それでは物語へどうぞ。
『距離4000……3000……2000……1000……スタート!!』
オペレーターの合図と共にセンチネルとVF-31Fがすれ違い、模擬戦が始まる。
模擬戦開始から十分経過、蒼也とメッサーは全力でぶつかり合い前回の模擬戦の時よりも激しさが増し、熾烈を極めていった。しかし、蒼也はセンチネルを操縦しているとある違和感に気づく。
「………反応が遅い。」
それは管制室で二人の模擬戦を見ていたアラドやアーネストも気づいていた。
「艦長……センチネルはやっぱり。」
「……あぁ、蒼也の反応速度に追い付いていない。」
同じく管制室で二人の模擬戦を見ていたハヤテ、ミラージュはアラドとアーネストの会話を聞いて驚く。
「おいおい、マジかよ」
「隊長、今の蒼也がメッサー中尉に勝つことは………」
「無理だろうな。」
アラドがミラージュの質問にそう答えるとミラージュは目線をモニターに戻す。
「蒼也もどうにかセンチネルを動かしてるがいずれボロが出るだろうな。」
アラドは腕組みモニターに映る蒼也を見ながら言った。
模擬戦開始から二十分が経過した。模擬戦終了まで残り十分、蒼也とメッサーは今も尚激しい戦闘を続けている。しかし、蒼也はメッサーに後ろを取られ追われていた。ペイント弾が当たらないように避けていくがそれも時間の問題だ。
「蒼也、これで……終わりだ!!!」
メッサーはそう言うと操縦桿の引き金を引いてペイント弾を発射させる今度は的確に的を狙い避けることは不可能だろう。
蒼也の目にはモニターに映るVF-31Fから発射されているペイント弾がゆっくりと動いているように見える。その際蒼也はあることを思い出す。
【でも、これだけは覚えていてください。どんなことがあっても僕は必ず貴女を守り抜きます。】
【ふふっ、頼りにしてるわよ。ガーディアン】
【蒼也、私たちはそんな簡単に死ぬような集まりでないわ。だからもっと私たちを……………信じて】
【はい】
それは美雲との約束だった。一つ目はワクチンライブ二週間前の帰り道での約束。二つ目は三日前の食堂での約束。蒼也はその二つの約束を思い出し操縦桿を強く握りしめる。
「皆を、美雲さんを守るって約束したんだ、信じるって約束したんだ………………センチネル、少しだけいい。僕に美雲さんを守る力を貸してくれ!!」
蒼也はそう叫ぶとモニターからある文字が浮かび上がる。
「!!……ありがとう、センチネル」
蒼也は目を閉じ、息を深く吸い込むとその文字を力強く読み上げる。
「TRANS-AM!!!!」
蒼也は目を開けてその名前を叫んだ瞬間。金色の目が輝き、センチネルは姿を消しペイント弾は当たることなく通り過ぎていった。
「何!?」
メッサーも突然のことで驚き機体をガウォークモードに切り替えその場に止まる。
「蒼也、一体何処へ………」
メッサーはそう離れていないと考えると周りを見渡す。しかし、蒼也の姿は確認できずにいた。
「上です。メッサーさん」
蒼也から通信が入るとメッサーはすぐに上を向いた。するとそこにいたのは全身を赤く染め上げて両肩のバインダーから大量の粒子を放出しているセンチネルだった。
「随分と色が変わったな……蒼也。」
「これは一時的なものですよ……」
「残り時間七分だがやれそうか?」
「安心してください、全力でいきます。」
会話を済ませ、お互い黙って見合っている。
「それじゃあ……いくぞ」
「はい……」
メッサーと蒼也は軽く息を吸うと
「「勝負!!」」
勢良く叫び、お互い大空へ上昇した。二人は先程よりも更に激しく戦っているが優雅に飛んでいた。そしてセンチネルはVF-31Fの後ろにつくことに成功した。蒼也はそのまま訓練用のマシンガンを構える。
「これで終わり……!?」
