クリスタルに選ばれた者がオラリオにいるのは間違っているだろうか   作:サボテンダーおじさん

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ベル・クラネルとの出会い。

 ギルドへ行き、適当に登録を済ませた後ノクティスは早速ダンジョンへと潜っていた。ギルドの登録の際アドバイザーという女性から『ヘスティア・ファミリア』の名前を出した瞬間目を見開いたことや、ベル・クラネルというヘスティアから聞いた名前が彼女から出てきたこと以外は特に何もなかった。

 

 それにしても、とノクティスはダンジョン内を見渡した。何だか久しいような感覚がする。かつての仲間たちと旅をした時にもこういうダンジョンには度々訪れていた。少し肌寒いような感覚や薄暗いこの感じ。本当に懐かしい。

 

 そうやって悦に浸っていると、今自分がいる場所から少し北で少量の魔物がいることを感じた。スキルの類ではなく、ノクティスが戦闘の中で培った力の一つだ。気配察知やダンジョンでのマッピングは旅での必須といえる技術だった。だからこそノクティスは旅をしている中で自然に覚えたのだろう。

 

(数は…四、五体か)

 

 大体を把握し、ノクティスは自らの剣を力一杯に前に投げる。完全には戻っていないが、元の世界でのステータスとこの世界での【神の恩恵(ステイタス)】が合わさり、かなりの速度を出していた。

 ノクティスは自分の投げた剣が先の地面に突き刺さったことを確認すると、能力の一つである【シフトブレイク】を発動した。

 慣れ親しんだ一瞬だけ身体が浮くような感覚。もっとも敵に直接武器を当て、そこに飛びながらその勢いで攻撃する。というのが本来の【シフトブレイク】だ。今したことはそれの基礎のような【シフト】と呼ばれるもの。

 

『グギギギ?』

 

 数体の魔物、いずれもダンジョン内で最弱と呼ばれるコボルトであったが、コボルトたちは急に近くに現れたノクティスを警戒しながら武器を構えた。

 

「お手並み拝見ってか」

 

 久しぶりの戦闘に高揚を感じているノクティスは手加減なんてことを忘れ、速攻で決めるためにコボルトの群れの足元へシフトする。

 魔術というより見た目は奇術のようなそのスキルに驚くコボルト。

 

 驚いた隙をノクティスは見逃すはずもなく、シフトした後アルテマソードを武器召喚により高速で大剣のアポカリプスへと変更する。そして、回るように一閃。

 

 それだけでコボルトの首を飛ばし、僅か数秒でノクティスはコボルトの群れを殲滅させた。

 

 呆気ない、期待はずれだ。とノクティスは不機嫌そうに顔を顰めた。ノクティスにとってコボルトはハンマーヘッドの近くにいた魔物と同レベルくらいだろう。それにノクティスが使う武器はどれも一級品。しかもそのどれもに特殊な効果もついている品だ。簡単に終わってしまうのも無理はなかった。

 

(これだったらもう少し下に潜れそうだな)

 

 ノクティスはアポカリプスについたコボルトたちの血を払うと、武器をしまい更に下層へと足を進めた。

 

 

 ▽▽▽▽

 

(で、どうしてこうなったんだっけか)

 

 ノクティスの目の前では、今にもノクティスに襲いかかろうとしている『ミノタウロス』が。ギルドのアドバイザーによればミノタウロスは本来中層に出るはずの魔物だ。そのはずなのに何故ここ、5層にいるのだろうか。

 

「あ、あの、貴方は…?」

 

 後ろから腰を抜かした少年が声をかけてくる。少年はヘスティアから聞かされた団長の容姿に当てはまる白い髪に紅色の目をしている幼い少年。

 ノクティスは未だに困惑している少年に、ミノタウロスから目を離さないまま口を開いた。

 

「ノクティスだ。ノクトって呼んでいいぞ『団長』」

 

 少年、ベル・クラネルは『団長』という言葉を聞くと少しの間固まる。やがて再起したのかノクティスを見て、

 

