それでは物語に参りましょう。
サラやミリーシェは青年が死んでしまったのは自分達のせいだと責任を感じ、今も尚、俯いていた。その様子を見ていた青年はいつまでも伏せているふたりのところへ歩き出したした。
「サラ様、ミリーシェ様」
名前を呼びながら近づいて来る青年に彼女たちは目を勢いよく瞑り、歯を食い縛った。
二人は青年に殴られると思い、ぐっと堪えた。
足音がサラとミリーシェの前に止まり、二人は覚悟を決めた。しかし、何時まで経っても青年の張り手が来ない、それはそうだ。
青年が受け入れるように彼女たちを『抱き締めている』。
そして青年は二人を離すと自分の思いを伝えた。
「サラ様、ミリーシェ様。貴方達は何も悪くなんかありません。貴方達が、必死で命の書類を運んだおかげで沢山の命が救えたんです。それにこうして、ちゃんと貴方達は僕に謝ってきたじゃないですか。それだけで十分です」
伝え終えた青年は二人を離して笑顔を向けた。
しかし、サラには理解出来なかった。何故、そんなことが言えるのかと。それは次第に理不尽な怒りへと変わっていき爆発した。
「何で………何で貴方はそんなことが言えるのですか!!!!私たちは貴方の命を奪ってしまったのですよ?!!!!それなのに、貴方は自分よりも他人の命の方が大切だと言い張るのですか?!!我々、神を!いえ、私を恨んで当たり前なのですよ?それなのにどうして……どう…し…て」
サラは自分の内に秘めていた気持ちを大声で叫びながら青年の服を掴み力の限り揺らす。次第に揺らす力は弱まっていき、青年の胸に頭をつけ静かに泣いていた。その横で、ミリーシェも歯を食い縛り、俯いて静かに泣いていた。
青年は何も言わず、サラの手を握りしめ歌い始めた。
『GIRAFFE BLUES』
「追いつけない……君は、いつでも~♪この場所から~♪」
青年の歌声はどこまでも透き通っていて、まるで風のようだった。震えるサラの手は次第に治まり、青年は歌うことを止めない。
「その瞳は~♪この世界を……斜めに見ていた~~♪」
そして、サラとミリーシェは気付いた。この青年は何処までもお人好しく、人間らしい心を持つからこそ、宇宙よりも広く深い愛で、神でも、人でも、許すことができると。
「夢は~♪君が~♪一人描くんじゃなく~~♪」
青年は歌い続け事にその勢いは増していき、青年の体が光っているように錯覚するほど、サラとミリーシェは青年の歌に魅了されながら見ている。
「繋ぐ……この手~~♪離さずにいて~~♪──」
そうして青年が歌い終えると手を離して再びサラを見てこう語る。
「僕の思いは……届きましたか?」
青年は朗らかな表情でサラとミリーシェを見ていた。
「ええ、充分届きました……」
「あぁ、このお人好しが……」
ミリーシェの文句は青年には誉め言葉に聞こえてしまったのか不意に笑い出して言った。
「ふふ、それが僕の性分ですら」
「でも、私たちはこの事をいつまでも悔やんでしまう……」
青年の歌は確かに届いた理解はした。だが納得は未だに行かないサラは悔やんでも悔やみきれない思いに胸が痛んでしまう。そんな光景を見た青年は仕方なさそうにサラを見て言った。
「だったら、もう僕みたいな人が出ないように命をかけて、他の人たちを守ってください。それが、今回の事故で犠牲となった僕からのお願いです」
サラとミリーシェは彼の言葉に驚かされてばかりだ。自分が死んでも最後まで、他人の命の心配をするのだから。しかしだからだろう。そんな彼を知ってしまったからこそ、覚悟を持った目で蒼也を見ながら頷いた。
「分かりました。責任を持ってこの様なことが起きないよう精進していきます」
「私もサラが無理をしないよう全力でサポートしよう」
「はい!」
二人の言葉に納得した青年は満面の笑顔で返事をした。その白い空間では、二人の女神と一人の青年の笑い声が響き渡っていった。
「そういえば、謝罪についてはわかったのですが………相談というのは?」
青年にそう言われ、ミリーシェはサラを見て頷くと話し始めた。
「そうだったな。実は、先程話した火災の被害にあった君に神々がもう一度人生をやり直させようということが決まったのだ。所謂『転生』させるということだよ。君がどんな世界に行きたいか、転生特典は4つの中で何にするか、その相談をするために、我々が此処に呼んだのだ。」
