Fate Kaleid Divider   作:オスミルク

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とある英雄ではない彼女の話

雨季 ジメジメとした季節、肌にまとわりつく湿気が嫌になってくる季節なのだが、昨日 一昨日の天気予報通り今日はやけに天気が良い。

そんな天気のおかげだろう、イリヤ達は三人で仲良く買い物をしに出掛けた。

自分も先日シグマさんに紹介だけした山の秘密基地の整備に行くべきだろうか。

何せ素人の木造建築だ、湿気や雨漏りで色々と道具がダメになってしまうかもしれない。

 

そんな事をリビングで兄の料理姿を見ながらぼんやりと考える。

 

「なぁ、兄ちゃん そんなに弁当用意してどうしたんだ?」

 

きっと大勢で出かけるのだろう、およそ十人前程度に重ねられたお弁当の山を見て 聞いてみる。

 

「ん? ああ、ちょっと知り合いが色々な料理を食べたいって言うから色々と用意してるんだ」

 

そう言う兄ちゃんの前には確かに様々な調理器具が並べられており、それを全て同時に使いこなしている。

何か煮込んでいる合間にオーブンで何かを焼き、その間にボールで卵か何かをかき混ぜ、氷の入ったボールに置いて冷やす、その間でも野菜や肉を丁寧にカットしフライパンへ放り込んでいく。

うん、流石兄ちゃんだ。

まるで料理アニメか何かを見せられているような早さとタイミングの正確さだ。

やはりセラさんの一流クラスの料理人の技術を見て盗み、自分のモノへと昇華させただけはある。

 

「そんなに食べきれるの?」

 

「ん~…、たぶん全部食いきるな…」

 

少し考えてから、いや、むしろ足りないんじゃないか? と兄ちゃんら重箱を見て小さく呟き唸り始める。

どんだけの人と出かけるんだよ…、

いっそ、普通にお店とかで注文した方が良いのではないだろうか?

と思っていると、玄関のチャイムが押される。

 

「悪い士貴 ちょっと出くれないか?今ちょっと手が離せないんだ」

 

「分かった~」

 

と代わりに玄関へ向かう。

女の人だろうか、青いスカートが扉の曇りガラスから見え隠れしていた。

 

「はい、どちら様でしょうか?」

 

ガチャリと扉を開けてると、そこには麦色の髪をシニヨン型にまとめ頭頂部からアホ毛を生やし緑色の瞳と一つの神秘的な剣の様な雰囲気、それと僅かな男性的さを含んだとても綺麗な女性が立っていた。

服は青いセーラー服に赤いリボン、確かとなり町の女子校 聖ジョージ学園の制服、袖には生徒会と書かれた腕章と何の変哲もない目を引く竹刀袋。

 

新聞とニュースで持て囃されていたのを見た覚えがある。

確か名前は竜崎 アルトリア 全国中学校剣道大会 三年連続優勝、そのあまりにも圧倒的な実力はあの冬木の虎をも越えると誰かが言っていたのを思い出す。

 

でも何でここに居るんだ? ここオレの家だよな?

藤村さんの家じゃ無いよな? 竹刀持ってるし決闘の申し込みとかじゃないの?

 

「御免下さい シロウ…、君はまだいらっしゃいますか?」

 

……うん…、普段はシロウ呼びなのだろう、少し引っ掛かってそう口にする。

 

「…少々お待ち下さい…」

 

そう一言置いてから、スーっと肺に空気を溜め込み、一気に吐き出す様に声を張り上げる。

 

「ニイちゃーん!!