「ええええええええ!?」

 

 ミノタウロスもびっくりするくらいの大きな声で叫んだ。

 

 

 

「てことはノクトさんもヘスティア様のファミリアに?」

 

 ミノタウロスを倒したわけでも引かせたわけでもないが、なぜかベル・クラネルはこんな状況なのに普通に話しかけてきた。

 

「ま、そこら辺はこいつをどうにかしてからにしようぜ」

 

 ノクティスが顎でミノタウロスの方を指すと、嬉しそうに話しかけてきたベルは段々と表情を曇らせていき、小声で忘れてた…と漏らした。

 

(おいおい、この状況で忘れるか普通。こいつ面白いやつだな)

 

 このベルという少年は将来色んな意味で大物になりそうだと思ったノクティスであったが、今この瞬間はそんなことを考えている場合ではなかった。

 

『グルルルルオオオ!!』

 

 話は終わったか?

 そう言っているかのように吠えたミノタウロスをノクティスとベルは武器をしっかりと構え見据える。

 

「行くぞ、ベル」

「行きましょう、ノクトさん」

 

 その掛け声後、始めに攻撃したのはノクティスだった。全開のシフトブレイクで頭に生えている角を折る。

 

『グオオオオオ!!』

 

「ベル!」

 

「はい!」

 

 怯んだところ、ベルが短剣で一気に攻撃を叩き込んだ。けれど、その程度じゃこのミノタウロスは倒れない。

 ミノタウロスはお返しだと言わんばかりに、右手に軽々と持っている大剣を二人に向かって薙いだ。

 

「ベル!」

 

 直撃は逃れたようだが、ベルはその風圧で吹き飛ばされてしまう。ノクティスも直撃こそ逃れたが、ベルと同じように吹き飛ばされてしまった。

 

「大丈夫…です…!」

 

 ミノタウロスの本来の推奨レベルは2だったはずだ。Lv1のノクティスたちでは手に負えない魔物。ノクティスは今まで数々の死線を越えたからこそ、まだ戦えている。そして冒険者になってまだ少ししか経っていないと聞かされていたベル・クラネルもノクティスとは事情から実力まで全てが違っているのに、ノクティスと同じようにミノタウロスを未だに力強く捉えていた。

 

(お伽話の英雄みたいだな)

 

 ノクティスは弱くても立ち向かうその様子に思わずそんな感想が出てくる。団長が諦めていないのに、団員が諦められるはずないだろう。

 ノクティスは、立ち上がれてこそないがミノタウロスを睨むベルの前に立ち、旅に立ってから何度も世話になった能力、この世界では『魔法』というらしい【歴代王達の力(ファントムソード召喚)】を発動した。

 

 そして次の瞬間ノクティスの周りを歴代王達が使っていた武器が取り囲んだ。ガラス水晶のように透き通った、文字通りの幻影の剣達(ファントムソード)

 

 ベル・クラネルは、そんなノクティスに魅入っていた。呆気に取られたようにその様子を見ていた。

 

 英雄みたいだ。

 

 ノクティスがベルに抱いた感想と同じ感想を、ベルもまたノクティスに抱いていたのだ。

 

「ベル。何ボケっと見てんだよ。一緒に戦うぞ」

 

「へ、へ?でも僕じゃ足手まといですよ…!」

 

 実際ベルの言った通りだった。ノクティスに比べればベルは同じLv1でもかなりの差がついている。だが、ノクティスはそんな自分のような経験が無くとも格上の敵に挑もうとしたベルと共に戦ってみたかった。

 

「足手まといなんかじゃない。ベル、俺はお前と一緒に戦いたいんだ」

 

 ノクティスの真っ直ぐな視線に、何だか照れ臭くなってベルはノクティスから目をそらす。ノクティスの立ち振る舞いはどこか英雄、というより王様の方が合っている気がする。ベルは目をそらしながらそんなことを思っていた。

 

「行くぞ、ベル」

 

