東京喰種:re 不幸な少女の物語   作:ピークA

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ようやく出来た第二話


二話 もう一人の梟

貝島えりかとの戦闘から二ヶ月後

 

「やあ、オウル。アオギリの樹は慣れたかい?」

 

「あ・・・エトさん・・・」

 

彩は若干怯えながら応える。

 

「ある程度は・・・」

 

「ふうん。生きている人間を喰えないのに?」

 

「そ・・それは・・・」

 

「ま、元人間だから仕方ないだろうけどね。でも、いつまでもアヤトくんに頼って殺して貰ってるだけじゃダメだよ。喰種(わたしたち)の敵は多い。アヤトくんはSレートだけどけして負けないわけじゃない。さすがに特等相手だと負けちゃうかもだし」

 

「はい・・・」

 

「だからもっと喰べて赫包のRc細胞を増やして力をつけなきゃ」

 

「あの・・・力をつけたらなにか変わるんですか?アオギリの樹の目的ってなんなんですか?」

 

「力をつけたら今までよりもっと高いところで息を吸うの。鉛色の雲を突き抜けてね。そして嘘つきを見つけ出さないと・・・ね・・・」

 

(嘘つき・・・?)

 

「そうだ!面白いもの見せて上げる!」

 

エトは愉しそうにケタケタ嗤う。

彼女は嘉納の研究室に連れてこられた。いくつもの棺桶状の水槽が壁一杯並ぶ。そのなかでも一際大きな円柱状の水槽の前に立つ。

 

「見てごらん、オウル」

 

「あ・・・」

 

水槽の中に老人がいた。じくりと背中の赫包が疼く。

 

「彼は芳村功善。SSSレートの喰種『偽・隻眼の梟』、君の中に入っている赫包の持ち主だ」

 

「偽・・・?」

 

「そ、本物の『梟』・・・自分の子供を庇うためだかなんだか知らないけど全く同じ姿をしていたんだ。そして7ヶ月前の『あんていく殲滅戦』で守るべき物も守れなかった挙げ句私たちに捕まった愚かな喰種」

 

「そんな・・・」

 

彩は絶句する。自分の子供を、居場所を守るために頑張っていた男の成れの果てがこの現状なんてあまりに不憫だ。

 

「この人曰く『奪う行為は等しく悪』なんだってさ。人も喰種も奪い合いの中で生きている、だから『生きるとは罪を犯し続けること、命とは悪そのもの』なんだって。」

 

「命は悪・・・」

 

「そ。そんなカッコいいこと宣っていた人がこんなザマになってるなんて笑っちゃうよねぇ。でもその通りだと思うよ。正義と悪はその時、人に応じて全く違う。でも分かってることはある。この世界は歪んでる」

 

「?」

 

「アオギリはね、その歪みをめちゃくちゃに()す為の組織なの」

 

「エト、オウル」

 

アヤトが後ろから声をかける。

 

「14区の『青烏(ブルークロウ)』が俺たちに逆らおうとしてるらしい。」

 

「リーダーは誰だっけ?」

 

「羽赫のA+レート喰種。ヤタガラス」

 

「ふーん。その程度ならアヤト君とオウル。あとナキさんでリーダーをシめるなり殺すなりして従わせよう。行って」

 

「わかった。行くぞオウル」

 

「あ、はい!」

 

アヤトは彩とナキと共に14区に向かった。エトは研究室のある棺桶のような水槽の前に行く。

 

「あやっぴは気付かなかったね。可哀想にねぇ」

 

水槽の中の少女に話しかける。

 

 

14区

 

ダンスができるクラブのような場所。その場所に青烏達とアヤト達は会っていた。

 

「なんだよ。アオギリは人員不足なのか?こんなガキ共寄越しやがって!!」

 

青烏のリーダー、ヤタガラスはアヤト達を嘲った。

 

「あ?」

 

アヤトはケンカ越しになる。

 

「ア、アヤトさん・・・」

 

「分かってるよ」

 

「なんだよガキ共」

 

「あんたら何が不満なんだ?喰い場を荒らした訳じゃないはずだぞ」

 

「てめぇらが気に入らねえ。この区の他の喰種どもを従わせやがって。おかげでこの区での俺達のメンツは潰れちまう」

 

「だったらお前たちもアオギリにつけよ」

 