「て、転生ですか?」
青年はそんなことをして大丈夫なのか尋ねた。
「大丈夫だ、我々が決めたことだからな」
青年はその言葉に安心したのか転生する世界をすぐに決めた。
「それでしたら、マクロスΔの世界に行きたいです!」
「それはまたなぜ?」
ミリーシェは余りにも早く決めた青年に尋ねた。
「え、えっと……マクロスの世界は空を鳥のように飛んでとても気持ち良さそうにしてるのと、美雲・ギンヌメールさんといつの日か一緒に歌ってみたいなと思ったからです」
青年は少し恥ずかしそうにしながら答えた。その回答にミリーシェは、なんとも君らしい。と思った。
「それでしたら、特典はどうしますか?4つまでなら決めれますよ」
会話の途中からサラが入って青年は頭を悩ませた。
「そうですね………まず1つ目が世界感を壊してしまいますが僕が作ったオリジナルのガンプラ『センチネルダイバー』を機体にしたいです。2つ目は『身体能力超向上』、3つ目なんですけど………4つ目が決めきれないのでいつでも決めれるようにサラ様と通信できるようにしてください」
「はい、確かに特典を決めさせて頂きました。ですが、良いのですか?貴重な特典をそんな風に使ってしまって……」
サラは純粋に思った疑問を青年に尋ねると、青年は首を縦に振って答えた。
「いいんですよ、それに何かあったとき用の保険にもなりますし。」
サラは納得して続きを話した。
「分かりました。それでは年齢を決めたいと思います。何歳から始めたいですか?」
青年は少し考えると、
「容姿も年齢もこのままで大丈夫です。」
「分かりました、あとこれは相談なのですが新しい人生を送るので新たに名前を考えるのはどうでしょうか。」
サラは青年に新しく名前を決めたらどうだ、と相談してきた。
「名前ですか、そうですね。『
「少し安直な気がしますが、それで良いでしょう」
サラは青年こと蒼也と一緒に名前を決めたあとミリーシェも会話に加わりしばらく雑談が続いた。
「サラ、蒼也、そろそろ時間だ。」
ミリーシェは会話が弾んでいたサラと蒼也に転生する時間が来たこと告げる。
「もうそんな時間になったんですか、なんだか名残惜しいです。」
「そうですね、蒼也あなたといた時間とても有意義でしたよ。」
すると、蒼也の体が光始めた。
「蒼也、これから行く世界でいい人生を送ってくださいね。」
「はい、本当に何から何までありがとうございました。サラ様、ミリーシェ様。」
「いいえ、お礼を言うのは此方のほうです。あなたがこうして許してくださったおかげで立ち直ることができました。」
二人はお互いに握手をしてお礼の言葉を述べていた。やがて蒼也の体は強く発光し二人の前から姿を消した。
「行ってしまったな……」
「はい……」
ミリーシェとサラは名残惜しそうに蒼也が立っていた場所を見つめている。
「それでは行こうか。サラ」
「はい、行きましょう」
サラは後ろを向き、ミリーシェの後を追いかけていく。
(蒼也、あなたは絶対に幸せにならなければいけません。我々を許し、受け入れてくれた貴方なら、どんな困難でも立ち向かえるでしょう、実は内緒で転生特典とは別の贈り物を送りましましたが受け取ってくれると嬉しいですね)
これはサラの純粋な気持ち。
普通の人ならば、自分が死んだ原因が目の前にいて、落ち着いていられるだろうか。もしかしたら、あの時酷いことをされていたのかもしれない。だが、蒼也は違った。死んだ原因が目の前にいたとしても許してくれた。癒してくれた。義務をくれた。それだけでサラの心は救われた。
歩いていたサラは足を止めるともう一度、蒼也のいた場所を振り向く。それに気付いたミリーシェも足を止め、後ろを振り向く。
「願わくば、神の恩恵を与えられし貴方のこれからの人生に幸のあらんことを」
何処か、スッキリとした顔でサラはそう言うとミリーシェと共に光とかして何処かに行ってしまった。
はいという訳でいよいよ本編に入って行きます。サラの言っていた贈り物とはなんだったのでしょうか。
※10月14日 転生特典を、5つ→4つに変更。
それに伴い、特典内容を変更しました。
理由としましては、神様魅了できる歌声あるからいいのでは?と思ったからです。
次回 No.01 戦場のワルキューレ
~物語は飛翔し加速する~