「は、はい!」

 

 

 そして戦いの火蓋は切られた。

 

 ▽▽▽

 

 その二人の様子を見ていた少女、アイズ・ヴァレンシュタインはいつでも自分が入れるように準備をして、二人の戦いを見つめていた。

 一人の黒髪の青年はどこから出したのかわからない透明な武器を使い、舞うようにミノタウロスへ攻撃している。

 そしてもう一人の白髪の少年は、そんな青年にサポートされながらも必死に喰らいついていた。

 

(すごい…)

 

 あの二人はこれから先、もっと強くなる。

 

「わっ!」

 

 突然そんな声を上げたのは白髪の少年だった。

 アイズは棒立ちの状態から、一気にトップスピードまでギアを上げ、ミノタウロスを切り刻んだ。

 

 

 ▽▽▽▽

 

「あの、ありがとうございました!」

 

 ノクティスとベルのミノタウロスとの戦闘は突然の見知らぬ少女の介入によってあっさりと終了した。ベルが助けられたことに感謝の意を伝えているが、ノクティスは少女のことをじっと見つめていた。

 

(これが、レベルの差…)

 

 見た目はまだ幼さを残した少女なのだが、ノクティスは自分よりこの少女の方が格段に強いと本能で分かっていた。

 

「なあ、あんたレベル幾つだ?」

 

「6…」

 

(6…!?俺達より5も上なのかよ…そりゃあ強いわけだ)

 

 そんなに簡単にレベルは上がるものじゃないとヘスティアから聞かされていたが、彼女は見たところまだ十代半ばくらいだろう。それなのに彼女のレベルは6。相当な才能、そしてそれを十二分に発揮させるように絶え間ない努力をしてきたのが伺える。

 

「君たち…どこのファミリア…?」

 

 ここは団長が言うべきだ、とベルを見るがベルはこの少女に一目惚れをしたのかチラチラと少女の顔を赤らめながら見るだけ。

 

「あー、ヘスティア・ファミリア所属のノクティスだ。こっちは団長のベル」

 

「は、はい!ベル・クラネルです!」

 

「私はアイズ。アイズ・ヴァレンシュタイン…ロキ・ファミリア所属…よろしくね?」

 

 挨拶を機に、少しだけ打ち解けたのかアイズとベルはほんの少しずつだが話をし始めている。

 一方ノクティスは彼女の名前と、彼女が所属しているファミリアに聞き覚えがあったことに首を傾げていた。

 

 

 ▽▽▽

 

「…ねえ、二人ともこのステイタスは何かなぁ!?」

 

 ノクティスとベルはホームに戻った後のステイタス更新のさい、どんな無茶をしたのだとヘスティアから怒られていた。なぜ、無茶をしたことが分かったのかと聞くと、ステイタスの伸びで分かる!と頬を膨らませて言っていた。

 

 

 ベル・クラネル

 Lv1

 力:I92

 耐久:I40

 器用:H104

 敏捷:H175

 魔力:I0

 

 《魔法》

 

 《スキル》

情景一途(リアリス・フレーゼ)

 ・早熱する。

 ・懸想(おもい)が続く限り効果持続。

 ・懸想(おもい)の丈により効果向上。

 

 

 

 ノクティス=ルシス=チェラム

 Lv1

 力:H161

 耐久:I93

 器用:H182

 敏捷:H107

 魔力:G224

 

 《魔法》

歴代王達の力(ファントムソード召喚)

 ・一定時間の強化魔法。

 ・即発動魔法。

 ・発動後、一定時間のインターバル。

 

 《スキル》

【選ばれし王】

 ・早熱する。

 ・行動技能(アクティブスキル)【シフトブレイク】【武器召喚】が発動可能。

 ・向上心が続く限り効果持続。

 ・向上心の丈により効果向上。

 

 

「どっちもステイタスの伸びが異常だよ…」

 

 両者のステイタスの伸びにヘスティアは頭を抱え、胃を痛めた。

 

 

 





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