蒼也が操縦桿の引き金を引こうとすると緊急警報が鳴り響いた。そのすぐ後センチネルの両肩のバインダーが爆発する。動力源を失ったセンチネルはただただ海へと落ちていく。
「ぐぁっ!!」
「蒼也!!!」
落ちていくセンチネルを見たメッサーはすぐさま機体を旋回してセンチネルの所に向かった。機体をガウォークモードに切り替えギリギリでセンチネルの右腕を掴んで海に沈むことはなかった。
「蒼也!無事か!!」
「……大丈夫です。メッサーさん、怪我はありません。」
蒼也の無事を知ったメッサーは一安心していた。その後チャックの乗るVF-31Eも駆けつけセンチネルの左腕を掴みアイテールまで運んだ。そしてセンチネルの爆発により模擬戦は中止、勝敗がつくことはなかった。
センチネルを専用格納庫に戻した後蒼也は壁にもたれてボロボロのセンチネルを眺めていた。センチネルの状態は深刻なもので装甲に亀裂が生じており間接にもヒビが入っている。胸部には小さく斜めに傷が入っていた。
「………………」
「蒼也」
名前を呼ばれた蒼也が振り向くとそこには美雲がいた。
「……美雲さん、どうしたんですか?」
「何処を探しても見つからなかったから、もしかしたらと思って……」
美雲はそう言いながら蒼也の隣に立つ。
「ボロボロ……ね」
「両肩のバインダーも消し飛んで装甲には亀裂が生じて間接にもヒビが入ってます。ここまでくると改修するしかありません。」
「貴方は……どうするの?」
「マキナさんが言うにはアラドさんがセンチネルが改修が終わるまでα小隊から譲ってもらったVF-31Aカイロスを僕の機体にするらしくて今整備士の皆さんが今、僕の能力に合わせてチューンアップしてくれています。」
「そう…………それと今夜、あの岩のある浜辺に来てほしいの。」
「いえ、その、今日は」
「だめ……かしら」
美雲は上目遣いで尋ねてきたため蒼也は断ることが出来なかった。
「分かりました。僕はもう少しセンチネルを見てから行きますから美雲さんは先に行っててください。」
「分かったわ」
美雲はそう言って出口の向かい格納庫から出ていった。美雲が出ていくのを確認した蒼也は作業用リフトを使ってセンチネルの胸部の前までくる。
「センチネル……またこんなに傷つけてごめんね。君は怒ってるかもしれないけど聞いてほしい。」
蒼也はセンチネルの胸の傷に手を添えて話を始める。
「僕はワルキューレの皆やΔ小隊の皆を守るために今まで君に無茶をさせてきた。その結果がこのざまだ。許しくれなくてもいい僕を恨んでくれても何も言わない。でも、それでも僕は………大切な人たちを守りたいあの人の、美雲さんの歌を僕は守りたいんだ!頼む。センチネル、僕と一緒に………飛んでくれないか。」
するとセンチネルの胸にある傷が光だし蒼也は目を瞑る。光が収まり蒼也は恐る恐る目を開けるとそこには宇宙が広がっていた。
『貴方と話すのはこれが初めてですね。蒼也』
とても美しく透き通るような女性の声が聞こえ蒼也は後ろを振り向くとそこには黒い影が体全体にかかっている何かがそこにいる。
「もしかして君は……」
『はい、貴方が私を作り前世から大切にしてくれた。センチネルダイバーです。』
蒼也はセンチネルにそう言われると周りを見渡し目線をセンチネルに戻す。
「てことは、ここは君の……」
『はい、私の意識内です。』
「どうして僕をここに呼んだの?」
『それは私が貴方に一言、言っておきたいことがあるからです。』
センチネルの続けて言っていく。
『貴方は言いました。美雲・ギンヌメールを守りたいと信じたいと。それなら貴方は命を賭けて彼女を守りますか。その覚悟はありますか。』
蒼也は一度目を閉じて、深く息を吸ってから目を開ける。真剣な眼差しをセンチネルに向けながら話していく。
