『もしも私があの空に飛びたてたなら』   作:黑羽焔

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2019/3/17 『誤字報告』での誤字修正完了


第3話『女子が集まれば……姦しい?』

side:レン

 

空中都市『ユグドラシルシティ』、新生ALOになり実装され、世界の中心部である世界樹の上にある大都市。スイルベーンの武具店で出会ったエルフ族のプレイヤー、リーファさんの案内の元、私とフカは大通りにある武具店へと訪れた。

 

「『リズベット武具店』。ここがリーファさんの知り合いの職人さんのお店……」

 

「こんな一等地に店構えてるとなると。ちょっとしたセレブな気分だね、レン♪」

 

いかにも古めかしいか武具工房ですと紹介しているようなお店かと思っていたけど、私が住んでいる町の少し高そうで洒落た外見であった。……お金は足りるのでしょうか。

 

「セレブ御用達のお店じゃないんだけどね……行こっか」

 

私のぼやきにリーファさんが気を使ってくれたみたいだ。私は意を決すると、先頭を行くリーファさんに続いて武具店へと入った。ショーケースや壁には様々な武器が納められてて、その几帳面さから店の主のこだわりが見て取れます。

 

店内を見渡すと明るい色の茶髪、紺色を基調をした衣装が特徴の女の子がいました。猫耳と尻尾が特徴的な外見から『ケットシー族』のキャラクターでしょうか。

 

「きゅるる」

「ピナ、どうしたの?」

 

備えられた小テーブルでお昼寝をしていたペールブルーのトカゲ?、『ピナ』と呼ばれた生き物がお茶をしていた少女に呼びかけます。

 

「やっほー、シリカちゃん」

 

「リーファ、早かったですね……そちらの方たちは?」

 

「サクヤの方はすぐに終わってね。久しぶりにスイルベーンを回っていたら旧知の仲とそのお友達と会ってね」

 

「ドーモ、旧知の仲デス」

「こ…こんにちは」

 

リーファさんがケットシーの子を『シリカ』と呼びました。リーファさんのお友達でしょうか? ALOでは女性プレイヤーも多く見受けられますが、こうやって話すのはフカ以外ありません。今日は本当に出会いの多い日のようです。フカは節操もないがフレンドリーな挨拶で、反面私はについ口ごもって挨拶しました。

 

「あ……どうも、はじめまして」

 

シリカさんも礼儀正しく挨拶を返してくれました。ところで店主さんはどこでしょう? 店名の通りならシリカさんは店主ではなく、ここの店員であるかもしれませんが……。

 

「シリカー! 武器のメンテナンス終わったわよ! ……あら、いらっしゃいませ~」

 

店の奥からまた少女が出てきました。ベイビーピンク髪の鍛冶職なので種族は『レプラコーン』、武器のメンテナンスということはこの人が店主の『リズベット』さんでしょうか。リズベットさんがこちらに気づいたのか、営業モードといった感じの対応してくれました。商家の末妹である私から見ても完璧な接客ですが……、

 

「リーファさん、ここ武具店でいいんですよね」

 

「そうだけど」

「です」

「きゅるる~」

 

リズベットさんの装いは赤を基調とした衣装に軽鎧。ALOの世界ですが、私の中で鍛冶職人と言えばつなぎ等の作業着というイメージでしたので、思わず真顔で聞いてしまいました。

 

「……レン、もしかしてメイドカフェとかそっちのお店だと思った?」

 

「……いや、れっきとした武具店兼鍛冶場なんですけど」

 

フカとリズベットさんからツッコまれた。リーファさんとシリカさんもぷっと噴き出して笑っておりました。……もしかして、盛大にボケてしまった!

 

「ま、いいわ。……いらっしゃいませ! 『リズベット武具店』へ、ようこそ!」

 

武具店の店主であるリズベットさんがすぐに元気ハツラツな声と営業スマイルに切り替えてきます。ふと、商売を御こした両親と同じような営業精神を感じられました。

 

 

 

「へ~、リーファの旧ALO時代からの知り合いなんですか」

 

「そ。あ、アタシのネームは『フカ次郎』だよ。ほら、レンも」

「『レン』……です……よろしくお願いします」

 

店内へと案内された私たちは、リーファさんがリズベットさんとシリカさんに簡単に経緯などを説明してくれて、互いに素性を紹介しそのまま本題へと入ります。

 

「それでご用件のほうは?」

 

「悪いね。今回はレンだけなんだ。ほら、欲しいのは自分で言わなきゃ」

 

「うん……その。弓スキルを上げたくて、スイルベーンのお店で探していたけど、これっていった物が見つからなくて……それと、短剣も新調しようと」

 

「偶然目撃した私が紹介することにしたの」

 

「なるほど……言っておくけど、あたしのお店の武器は要求ステータス結構高いわよ」

 

「そこは大丈夫です。始めてから1か月ですけど」

 

「凄い! 1か月でここまで上げたんですね」

 

私のステータス画面を出すと、シリカさんが感慨の声をあげます。

 

「1か月、あたしが育て上げました」

「その筋はお世話になったよ」

 

「だけど、肝心の弓スキルがほぼ初期値ね」

 

「これから上げるつもりだったんですけど……弓が大きすぎるやつしかなくって」

 

