺りを賑わせているシェルブリットのカズマである。
戦闘中の堂々とした立ち振る舞いもどこへやら、物音一つ立てないように抜き足で歩き、ゆっくりと玄関の中に滑り込んでいく姿は、少々情けなくもある。
玄関から入ってすぐ右手の部屋の扉を音をたてないように開けたところで、彼に不機嫌そうな声がかかった。
「お・か・え・り。カズくん!」
「げぇっ!あ、あぁ。ただいまカナミ。」
カズマが振り返ると、そこにはぷくーっと頬を膨らませて不機嫌オーラを漂わせる少女の姿があった。
彼女はカナミ。
幼いながら、スラムで荷運びや家事手伝いなどで稼ぎを得ている、カズマの同居人の少女だ。
「もう、どこ行ってたの?親方さん、探してたよ。」
親方さんというのは、カズマがよく日雇いで働いている(働かされているが正しい)土方の親方である。
周囲から見たカズマは、碌に働きもせずに、年端のいかない少女の稼ぎで暮らすロクデナシなのだ。
オマケに肉体労働からすぐ逃げる根性なし。
そんなカズマと一緒に暮らして支えているカナミの評判は周辺の住民からはとても高く、半ばアイドルのような扱いを受けていた。
まあ、そんな風にカナミの評価が上がる分、反比例的にカズマの評価が更に落ちることにも繋がっているのだが。
カズマはカナミにバツが悪そうに答えた。
「仕事だよ、仕事。」
「また君島さんの紹介の仕事?いくら稼げたの?」
「・・・ん。」
そっぽを向いたまま、カズマはポケットから出した幾ばくかの紙幣と小銭をカナミに渡す。
ちなみに紙幣は千円札であり、それも2枚しかない。
それはを見たカナミは、怒るでもなく悲しげに眉を寄せた。
カズマからしてみれば、まだ怒鳴られた方がマシだと感じる反応だ。
「・・・これだけ?」
「・・・ああ、いや、それがさぁ。」
「もう言わなくていいや。」
「なんだよ!言わせろよぉ!いや、途中まではよかったんだ、だけど作業中にちょおっとよそ見したらでっかいミスやらかしちゃってさぁ!」
はあ、とカナミはため息をひとつついて、
「長続きしないね。」
「そうね・・・。」
「甲斐性なしの、ろくでなしだ。」
「そうね・・・。そこにクズとウスノロを足してもいいよ・・・。」
がっくりと項垂れるカズマ。
項垂れているカズマにカナミが声をかけようとした時、ノックの音が家に響いた。
返事をする前に開け放たれた扉から、一人の男性が入ってくる。
年のころはカズマと同じくらいだ。
彼が先ほど話にも上がった、カズマに仕事を斡旋している君島邦彦である。
「よ!カズマ君元気ぃ?」
「なんだお前かよ。とっとと帰れ。」
「おまっ、いきなりそれかよ!」
「どうぞ。後でお茶をお持ちします。」
「ありがとー!」
「いらねえぞ!」
カナミがお茶を入れに家の奥に消えていった後に、カズマは無言で先ほど入ろうとしていた玄関の右手の扉・・・自室へと入る。
もとは診察室だったのだろう、少し広めの部屋だ。
君島も勝手知ったるといったやつなのか、カズマに続いて扉を閉めた。
カズマは背中越しに君島に話しかける。
「んで?何しに来たんだよ。」
「仕事だよ、仕事。ヴィラン退治の時間だぜ、正義のヒーロー君。」
カズマはケッ、と舌打ちをひとつつくと、元々診察に使われていたのだろう、大きめの椅子にどかりと座り込み、君島と向き合った。
「相手は?」
「液体状の異形型。クライアントの大事な宝石を持って逃走中だ。既にヒーローも出てきてるらしいから、捕まる前にふんじばって宝石を回収してきてくれってさ。」
「ふーん。で、金は?」
「ふっふっふ。聞いて驚けよカズマ君。なんと50万!」
「マジで!?」
高額の依頼に、カズマは勢い込んで立ち上がった。
「よっし!いいぜ!7:3で受けてやる!」