「僕は美雲さんを信じてる。美雲さんがこの戦いに命を賭けて歌うなら、僕もこの戦いに命を賭けて歌って美雲さんを守ろう。それが僕の覚悟だ。」
センチネルは蒼也の覚悟を聞くと嬉しくなったのか少し笑い、話を始めた。
『ふふっ、分かりました蒼也。なら私も信じましょう、貴方がその思いを抱き続けながら戦うのなら私は幾らでも力を貸しましょう。』
そう言うとセンチネルは後ろに向き光輝き姿が変わる。
「センチネル、それが君の新しい姿なんだね。」
『はい、貴方が完成させるのを楽しみにしています。それと私からのお願いなのですが早くこの戦争を終わらせて自由な空で私と一緒に飛んでください。それでは、またいつか会いましょう。蒼也』
センチネルは蒼也に挨拶を済ませると両肩のドライヴユニットから光の翼を出して飛び去っていった。そして辺り一面が光だし蒼也はもう一度目を瞑る。光が収まり蒼也は目を開けると作業用リフトに戻ってきておりボロボロのセンチネルの胸部に手をおいた状態で立っていた。
「センチネル、約束する。この戦争を早く終わらせて何の縛りのない自由な空で一緒に飛ぼう。」
蒼也はそう言って作業用リフトのスイッチを押して下へ降りた後、格納庫から出ていった。
蒼也は美雲に言われた通りお気に入りの岩のある浜辺にやって来ていた。辺りは暗くなっており満天の星空のもとで海の波打つ音を聞きながら蒼也は歩いていると潮風に髪を靡かせている美雲が立っていた。
「美雲さん、お待たせしました。」
「大丈夫よ。私もさっき着いたところだったから」
そう言って二人は暫く星々の映る海を眺める。
「そう言えば美雲さん、どうしてここに?」
「……これを渡すためにここに呼んだのよ」
そう言って美雲はポケットに隠してあった長細い箱を出して蒼也に渡す。蒼也は美雲に許可を貰いその場で開ける。
「!!これって……」
中に入っていたのは翼の形をした青色のペンダントが入っていた。
「その、カナメと一緒に買いにいったの私はどういう物がいいか分からなかったからカナメに手伝ってもらったの」
「成る程、カナメさんとの約束ってこの事だったんですね」
「えぇ、イヤリングの件と日頃の感謝を込めて……その……貴方にこれを送るわ」
美雲は右耳に着けているイヤリングを触りながら恥ずかしそうに顔を赤くして言っているため蒼也も恥ずかしくなり顔を赤くする。
「あ、ありがとうございます。美雲さん、着けてもいいですか?」
「えぇ、着けてちょうだい」
蒼也は箱からペンダントを出して首に着ける。
「どうですか?」
「とても似合ってるわ、蒼也」
「ありがとうございます。美雲さんからこんな素敵な物が貰えて僕は幸せです」
蒼也は嬉しさの余り胸を手で抑えて笑顔で言った。
「体も冷えてしまったことだしそろそろ帰りましょう」
「そうですね………美雲さん、手を出してください」
「?いいけど……」
美雲は蒼也の言われた通りに手を出し蒼也はそれを握る。
「そ、蒼也!?」
手を握られた美雲は突然の事で驚いていた。蒼也はそんな美雲を見て笑いつつもしっかりと手を握っていた。
「あはは、こうすれば暖かいてしょ?」
蒼也の掛けた言葉でようやく美雲は落ち着きを取り戻した。
「もう………」
美雲はそう呟くと蒼也の手を握りしめ歩き出す。二人は手を握り歩きながらこんな穏やかな時間がずっと続いてほしいと考えていた。やがて二人は家に到着すると今日の疲れを癒すため静かに眠るのであった。
はい、今回はここまでです。恥ずかしそうにしている美雲さん本当に可愛いです。それと激情のワルキューレが家に届きました早速見ましたが………最高。とだけ言っておきましょう。
次回 No.12-1 キング・オブ・ザ・ウィンド