「見た目の要望を出されたのは、見栄っ張りな客くらいだわ……」

 

腕を組みうーんと考え込むリズベットさん。私も見栄っ張りな客扱いなのでしょうか。

 

「……ま、適当に何個か見繕ってきましょうか。あ、シリカ。忘れないうちに渡しておくわね」

 

リズベットさんが指を振ってウィンドウを開くと、インベントリーにあるアイコンをタップします。すると、粒子が集まってアイテムが形作られます。アイテムは短剣で、それをシリカさんに手渡します。

 

「シリカはまめに持ってきてくれるから、楽で助かるわ」

 

「いつも、ありがとうございます」

 

シリカさんが短剣を引き抜きます。私の使っている物より明らかに強そうな武器です。

 

「何点か見繕ってくるからシリカとリーファは少しの間、お客様2人の相手をしてて」

 

「「は~い」」

 

リズベットさんが店の奥へと引っ込んでいきました。

 

「待っている間、お喋りでもしましょうか」

 

「賛成~」

「ちょっと、フカ」

 

リーファさんに促され、フカが手をあげて賛成の意を示します。私の武器の商談だけのつもりだったんだけど……。

 

(減るものじゃないし、遅かれ早かれ私以外のプレイヤーとも交流することになるからその練習だと思えばいいじゃん)

 

フカがそう耳打ちをしてきます。まあ、フカの言う事も一理ありますし、付き合うとしましょう。リーファさんとシリカさんがアイテムスロットからお茶とケーキを出すと、それを肴にまずは他愛のない会話、世間話から始まりました。

 

夏休みが入ってからALOでの美優との交流以外だと、電話での家族とのやり取り、直接会話だと同じマンションに住む一番上の姉夫婦とその子供くらいしか会話することのない私でしたが、リーファさんとシリカさんとは不思議と会話は弾みました。フカのフォローもあったけど、2人とも気さくに話しかけてくれて、どこか美優に近いような感じがしました。

 

会話が弾むにつれ馴れてきた私は、デビューしてフカと出会ってからこの1か月のVRゲームでの冒険譚を語りました。今はフカに引っ張られるような形ですが、互いに笑いあったり苦労した話など色々。

 

「なんだか、レンさんの苦労が少しわかる気がします」

 

「どういうことですか?」

 

「私もVRゲームを始めた当初はそんな感じでしたから」

 

シリカさんもそのかわいらしい容姿から、ギルドへの勧誘や結婚(VRゲームでそれが出来る事を知った私は驚いたのは言うまでもない)の申し込みを度々受けて、苦労したと語ってくれました。それ以上に、楽しかったり感動した出来事があったからこそ、VRという世界にのめり込んだそうです。

 

(シリカさんもなんか、私とは違うけど苦労してるんだなあ)

 

VRゲームを動かしているのはリアルの人間だから、会話やしぐさで人が滲み出ると美優が言っていたのを思い出しました。だけど、シリカさんからは演じているという感じはしませんでした。

 

「でさ、あのおかっぱ少年とはどうなったの?」

 

「レコンの事? いったい何を言ってるんだか」

 

「またまた~」

 

次の話題を探ろうとしていると、フカはリーファとの話を咲かせています。旧友の間柄で偶然再会を祝してなのか心なしか私と話すよりも弾んでいるような気がします。

 

「そういえばさ、フカはリーファさんとどういった関係なのかな」

「私も気になります」

 

話題をフカとリーファさんの関係について振ってみると、私と打ち解けることができたシリカさんも気になったのか話題にのってくれました。

 

「関係? あ~、そっか。レンにはまだ話したことがなかったね」

 

「なになに、何の話。あたしも混ぜて」

 

リズベットさんが店奥から戻ってきました。興味をもったのか話の輪に加わる気満々のようです。

 

「アタシとリーファが出会った昔話をしようとしたところだよ」

 

「へぇ~、面白そうだしお客様も興味津々のようだから商談はその後にしましょうか」

 

「商談はいいのかよ!」

 

「いいのよ。リーファが同族のお友達を連れてくるなんて珍しいわけだし」

 

……なんか話の筋が大分ずれているような気がしますが、これも女子会パワーという事にしよう。

 

「レンが昔のALOについてあまり知らないからその話もしなきゃだね」

 

フカからはVRゲームやALOについて教わりましたが、この世界に長らく身を置いている頃のフカの事を親友である私でさえも知りません。フカの見てきた世界を知る意味でのいい機会が巡ってきたようです。




これで『ガールズ・オプス』メンバーが集合(GGO編前)。ピトフーイよりも先なお茶会となりました。

次回は当作品でのALOフカ次郎の過去語りとなります。原作よりもフカ次郎の設定を改変するかもです。

〈人物設定〉
●シリカ
SAOヒロインの一人。当作品での女性プレイヤーの苦労(主にSAOのときだが)でレンとの話題の共有ができるかなという事での出演。

●リズベット
SAOヒロインの一人。今作での話題発起人兼ツッコミ役。後の話でレン専用装備の作成などでの出演。

●レコン(名前だけ)
すまぬ。多分これ以降の出番はない()

続編用アンケート:ユウキに関して

  • 原作筋語りのみ
  • 原作+フカ次郎→レンとのガチデュエル
  • ゲーム版設定入りでもいいから本作品参加

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