クライアントとの交渉及び、仕事を見つけてくるのが君島。
それを実際にこなすのがカズマ。
ゆえに、クライアントの出す報酬を分割するのが彼らのいつものやり方だった。
カズマのいう7:3は、カズマが7割、君島が3割で報酬を分割しようという意味だった。
「いや、2:8だ。」
「開きがありすぎんだろ!」
「てめぇがボリすぎなんだよ!今回の仕事取るのに結構金バラまいてるんだぜ?俺だって。」
「俺には金がねぇ!」
カズマのその発言に、君島は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。
「はぁ!?なんでだよ、いい払いだっただろ?昨夜の仕事は!」
「え?ああ、いや、無いものは無いんだよ・・・。」
「はぁ?まさかカズマ、またやりやがったな!馬鹿じゃねえか!?」
「うっせえなぁ!」
カズマという青年には、ある悪癖というか、困った行動にでることが多かった。
スラムで困っている子供が居る時に金を持っていると、ポンと渡してしまうのだ。
既に1度や2度ではない。
そもそも、腕利きのヴィジランテのカズマの一仕事あたりの単価はかなり高く、その悪癖さえなければもっと上等な暮らしができているはずなのだ。
「とにかく!7:3だ!」
「2:8!」
「7:3!」
ぬぐぐぐぐとお互いに睨み合い、しまいにはジャンケンを始めるカズマと君島。
それをお茶を持ってきたものの入るタイミングを無くしたカナミが、ドアの隙間から伺ってため息を吐いた。
またやってる、と。
★★★★★
スラムから少し離れた、整備された綺麗な街並みを、憂鬱な雰囲気を放ちながら歩く少年がいた。
緑色の癖毛の少年の名は、緑谷出久。
ヒーローを夢見る無個性の少年である。
緑谷の手には、ボロボロに煤けているノートが一冊。
将来のためのヒーロー分析ノートと題が打たれたそのノートは、彼が書き溜めたものだ。
幼少のころに個性が発現することはないという診断結果が出ても、彼はそれを作り続けてきた。
しかし、彼は今、まさに折れかかっていた。
幼馴染の爆轟に、その夢を否定され、ノートは彼の個性で爆破された。
自分の夢と、無個性という現実の狭間で、彼は思い悩んでいたのだ。
そんな緑谷がいつも帰り道で通る陸橋の下のトンネルに入った時、それは起きた。
突如、緑谷の後ろのマンホールから、ズルリと何かがはい出てきたのだ。
「えっ?」
気配を感じた緑谷が振り返った時、それはすでに目の前に迫っていた。
「Mサイズの隠れ蓑・・・!」
緑谷を飲み込もうというかのように、大きく広がった液状のそれは、緑谷に襲い掛かる。
咄嗟に目を瞑ろうとした緑谷だが、次の瞬間大きな声がトンネルに響いた。
「しゃがんでろ坊主!」
声に反応して、咄嗟にその場に蹲る緑谷。
「誰だ!」
液状のソレ、カズマのターゲットであるヴィランが誰何の声をあげるも、答えの代わりに響いたのは何かの噴出音。
「衝撃のォ!ファーストブリット!!」
しゃがみこんだ緑谷の頭上を、豪風が吹き抜けた。
ヴィランの体が5割ほど辺りに飛び散り、怯んだように後退した。
緑谷は乱入者の姿を見て首を傾げた。
金色と赤をメインの色にして金属に覆われた右腕。
逆立ったような髪型に、右肩には二枚の羽のような装飾。
ヒーローオタクの緑谷は、内心でこんなヒーローいたかな?と疑問がわいた。
「テメェ、まさかシェルブリットか!」
「お、なんだ?俺の名前も知れてきたかな。」
(シェ、シェルブリットだって!?)
緑谷は重度のヒーローオタクだが、彼はそれに伴い、それに連なるような情報もよく知っていた。
シェルブリットといえば、最近名が知れてきたやり手のヴィジランテだ。
(一般人には手出ししないとは聞いてるけど・・・やばい!犯罪者vs犯罪者じゃないか!)