「できるわけないだろ!てめえらみたいなガキ共に交渉を任せるような組織に従えるわけねえだろ」

 

「俺らみたいなガキでも交渉が大丈夫だとアオギリの幹部が判断したんだよ。おまえら格下と思われてるんだろ」

 

「・・・わかった。てめえらぶっ殺す!」

 

ヤタガラスは赫子を出す

 

「上等だ」

 

アヤトが背中から赫子を噴出する。

 

「オウル下がってろ!ナキ!」

 

「は、はい!」

 

「おう!てめぇら暴れろ!!」

 

ナキはブレード状の赫子を噴出する。彼の背後に待機させていた白スーツの男たちも戦闘体制に入る。

 

「やってやるよ・・・てめぇらこいつらをぶっ殺せ!」

 

ヤタガラスは背後のペストマスクの喰種達に指示出す。アヤトは羽赫の結晶を撃ち出しヤタガラスの頭部を狙った。

 

「ぐっ!?」「がは!?」

 

ヤタガラスを庇った青烏の喰種たちがうめき声をあげ絶命する。

 

「ひゃっはぁぁぁぁぁ!!見てるか神アニキぃぃぃ!!」

 

「行くぞ!ナキのアニキを死なせんなよぉ!」

 

ナキと白スーツは青烏の喰種たちを殺害していく。

 

「ちぃっ!」「こいつら強え!」

 

青烏の喰種達の戦意が徐々に下がっていく。

 

(クソ!ふざけんな!こんなガキ共に敗けるだと・・・!?俺の青烏が!?)

 

アヤトと戦っているヤタガラスは苦虫を噛み潰したような顔になる。そのとき視界の端に彩を見つけた。ニヤリと笑いまだ残っている喰種たちに怒鳴る。

 

「てめえら!女のガキを狙え!」

 

三人ほどの喰種が彩を狙う。

 

「死ねやクソガキ!」

 

甲赫の喰種が彼女を襲う。しかし彼女はブレード状の赫子で迎え討った。

 

「な!?」

 

「はぁ!!」

 

喰種の攻撃を弾き返し周囲に羽赫の弾丸を撃ち込む。

 

「ぐはっ!」

 

「ぎゃぁ!?」

 

「がっ!?」

 

彼女に襲いかかってきた喰種たちに羽赫の弾丸を叩き込み戦闘不能に追い込む。その光景にヤタガラスが驚く。

 

「な!?くそ!!」

 

「よそ見すんなよ」

 

一瞬目を離したヤタガラスにアヤトの羽赫の結晶を撃ち込む。胴体や足を撃たれヤタガラスは倒れる。

 

「で、まだやんのか?」

 

「畜生・・・」

 

「アオギリに忠誠を誓うか?青烏のヤタガラス?」

 

「わかったよ・・・。くそったれが・・・」

 

「上に報告するよ。青烏はアオギリに参入すると」

 

そのあとアヤトたちはアジトに帰った。

 

「リーダー・・・」

 

「頭・・・」

 

青烏のメンバーがヤタガラスに話しかける。

 

「覚えてろよ。クソガキ共」

 

ヤタガラスの目には憎悪の炎が宿っていた。

 

 

アオギリの樹 アジト

 

「青烏はアオギリに忠誠を誓うといっていた」

 

アヤトはタタラに報告していた。

 

「そうか。ところでアヤト、オウルの調子はどうだ?」

 

「別に、特に問題はない」

 

「そうか・・・アレは換えがきかないからな」

 

「だったらアジトに残した方がいいんじゃないか?」

 

「ダメだ。アレにはもっと経験を積ませて戦えるようにしておかないとな」

 

「分かったよ」

 

「アヤト。アレに入れ込みすぎるなよ。所詮アレは目的のための駒でしかない」

 

「・・・」

 

アヤトはタタラの部屋を出る。

 

「ちっ・・・」

 

彼は不快げに舌打ちする。

 

(何が駒だ。人間を喰種に変えるなんてイカれてる。そこまでして何がしてぇんだアオギリは)

 

歩いているとすすり泣くような声が聞こえる。

 

「またか・・・」

 

彼はその場所へ向かう。

 

「オウル。また泣いてんのか」

 

「あっ。アヤトさん」

 