金髪緑眼の美人さんがいらっしゃったよー!!」

 

近いのだから直接行けば良いものを 無意味に大声で兄を呼んでみる。

 

数秒の思考の間か もしくは料理の手間時間かを置いて ドッタドッタと慌ただしい足音を発てながら兄ちゃんが現れる。

「なぁ…ッ!!」

 

竜崎さんを見てあり得ないモノでも見たように驚愕する、が大きく深呼吸をして気を落ち着かせる。

 

「……悪い 竜崎 弟が急に大声だしたりして…、でもどうしたんだ? あそこの広場で待ち合わせしてたよな?」

 

「いえ、急に押し掛けてしまったのはこちらですシロウ。

ちょっと面倒な輩に絡まれてしまいまして…、

逃げていたらこの家の近くまで来ていたのでつい…」

とげっそりとした様子で言う竜崎さん。

 

「面倒な輩? 竜崎ならどんな奴が来ても大丈夫そうなものだと思うんだが…」

 

「はい、まぁ確かに本来ならその通りなのですが…、本当に面倒な相手でして……」

 

「お前がそこまで言うなんてよっぽどなんだな…」

 

やはり親しい仲なのだろう、オレの存在などわりと忘れられているんじゃないかと、思う程度には会話が進んで行く。

普段なら気にしないが、人物が人物なだけに割り込ませて貰う。

 

「ところで兄ちゃん、何でうちに全国中等学校剣道大会連続優勝者さんが来ているの?」

 

兄ちゃんも弓道部のエースで 運動系の部活同士何かしらの友好関係が有るのかもしれないが、そう離れてないとはいえ、となり町からわざわざ訪ねて来るのはどういう関係か流石に気になる。

 

「んッ…あ~…えっと……」

 

「シロウは私を助けてくれたんです、」

 

そう目を泳がせていた兄ちゃんの代わりに竜崎さんが話し出す。

 

何でも竜崎さんの学校の生徒がある日 失踪してしまい、とある町 に行ったと目撃情報を聞きその町への道案内を、ちょうどその町へ用事があった兄ちゃんがしてくれて色々あって、その後も交流が続いているのだそうだ。

 

「成る程…」

またオレの姉候補が増えたのか…。

これでオレが知るかぎりでは四人目か?

他に候補が居てもおかしく無いのが兄ちゃんの怖いところ。

さっさとセラさんか桜さんとくっつけば良いのに…。

 

「で、どうするんだ? 竜崎 オマエの言うには近くに 厄介な奴 が居るんだよな?」

 

「そうなんですよね…アレがそこら辺に居ると思うと…、しかしせっかくの士郎のお弁当を無駄にするなんて絶対にあり得ませんし…」

 

う~ん と二人で唸りだす。

もしかしてあの料理って竜崎さんに作ってたのだろうか。

 

「じゃあ、家で食べてけば良いじゃん何か不味いの?」

 

「…良いのですか?士郎」

 

「あー、そうだな、お弁当を家で食べちゃいけないなんて決まりは無いんだし 家で食っちまおう」

 

 

 

「じゃあ二人の邪魔にならないようにオレも出掛けてくるな~ 、誰も居ないからってあんなことやこんなことをしちゃダメだぞ~」

 

「いやまて士貴!!なに言ってるんだオマエ!!」

 

準備は予めしていたので、怒る兄ちゃんから逃げるように家を出て秘密基地のある山へ向かう。

 

士貴が出掛けたその後、兄弟のやりとりを見ていた竜崎が口を開く。

 

「あの子が士郎の言っていた弟さんですか…」

 

「ああ、士貴だ 今は出かけてるけどイリヤって言う妹も居るんだ 」

 

話には聞いていた。

衛宮 士貴 シロウに残された唯一の両親からの忘れ形見で幼い頃から事件に巻き込まれ続け、

去年の春に交通事故に合い三ヶ月間 意識不明の重体になっていた少年。

 

正直の話 あの少年が玄関から現れた時 敵意等は感じず、息をする様な正確さと自然さでナイフで切り裂かれる未来が見えた。

 

ただの直感だが決して無視は出来ない感覚……。

 

…いえ、今は止しましょう、今日はご飯を食べに来ただけなのですから。

 

「では士郎お弁当いただきますね!」

 

「では、どうぞお召し上がり下さい」

 

 

この後 帰って来た女性陣とひと悶着あるのだがそれはまた別の話。

 




実はここだけの話この世界線では宇宙的恐怖が存在して
士郎と竜崎は巻き込まれてたりする。

そのうち小説として描きたい欲はあるけどいつになる事やら……

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