「おい坊主、危ねぇから下がってな。」
「は、はい!」
ヴィジランテは犯罪者。
とはいえ、先ほど自分を害そうとしたヴィランと、助けてくれたヴィジランテ。
どっちが危険かと考えれば間違いなくヴィランのほうだ。
緑谷はカズマの後ろへと下がる。
だが、その間に先ほどぶちまけたヴィランの体は8割がた元に戻っていた。
それを見たカズマの口角があがる。
「いいねぇ。そうこなくっちゃ。すぐ終わったらつまらねえ。そう思うだろ?アンタも。」
「うぜぇ・・・こうなったらお前を隠れ蓑にしてやるぅ!」
今度はカズマに向かってとびかかるヴィラン。
「上等!正面から突き崩す!」
カズマは大きく腕を引く。
と、背中の羽の小さいほうが消滅すると同時に、緑色の光を放った。
それと同時に、先ほどヴィランが這い出てきたマンホールが吹き飛ぶ。
「撃滅のォ!セカンドォ!」
「私が来た!」
「ブリットオオオ!」
「TEXAS SMASH!!」
「なっ!?うおおお!?」
爆発的な勢いで前に出たカズマだが、拳がヴィランに触れる前に前方から吹き付けた圧倒的な風圧に吹き飛ばされた。
前方にいたヴィランは勿論、後ろにいた緑谷諸共吹き飛ばされたが、カズマは器用に空中で緑谷を左手で抱えると、右手を地面に叩きつけて制動。
足を地面に擦りながら回転して減速する。
「新手か!?」
左手の緑谷を庇いながら右拳を構えたカズマの視線の先には、HAHAHAと笑う筋肉ダルマが佇んでいた。
★★★★★
「HAHAHA!!いやあ悪かった!ヴィラン退治に巻き込んでしまった!いつもはこんなミスしないのだが、オフだったのと慣れない土地でウカれちゃったかな!?」
乱入してきたのはNo1ヒーローオールマイトその人だった。
「しかし君達のおかげさありがとう!無事詰められた!」
先ほどのヴィランはすでにオールマイトによって哀れにもペットボトルに詰め込まれていた。
あれではもうなにもできやしないだろう。
しかし、カズマは内心冷や汗を浮かべていた。
拳が触れ合ってすらいないのに、あの風圧。
カズマの個性、シェルブリットは単純な増強系の効果と、背中にある3枚の羽を消費して打ち出すブリットの二つの能力がある。
全部で3回ブリットは使用でき、数が大きくなるほど威力も上がる。
羽は個性を発動しなおさないと回復しないが、その分強力な技だ。
それをただのパンチで無効化された。
吹き飛ばされたのはセカンドとはいえあの威力。
ラストブリットでも打ち勝てるかわからない程のパンチだった。
「ところでそこの君!」
「お、俺か!」
オールマイトがビシッとカズマを指で示す。
「今回は正当防衛として見逃すが、個性の使用は本来厳禁!犯罪だぞ!」
「い、以後気を付けます!」
「よろしい!じゃ、私はこいつを警察に届けるので!液晶越しにまた会おう!!」
言うだけいうと、オールマイトは背を向けてぐっとしゃがみこむ。
緑谷がそんなオールマイトに駆け寄っていった。
「まって、まだ・・・」
「プロは常に敵か時間との闘いさ。それでは今後とも、応援よろしくねー!!」
ドヒュウンと音を立てて、オールマイトは飛び立っていった。
「・・・スーパーマンかよ。」
一瞬戦闘になるかと身構えていたのが、なんとも毒気の抜かれてしまったカズマ。
そういえばさっきまでいた坊主はどうしたんだ?と辺りを見回すが、いつの間にかいなくなっていた。
ふと空を見上げると、飛び去って行くオールマイトの腰元にしがみついている緑谷の姿が見えた。
「・・・意外と根性ある坊主だな。」
そうひとりごちると、カズマはポケットの中身を出した。
握りこぶし程もある青い宝石だ。
実はターゲットの宝石は、最初のファーストブリットを打ち込んだときにかすめ取っていたのだった。
「ま、仕事も済んだし。君島と合流して帰るかね。」
この時のカズマはまだ知らない。
この先、自分が先ほどあったNo1ヒーローと緑谷出久の両名と関わっていくことになることを。
スクライドなら戦闘しないといけないだろうと入れた戦闘描写。
難しいですね・・・。
とりあえず時系列はこの辺で、ヒロアカ原作開始直後です。
なお爆轟がヘドロに飲まれた辺りはカズマは帰り道なので後から新聞とかで知るかもって程度です。
※追記
服装が原作と違うところの説明まったく入れてませんでした!
緑色の~の辺りで、ん?と思った人結構いると思います。
普段着がその恰好。
ヴィジランテ活動中が原作の服装だと思ってください。
後々修正致します。
ロストグラウンドと違って身バレがヤバいからね多少はね・・・。
って感じの説明を入れたつもりが消えてました。
以下チラ裏。
とりあえず出すのが決定していたスクライドキャラは全員出しました。
HOLY部隊の皆さんは出す予定なしです。
劉邦ポジは別のヒロアカ組にやってもらう予定。
誰だろうナー?
ちなみに初期に書いていた雄英入学する話だと、劉邦ポジは轟君でした。
戦闘訓練で、氷の破片を轟に投げつけて目つぶしして、卑怯だって怒るかい?いいや、だが底は見えた。のやり取りをしようかなーって思ってました。