旋律は風に乗り、翼と共に銀河を翔る   作:新郷遊佐海

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早く書けたので投稿しました。


No.14-3 漂流エンブレンシング

 フレイアは、二匹のウミ猫を連れて非常用通路を無我夢中に走って、地上に脱出することに成功した。一息ついて体を起こし、障壁によって完全閉鎖されたE-17ブロックの方へ振り返った。

 

「あの中に、まだハヤテとミラージュさんが……」

 

 フレイアが呟きながら障壁を眺めていると、背後から聞こえた子どもの泣き声に気付き、振り向くと目を見開いた。

 

 フレイアが目にした光景は、多くの避難民が密集して団を取り、いつ死ぬかわからないという不安に煽られ怯えていたものだった。

 

「空気が停まりそうなんだろ……?」

 

「こんなことならラグナに残った方が……」

 

 フレイアは、避難民の会話が聞こえて励まそうと、声を出そうとするが喉元で留まり押し込んでしまった。

 

 彼女は悩んだ。

「この状況で何と声を掛ければ良いのか……」と。

 

 言葉を選ぶほどその重さが乗し掛かり声は出なくなって、彼女は遂に頭を下げてしまった。

 

 避難民が不安に煽られ、どよめいている中。暗く静かな空間に伴奏が流れ出し、その音は次第に大きくなって彼らの視線は三つ並ぶビルの方へ向いた。

 

 

 伴奏のテンポに合わせて、三つ並ぶビルの屋上から一つ、二つ、三つ、四つと、光の柱が立ち上ぼっていき、その中からシュトラールを纏った四人の女神……

 

 

 

……ワルキューレが現れた。

 

 

 

『NEO STREAM』

 

「♪~~」

 

 歌い出しは美雲から始まり、それに続いてレイナが胸に手を当てて歌った。その歌声は静かに流れる水の波紋のように伸びていき、それを聞いていた人々はゆっくりと、心の中にあった不安が溶かされていった。

 

「綺麗……」

 

「ワルキューレ……」

 

 人々はワルキューレの歌に魅了され、自然と力が抜けていき目を閉じて安らぎを感じていた。それを見ていたフレイアは強く頷き、二匹のウミ猫を安全な場所に移動させるとワルキューレの元へ駆け出していった。

 

「♪~~!」

 

 少ししてマキナが両腕を腰の高さまで挙げて広げると、隣にいるレイナと合わせながら歌う。それに続くようにカナメが胸に手を当てて歌い繋げた。

 

 すると、カナメの近くにあった建物の屋上から一つの光の柱が立ち上ぼり、その中からシュトラールを纏ったフレイアも歌いながら現れ、五人の女神が揃った。

 

 

 

 一方で、マキナの指示によってE-17ブロックを移動していたハヤテとミラージュは半重力状態を利用して移動していると、切り離された巨大なケーブルを見つけた。

 

「本当に修理出来るんですか?」

 

「何とかなるって!!」

 

ハヤテは、そう言うと上着を後ろへ投げ捨てて、ケーブルへ近づいた。

 

「何とかって……あっ」

 

 ミラージュもハヤテに追い付くために上着を脱ごうとするがスポーツブラが中から見えて躊躇ってしまう。しかし、ミラージュはそんな場合ではないと自分に言い聞か勢い良く上着のチャックを下ろす。

 

「早くしろ!」

 

「ッ!分かってます!!」

 

 ハヤテに急かされ、慌ててしまったミラージュは脱いだ上着を後ろへ力強く投げ捨てると浮き止まっている状態から前へ進みケーブルへ向かった。

 

 二人は、衣服を一枚一枚脱ぎ捨てて進行方向を少しずつ変えながらケーブルに辿り着いた。そして、二人がケーブルに辿り着いた頃には、ケイオスで支給される下着のみとなってしまった。

 

 しかし、ハヤテとミラージュはそんなことを気にしている暇もなく、向かい側のケーブルに移り二手に別れて作業を開始した。

 

 ハヤテは、ケーブルに備え付けられていたモニターを見ながら坦々とキーボードを操作して、プログラムを書き換えていく。

 

「予備電源のケーブルをここにセットして…………ここはレイナが送ってくれたプログラムに切り換えて……」

 

 ハヤテがそう呟やいてキーボードを操作していると、別の所で作業をしていたミラージュが戻ってきた。

 

「凄い……本当に出来るんだ」

 

ミラージュは、ハヤテが精密機器を使って修理している光景を見て驚き、声を漏らしてしまった。ミラージュのその反応にハヤテも思わず苦笑いする。

 

「フラフラしてた頃、ちょっとな」

 

「いつ隊をクビをなっても、仕事には困らないってわけ」

 

「ったく。クビになることは前提かよ…と、これで良し」

 

 ふざけた会話をしながらも、ハヤテはシステムの書き換えを終えてモニターを閉じた。

 

「何か私に出来ることは?」

 

「後は向こう側の非常回路を開けばケーブルが繋がる。手伝ってくれ」

 