「さん付けなんてやめろ」

 

「じ、じゃあアヤト・・・くん・・・は?」

 

「それでいいよ。また家族に会いたくなったのか?」

 

「うん・・・おかあさんに会いたくて・・・それにあと人達・・・青烏の人達を傷つけてしまったから」

 

「なんであいつらのためにお前が泣くんだ」

 

「だって痛かっただろうし・・・彼らにも守るべきものがあったかも知れないのに・・・私たちが奪ってしまうんだって考えると」

 

「そんな事してたら身が持たないぞ」

 

「そうなんだけど・・・でも私たちも彼らももっと穏便に話し合うことはできなかったのかなって」

 

「無理だろ。喰種の世界は強い奴が支配する。他はそれに従うしかない。守りたいなら強くなるしかない」

 

「アヤトくんにも守りたいものがあるの?」

 

「・・・別にねえよ」

 

「そうなんだ・・・」

 

彩が黙る。アヤトはそのままどこかに行こうとしたら彩が声をかける。

 

「ア、アヤトくん!」

 

「なんだ?」

 

「あの・・・私のことはアヤって呼んで。オウルじゃなくて」

「・・・ちっ。分かったよ。アヤ」

 

その時、ナキがアヤトに走りよってきた。

 

「アヤト!今すぐ女を探せ!」

 

「は?」

 

「なんかカノウがヒケンタイが逃げたとか何とかでさかしてんだけどそれを手伝えってタララが!」

 

「わかった。それからタララじゃない、タタラだ。アヤ!行くぞ!」

 

「うん・・・」

 

三人は駆け出した。

 

???side

 

(クソ、ここはどこだ?あの時変なクスリ嗅がされて、意識を失ってからどれくらい経った?何か身体も変だし、身体も濡れてる)

 

少女は周囲を見渡す。自分が入っていたであろう水槽がいくつも並んでいた。

 

(・・・とりあえず逃げるか)

 

彼女は出口へと向かう。その姿をエトはケタケタ笑いながら見ていた。

 

「被献体が逃げた!」

 

「探せ!」

 

男達の声が聞こえる。隠れていた少女は苛立つ。

 

(チッ!このままじゃダメだ。何処か別の場所に隠れないと)

 

彼女は通路を見て、男たちがいなくなったのを確認してから移動し、ある部屋に入った。

 

(ここは?)

 

その部屋にはベッドやトイレ、風呂など必要最低限の物しかなかった。

 

(取り敢えず、暫くここに・・・)

 

隠れようと思った矢先、扉が開き人が入ってきた。その人物は彼女を見て驚愕していた。そして彼女もその人物をみて驚愕した。

 

「おまえ・・・朝霧か!?」

 

「なんで・・・雫芽さんが!?」

 

「アヤ!見つけたか!?」

 

アヤトが部屋に入ってくる。アヤトが入った後、アヤは扉を閉じた。

 

「アヤ?」

 

「ごめん・・・アヤト君・・・」

 

「おい、朝霧!なんでお前が?!ここはどこだ!?」

 

「落ち着いて、雫芽さん・・・今説明するから」

 

彼女は雫芽さりなに自身の置かれた状況やさりなの身体について説明した。

 

「つまりなんだ?私もお前も半喰種だって言いてぇのか?」

 

「うん・・・」

 

「んなもん信じられるわけ・・・!」

 

彩は喰種としての能力を発現させる。背中からガス状の羽が生え、右目が赫眼となる。

 

「・・・!マジかよ・・・」

 

「・・・うん」

 

その時扉の外からナキの声が聞こえた。

 

「おい!アヤ!ヒケンタイは見つけたのか!」

 

「いえ、見つかってないです」

 

彩はナキにそう答え、ナキは何処かに行った。

 

「おい、アヤ・・・」

 

「ごめんなさい、アヤト君・・・。私、雫芽さんを逃がしたい」

 

「本気か?」

 

「うん。手伝って下さい」

 

「・・・チッ」

 

「私を逃がす?お前が?なんのつもりだ?」

 

「私は雫芽さんに生きて欲しいから。立って」

 

彩は彼女を立たせ、

 

「ごめん」

 

と呟いたあと彼女の腹部を思い切り殴り気絶させた。

 

数十時間後

 

「・・・っん?」

 