「了解」

 

 ミラージュは、足場を上手く利用ながら先に進んだハヤテの後を追うように最初に辿り着いたケーブルの方へ戻っていった。一足先にケーブルに到着したハヤテは、非常回路を開くためのハンドルに掴まると体勢を立て直して強く右に捻る。

 

「くっ!!うぉっ!?!!くっそ!力が入らね!」

 

 ハヤテは、ハンドルを強く握って捻るが半重力の影響で足に上手く力を入れることができず、滑らせてしまった。

 

 

 

 そしてエリシオン指令室では、アイランド船とのドッキングに備えてオペレーターたちが随時送られてくる情報をアーネストへ報告していた。

 

「ネメス、アップデート完了」

 

「電力グリッド、最適化しました」

 

 オペレーターたちの報告と共に、モニターに映し出されていたアイランド船の設計図に出ている赤い印が次々と消えていく。

 

『Δ1、コネクタハッチの解放に向かう』

 

『こちらΔ2、同じくハッチの解放に向かいます』

 

 自身の機体をを使って外壁の修理を終えて、通信を繋げたアラドとメッサーは、アイランド船後方にあるコネクタハッチへ向かった。アーネストは、重い腰を上げて立つと帽子の鍔をなぞる。

 

「後は………」

 

 アーネストの目線の先には、アイランド船の設計図があり、封鎖されたE-17ブロックには、未だに赤い印が記されていた。もしかしたらと不安を抱いたアーネストは、ミズキに指示を送り、E-17ブロックにいるハヤテたちの状況を確かめさせた。

 

「ハヤテ少尉!応答してください!ミラージュ中尉!…通信不良?別ルートでアクセスします!」

 

 ミズキは、目の前にあるモニターを見ながらキーボードを操作してハヤテたちに通信を送り続けた。

 

『な…やっ…る!……もど……!』

 

『わ……て…ま…!!』

 

 ミズキは通信を繋げることに成功するがノイズが酷く、二人の会話を上手く聞き取れずに頭を嗅げてしまった。

 

 

 

 そして、ケイオスの隊員たちが懸命に修理する中、問題が起こった。アイランド船の天井が爆発した。原因は付近にあったデブリが天井の一部に当たってしまったのだ。

 

 18番ブロックの天井の一部に穴が開き、そこから空気とともに様々な物が流れて出ていく。それが影響して歌は止まり、避難民は二回目の爆発により恐怖心に駆られて騒ぎだす。

 

「マズイ……♪~~」

 

 偶々、天井の穴が見えた美雲は、危機を感じてすぐさま歌を再開させ、避難民の意識を自分へと逸らした。

 

 

 

 ニナとベスは、モニターからその一連の情報を得ると焦りを覚え、アーネストへ急ぎ報告する。

 

「アイランド18番ブロックに損傷確認!緊急リペアシステム作動しません!!」

 

「艦長!このままではアイランドの空気が!!」

 

「………やむを得んな。マクロス・エリシオン!緊急ドッキング!」

 

 アーネストがそう指示すると、オペレーターたちは一斉に動き始める。するとエリシオンは、アイランド船の頭上を通って後方への移動を開始する。

 

『マクロス・エリシオンより、総員に告げる!!これより予定を早め、アイランド・ジャックポットとの緊急ドッキングを行う!!』

 

 オペレーターの通信により、アイランド船の外壁にいるケイオス職員やは急いで避難を開始する。

 

 

 

 一方、E-17ブロックで未だに非常回路を開くハンドルを回すことができずにいたハヤテは、ミラージュに足を固定させて力強く捻る。

 

「ぐっ!!ちくしょ~、あ?!だから強くって…………ッ!!エリシオン?!」

 

 ハヤテは、ミラージュに対し抗議しようとするがトランスフォーメーションを開始したエリシオンが目に入り、急いで元の姿勢に戻る。

 

「もっと近くで押さえてくれ!」

 

「えっ?」

 

「早く!!」

 

「えっ、あぅ、ぅんんもう!!」

 

 動揺してたミラージュはやけくそになり、足を窪みに入れてハヤテの胴回りに抱きつく。

 

「もっとしっかり!!!」

 

「は、はい!!!」

 

 怒鳴るハヤテに動揺しながらもミラージュは、腕の力を強めて胸を押し当てる。抱き付くという行為にミラージュは、顔を赤らめ鼓動が速くなるのを感じながら歯をぎゅっと噛み締める。

 

「もっと力を入れなさい!!そんなことじゃ何時まで経っても足手まといになっちゃいますよ!!?」

 

「うっせ!言われなくても!!」

 

 ミラージュの言葉に、歯を食い縛り更に力を入れていくハヤテ。ハンドルはギッギッと音をたてる。

 

「絶対に取り戻してやる!!俺たちの空をよぉーーーーー!!」

 

 ハヤテの叫びと共にハンドルは回りだして、完全に回りきると非常回路が開き、ケーブルから電流が流れ始め向かい側のケーブルを引き寄せて合体していく。

 