雫芽さりなは暖かいベッドの上で目を覚ます。

 

「あれ・・・?」

 

彼女は部屋を見回す。朝霧彩がいたあの部屋と違い

普通の部屋だった。

 

「あ、起きたの?」

 

彼女は声の方へ向く。黒髪のショートカットの女性がいた。その女性はドアに向けて声をかけた。

 

「おい!起きたぞ!」

 

「今行くよー」

 

ドアの外から男の声がする。数秒後ドアが開き白髪に眼帯を着けた青年が顔を出す。

 

「ええと、初めましてだね。僕は金木研。君は?」

 

「・・・雫芽さりな」

 

「さりなちゃんだね。宜しく」

 

青年は手を差し出す。

 

「あ、はい・・・」

 

彼女は青年と握手する。

 

「あの、私は?」

 

「ああ、路地裏に倒れていたんだ。このローブを羽織って」

 

それはアオギリの構成員の使っているローブだった。

 

「あ・・・」

 

「実は手紙が内側のポケットに入っていてね。そこに君がアオギリの木で半喰種にされたことが書いてあったんだ」

 

「!」

 

「一応、これを食べてくれないかな」

 

彼はサンドイッチを差し出した。そのサンドイッチを食べる。すると口の中に凄まじい不味さを感じ、吐き出した。

 

「うぇ!?」

 

「味覚が変わってるね」

 

「味覚・・・?あぁ、確か喰種は人の肉しか食べられないんだっけ?」

 

「うん。後は珈琲か水。それから寝てる間にナイフで指の腹を少し切らせてもらったんだけど・・・」

 

「は?」

 

「いや、止めたんだ、止めたんだけどね・・・」

 

チラリと青年は女性を見る。

 

「直ぐに治ってたぞ」

 

「流石にその方法は駄目だったんじゃないかなぁ?」

 

「・・・」

 

さりなは青年と女性を睨む。

 

「まあ、君が半喰種であることはある程度理解出来たからさ、暫くここで喰種のヒトの世界での身の隠し方や喰種の世界の事を学んだ方がいいと思うんだ」

 

「え?」

 

「駄目・・・だったかな?」

 

「・・・いや、なんであんた私に良くしてくれるんだ?」

 

「僕も君と同じだから」

 

青年は眼帯を外す。普通の目だったが、白目の部分が黒く染まり、瞳が紅く変わる。

 

「半・・・喰種?」

 

「うん。君と同じくアオギリの木の狂科学者、嘉納に半喰種に変えられた」

 

「ちなみに私は半喰種じゃなくて喰種だから」

 

女性の目が赫眼に変わる。

 

「喰種・・・!?」

 

「喰種の事は喰種に聞いた方が良いでしょ」

 

女性はキッパリと言う。

 

「あんたら、何者なんだ?」

 

「僕たちは・・・しがない喫茶店の従業員だよ」

 

「喫茶店・・・?」

 

「うん。『:re』っていう喫茶店だよ」

 

青年は笑いながら答える。すると別の声が外から聞こえた。

 

「入るぞ、ケン、トーカ」

 

三十代位のがっしりとした体型の男

 

「あ、お兄ちゃん。その人起きたの?」

 

さりなと同世代とおぼしき少女。

 

「金木くん!そのレディは誰だい!」

 

胡散臭いお坊ちゃん風の男。

 

「お前喧しいな」

 

眼鏡の細身の男性。彼らは部屋に入ってきた。

 

「紹介するね。この一番年上の人が四方さん。眼鏡の人が西尾さん。お金持ちっぽい人が月山さん。君と同じ位の年の子がヒナミちゃん」

 

金木が説明する。すると女性が思い出したように言う。

 

「そういえば自己紹介まだだったね。私はトーカ。よろしくねサリナ」

 

「よ、よろしく」

 

それから半年程、さりなは:reで喰種のヒトの世界での生き方、喰種の区毎の縄張りや喰い場、CCGの捜査官に聞かれた際の誤魔化し方、戦い方、赫子の扱い方等を学んだ。

 

 

 




お久しぶりです。

魔法少女サイトの原作から過剰供給される彩の情報に死にそうになってます。なんだよこの展開・・・(困惑)

でも曇り顔のあやっぴはかわいい(愉悦顔)

次の話からre本編に行きます。

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