 

 

 エリシオン指令室でも、E-17ブロックのケーブルが繋がった事を確認でき、オペレーターたちの顔が一斉に晴れていく。

 

「アイランド・ジャックポット、エネルギーライン接続!」

 

「緊急ドッキングシステム、作動確認!」

 

「よぉ~し。マクロス・エリシオン、合体!!」

 

 ニヤリと笑ったアーネストは、オペレーターたちにそう指示を送るとエリシオンはアイランド船にゆっくりと近付き、展開されたコネクタハッチにドッキングする。

 

 すると、エリシオンのリアクターからできたエネルギーがアイランド船の不足していたエネルギーを補い、止まっていた緊急リペアシステムが作動して、アイランド船に空いた複数の穴を塞ぎ、異常を来していたシステムが正常に戻っていく。

 

「おぉ~空だ!!」

 

 青空を映し出した天井に、避難民たちは声を上げて歓喜した。彼らの視線はエリシオンのドッキングと共に歌い終わったワルキューレへと向いていった。

 

「ワルキューレーー!!」

 

「素敵ーー!!」

 

「ありがとーーーー!!」

 

 鳴り止まない歓声を浴びなから、ワルキューレメンバーはポーズをとる。しかし、美雲は軽く手を降るとその場から去っていった。

 

 そしてE-17ブロックの重力システムも正常に戻り、封鎖が解かれて障壁が下に降りていく。その数分後、アラドからケイオス職員に向けて通信が入った。

 

「皆、ご苦労だった。今報告があった。新しいスポンサーが見つかったぞ」

 

 アラドのその言葉により、隊員たちに緊張が走り話を聞き入る。すると今度はアーネストが、アラドと変わって話始めた。

 

「球状星団の資源開発を行っている幾つかの企業と、レディーMが話を着けた。新しい任務は……球状星団の奪還!」

 

「いっっよっしゃーーー!!」

 

 アーネストの話を聞いたチャックは、嬉しさのあまり操縦桿を離してガッツポーズを取る。マキナとレイナも、ハイタッチをして喜びを分かち合っていく。

 

 しかし………

 

 

『ちょっと!!どうするんですかーこれーーー!!』

 

『っておい!!動くなって、アブねーだろ!!』

 

『そっちこそ!!しっかりと掴んでてくださいよ?!!』

 

 

 ………と大音量と共にビルに取り付けられた巨大モニターに映ったのは、非常回路のハンドルにしがみつくハヤテとその彼の腰にぶら下がるミラージュだった。更にここで問題なのが、彼らの格好だ。二人を見るカップルは、頬を赤らめて互いに顔を反らし、大人は子どもたちの目を隠す。

 

 フレイアに関しては、下着姿の二人を見て顔を赤くし、ルンをピンク色に点滅させている。

 

「秘め事真っ最中」

 

「何やってんだかー」

 

 モニターを見ていたレイナはニヤニヤしはじめ、マキナは呆れながらカメラとモニター付きのドローンを飛ばした。

 

 ドローンがハヤテたちの元に行くと、マキナが通信機を通してハヤテたちに話し掛ける。

 

『ハヤハヤ~、ミラミラ~。おっつかれ~』

 

 マキナからの通信と共にドローンは、ハヤテとミラージュへ更に近付いてモニターを起動する。そして、ドローンのモニターの右上に赤文字でこう書かれていた。

 

 

 

●RECと。

 

 

 

ミラージュの動きが、時間が止まる。

 

 

 

あぁ、マキナ。なんて惨い事を………。ミラージュは次第に顔を赤くし、口を震わせて、動揺を隠しきれず悲鳴を上げた。

 

「ファ、アァア~……フウァアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ミラージュの奇声にも等しいこの悲鳴は、アイランド船全域に滞りなく、響き渡っていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

惑星ラグナ

 

 アイランド船が、エリシオンとドッキングを成功させたほぼ同時刻。

 

「バレンス・チャーツ分離」

 

「出力安定、重力場形成」

 

「シグル・バレンス……飛翔!」

 

 普及作業を終えたシグル・バレンスは、多数の部隊を残し故郷であるウィンダミアに向けて日が暮れるラグナの空を飛び立つ。

 

 そしてシグル・バレンスの中に存在する時の神殿で、ハインツとロイドは祭壇の上に静かに立っている。静寂という空間に包まれたこの神殿でハインツは静かに語り始める。

 

「お父様は命と引き換えに我らの空を取り戻してくださった……私はその志を受け継ぎ、球状星団を立派に導いてみせる」

 

「本当に、グラミア様のご意志をお継ぎになられますか?」

 

 と後ろで控えていたロイドが割って入り、ハインツは後ろを振り向いた。

 

「どういう意味だ?」

 

 ハインツは、ロイドの質問の意図に理解できず、首を傾げた。ロイドは真剣な眼差しでハインツを見ながら口を開く。

 

「………ご遺言をお預かりしております」




次回はオリジナルもいれていきます

次回  No.15-1 決別レゾリューション
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